第214話「奇妙な友達」
放映日:1976/8/20
ストーリー
島は新宿中央公園の近辺で車を走行していた。
島は突然飛び出してきた山口みみ(18歳)(坪田直子さん)という少女に車を僅かにぶつけてしまった。
山口は泥酔しており、島に文句を言った。山口は警察に顔が広かった。
山口はたった今に殺人を犯したと言った。
島は山口を一係室に連れていき、寝かせていた。
藤堂と山村と島は山口の所持品を調査中に、不釣り合いな大金が入っていることを知った。
山口が目覚め、島による取り調べが始まった。
山口は現在、友達の家を転々としていたため、住所が無かった。
山口の父親は山口が10歳のとき、母親は山口が12歳のときに自殺していた。
山口は一人っ子で、家族がいなかった。
山口は島から大金について尋ねられ、ある人物から貰ったと答えたが、貰った人物から口外しないことを約束されたため、貰い主を言わなかった。
島は山口が誰かを殺害し、大金を強奪したと突きつけたが、山口は強盗が嫌いと言って否定した。
山口は七曲署の少年係によく補導されていたが、大それたことができる少女では無かった。
山口は人を殺害したと言った理由について、島が自分の腕を掴んだために怖かったからと述べた。
島は山口に、少年係に資料を回すため、帰り時に寄るように指示した。
一係室に新宿中央公園で殺人事件が起こったという通報が入った。
島は少年係に行ったが、山口は少年係捜査員に説教されて帰っていた。
藤堂は山口を、巡回中のパトカーに手配させた。
殺害事件の被害者は中山繁という街のチンピラで、北澤という若い男と吊るんで歩いていた。
中山は頭部を棒状のもので滅多打ちにされ、殺害されていた。
第一発見者の青年は、午前6時50分頃に中山の遺体を発見した。
島は酒の瓶を発見し、とっさに山口のものではないかと直感した。
石塚は北澤秀夫(清水のぼるさん)に会い、中山が殺害されたことを告げた。
顔に引っかき傷のある北澤は石塚に拳銃を向け、脅迫した。
北澤は石塚の後頭部を拳銃で殴り、逃走した。
藤堂は野崎と三上に北澤の追跡を命じた。
石塚は北澤の自宅に突入したが、北澤は不在だった。
現場から発見されたウイスキーの瓶から山口の指紋ともう1つの指紋が検出された。
もう1つの指紋は鑑識のリストに無く、中山と北澤の指紋では無かった。
山口が第三者と公園で酒を飲んだ可能性が考えられた。
一係室に今朝、全身びしょ濡れで歩いていた老人が病院に保護されたという通報が入った。
老人は泥酔して中央公園の池に落ちたと言っていたが、老人の後頭部に棍棒で殴られた傷があった。
藤堂は島に菊池外科病院に行くように指令した。
菊池外科病院の医師によると、老人が池に転落したのは間違いないが、苔や砂が食い込んでいる跡がないので、棍棒のようなもので後ろから殴られたものと推測された。
老人の名前は市村勇三(益田喜頓さん)といった。
島は入院中の市村と会い、公園の池に落ちた時間と、公園にいた理由を質問した。
市村は日の出前ということしか覚えておらず、いた理由を寂しいからと答えた。
市村は頭の傷について、誰かに殴られたことを否定し、池に落ちた際にぶつけたと説明した。
島は山口について尋ね、中山の殺人事件について説明したが、市村は山口について知らないと述べた。
病室に市村の娘の市村和子(木村有里さん)が入ってきた。
和子は市村を、死亡すれば良かったと冷たく言い放った。
市村は夫人の形見の指輪を5万円で質に入れていた。
石塚はチンピラから、殺害された日の前の晩に中山と北澤が派手に喧嘩し、北澤が叩きのめされ、根に持っていたという情報を得た。
中山が殺害された時刻まで、市村と山口が公園内の神社で一緒に酒を飲んでいたことは間違いなかった。
市村は否定したが、ウイスキーの瓶の指紋は市村のものだった。
神社と殺害現場の距離は30mだった。
石塚は偶然ではないかと思ったが、山村と島は山口の「人を殺害した」という発言が気になっていた。
藤堂は島と三上に、市村と和子の捜査を、他の捜査員に北澤の捜索と凶器の発見に全力を挙げるように命じた。
島は市村宅に赴いた。市村は縁側で佇んでいた。
市村は従業員が10人ほどの会社を経営していたが、株に手を出してしまい、多くの負債を抱えてしまっていた。
和子は市村のせいで結婚できない状態だった。
市村は山口と一緒にいたことを否定したが、タバコを渡されて真実を話した。
市村は山口を優しい娘と評した。
市村は山口と街でひょんなことから意気投合し、公園の神社で朝まで酒を飲んだことを認めたが、山口が自分を殴ったことについて否定した。
市村は若い頃、玄界灘を泳いで渡ったことがあり、つい池を泳いでしまったと伝えた。
市村は1人で酒を飲んでいたと嘘を吐いた理由を、山口に迷惑をかけたくないからと釈明した。
市村は山口の連絡先を知らなかった。
野崎と三上は新宿中央公園の神社を調査中、血痕と毛髪の付着している木の棒を発見した。
藤堂から、山口がパチンコ屋に20分前にいたという連絡が入り、島と田口は山口の捜索を開始した。
山口はチンピラに絡まれていたが、兄が島だと言ってチンピラを脅かした。
島は山口を発見し、警察手帳を見せてチンピラを立ち退かした後、山口を取調室に連行した。
木の棒から、山口の指紋と市村の血液と毛髪が検出されていた。
山口は市村と別れた後の市村の動向を知らず、市村に聞けばいいとだけと伝え、黙秘した。
島と田口は中山の殺人事件について尋ねたが、山口は黙秘を通した。
島は藤堂に、山口を半日貸すように申請した。
島は山口が市村を殴った理由に、隠された深いものがあると感じていた。
山村と野崎と石塚と三上は廃墟にて北澤を包囲したが、北澤は発砲して抵抗した。
石塚が囮になった隙に、山村と野崎と三上はそれぞれ別のルートから廃墟に入っていった。
石塚は北澤を廃墟の屋上に追い詰めた。
北澤は拳銃の弾を切らし、あえなく石塚に逮捕された。
北澤は山村と石塚に取り調べられていた。北澤は喧嘩の理由を、中山に女にもてないと言われ、中山ももてないため激情したからと答えた。
北澤は拳銃を持ったために逃走したと供述し、犯行時刻に自宅で寝ていたと主張した。
島は市村がなぜ山口を庇うのかを知るために、山口を連れ出した。
山口の母親は山口に、山口が一人前になったらすぐに死んでやるといつも言っており、山口が中学を卒業した途端に自殺していた。
山口の父親は遊び人で、借金をたくさん作って自殺してしまっていた。
山口は母親が父親の借金を返すことが辛くなり、一日も早く死亡したかったと思っていた。
島は車を走行中、新宿第五生命ビルディングから出る市村を目撃した。
島は山口を車に拘束し、第五生命の本社に入った。
市村は今月の保険金の10万円を払い込みに来ていた。市村にかかっている保険金は3000万円だった。
和子は何ヶ月も溜まっているアパートの家賃のために借りた10万円を、保険金の払い込みに使ってしまった市村を糾弾した。
島は山口を市村宅に連れて行ったが、市村はどこかに出て行った。
和子は市村が死亡しようが関係なくなっていた。
島は和子に、市村が誤って池に転落したわけではなく、自殺では保険金が受け取れないため、人の手を借りて襲われたように見せかけて死亡するつもりだったことを告げた。
和子は市村に何度も騙されたため、酷い人間だと怒った。
明け方、市村は公園の池の前に立ち、山口に棒を持たせて自分を殴るように指示していた。
山口は市村を殴り、市村は池に転落した。
和子は山口の言い分を信じなかった。島は和子に、市村に必要なのが和子の気持ちだと説得した。
和子は市村がなけなしの10万円を持ってどこかを飲み歩いていると思っていた。
島は市村が10万円を、和子が受取人の保険の掛け金に払っていることを伝えた。
市村と山口は新宿中央公園の神社で待ち合わせていた。
北澤は自分が中山の殺害時刻に公園にいたという証拠が無いのを盾に、なおも殺人について否認した。
市村は山口を踏み台に、木の枝に縄を縛り付けて自殺しようとしていた。
山口は死亡したら保険金を和子に遺せる市村を羨ましがっていた。
山口は自分の父親が自殺したときの母親の号泣から、どんな父親でも生きていてほしいと望むようになっていた。
市村は山口に台になるように頼み、首を吊って自殺した後、自分の遺体を転がし、縄を解いて処分するように指示した。
市村は山口にどくように頼んだが、山口は市村に死なないように懇願して号泣し、どかなかった。
市村は山口を蹴ったが、島がロープを銃撃して切断したことで落下した。
島と和子が市村と山口の前に現れた。和子は市村と和解した。
山口は市村に頼まれて市村を殴った後、北澤と会ったことを認めた。
山口は北澤がしつこいという理由で、北澤の顔を引っ掻いていた。
島は山口に就職するように促した。
メモ
*「太陽」で不思議な性格の少女を演じる坪田氏が初出演。
*ギャンブル好きのために家族に迷惑をかけ続け、ついに娘の和子にまで見放された市村。
*子供の頃に両親に自殺された悲しい過去を持つ山口。
*山口に「遺された者の気持ちを忘れている」と怒る殿下。かつて自分の恋人の麻江を事故で失い、自暴自棄になった経験のある殿下だからこその重い台詞。
*暖かいBGMの中、山口と、首吊り縄を持った市村が笑いながら再会するシーンはどこかシュールさが漂う。
*市村の池に転落した事件の真相は、なんと市村が山口に自分を殺すように指示し、大量の保険金を残すことだった。
*市村の意図もわからなくはないが、山口が殺人の容疑者になる可能性があり、山口が犯人でない確証もごく限られるため、かなり危険な手口と言える。
*山口は最初、生について悲観的だったが、殿下の説得と市村の交流から、生きることの大切さを学んでいた。
キャスト、スタッフ(敬称略)
藤堂俊介:石原裕次郎
三上順:勝野洋
田口良:宮内淳
野崎太郎:下川辰平
矢島明子:木村理恵
市村勇三:益田喜頓(特別出演)
山口みみ:坪田直子
市村和子:木村有里、北澤秀雄:清水のぼる(現:清水大敬)、永田博文
伊東しずこ、古能成二、宮沢芳春、篠原大作
石塚誠:竜雷太
島公之:小野寺昭
山村精一:露口茂
脚本:播磨幸治
監督:山本迪夫