シネマな時間に考察を。

心に届く映画を語る、シネマな時間に考察を。ヨーロッパ・中東・アジアを中心とした愛すべき短館系作品のレビューを綴っています。映画と心のちょっといい関係をさがして。心がきらりとひかる瞬間を大切に。


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シネマな時間に考察を。-juno00.jpg『JUNO/ジュノ』 JUNO
2007年/アメリカ/96min
監督 : ジェイソン・ライトマン
出演 : エレン・ペイジ 、 マイケル・セラ

16歳でハプニング的に妊娠してしまった女子高生ジュノ。最初は堕胎しようとするものの、「赤ちゃんにはもう爪が生えている」と聞いた途端、中絶を中止。産んだ子供を養子に出すことにし、フリーペーパーに赤ちゃん求むの広告を出していたセレブな夫婦、ヴァネッサとマークを里親に選んだ。ジュノのおなかがみるみる大きくなるにつれ、まわりの大人たちにも彼女自身にも少しずつ変化が訪れて。ジュノの最後の決断とは。


シネマな時間に考察を。-juno1.jpg 10代の望まない妊娠、という重くなりがちなテーマを内包しながらも、実に軽やかに爽やかに描いたハートフルな良作。アニメーション風のオープニングが本作の“明るさ路線”を最初に伝えることに成功している。オープニングはそのままストーリーの導入へとつながり、始まりからテンポのよい会話が続く。スラングや若者言葉をさらりと多用してると思われるが、日本語字幕は原語の雰囲気をうまく翻訳していると感じる。劇中に使われる音楽(楽曲)も大きなエッセンスになっているし、アメリカンティーンなジュノの部屋のインテリアや小物も目に楽しく、全体的に明るい色彩をふんだんに盛り込んでいる意識が見られ、テーマと反した明るい映画というこの作品の(文字通り)カラーとして成り立っている。

シネマな時間に考察を。-juno0.jpg流行ファッションやメイクなんかには興味のない、70年代の音楽とホラー映画を愛する“ちょっと変わった”女子高生のジュノ。父親と継母ブレンの3人暮らし。同級生で元バンド仲間の冴えないボーイフレンド、ポーリーとの退屈しのぎな1度きりのセックスで妊娠してしまうジュノ。養子縁組の決意をしたのち、ポーリーと両親(父と継母)に妊娠を報告。大きくなるおなかを抱えて学校へもちゃんと通う。人から好奇の目で見られるのもかまわず、堂々と振舞うジュノはやがて小さな母性や愛を知り、時に信頼を失い、そして常に最良と思われる選択をきちんと自分で取るその強さがほほえましい。


シネマな時間に考察を。-juno2.jpg けれど個人的にはヴァネッサの心がとても切なくて胸が痛む。傍目には裕福で自由な暮らしをし、はっとするほどの美貌を携えた素敵な女性であるのに、5年間子供を授からない苦しみを持っていて。自分には母親になるという使命があると信じ、養子縁組に誰よりも積極的。彼女はジュノと出会い、あらゆる準備を整えていく。母親の心得の本を読み、講座に通い、赤ん坊に必要なグッズを全て買い揃え、子供部屋の壁の塗装を張り切る。彼女は疑いもしなかった。夫も自分とおんなじ気持ちであると信じていた。でも夫のマークはまだ何の準備もできていなかったという事実。彼には心の準備が何もできていない。それを知ってもなお、子供を持つことを諦めないヴァネッサの姿が痛々しくて泣けてくる。もし私も妊娠できない身体だったらと考えると、ヴァネッサに自分を見るようでつらい。


理想的だと思ったこのカップルの危機に動揺を隠せなくなるジュノ。男女間の愛に永遠ってあるのだろうかと思い悩む。そんな中、継母ブレンとの関係性に変化が訪れる。とりたてて反抗しているワケではないけど、ブレンと名前で呼ぶ継母が、超音波検査のモニターにうつる胎児を見ながら流した涙を見て、さらに検査技師の心無い言葉に「母親として」言い返したセリフを聞き、ジュノの中で彼女に対する温度がなにかあたたかいものに変わってくるのを感じる。そして永遠の愛についての思考をめぐらすうちに、ジュノにとっての父親の存在と、冴えないけれどやっぱり大切なポーリーの存在の大きさに改めて気付く。「何もないけどあなたはクールで最高!」とポーリーへの思いを打ち明けるジュノを見てると手放しにハッピーな気分になる。


シネマな時間に考察を。-juno3.jpg ラスト、ジュノとポーリーのギターの弾き語りシーンがとってもいい。シンプルなメロディコードと、会話のようにストレートな歌詞を短小節ごとにbut,でバトンしていく。曲名は「Anyone Else But You」。まだまだ若いふたり。これから先、何が起こるかはわからない“けれど”、再び始まった小さな愛にきっと永遠がありますように。そしてヴァネッサ。彼女にはきっと幸せになって欲しい。女としての幸せを存分に感じて生きていって欲しい。女は神秘。新しい生命を導き出す力と、生命を慈しみ育ませる力を持っている。最後にマーク。いつかきっと戻ってきて欲しい。ヴァネッサの元に。


『JUNO/ジュノ』:2010年2月24日DVDにて鑑賞


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