N1803G-2 (1) | chuang12のブログ

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第一話 刻限その二

「どんな言葉でもよくことができるから」
「そうだな。英語に中国語にドイツ語に」
「スペイン語にフランス語にアラビア語にイタリア語にロシア語?」
「ヒンズー語にギリシア語もいけたな」
「ラテン語もね。何でも読めるのね、本当に」
「それを考えると凄いな」
 男はその大和田教授という人物のことについてあらためて思うのだった。
「ただの文学部の教授じゃないな」
「まあそうね。それで博士に会いに行くのよね」
「そうだ」
 そのことをまた答える。
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「おられるのなら今からな」
「それはいいけれど」
 女はふとした感じでまた言ってきた。
「あんたも変わってるわね」
「一応自覚はある」
 このことを自分でも否定しないのだった。
「そのことはな」
「もっともあの博士はもっと凄いけれどね」
「凄いとかそういうものじゃないでしょ」
 女は笑って言葉を返した。
「変人っていうか完全に正体不明の人じゃない」
「集めている本も変な本ばかりだしな」
「そうそう」
 また男に言葉を返す。
「悪魔だの妖怪だの伝承だの。変な人よね」
「確かにな」
「そしてそんな博士に会いに行くあんたも随分と変わってるわね」
「話は面白い」
 理由をそこに置いていた。
「だから行くんだがな」
「妖怪の話とかが?」
「民俗学では妖怪の話も多い」
 これは事実である。民俗学は硬いものばかりではないのだ。民族伝承の中に伝わる妖怪について研究し学ぶのもまた民俗学なのだ。民俗学と言っても様々である。
「だからだがな」
「それでも変わってるわよ」
 女はその意見を変えなかった。
「あんな変な人にわざわざ会いに行くのは」
「少なくとも悪い人間じゃない」
 これは断言だった。
「それに学識は確かだしな」
「それは確かにね」
 女もそれはこくりと頷いて認めるのだった。バッグ プラダ
「悪い人じゃないわよね。頭も柔らかいし」
「この大学はかなりましだが大学には質の悪い人間が多い」
 語る男の顔が顰められる。
「実際のところな」
「随分とシニカルな見方ね」
「俺は事実だと思っているがな」
 彼は己の意見を完全に正しいと確信しているようだった。それが言葉にも出ている。
「それについてはな」
「そうなの」
「しかしもう一つわかっていることがある」
 彼はここで言葉を付け加えてきた。
「何が?」
「大和田教授のことだ」
 その博士のことである。
「あの人は確かに風変わりだが知識は確かだ」
「確かなのね」
「人間性もな。奇人だが清潔だ」
「それって褒めてるの?」
 彼の言葉に必ず否定する言葉が入っているのを聞いて彼女は苦笑いと共に突っ込まずにはいられなかった。それと共に言葉を続けていく。
「けなしているように見えるけれど」
「褒めている」
「そうなの?本当に」
「少なくとも俺はそのつもりだ」
「そうだったらいいけれどね」
「それでだ」
 彼はまた話を変えてきた。
「教授は研究室におられるんだな」
「ええ、それは間違いないわ」
 これについては確実な返事が返ってきたのであった。彼女も確信したような顔で言葉を出してきたのであった。
「さっきまで博士の研究室にいたし」
「そうか。それなら」
「ただしよ」
 彼女の笑みくすりとしたものになった。
「相変わらずだから」
「相変わらずか」
「そう、相変わらず」
 そのくすりとした笑みでまた語る彼女だった。
「机に向かってね。その取り寄せた本を読んでるわ」
「ウィーンからのだな」
「あれっ、ロンドンじゃなかったかしら」
 ここで話が少し混乱した。
「違った?」
「ウィーンじゃなかったか。まあいい」
 彼はそれについてはどうでもいいことだったのだ。だからとりあえず話は終わらせることにしたのだった。それを意識しての言葉である。
「今から博士のところに行く」
「ええ。それじゃあまたね」
「またな」
 これで彼女と別れ建物の中に入る。建物の中はやはり学校の校舎を思わせる白い壁と廊下であり左右に教授達の研究室が並んでいる。彼はその奥にある研究室の扉の前に来た。そこの表札には大和田研究室とある。扉はクリーム色のプラスチック製であり外見はまともなものである。少なくとも異様な印象を与えるものではなかった。
 彼はその扉をノックした。するとすぐに声が返って来た。
「どうぞ」
「はい」
 その言葉に従い扉を開ける。するとそこには異次元があった。
 扉からは想像もできない程広い部屋だった。部屋の中には本棚が何十個も並びそこには無数の本が詰め込まれている。奥が見えなくなる程だった。そしてその入り口に彼がいた。小柄で背も曲がった老人で長い左右にはねた白髪と髭だらけの顔を持っている。黒いコートを羽織りその下には青いアイボリーネックのスカーフに黒スーツがある。一目で只者ではないと思わせる外見であった。