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06:練習



「まあ、旦那様見て。野いちごよ」

林の奥で、ベルルが野いちごを見つけ、ちょこんと座り込んでその赤い実を指で優しくつつく。

「良く熟れているわね」

「摘んで、食べてみてごらん。それは食べられるよ」

「甘いかしら」

ベルルは赤い実をプチンと摘む。
それを自分の口に運んで、もぐもぐ……

彼女は僕の方を振り返って、僕を見つめもぐもぐ……

「……?」

あれ、微妙だったのかな、と思ったけれど、ベルルはニコリと笑って「甘いわ!!」と。

「とっても甘酸っぱくて、美味しいわ。旦那様も食べてみて」

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つ野いちごを摘んで、僕の口元に持ってくる。

「旦那様、お口開けて? あーんして?」

「……」

自ずと上目使いの彼女。な、何と言う事だ。
彼女が、野いちごを食べる様、僕に言っているだけなのに……恐るべき可愛さ。

僕は少々恥ずかしかったが、どうせ誰も見ていない林の中だと思い、彼女の手から野いちごを食べた。
陽の光を沢山溜め込んでいて、とても温かく甘ったるい。

「ね、旦那様甘いでしょう?」

「ああ、甘い……な」

「美味しいでしょう?」

「うん」

色々な意味で、甘く美味い。
ベルルはドレスのポケットから白いレースのハンカチを取り出し「持って帰って、デザートにしましょう」と、一帯に実っている野いちごを摘み始めた。

「……あっ」

突然、強い風が吹いて、ハンカチの上に乗せていた野いちごがコロコロ転がってベルルのドレスを流れて行く。
そして、ハンカチも空に巻き上げられた。

「ああっ……待って~」

ベルルはハンカチを追いかけ、宙を見上げながらふらふら。僕も彼女を追う。
ハンカチは風の吹くまま赴くまま、林の大きな樹の、高い所の枝に引っかかった。

「……高いな」

「どうしましょう旦那様」

ベルルが困った様な顔で僕を見上げた。
僕は彼女の頭にポンと手を置いて、彼女を安心させようと微笑んだ。

「大丈夫だ。僕が魔法で、あのハンカチを取り返そう」

「……本当?」

「ああ、簡単な魔法だよ」

服の袖の中から杖を取り出し、僕は宙に魔法式を描いた。
浮遊の魔法に、風の女神の術式を組み込み、樹の枝に引っかかったハンカチの方へ魔法を発動する。

するとハンカチはふわりと浮かび、ひらひらと舞いながらベルルの待ち構える手のひらに収まった。

「わああっ、ふふ、良かったわ!! 戻ってきた!!」

「……お気に入りのハンカチかい?」

「ええ、そうよ。前に旦那様に買ってもらったハンカチ。……このレースの模様が可愛いの……」

ベルルは僕に、お気に入りのレースの部分を見せながら「ありがとう旦那様!!」と言った。

「凄いわね旦那様。簡単に魔法を使ってしまうのね」

「……このくらい、きっと君にも出来るよ。杖は持って来ているかい?」

「ええ!! 旦那様の真似をして、いつも持っているのよ?」

彼女はドレスの袖の内側に収めていた、白い杖を取り出した。
この国の魔術師は皆袖の内側に杖を仕舞っている。その為の場所と言うのが、この国の衣服には必ずある。

「魔法、ちょっと練習してみるかい?」

「ええ!! 私もハンカチを浮かべてみたいわ」

ベルルは白い杖を振り、キラキラした瞳で僕を見上げる。
僕は側の、三つ葉の絨毯の上に座って、彼女を隣に呼ぶ。ベルルもドレスをふわりと持ち上げ、僕に身を寄せる様座る。

僕は自分の胸ポケットから、飾り気の無いハンカチを取り出し、ベルルの前に広げて置いた。

「まずは、浮遊の魔法からやってみようか。僕の描く通りに、宙に魔法式を書いてごらん。こまかい事は、また後で、教科書を見ながら教えてあげよう。まずは、真似をして、書いてみるんだ」

「……ええ」

一つ一つの、魔法記号に意味があり、その組み合わせに法則があるが、まずはベルルに真似して書いてみる様促した。
ゆっくりと、まるで文字を練習する幼子のように、ベルルは僕の魔法式を何度も見ながら、自分の杖で宙に記号を描く。

どこか気難しい表情で、確かめる様に一人でにコクコク頷くベルルが愛らしい。

それほど長い術式でもないが、ベルルがそれを書き終えるのに数分は時間がかかった。

「出来たわ!!」

「よし。そしたら、僕がさっき置いたハンカチが浮かぶ様念じながら、術式を杖で突いてごらん。自分の魔力を杖の先に集中させるんだ。杖がこのように細長いのは、魔力と言うのは細長いものの先に集まりやすいからだよ」

「……へええ、そうなのね。だからサンちゃんの角の先にも、魔力が集まるのかしら……」

「うーん。あれは装着形だから何とも……」

ベルルは「よし」と杖を改めてぎゅっと握って、ハンカチを見つめながら杖の尖端を先ほど書いた術式に当ててみた。
すると、ハンカチがフワフワと浮いて、ベルルの目の前で留まる。

「出来たわ!!」

「おお、凄いじゃないかベルル。流石だな……」

「そ、そうかしら……っ」

ベルルは照れながら、でも嬉しそうに僕の方を見た。
その瞬間、意識が魔法から離れてしまって、ハンカチがもの凄い勢いで天高く舞っていく。

「あああああっ、旦那様あああああ!!」

ベルルはパニック状態。言葉にならない声を発して、杖を振りながら空に手を伸ばす。

「べ、ベルル落ち着いてくれ。大丈夫だから」

僕は慌てるベルルの肩に手を置いて、そう言い聞かせたが、ベルルはどんどん上昇するハンカチをどうにかする事も出来ず。

「そ、そうだ……ワッペンを……」

昼に魔法道具店で買ったワッペンは、魔法を強制的に解除する力がある。術者の手に負えなくなった魔法を、ワッペンに組み込まれた術式が判断し、強制終了してくれるのだ。

僕はそのワッペンをベルルの背に勢い良く貼った。

「……ペシ?」

ベルルが、背に何か貼られた感触に気がついた様だ。
やがて、彼女の魔力は沈静化し、魔法は解除され、天高く舞ったハンカチがヒラヒラあても無く落ちてきた。
僕は自分の魔法でそれを引き寄せ、無事に手に取る。

「ふう……返ってきたな」

「ごめんなさいごめんなさい旦那様っ」

ベルルはシュンとして謝る。
僕は思わずフッと吹き出し、顔を背けて笑った。

「まあ、旦那様が笑ったわ」

「ごめんごめん。でも、最初にしては良く出来ていたんだよ、魔法。出来すぎて、あのようになったんだ。初めて見たよ、ハンカチがあんなに天高く舞う所は」

「……むう」

ベルルが片方の頬を膨らませ、ムッとしたけれど、僕に褒められ嬉しくもあった様だ。

「また練習しよう、ベルル。今度はちゃんと教えてあげるから」

「本当? 私、ちゃんと出来るかしら」

「君ならすぐ出来る様になるよ。僕なんかより、よっぽど偉大な魔術師になる」

「……そうかしらねえ」

首を傾げ、自分の杖を見つめるベルル。
彼女が杖を使って初めて発動した魔法は、一応成功と言った所だろう。
むしろ膨大な魔力の片鱗を見たと言っても良い。

「旦那様、背中に何か貼ったでしょう?」

「ああ、ワッペンだ。ゴメンよ、結構勢い良く貼ったから、びっくりしただろう」

「ペシっていったわペシって」

僕はベルルの背中から、ワッペンを剥がした。
特にシール状になっている訳でもないが、それは貼りたい場所にスッとくっつくので、今でもベルルの背にぴったりとくっ付いていた。本来、ちゃんと衣服などに縫い付けた方が良いのだが。


僕らはその後、野いちごを摘んで館への小道を歩いた。
ベルルは片方の手に、ハンカチに包んだ野いちごを持って、もう片方の手で僕の腕を取る。

そして小さな手が僕の手を探し、確かめる様にぎゅっと握るので、僕も思わず握り返した。


ちょうど、夕方の前の、落ち着いた陽の光が丘を包む時間帯。
ベルルは相変わらず、楽しそうに頬を染め、華やかな声で僕に語りかける。

「ねえ、旦那様? 今からお夕食よ。サフラナが、沢山ごちそうを用意してくれているの。旦那様驚くわよ」

「はは、僕が驚くのか……。まるで僕の誕生日だな」

「……そうね、私の誕生日なのにね」

クスクス笑って、ベルルは握った僕の手をブンブン振った。
彼女が楽しそうで、嬉しい。

「旦那様、今日は何でも言う事を聞いてくれるのでしょう?」

「え? ああ……そうだよ」

「だったら、今夜……あのね、ちょっと……お願いがあるかも」

「……? 何だい?」

「ふふ……まだ秘密!!」

ベルルは口元に手を当て、一人ニヤニヤしていた。
いったいどんなお願いなのか、正直な所とても気になった。
でも結局、ベルルが可愛いのでお願いを聞き入れてしまうんだろうな、僕は。

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