先日、『玄牝』という映画について書きましたが、
なんとその直後に、実際の出産現場に立ち会うという
きわめて貴重な体験を得ることができました。
このかけがえのないチャンスをくれたのは、
40代で初産を迎える私の友人。
「ぜひ出産に立ち会わせて」
という私のずうずうしいお願いを快く受け入れてくれました。
まずなにより、
この友人に心からのお礼を伝えたいと思います。
ありがとう。本当にありがとう。
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友人の場合、陣痛よりも前に「破水」がやってきました。
漏れ出た量はわずかでしたが、だいじをとって即、入院。
夜中に知らせを受けた私は、朝いちで病院にかけつけることを友人に伝え、
興奮冷めやらぬまままんじりとした一夜を過ごし、翌朝5時に家を出ました。
そして午前7時前、病院に到着。
朝ご飯を食べ終えたあと助産師の検診があり、
「破水が始まったら48時間以内には出産をしなければいけない。
点滴による陣痛促進剤を使用したいので、OKであれば同意書にサインを」
赤ちゃんの生命の安全と妊婦の年齢を考慮して、友人が同意書にサイン。
抗生剤などを投与したのち、午前11時すぎころから陣痛促進剤の投与が開始されました。
「うぅぅぅ、イタくなってきた。始まったかなあ」
投与開始から30分もしないうちに、あきらかに陣痛とわかる痛みが。
インターバルは5分程度。
ふつうに話すことはできるけれど、
やってくる痛みがしだいしだいに強くなってくる様子。
気を紛らわすために話しかけたほうがいいか?
それとも、枕元にいるとかえってジャマか?
病室を出たり入ったりしつつ、もどかしく見守る時間がすぎてゆく。
その後、投与量が増やされてじょじょに陣痛がすすみ、
午後2時。ほとんど口がきけないほど苦しい状態に。
寝返りをうったり体勢をかえたりしながら、
波のようにひいてはおしよせる痛みを、
妊婦は必死に受けとめます。
この痛みとつき合っていくコツは、
痛みにあわせてできるだけ長くゆっくりと、
吐き出す呼吸に意識を集中すること。
「そう上手。痛みをうまく逃しているわよ」
友人は助産婦さんにそうほめられていましたが、本人の苦しみはそうとうなもの。
こんなときに「がんばれ」はあまりに陳腐だけれど、
小声でくり返し「がんばれ」とささやくしかできない。
神様、どうかママと赤ちゃんを守り給え。
その後、陣痛のあいまに2度の診察をうけ、
午後5時をむかえるころ、とうとう分娩台にあがることに。
個人的な経験からすると、
「もう少し赤ちゃんがおりてくるのを待ってもいいのではないか?」
とも感じましたが、
自分のときとちがい、友人の場合はすでに破水している状態。
一刻も早く赤ちゃんを出したほうがよいと、病院側では判断したのでしょう。
分娩には数人の助産婦が物々しく立ち会い、
担当医がやってくるあいだ、
子宮口に手を入れてようすをみたり呼吸法をアドバイスしたりしています。
そして担当医がやってくると、
いよいよ始まりました。
「吸引」と「腹部圧迫」。
『玄牝』のなかに登場した妊婦さんが「とてもこわかった」という吸引と圧迫。
じっさいどのようなことをするのかというと、
何らかの薬剤を投与しながら陰部に器具を差し込み、
子宮が収縮するタイミングでお腹をぐぐーっと圧しながら吸引のスイッチを入れ、
赤ちゃんを人為的に引っ張り出します。
分娩というよりは、施術に近い行為。
現場に満ちている緊張感も、
まさに「医療」の世界を感じさせます。
なるほど。
「こわかった」という意見にも、深くうなずけるものがある。
「母子の安全確保」ための処置として否定はしないけれど、
妊婦に対して恐怖や不安を与えかねない処置であると、
少なくとも私にはそう感じられました。
(とはいうものの、友人の場合苦しみと戦うのに必死で、
恐怖や不安を感じることはなかったようです。
誰もが「こわい思いをする」ということではないのです)
結局、赤ちゃんがなかなか出てくることができなかったため、
急きょ、帝王切開に。
それを聞かされた友人は一瞬驚いていましたが、
まさかこの場で悠長に迷っていられるはずもなく、
ダンナさんが同意書にすばやくサインをし、
妊婦は分娩室から手術室へ。
あとはもう本当に、ひたすら元気に生まれてくれるのをまつのみ。
それから30分後、
元気な赤ちゃんの泣き声が、手術室の外まで響いてきました。
おおおおーっ! 生まれた生まれた!
泣き声が聞こえてからさらにまつこと15分、
体重約2800グラムのかわいい男の子とご対面することができました。
肺に羊水が入ってしまい、やや呼吸が弱めでしたが、
チューブで吸引されると「ギャア、ギャア!」と元気に抵抗。
よし、これならきっと大丈夫。
術後の処置を終えて赤ちゃんとご対面した友人は、
「かわいい、かわいい」
としみじみ喜びをかみしめていました。

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陣痛開始からおよそ8時間あまり。
本当におつかれさまでした。
ずっとずっとほしかった赤ちゃんが生まれて、
本当の本当におめでとう。
「帝王切開になっちゃって、感動のご対面ができなくなっちゃってゴメン」
だなんて、どうかそんなこと気にしないで。
本当にもう、じゅうぶんすぎるくらい、感動的でした!
結局、ママと赤ちゃんがすこやかで問題なければ、
自然分娩かどうかなんて関係ない。
「医療」としての分娩を経験できたのは、
自分にとってはむしろ大きな勉強になったと思います。
重ね重ね、この貴重な体験をくれたことに、
こころから感謝します。
どうもありがとう。
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