シネマな時間に考察を。

心に届く映画を語る、シネマな時間に考察を。ヨーロッパ・中東・アジアを中心とした愛すべき短館系作品のレビューを綴っています。映画と心のちょっといい関係をさがして。心がきらりとひかる瞬間を大切に。


テーマ:

現代を生きる都会の若者たちに巣くう “透明” すぎる闇。
一見ありふれた日常、楽しい時間、気楽な関係が引き起こす、

得体の知れない “モンスター” がそこに居る。


シネマな時間に考察を。-pa0.jpg
『パレード』 2010年/日本/115min
監督・脚本:行定勲 原作:吉田修一
出演:藤原竜也、香里奈、貫地谷しほり、小出恵介


シネマな時間に考察を。-pa3.jpg 閉塞感を捉えてるのにヴィジョンだけは健康的、だから怖いのだと監督は言う。単に社会批判をするだけだったり、単に衝撃的エピソードを挿し込むだけでは作為的になってしまうから、そうならないようなバランスに配慮したのだという。そして結果その通りの仕上がりをこの作品はしっかりと持ち得たと思う。原作も知らず全く予備知識なしで観た映画だったため、なんの予感も持たずにただ彼らの怠惰に流れる日常を、(中盤までは過去作品『きょうのできごと』の雰囲気だなと思いつつ)時にくすりとした笑いすら添えながら迎えた結末だった。それゆえ心に突然どん、とくるものをはっきりと感じたし、エンドロールを眺めながら寒気に似た感覚にさーっと小さく総毛だつのも感じた。心でぽつりと呟いた。うん、怖いよね、と。


シネマな時間に考察を。-pa1.jpg 今となりにいるひとのことを果たして本当に“知っている”と言えるのだろうか。身近に5人の人間がいたとして、それが一緒に暮らすくらい身近な間柄だとしても、直輝が知ってるサトルと、未来が知ってるサトル、琴美が知ってるサトルと良介が知ってるサトルは同じサトルとは限らない。全員が知ってるサトルはいないし存在もしないんだ、と直輝は言った。ユニバースは世界でマルチバースは“幾つもの”世界だと。さらに隣人の姓名判断士は言う。彼は世界を相手に戦っているが世界は彼が思う以上の世界であると。


相手を良く知らないのにそれでも関係を築けること自体がこの恐怖を生み出している。冒頭のヘリコプターの旋回する轟音がそういえばそもそも不穏な予兆を漂わせていたことを今更ながら思い起こす。2LDKの部屋での不思議な共同生活。隣人の生活を怪しく詮索するクセに、自分たちの生活が普通じゃないと気付くことができない彼ら。麻痺してる、と言えばいいのだろうか。表面的な付き合いで事足りてしまう彼らの生態はあらゆる危険を孕んでいるのにその感覚に麻痺してしまっている。真実味がない、と良介は言った。怠惰な日常に時間的観念の真実味がないと。


シネマな時間に考察を。-pa5.jpg 父親のことでトラウマを抱える未来はレイプシーンばかりを編集したビデオテープをみることで自らの臆病を封じ込めようとしている。

今やテレビ俳優となった同郷の彼氏のスケジュールが空いた時間だけに身体を合わせることで依存する無職の琴美、彼女もまた危険な要素を日常に積み重ねて生きている。命の実態すらよく理解できないで。

夜の公園で男の客を取る18歳の少年サトル。一人ひょうひょうと生きている。他人のスペースに迷いなく入り込める彼もまたとても危険なヤツだ。他人との距離の取り方を知らない。この世で犯罪とされることすらそれを正しく認識するすべを知らない。


馴れ合いの日常に潜む“モンスター”の存在を知ったとき、そこを出て行かなくてはならないと気付く者と、気付かずにいる者。三咲はそれに気付いたからこそあの部屋を出た。それでもまだそれにつかり続けている彼らはあのあと一体どうなってしまうんだろう。それを思うとまた薄ら寒くなる。果たしてその日常はどこまで歪んでいくのか。動機すらないような犯罪が本当に頻繁に起こってしまう現代に。


シネマな時間に考察を。-pa2.jpg サトルが言うように彼らは本当に気付いてて何も言わないのだろうか。気付いていながらひたすら無関心、日々ただなんとなく楽しければそれでいいじゃんという感情の薄さからくる恐怖なのか。あるいは彼らは全く気付いていないとしたら・・?これほど身近な危険すら感知できないほど怠惰に麻痺した無神経さもまた恐怖だ。キャッチコピーにあるようにこの映画の結末に「共感」できるという人は、闇が訪れる可能性のある人、もしくは可能性があるかもしれないということを知っている人なんだろう。共感できない!と思える方が、本当は望ましいのかもしれない。



『パレード』:2010年2月22日 シネリーブル神戸にて鑑賞

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