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08:不死蝶

夢を見た。
無数の鍵と蝶の夢だ。

小さな鍵、大きな鍵がこの世界の地面に並べられている。僕はその世界に立っている。
宙には無数の、半透明の蝶が舞っていた。

「……」

この世界から出たいのだが、出口の鍵を見つけなければならないらしい。
途方も無くそれらの鍵を拾ってみるのだが、どれも錆びていて使い物にならない。

早くベルルに会いたいのに……そういう焦りがあった中、目の前に金色の粉がチラチラと舞い落ちてきて、僕は空を仰いだ。

「……ディカ」

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ゴンが、ゆらゆらと帯を描いて真っ白な空を飛んでいた。
その瞳は寂しそうで、でもなぜ寂しそうなのか、僕には良く分からない。

何となくそちらへ手を伸ばすと、ふっと、半透明の蝶が僕の指先にとまった。


カチリ……


そのとき、どこかで“鍵”の開く音がした。










「……」

いつもなら起きるはずの無い早朝に、僕は目を覚ました。
隣ではベルルが寝ていて、いつもならその横にディカが寝ているのに、ディカの姿は無い。

「……?」

僕は起き上がり、キョロキョロとディカを探してみた。
書斎の入口が僅かに開いているのが分かる。

「書斎に居るのか?」

その書斎を覗いてみると、中でディカを見つけた。
ディカは机の上をしきりに見つめている。

「ディカ、どうしたんだい」

「……」

ディカは僕が起きてきた事に気がつくと、無言で、机の上に置いてある装飾の美しい箱を指差した。
そうだ。ミスティさんが現魔王の依頼で持って来た、あの箱だ。

僕は夢の中で響いた、あの鍵の開く音を思い出した。

「まさか……」

ふっと湧いて出た予感は、僕の心臓の鼓動を早める。
小箱の前までやってきて、息を呑んだ。そして、ゆっくりその箱の蓋を持ち上げようとした。

感覚で分かる。開いている。
鍵が、開いている。

なぜだ?

僕は今日、なぜこの箱が開いたのか、必死になって考えた。
何がきっかけだったんだろう。今日は……

「……なるほど」

ふと、今日と言う特別な日が意味するものに思い至り、口元を抑えた。
去年の、夏の終わりの、あの日。
僕は、黒髪で痩せ細ったみすぼらしい少女を、地下牢から連れ出した。

「そう言う事か……」

昨日から、こそこそと意識していた記念日だったが、まさか今日この箱が開くとは思わなかった。
一度息を吐いて、箱から手を離した。これは僕一人で開いて良いものではない。ベルルが居なくては。
ディカが隣で、じっと僕の様子を見上げていた。

「旦那様……どうしたの?」

ちょうど良くベルルが起きてきた。少々乱れた髪で、寝巻き姿のまま目を擦っている。
僕は彼女に向き直る。

「ベルル……前に、現魔王の大魔獣の、ミスティさんが持って来てくれた箱、覚えているかい?」

「ええ勿論。でも、鍵がかかっているんじゃなかったかしら?」

「それが……開いているんだ。きっと、今日と言う日に開く様、魔法がかけられていたんだ」

僕はベルルを見つめた。彼女はまだ気がついていない。
今日と言う日がどんなに大切な日なのか。

僕は箱を持って、寝室のソファに座る様、ベルルに促した。
ディカもてくてく僕らについてくる。

寝室に行くと、すでにマルさん、サンドリアさん、ローク様が、おのおの好きな場所で待機していた。
じっと、僕を見つめる視線は強く、でもどこか寂し気で、今日と言う日にこの箱が開く事を、あらかじめ知っていたかの様だ。

ベルルは、このピリッと緊張した空気を、不思議に思っている様だった。







「ベルル、今日が何の日か、知っているかい?」

「……?」

「君が、このグラシス家にやってきた日だ」

「あっ」

ベルルが口元に手を当て、肩を上げた。
目を大きく見開き、僕を見つめる。
僕は頷いた。

「去年のこの日、僕らは結婚した。一年なんて、あっという間だったね、ベルル」

「ええ、ええ旦那様。そうよ、何で気がつかなかったのかしら……。私、去年のこの日に、旦那様に迎えにきてもらったんだわ」

すでに涙ぐむベルル。僕はそんな彼女の肩を抱き寄せた。

「ベルル、箱を開けてみよう。何が出てくるのか分からないけれど……きっと、僕らが一年間夫婦としての時間を積上げなければ、開く事の出来なかった箱のはずだ」

「……旦那様」

ベルルは、肩を抱く僕の手の上に、自分の手を重ねた。
大丈夫。何が出てきても、今の僕らなら大丈夫。

僕は大きく深呼吸をして、その箱を手に取り、膝の上に乗せて、そっと蓋を開いた。



「やーっと、この箱から出られたのじゃー!!」


箱から出てきた“それ”に驚き、僕とベルルは目を点にして、言葉も出て来ない。
手のひらに乗る程小さな、人形の様な女の子が、勢い良く飛び出てきたのだ。黄緑色の髪を二つに結ったその女の子は、ヒラヒラした衣を身に纏っている。背には半透明の蝶の羽があるようで、それを羽ばたかせながら宙に浮いていた。手には立派な杖を持っている。

「早く開けんかい!! なかなか開けてくれないから、何度フライング飛び出しをしそうになったか!!」

「……」

「肩が凝って仕方が無いわい」

可愛らしい声と容姿とは裏腹に、口調は若干年寄り臭い。
いったい何なんだ。

その人形の様な女の子は、僕の前をひらひらと舞って、ニコリと笑った。

「わしの名前はアリアリア・インフィネイト。“時”と“記憶”を司る蝶の大魔獣なのじゃ」

「あ……あ、どうも」

僕はとっさに頭を下げた。
アリアリアという名の大魔獣は、今度はベルルの方へ飛んで行った。
でも、大魔獣と言うにはどう見ても虫……

「ベルル様、お久しぶりじゃのう」

「うーん……アリちゃん?」

ベルルはさっそくニックネームをつける。蝶だけど、アリちゃんか……。

「と言っても、わしのことは覚えておらんだろう? ……ベルル様の記憶を封印したのはわしじゃからの」

「……え」

ベルルはアリアリアさんの言葉に若干戸惑った。
アリアリアさんはヒラヒラと舞って、今度は他の大魔獣たちの元へ行く。

「久しぶりじゃのー、マルゴット」

「……アリアリア様も相変わらずね。あんな小さな箱の中に居たなんて……お疲れさまだわ」

マルさんがアリアリアさんに頭を下げた。
あれ、とても小さな大魔獣だけど、何か畏まられている。

「サンドリア、いつの間にお前は雌になったのじゃ?」

「い、いいだろ、そんなのっ。同情するなら元に戻してくれ!! アリアリア様ならできるだろう!!」

サンドリアさんはやはり性別に関してつっこまれていた。
しかしサンドリアさんの要望は無視して、ふらふらとローク様の元へ飛んでいく。

「ロークノヴァ、お前もこっちへ出て来れたか。とは言っても、今はベルル様の大魔獣ではない様じゃがなー」

「……ふん。アリアリア様だって、とても曖昧な契約下に居るじゃないか」

ローク様は髪を払って、アリアリアさんからそっぽ向いた。
どうやら、ここの力関係も、アリアリアさんの方が上の様だった。
……どういう事だろう?

「ディカ、お前こんな所に居たのか。心配したぞー」

アリアリアさんはディカの頭に乗って、小さな手で額を撫でた。
ディカの無言はいつもの事だが、アリアリアさんに手を伸ばし、ぎゅっと掴んで頬擦りしていた。
ここは仲が良いのか?

「あの……」

大魔獣たちの再会を、ただ眺めていただけの僕は、その一区切りを見計らって声をかけた。
アリアリアさんは僕の方を振り返ると、全身をくまなく見て、ニヤリと笑った。

「お前がベルル様の旦那様じゃな?」

「は、はい……」

「ほー……なるほど」

何がなるほどなんだろうか。
手のひらサイズの小さな女の子だが、何だか偉そうに僕をチェックしている。

僕がぽかんとしていたからか、ローク様が見かねて説明してくれた。

「アリアリア様は、旧魔王様に仕えていた10の大魔獣の中で“最高齢”の大魔獣だ。“最初の魔王”から仕えていた、唯一の大魔獣……。魔獣には死の概念があるが、アリアリア様は特別で、それが無い。死んでも記憶を持ったまま生き返る“不死蝶”だからな」

「……不死蝶?」

それでやっと、ここにいる大魔獣たちがなぜ畏まっているのかを理解する。要するに、大魔獣たちの中の“お局様”と言う訳だ。

見た目は愛らしいが、どこか年寄り臭い口調にも納得がいく。
とてつもなく長生きなんだな。

「そうじゃ。わしは“時”の大魔獣。初代魔王から歴代の魔王の所業を記録をしてきた」

「……と言う事は、アリアリアさんの契約者は、現魔王ですか?」

現魔王にはもう一匹、大魔獣がついていると言っていた。
アリアリアさんが、そうだと言う事だろうか。

「いいや、旧魔王様が討ち取られた後、現魔王の所に居たのは確かじゃが、厳密に言えばわしの契約はいまだに旧魔王様にある。と言うのも、旧魔王様の命令がまだ継続しているからじゃ。この命令を全うした時、わしの契約は自動的に現魔王に引き継がれる」

「……命令?」

「ああ」

アリアリアさんはエメラルド色の瞳を光らせ、手に持つ杖を僕に向けた。

「わしは、東の最果てから見た二つの世界を記録する大魔獣。……ベルル様の記憶をお返しするのが、わしに与えられた旧魔王様の最後の命じゃ」

「記憶?」

僕はアリアリアさんの言葉を繰り返し呟き、徐々に目を見開いた。それはとても重要な事だったから。
ベルルはその事に少し萎縮してしまったのか、僕の腕をぎゅっと握って、目を泳がせている。

「……ベルル」

ベルルと結婚して一年。
知りようも無かった彼女の記憶を受け止める覚悟が、今の僕にあるだろうか。

だけど僕以上にベルルは、自分の記憶を受け止める覚悟が、いまだ出来ていない様に思えた。
僕に身を寄せるベルルの恐れと緊張が、嫌と言う程伝わってくるからだ。

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【大魔獣まとめ】
だいたいの大魔獣が出てきたので、簡単に情報をまとめました。
全部出てきたら、また詳しいまとめを作ろうと思います。
名前/属性/姿/召喚記号 【契約者】


◯マルゴット・プロロフィーナ/風/白狼/丸 【ベルル】

◯サンドリア・レカクーダ/水と砂/青い牡鹿/三角形 【ベルル】

◯カルメン・ダイアリーヤ/大地/???/ダイヤ 【レッドバルト伯爵】

◯スペリウス・グローバー/雷/虎/スペード 【テオル】

◯ロークノヴァ・スカルカーク/闇と炎/黒いドラゴン/六角形 【リノ】

◯ノーゴン・ペンタルス/空/フクロウ/五角形 【ミネ】

◯ミスティハート・ラキエル/海/朱色の海獣/ハート 【現魔王】

◯ディカ・アウラム/光と浄化/金色のドラゴン/十角形 【無契約】

◯アリアリア・インフィネイト/時と記憶/不死蝶/メビウスの輪 【旧魔王】

◯?????/???/???/??? 【現魔王】
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