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02:助手

さて、プバハージ王国で販売する“日焼け止め薬”と、“海の魔毒を抑える薬”の量産を、僕は急いでいた。
と言うのも、季節的な事もありプバハージ島でこれらの薬が爆発的に売れてしまったのだ。
伯爵の売り出し方も良かったんだろう。

しかしそのせいで次々と注文がくるから、僕は王宮での仕事の合間や休日に、自宅の調剤室に籠って作業を進める日々が続く。
さほど作業工程を必要とする魔法薬では無いが、なかなか忙しい毎日を送る事となった。



レーンが必要な薬草を調剤室へ持って来てくれた。

日焼け止め薬に必要なのは、ガンドーココルの根っことパル草の花だ。
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の日焼け止め薬の調剤法は、父が隠しておいてくれた“赤の秘術書”というのに記されている。
海の魔毒を抑える薬は、香草を数種使って調剤する。
前に海の上で調剤したものより、もっと質の高い商品になる様、改良した。


「旦那様、凄いですよ。最近の植物はとても質が高いです」

「……ああ。調剤していても良く分かるよ」

「何ででしょう。新しい肥料が良かったのかな? でも、こんなに育ちがいいのは、やっぱり妖精が多くなったからでしょうか」

「それはとても、大きいだろうね。でもまあ、レーン、お前の腕も上がったんじゃないのか?」

「へへ」

レーンは中庭の植物たちの育ちが良いのが嬉しい様で、みずみずしいその植物を自慢げにしていた。

「俺だって頑張りますよ。だって旦那様の薬、今とても売れてるんでしょう? 旦那様が成功したら、俺の給料ももっと上がるかもしれないし!」

「……お前は本当に現金な奴だな」

にっこりと笑うレーンの逞しさよ。
しかし、ここ最近の彼の働きっぷりには感謝している。

腕もずっと上がり、今では王宮専属の庭師に何ら引けを取らない程、立派な庭師となったのではないだろうか。

「レーン……しばらくは忙しいが、もう少し落ち着いたらお前も今後の事を考えないといけないな……」

「……? どういう事ですか?」

レーンは「まさかクビ……」と口元に手を持っていって歯をガタガタ言わせて青ざめたが、僕は別にそんな事を考えている訳では無い。

「まさか。こんな家の庭師のままで良いのかと言う事だ。お前の力があれば、王宮や植物園のもっと大きな庭で仕事もできるだろう」

「……」

「僕がもう少し結果を出したら、きっとお前を推薦出来る。国の施設の方が給料も良いだろうし、ずっと上を目指せるぞ」

僕はレーンの力が、こんな所で一生を終えるものではないと思っている。
彼には力も才能もあるのだ。まだ若く、多くの事を吸収出来る。
それを存分に生かすには、グラシス家の中庭では小さすぎるのでは無いだろうかとずっと考えていた。

「うーん……でも、俺ここの庭が好きですし。だって旦那様、俺が王宮の専属庭師になんかなったら、別の人を雇うんでしょう?」

「そりゃあ……そうだな」

「それも癪なんですよね~」

レーンは相変わらずな態度で首を捻っていた。
現実主義の彼は、当然もっと上を目指し僕の提案を喜ぶものだと思っていたから、少し驚く。

「それに旦那様、あの膨大な植物を一人で管理する庭師なんて、俺くらいですよ」

「……まあ、そうだろう」

「俺が居なくなったら困るでしょう。とりあえず、旦那様が大成功してグラシス家が復興して、そのうちに王宮の庭師より給料が良くなるのを待ってみますよ」

「……」

レーンの物言いは軽かったが、僕は何となく嬉しかった。
やはり、うちの庭の事をよく知るレーンが居なくなると、困るのは僕だろう。

彼の今後を考える事をやめるつもりは無いが、彼自身がそう言ってくれるのはありがたい事だ。








薬を注いでしまった小瓶にラベルを貼る仕事を、ベルルが手伝ってくれていた。
彼女は几帳面で、とても綺麗にラベルを貼ってくれる。

「すまないねベルル。こんな作業を君に任せてしまって」

「いいえ! だってとても楽しいわ。旦那様のお仕事のお手伝いが出来るのよ?」

「……疲れたら休んでいいんだよ。そんなに集中して」

「だって、旦那様もお仕事しているもの、私も頑張っちゃうわ。それに、私、旦那様の助手なの。……ただラベルを貼っているだけだけど」

「……ベルル」

ここ最近忙しく、なかなかベルルと過ごす時間が取れない中、彼女は僕の手伝いが出来る事を喜んだ。
お互い別の作業をしている訳だが、側に居るだけで良いのだ。
彼女のおかげで仕事が随分と楽になった。

「それに、サフラナに聞いたわ! 旦那様のお薬はとても評判が良くって、プバハージ島で沢山買われているって。当然よ! 私、もっともっと沢山の人に、旦那様のお薬を使って欲しいわ」

「まあ……僕の力だけでは無いけどね。レッドバルト商会の力もとても大きくて、季節もちょうど良く売れ行きに影響した。運が良かったんだ」

「あら、でも良いものでは無いと、きっと売れないわ。私、分かっていたもの!」

ベルルは木製の椅子に座ったまま、嬉しそうにニコリと笑った。
茶色い小瓶のラベルには“日焼け止め薬”と書かれていて、その小瓶は乱れなく箱に詰められていた。







一段落がついて、僕とベルルは居間で休憩を取ることにした。
あまりに長い時間作業をしていたから、お互い体が硬くなってしまっていた。

「ベルル、大変だっただろう。今日はここまでにしておいた方が良いよ」

お茶を飲みつつ、僕は彼女にそのように言った。
ベルルには充分手伝ってもらった。後は僕がしてしまおう。

「で、でも旦那様。私、お手伝いしたいわ。だって旦那様と一緒に居られないじゃない。このあとも調剤室に籠ってしまうのでしょう?」

「……そうだけど」

「旦那様が居ない場所で、一人で休んでいたってちっとも楽しくないわ」

足をぶらぶらさせ、ごねるベルル。
とは言え、彼女をこれ以上働かせる訳にはいかなかった。

お茶の後マルさんとサンドリアさんにベルルを部屋まで連れて行ってもらおうとする。「やだやだお手伝いする」と子供の様に我が侭を言う彼女を、少し休ませる為だ。

「だって旦那様! 作業が早く終わった方が、旦那様も休憩する時間が出来るでしょう? そしたら、一緒に居られる時間ももっと長くなるものっ」

ベルルの言い分はこう言う事だった。
ああ、可愛らしい。

だけど僕は困った顔になった。

「だったらサンドリアを使え小僧。ラベル貼りくらいすぐ出来るだろう」

「は!?」

ローク様も出てきて、ベルルの変わりの作業をサンドリアさんにさせる様に言う。
サンドリアさんは声を上げ嫌そうな顔をしたけれど、ローク様の指示とあれば文句は言えないようで、何とも複雑そうだ。

「ベルル様のためよお兄様。頑張って」

マルさんまで。
彼女はベルルを後ろから抱きしめ、いやいやと言う彼女を拘束している。

「今日旦那様がどれだけ早くベルル様と一緒になれるかは、お兄様にかかっているのよ」

「……」

「頑張れサンドリア。器用貧乏系大魔獣の底力を見せつけてやれ」

「……」

サンドリアさんの青ざめた表情が可哀想で、僕としては「あの、別に大丈夫です」と言いたかったが、ローク様に睨まれたので何も言えなくなる。

結局サンドリアさんに手伝ってもらう事になった。





「ちくしょー……ふざけやがって」

ぶつぶつ言いながらもラベルを貼るサンドリアさん。
案外器用で、ベルルと変わり無い程几帳面なようだ。

「あのサンドリアさん、嫌になったら休んでいいですからね」

大鍋で煮込み作業をしている間、僕はサンドリアさんにそう告げた。しかしキッと睨まれてしまう。

「お前がいつまでもちんたら作業してるからだろうが! ちゃちゃっと薬作って大成功してみせやがれ。調子に乗って仕事が忙しいとか言って、ベルル様を寂しがらせたら、お前許さないからな!」

「……」

こんな雑務をさせられている事を怒っているのかと思ったら、そう言う訳では無かったらしい。
サンドリアさんの説教は私怨も混ざっていそうだったが、僕にとってはありがたいお言葉である。

「分かっています。ベルルに寂しい思いは、させません」

やはりサンドリアさんもベルルの大魔獣だ。彼女の為に僕の仕事を手伝ってくれている。
それが嬉しくもあり微笑ましくもあり、妙な笑みを浮かべていた所、サンドリアさんに「気味が悪い」と言われてしまった。

「ほら、さっさと作業に戻れよタコ。もの凄い早さで仕事を終わらせてみせろ」

「は、はい」

結局サンドリアさんに急かされる形になり、僕は薬の調剤に集中した。
おかげでこの日、作業はすぐに片付き、夕飯前にはベルルと少しゆっくりする時間が取れた。

サンドリアさんには何かお礼を用意した方が良いかもしれない。
僕には助手がとても多いようだ。





僕らがこんな風にせっせと薬を作っている裏で、この二つの薬は国を越え大評判となり、それらは旅人である程買い求めるものとなった。
おかげで様々な国で「レッドバルト商会が最近出した薬が良い」と話題になり、その評判は巡り巡ってリーズオリアへ戻ってくる事となる。


「レッドバルト商会の薬が、話題ですね」

「あれはグラシス家の御当主の調剤したものですよ」

「ああ、そう言えばグラシス家の若い当主は、レッドバルト家から嫁を貰っていたな」

「そう言う繋がりだったのか」

「またレッドバルト家が力を持つ事になるな」


このように至る所で噂となり、僕は知らない所で注目されていく事になる。
レッドバルト伯爵はここまで見通していたのだろうか。

リーズオリアではヴェローナ家の薬が主流となり、今ではグラシス家の薬はどこも相手にしてくれなかったが、最近ではヴェローナ家の薬の悪い噂が目立ち、逆に海外に売り出したグラシス家の薬の話題がこの国に戻ってきたりする。

巷では、再びこの二つの家がぶつかり合うのではと、ひそひそと噂されていた。
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