理佐が踠いているのが、よく分かった。

暗闇に突き落とされて、暗い海の底で、それでも必死に光を探しているのが、よく分かった。


だからこそ、後悔した。

何で、気付いてあげられなかったのか。


ごめんね、理佐。



私を見つめる理佐に、近付いて、思いっきり抱き締めた。



「ごめんっ!ごめんね、理佐っ!」

「…何で、愛佳が謝るの…?」



理佐の声に力はなかった。

それだけ、今の理佐は疲弊し切っているんだろう。



「理佐、もう頑張らなくて良いから!独りで頑張らなくて良いから!」

「まな、か…?」

「私が、ずっとずっと、理佐の隣に居る。だから、今日から、私の”渡邉 理佐”として、新しく人生をスタートしよう?」

「……それ、告白…?笑」



理佐は、そう言って小さく笑ってくれた。

告白としては、場違いなんだろうけど、この際だから、ハッキリと言いたかった。


あの日に、理佐に伝えられなかった、この気持ちを。



「私、理佐が好きだよ」



理佐と面と向かって、もう一度伝えた。

理佐は何を答える訳でもなく、私の目をジッと見つめてきた。


理佐は、もういっぱい踏み潰されてきたでしょ?

それでも、きっと強く立っていられたのは、理佐自身が、自分を認めようとしない強さだと思うよ。

でも、だから、頭を垂らしていたんでしょ?


もう、上を向こう?前を向こう?



「ありがとう、愛佳…。でも、もう疲れたんだよ…。もう、……死にたい……」



理佐の目からは、涙が溢れ出した。

それが、理佐のSOSなんだって、今なら分かるよ。


「理佐、生きよう?」

「何にもないんだよ…?私には、もう…何にもないんだ…」

「なかったら、ダメなの?」

「え…?」

「何にもない訳ないよ!理佐は、今、この瞬間も生きているんだよ?何かあるから、生きているの」

「……」

「何にもないなら、ゼロからで良いじゃん。私と、一から始めよう?」


そう言うと、理佐は俯いてしまった。

でも、何度でも伝えるよ。


理佐は、独りじゃない。

理佐は、ちゃんとした一人の人間なんだよ。


「生きたいって、思わなくて良いから。だから、死にたいって、思わないで?」

「…変わらなくない?」

「変わるよ。人生放棄してる訳じゃないもん。理佐、今は苦しいかもしれないけど、絶対にそれよりも楽しい事って、あるんだよ?」

「…分からないじゃん、そんなの」

「分かったら、つまらないでしょ?」


壁にぶつかる事は、誰にだってあるんだ。

でも、逃げちゃダメなんて言わない。

誰かを必要として?



理佐、分かる?

理佐が壁にぶつかっている様に、今、私も壁にぶつかっているんだよ?


だから、



「私には、理佐が必要なんだよっ」