「ちえりパステルガァル!」は、ニチアサ系を目指す(※)、作者「しまりょういち」のオリジナル作品です。(※ニチアサ系…日曜朝8時30分からはじまる変身少女的なアレ)
作品はライトノベル、web漫画を中心に展開、「色」をテーマに5人の女の子がパステルガァル!となって戦います。

■作品マップ
■公式HP…ブログで公開したものをまとめて随時更新中。
ライトノベル …小説です。01 02 03 04 05 06 06B 07 08 09 10 11 12
■web漫画…web漫画。
■pixiv …イラスト・漫画の投稿サイトでも、イラストや漫画を公開。
ムービー …動画サイトYouTubeにて、公開。ムービーは2種類
┃┣・4コマ漫画を紙芝居的に声優さんに声を当てた動画
┃┗・Illustratorというソフトでイラストを作成しているチュートリアル動画
┗■イメージソング…エンディング・イメージソング「コイイロ」



ちえりパステルガァル! 公式ブログ-ライトノベル第1話

ちえりパステルガァル! 公式ブログ-ライトノベル第2話
  • 05 Aug
    • 第05話(RM)-10「おともだちだよ」

      「緑(グリーン)鞭(ウィップ)…」 ダークネスグリーンは、無数にトゲのついた緑色の鞭(むち)を、目の前で立っているちえりに対して構えた。 ちえりの瞳はじっと、とダークネスグリーンを見つめていた。真っ黒な眼が、ダークネスグリーンの胸の奥をズキンと貫いた。 目の前の少女の瞳は真っ黒だというのに。黒なのだから、暗黒王(ダークネスキング)の加護はないのであろうか。なぜ、胸が痛むのか。 ダークネスグリーンは、以前にちえりから感じた、不思議な感覚を思い出した。 手を握ったとたんにフェードアウトしてしまいそうな体全体に走った不可解な衝撃や、それとはまた別に感じた、心のモヤモヤ。 私はただ、純粋に侵色(しんしょく)をすれば良いのだ。 それは、暗黒王(ダークネスキング)様から、与えられた、自分の使命。 その使命は、いつから与えられたものだろうか。 彼女は気がついた時、暗黒王城(ダークネスキャッスル)に在った。そう、緑色の暗黒元珠精(ダークネスガーディアン)として、存在していた。 いや、私たち色は、宇宙創生依頼、光とともにずっと存在している。 いいえ、そういう時間軸の概念じゃない。色彩層(パステルワールド)という層(レイヤー)は無始無終なのだ。 だから正確には、自分の存在を認識したのが、最近ということなのだ。もともと私は緑を守る精(ガーディアン)として、無始無終で存在している。後も先もなく。 それが、人間の層(レイヤー)の世界(ルール)にリンクされてしまい、私はこの世界(ルール)に従わなければならなくなった。 つまり、この層(レイヤー)で精(ガーディアン)として存在するために、肉体を与えられ、同時に魂(こころ)を宿した。 そして、この人間の層(レイヤー)の世界(ルール)に縛られる代わりに、色彩層(パステルワールド)では出来ないことが、出来るようになったのだ。 それが「侵色」。 この世界を暗黒一色にすること。私の使命。すべてを闇に帰す。ひとつの色にして、この世界から色の差位をなくすのよ。 すべてが、平等。すべてをひとつに。 …なのに。目の前の少女の瞳は、なぜこうも私の動きを止めてしまうのか。 「わ…悪く思わないでね」 ダークネスグリーンはたまらず、喋り出した。 「私は、あなたを騙(だま)したのよ。私はかえでじゃなくて、ダークネスグリーンなの。あなたの敵。だから…私はあなたを倒すの!」 ダークネスグリーンのは息を荒くして言った。 「ちえり様!」 パステルハニーは、鞭を構えたダークネスグリーンに、今にも蜂蜜流星鎚(ハニースター)で応戦しようとしている。 「くそ、今、行くぞ!」 パステルバーミリアンも飛びかかろうと、姿勢を変えた。 「待って! ちょっと、まだ待って」 パステルラピスが咄嗟(とっさ)に2人を制した。 パステルラピスの視線の先には、緊迫して対峙するダークネスグリーンとちえりがいた。この状況でも動かずに見守れと言うのか。パステルハニーもパステルバーミリアンもじっとしていられない。 そこへ、ちえりが口を開いた。 「うん。知ってたよ!」 ダークネスグリーンは思わず、ぽかんとした口で「知ってた?」と答えた。 「みどりのおねーさんが、かえでちゃんでしょ? そんなのはじめから、ちえり知ってたよ」 「ち、ちえりさん…」 ぱれっとも、かあらもびっくりしている表情だった。 「…うふふ! 嘘言わないで! だったら敵である私に、桜色の色彩元珠(パステルオーブ)をなぜ渡したの!?」 「かえでちゃんは敵だけど、おともだちだよ」 ちえりはそのままダークネスグリーンに一歩近付くと、満面の笑みを浮かべて、そう答えた。 「知っていた…のに、私を受け入れたの? 知っていたのに、ずっと私を友達だというの? 知っていたのに、色彩元珠(パステルオーブ)を渡したの?」  ダークネスグリーンの表情がみるみるうちに崩れていく。 「『緑』は仲良しの色だよね。だから本当はかえでちゃんはみんなと仲良くしたいんだよね」 ぱれっとは昨夜一緒に「色・判断」を読んでいた、ちえりやかえでを思い出した。 ダークネスグリーンは武器である鞭(むち)を地面に落とすと、そのまま崩れ落ちるように尻餅をついた。 「なるほどこれか、パステルラピスが言った『チェリーが秘密兵器』たる意味は。暗黒力(ダークネスパワー)を無効化するチカラとは!」 ならば、と、彼は手に持った赤黒い槍の先をちえりに向ける。 「ダークネスレッドまで一気に行くわよ!」 パステルラピスが叫び、パステルガァル!たちは電光石火で動いた。

      5
      テーマ:
  • 25 Jul
    • 第05話(RM)-09「グリーンウィップ」

      「パ、色彩元珠(パステルオーブ)を、返すのれす! 誰なのれすか!?」 色彩層(パステルワールド)の使者、ぱれっとがバッグから勢い良く飛び出した。 色彩元珠(パステルオーブ)が奪われたのだ。ただごとではない。「ウフフ。私は、ダークネスグリーン」 そういうと、彼女は黒い宝石のような、暗黒元珠(ダークネスオーブ)を掲げた。 一瞬黒いもやが広がると、彼女は暗黒元珠精(ダークネスガーディアン)の形態に変身した。 胸元にGREENとロゴの入ったTシャツは消え、黒いレオタードのような姿になり、頭や背中から、大きな大根のような葉がバサっと一気に生える。 「ダークネスグリーン!」 ぱれっとは叫ぶようにそう言うと、一歩後ろに退いた。一気に緊張が走る。「これは頂いたわ、悪く思わないことね、パステルチェリー」 桜色の色彩元珠(パステルオーブ)を握りしめ、ダークネスグリーンは冷たく笑った。「ちょいちょーい! そうはイカのブルスケッタ!」 そして、あらぬ方向から、変なことを言う声がそこにいる全員の耳に入って来る。「かあらたちの言う通りだったわね」 瀬々良木るりかが変身したパステルラピスは、瑠璃色大剣(ラピスブレイド)を両手で構え、そう言った。「だましたな、ダークネスグリーン」 続いて、穂ノ尾あかねが変身したパステルバーミリアンは、両の手に朱色鴛鴦鉞(バーミリアンナックル)を握り、メラメラと炎を巻き上がらせ、拳をダークネスグリーンへ向ける。「許さない!」 最後に分部みつばことパステルハニーが、一歩前へ出た。 「公園に戻って来て正解でしたわね。ちえり様には指一本触れさせませんわ! ちなみにブルスケッタとはイタリア中部の郷土料理で、いわゆる一口サイズのパンに具を『ちょい乗せ』したもの」 パステルハニーは、ラピスの責任感がなく駄々漏れしたセリフを回収しつつ、蜂蜜流星鎚(ハニースター)をぶんぶんと手元で振り回しながらいった。ぶんぶんだけに。「ラピス!」 「バーミリアン!」 「ハニー!」「「「ウィーアーパステルガァル!ズ!」」」「アーンド、かあら!」「ふん。さようなら、パステルガァル!たち。あなたたちに、用はないわ」 滞りなく進行するストーリーと、夏のわりにひんやりと漂った空気を肌で感じて、全員、今回の登場シーンは滑ったんだな、と自覚した。 急に。ごう、という火が燃えるような音がした。そして、ダークネスグリーンの背後から、どす黒い炎が渦巻き、中心から長身の男が姿を現した。 外気温度が急上昇した。夕方なのに、真昼の炎天下の暑さに逆行したように辺りは暑くなった。目の前に現れた男は、ちえり以外全員知っていた。 赤い髪の男、四天王の1人、ダークネスレッドだ。 「ダークネスグリーン。ショーは終わったのか?」 彼はそう彼女に問いかけた。「ダークネスレッド! お、終わりよ。色彩元珠(パステルオーブ)が、1つでも手に入ればパワーバランスは一気に崩れてゆくわ。パステルガァル!3人では、私たち四天王(ダークネスフォー)に太刀打ちできないわ」「そうか。次は俺の番だな。レッドピアス」 そう赤い男はつぶやくと、右手辺りに赤くて長い二股の槍が出現した。彼はそれをぐっと掴(つか)む。これから戦いを始める気マンマンといった、表情だった。 「何を言ってるの!? これでパステルガァル!たちとの戦いは終わりよ!」 ダークネスグリーンの顔に、なぜか焦りが見えた。とにかく、この場はこれで終わりにしたい。そういう表情だった。「何を言っている、だと? それはこちらのセリフだ。初めにパステルガァル!の力は未知数だと言ったのは、貴様ではないか」 ダークネスレッドは、振り返ってダークネスグリーンを睨(にら)むと、彼女にそう、言い返した。 「色彩元珠(パステルオーブ)を1つ奪ったくらいで、安心はできまい。特にパステルラピス。貴様の口車には、いいようにされた」 赤い男は今度はパステルラピスを、鋭い眼差しで睨む。「ばーか、ばーか!」 パステルラピスは舌をだしてダークネスレッドを威嚇した。かあらも真似して口をイーッとした。「いいえ、今日はお開きよ。日を改めるわ。こんなヤツら、いつでも倒せるわ!」 ダークネスグリーンは明らかにパステルガァル!との戦いを拒んでいる。 なぜ、拒んでい」るのか、ダークネスレッドは解せない。 が、突然、彼はハッとした表情になる。真っ暗闇の中、電灯をつけようと思って、手探りでスイッチを探して、それが見つかったような表情だ。「なるほど、ダークネスグリーン。そういうことか。パステルガァル!どもに情が移ったな! 暗黒王(ダークネスキング)様を裏切る気だな!」 赤い長身の槍を、ダークネスグリーンの方へ向けた。 「ラピねーどういうことだ? 仲間割れ?」 バーミリアンがラピスに聞いた。ちなみに平常時、るりかはあかねに「るりねー」と呼ばせているので、「じゃあ、変身したら、ラピねーだからね」と、どうでも良い細部のディティールまで注文した。 「なお、実は使者かあらも平常時は『るりちゃん』と読んでいて、変身したあとは『ラピちゃん』と呼んでいる。これ豆な」 バーミリアンの質問には答えず、ぼそぼそとなにか独り言をつぶやくパステルラピス。 「ゴホンっ。うん、多分まあ、仲間割れね。なんでかわからないけど、展開的にダークネスグリーンは、あたしたちと戦うことを嫌がってるみたいね」 「バカなこと言わないで! 私は暗黒王(ダークネスキング様)を裏切ったりしないわ!」 「本当にか!? だったら証拠を見せてみろ。この場でチェリーを倒せ!」「……!」 ダークネスグリーンは驚愕するかのように、大きく目を広げた。 「どうした? 早くパステルチェリーを倒してみせろ。裏切者じゃないという、証拠を見せろ、ダークネスグリーン」  ダークネスグリーンは、歯噛みをしながら自分のダークネスウェポンを出す。 左手のひら辺りから緑色のオーラがのような光が集束する。光は、徐々にイバラのような鞭(むち)の形状になって行った。「グリーンウィップ」 ダークネスグリーンはまるで息が詰まったような表情で、その鞭(むち)を目の前のちえりに対して構えた。

      テーマ:
  • 20 Jul
    • 第05話(RM)-08「レッスン、2日目」

      「うぉぉぉ、あづうううぅぅぅ」 瀬々良木るりかは、ダンススタジオから出るなり、夏に対してこれ以上ないくらい、絶望的な声を発した。 スタジオは室内。熱中症対策ということもあり、温度調節はちゃんとしていたため、それなりに心地よい汗をかくことが出来た。 しかしレッスンが終わり、玄関のその扉をあけるや否や! むわりと、不快指数2億%の熱気が彼女らにまとわりついたのだ。 「るりかさんの、その叫び自体の不快感も、ひどくてよ」 続いて「言わなくても、十分に暑いことは承知ですわ」と言った表情で、玄関からみつばが出てきた。 「湿気が酷いよな」 穂ノ尾あかねも出てきた。若干浅黒いあかねの額には玉ような汗がというか、滝のような汗が滴っていた。 「雨、ふりそう!」 最後に英ちえりが出てきたが、空を見上げながら、そう言った。 確かに今すぐに雨が降りだしてもおかしくないような、重たい鉛色をした雲が結構なスピートで空を泳いでいた。 ちえりたちが通うダンススタジオ「パッパラダイス」の、体験ダンスレッスンも2日目が幕を閉じた。 いつものように、彼女らは自販機前でたむろしながら、ドリンクをいっぱいひっかけている。 「…来なかったですわね、かえでさん」 みつばが、ボソッと言った。 「仕方ない。色々予定があるんだろ?」 ぽん、とちえりの頭を軽く叩く。 「うん。残念」 ちえりは言葉の通りの表情を見せた。 昨日来た少し不思議な娘、かえでは、体験ダンスレッスン2日目には姿を現さなかった。 昨日、あれだけ盛り上がっていただけに、なんとなく来ないとショックだった。 るりかは「やはり昨日無理に誘ったのでイヤになっちゃったのか?」などと先走った妄想ひとり反省会を開催しそうな勢いだ。 すると、ちえりが持つバッグから、ぴょこんと、ぱれっとが顔を出した。 「来なくて良かったのれす!」 今度はるりかのスポーツバッグから、かあらが顔を出した。 「あの娘(こ)、なんだか、あやしかったカラ!」 「なんとなく、勘れすけど!」 「そうかな」 るりかにはあまりピンと来なかった。いかにも気弱そうで、好きな色も「緑」。調和とか、穏便とかそう言う言葉が似合いそうな彼女を、あやしいだなんて。 「あかねはどう思う?」 「あやしいって言われても、わからないけど。…でも、まあ、何となくカゲがある気がしたな」 あかねもあまり的確に意見できないようだ。 「もしかして…あれなんじゃない…ホラ、夏だし、実は…本物のかえでさんだったりして。つまり…」と、るりかがウラメシヤ~なポーズをした。 「ひゃあああああ―――!」 誰かが、大きな悲鳴をあげた。 「あ、あかねちゃん、苦しい、です…」 荒くれファイターの異名を持つ、穂ノ尾あかねが、悲鳴を上げるとともに、ちえりの首元にしがみついていた。あかねのバカちからで、両腕でちえりの首を締めるように抱きついていたら、5秒後にちえりは確実に落ちる。 「あ、いや、ちえり悪かった。なんでも、なんでもない!」 ふるふると首を横に振ると、その腕をちえりからほどく。 「ちょっと! おふたりとも、不謹慎ですわ!」 みつばがるりかに怒った。 確かに、お隣、翡翠森夫婦の亡くなった娘さんの話だ。オバケネタにするなんて不謹慎も甚だしい。 「ご、ごめんなさい…」 何故か、あかねもちえりも一緒に謝っていた。 「あ! あれ、かえでちゃん!」 ちえりが叫んだ。あかねが瞬間「ひいぃぃ!」と声を漏らしたが、みんな笑わないようにした。みつばに怒られるから。 「用事があって遅れちゃったわ。ごめんなさい」 かえで(仮)が近づいて来た。昨日と同じで、GREEN書いてあるTシャツを着ていた。 「残念でしたね。終わってもわざわざ来るなんて、熱心ですね」 るりかが言った。 「そう、熱心なの。だから、ちえりちゃん。少し公園とかでダンスレッスンしてくれないかしら?」 「うん、いいよ!」 「ありがとう。恥ずかしいから、なるべくなら個人レッスンがいいわ…」 「わかた!」 ちえりは笑顔で返事をした。 「えー!? わたくしも行きますわ!」 なんだか、仲間はずれをしているみたいで、みつばは食い下がった。 「ちょっとみつばお嬢様! JC組は腹ぺこなのれす!」 るりかが、みつばを手招きした。直訳すると「みつばちゃん。育ち盛りの女子中学生のあたしとあかねは、早くばあやの夕食が食べたいです」と言うことで、かつ、ぱれっとを同時に茶化す合わせ技だ。 「も~! わかりましたわ! 先に帰ればよろしいのでしょう? これだから庶民は意地汚いのですわ」 ぶんぶんがプンプンに怒った。 「だってさぁ~、さすがにみつばナシでお屋敷には帰れないからさ」 あかねもみつばを宥めた。ふたりとも全力で空腹のようだ。そうこうしている間に、ちえりはかえで(仮)の手を引いて、公園に行ってしまった。 ダンススタジオから10メートルも歩けば、ちょっと広い公園があった。 空は相変わらず、どんよりした雲が流れていた。生暖かい風も吹いている。これは一雨来そうな気配だ。見れば公園には誰もいない。 「じゃあ、ダンスのレッスンを始めます」 ちえりはバッグをベンチに置くと、静かに立ち、かえで(仮)に言った。 「…ねえ、ちえりちゃん。その前に、大きな桜色の宝石みたいな石、持ってるわよね。見せてくれない?」 唐突に、かえで(仮)がそんなことを言う。 「うん。あるよ。う~ん。ちょっとだけなら…」 そういって、ちえりはポケットから桜色の色彩元珠(パステルオーブ)を取り出した。 「手にとって見てもいい?」 かえで(仮)が、桜色の色彩元珠(パステルオーブ)に手を伸ばす。 「う~ん、ちょっとだけなら…」 「ダメれす! 渡したらダメなのれす!」 ぱれっとが勢い良くバッグから飛び出した。 「わ、ぱれっと!」 突然、ぱれっとが飛び出すわ、叫ぶわで、ちえりはびっくりして固まってしまう。 「…頂いたわ、桜色のパステルオーブ」 そのスキをついて、ちえりの桜色の色彩元珠(パステルオーブ)を、かえで(仮)は、いや、ダークネスグリーンは奪うことに成功した。

      テーマ:
  • 15 Jul
    • 第05話(RM)-07「まるで、揺れ動く心を断ち切るように」

      「ちえりちゃん、また明日ね」 かえで(仮)は、玄関の門まで見送りに来てくれた、英ちえりに手を振りながら、明日の約束をした。 日は暮れたが、熱気は冷めやらない。せっかくシャワーを浴びたのに、ちょっと外に出ただけで、体が汗ばんで来た。今夜もきっと寝苦しいに違いない。 帰ろうとするかえで(仮)の目に、ふと隣の翡翠森(ひすいもり)のお屋敷が入る。 みつばの屋敷も立派なものだが、それに劣らず翡翠森(ひすいもり)邸も明治の洋館を思わせるような佇まいであった。 翡翠森(ひすいもり)の主人は今では現役を引退したが、いくつもの会社を束ねるグループ会社の会長であり、その業界を束ねる協会理事でもあった…とか言うような難しい話をみつばがしていた。 翡翠森(ひすいもり)邸を、かえでは見つめていた。 少し、空白の時間が出来る。風が吹いて、彼女の髪を風がさらう。 「となりのおじいちゃん、おばあちゃんの家の屋根って緑色なんだよ」 ちえりが不意に言った。 「そ、そうなの? 暗くてわからないわね」 「きっと緑色が好きなんだね。かえでちゃんと一緒だね」 「そうね…」 「もし、緑が無くなったら、悲しむね」 「……帰るわね、さようなら」 かえで(仮)は振り返らず、そのままみつば邸をあとにした。 闇の中を足音もたてずに、彼女は歩いて行く。 「…ダークネスグリーン。色彩元珠(パステルオーブ)は奪えそうか?」 急に声がして、かえで(仮)はまるで夢から覚めたように、ハッとなる。 まるで背後から、唐突に肩を掴まれるような、乱暴な声だった。 そして、彼女はそれを声の主に悟られまいと、ひと呼吸置いて、返事を返す。 「順調よ。明日には」 かえで(仮)ではなく、ダークネスグリーンとして、そう答えた。 あくまでも冷静に。寸分も違わず、計画通りに行っていることを主張するように。 彼女を引き止めた声の主は、燃えるような赤き髪と、悪魔のように黒い角が頭部から対に2本生やした、暗黒元珠精(ダークネスガーディアン)、ダークネスレッドだった。 いわゆる四天王のひとり。 そのダークネスレッドは、苛立った表情で、口を開く。 「なぜ、こんな回りくどいやり方を。内部に入り込み、色彩元珠(パステルオーブ)を奪うなどと…。4人のパステルガァル!と直接戦えば良い」 ダークネスレッドは大きな声を荒げながら、そういった。同時に横に振り上げた手からは、火の粉のようなものが舞った。 ダークネスレッドは、瀬々良木るりかことパステルラピスと、「パステルガァル!4人が揃った時に戦う」という、約束をしていた。 あとはタイミングを待つだけだったが、ここで、ダークネスグリーンが「次は自分の番」と主張した。 確かに初回はダークネスグリーンがパステルガァル!と一悶着し、続いてダークネスレッドがパステルガァル!を倒そうとしたが、保留となった。 直情的なダークネスレッドではあるが、なぜかルールは律儀に守る性格だった。次の順番は自分だとダークネスグリーンに言われ、納得したのだ。 ダークネスグリーンは、とうとう振り返った。そして、ダークネスレッドを睨む。 「あなたみたいに野蛮じゃないのよ。パステルガァル!を甘く見てはいけないわ。隙を見つけて、必ず色彩元珠(パステルオーブ)を奪ってみせる」 「ならば明日がリミットだな。明日、失敗に終わったら、俺が動く」 ダークネスレッドの方も、ダークネスグリーンを睨み返した。 「好きにすればいいわ」 きびすを返し、彼女は再び歩き出した。ダークネスレッドも姿を消した。話は終わったのだ。 ダークネスグリーンもかえで(仮)から、暗黒元珠精(ダークネスガーディアン)形態に戻り、空を飛んで、さっさと己の暗黒の城へ戻るべきなのかもしれない。 しかし、彼女はもう少し独りで歩きたかった。 それは、自分の感情が揺れていたからだ。 今日、感じた心のモヤモヤ。居心地が良かった、みつば邸。つないだ、ちえりの手。そして、翡翠森(ひすいもり)の夫人の手。柔らかさ、温かさ。 心とは、意志を曖昧にさせる弱さ、なのではないだろうか。 でも、パステルガァル!たちを見ていると、心がさらに力を強くするように見えた。 「…侵色は…必ず成し遂げる。パステルガァル!たちの抵抗を必ず打ち砕くわ!」 そう声を上げながら、かえで(仮)は、暗黒元珠精(ダークネスガーディアン)形態になった。 まるで、揺れ動く心を断ち切るように。

      テーマ:
  • 10 Jul
    • 第05話(RM)-06「色・判断」

      「るりねー、この本知ってるか?」 あかねがリュックから一冊の本を取り出した。 みな、シャワーを浴び、夕食を済ませ、みつばの部屋へと移動し、まったりしはじめていた。 みつばの部屋は、一般家庭に比べれば非常に大きかった。ちえりはふかふかのじゅうたんが敷いてあるフローリングを舐めるように見て、ちょっと目を細めながら「20畳はある」とざっくりとした目分量で、そう呟いたらしい。 今、ちえりとみつばは、ぬいぐるみ…使者のぱれっと及びかあらで遊んでいて、何故かかえで(仮)も巻き込まれていた。 ぱれっと及びかあらは、第三者がいるためにぬいぐるみを演じているわけだ。 ちえりとみつばは、ぱれっと及びかあらが動けないのをいいことに、傍若無人に振り回している。そう文字通り、手足を掴んで振り回している。ローリングである。 ところが、かえで(仮)は、ダークネスグリーンであるのだから、彼らが使者であることはよく知っていた。 「あ、あんまり振り回しちゃかわいそうよ…」 ぶいんぶいんと、手足を持って引っ張っているふたりを見て、かえで(仮)は引き気味にふたりを制した。 なんだか、敵の吐くセリフではない。 「大丈夫ですわ! ただのぬいぐるみですから! お気遣いなく!」 みつばはかあらに「ジェット☆コースターァァ」という技を御披露目した。 「あはは。ぱれっと楽しいねえ!」 ちえりはぱれっとに「マッハ☆メリーゴゥランドォォ」と言う技を。 2匹はぶぉぉんと吹き飛ばされ、目を回しながらベッドに頭から着地した。そして、彼女らへの復讐をストロングに誓った。 話は戻るが。 「なになに、なによ、この本。えーっと『色彩診断』?」 るりかはあかねから本を奪うとパラパラとページを捲(めく)った。 「ふーん、なるほど。『色』自体に、イメージや性格みたいのがあるってことね。好みの色はその人の性格とか性質を写し出します、ふんふん、なるほど」 「面白そうだったから、買ってみたんだ」 なんか、こう、パステルガァルの世界観にどっぷり浸かっている感じのあかねは可愛かった。 「あ、恋愛のことも書いてある。お? あかねってば、ラブな男子いるの!?」 あかねは顔色を朱色(バーミリアン)というか緋色(スカーレット)にして反論する。 「ちがう! そそそそんなわけない!」 「『そ』が多いわね。なんでムキになってんよ」 おもしれー、あかねおもしれーと言った表情でるりかが嗤った。 ふたりが騒いでいるので、みんな近寄って来る。 「この本、好きな色で性格とか診断出来るみたいだから、みんなでやろう」 みんなるりかを囲んで座った。 「ちえりは、さくら色!」 「チェリーだしね、そりゃあ好きよね」 その色のパステルガァル!になるくらいだから、やはり本能的にその色が好きだと言ってしまうのだろう。 るりかはペラペラとページを捲(めく)った。 「ああ、あったわ、さくら色。この色が好きな人は、豊かな人間関係が築けるって。素敵な恋愛もできそうよ」 へぇ~、と、一同は感心した。 「ちえりは、ぶんぶんも、るりかちゃんも、あかねちゃんも仲間だし、かえでちゃんもお友達だし、つぐみちゃんとか、他にもいっぱいいるからねー。ゆかた、ゆかた。あれ、ゆ・か・た?」 「ゆかたじゃなく、ゆたかですわ、ちえり様」 確かにちえり人脈は個性派揃いで十分に豊かと言える。 「る、るりねー、あたしは? 朱色! あかねの朱色!」 「なんぞ? まだ見てないのかえ?」 「な、何となく、読みづらくって…」 「朱色なんて項目あるかな? …えっと、攻撃的、直情的、情熱的、自信家…まんまだね」 「あかねさんたら情熱的なんですわね! みつばはクールな人だと思ってましたわ」 「クールだ! どこまでもクールだ!」 あかねは、私は冷静だと、感情的に言っている。 「あの、私も…いいかしら?」 かえで(仮)は興味深そうにその本を覗き込みながら、恐る恐る、るりかに話しかけた。 「えっと、み、緑色…」 もともとは、緑色の色彩元珠(パステルオーブ)を守護する色彩の精霊。いわゆる色彩元珠精(パステルガーディアン)なのだ。 色を守護するガーディアンの立場から見れば、人間層(レイヤー)の人間が勝手に判断した緑色のイメージなわけで。 それを緑のガーディアンが逆に聞くのもおかしな話だった。 「え~と、ねーさんは緑っすね…」 るりかが再びページを捲り、該当する項目を探し、読む。 「緑を好む人は、自然派。協調を重んじ、平和を愛し、安らぎを与える…だって」 かえで(仮)は咄嗟にその意味を把握できず、首をかしげた。 「つまり、みんなで仲良くするのが好きで、争いが嫌い。そんでもって癒し系ってことっすね!」 その言葉に、かえで(仮)は大きく目を見開いた。 「仲良くするのが好き…? わたしが」 かえで(仮)は、動揺しているというより、驚いていると言う表現がより的確な、そんな顔をしている。 「かえでちゃん、本当はケンカ嫌いなんだね」 なんて言うちえりに、るりかは「ねえさんが、そんな喧嘩っ早そうには見えないでしょ」と、また素っ頓狂な事を言うなぁと思った。この時は。 「あかねさんとは真逆ですわ!」 「こら、みつばぁ!」 「赤と緑は確かに反対色だから、確かに真逆かもね。これマメな」 るりかがみつばの挑発をさらに調子づかせる。 「つまり、あかねさんは、協調性を軽んじ、平和を憎み、恐怖を与える…ってことですわね!」 「それじゃ、わたしはまるで大魔王じゃないかー!」 「きゃー、朱色は攻撃的、直情的ですこと! って、痛いですわ!」 「この、こうだ! みつばのほっぺでたこ焼き2個作ってやる!」 パステルガァル!ズたちは、各論的にはいろいろあるとして、総論的には平和な夜を過ごしていた。 ちなみに、ぬいぐるみのフリをしたまま固まっている、使者のぱれっと及びかあらは、色の話で盛り上がっているパステルガァル!ズたちの輪に加わりたかったみたいで、彼らのまわりには、なんだか哀愁が漂っていた。

      テーマ:
  • 05 Jul
    • 第05話(RM)-05「かえで」

      夜7時になっても空は明るく、空気はまだまだ蒸していた。 ふと空を見あげれば大きな木が茂っており、パタパタとコウモリらしきものが数匹、弧を描くように忙しなく飛んでいる。 この木のある大きな庭の、その隣がみつば邸だ。 門の前で、ちえりが大げさに両手を広げた。 「ねーぶんぶんち、おっきいでしょ!」 ちえりが自慢げにダークネスグリーンに言った。ダークネスグリーンといっても、いつもの大根の葉のようなものは、頭からも背中からも出ていない「人間モード」であった。だから、だれも彼女が敵の四天王(ダークネスフォー)であるダークネスグリーンとは気づかないはずだ。 「そうね、大きいわね」 ダークネスグリーンは、みつばの家を見上げながら答えた。パステルガァル!たちに近づき、隙をついて色彩元珠(パステルオーブ)を奪う。そういう作戦なのだ。 「大きいと大きいなりに悩みがあるんですわ。たとえば、合宿先になるとか」 ショボーンという表情で力なくみつばが答えた。 と、その時だった。彼女ら5人の耳に、女性の悲鳴にも似た声が入る。 「ああ…ああ!」 みつばが振りかえると、そこには翡翠森(ひすいもり)の老夫婦がたっていた。 どうやら老夫婦も帰宅して来たようだ。ちょうど年代物のリンカーンという車が、ドライバーによって立ち去ったあとと同時であった。 翡翠森(ひすいもり)夫人は倒れこむように、地べたに尻もちをついた。膝から下に力が入らなくなったようだ。宇宙人にでも遭遇したような、物凄い驚いた顔をしている。 一方、主人の方は、夫人のように座り込みはしなかったが、同じように「信じられない」といった、険しい表情でこちら側を見ていた。 驚いている老夫婦の視線の先を、みつばは追う。 視線の先には、長髪の娘…いわゆるダークネスグリーンしかいない。 「おばーちゃん、だいじょーぶ?」 「お、おばさま!?」 ちえりとみつばは、倒れた夫人を起こそうと駆け寄った。 「か、かえで!? かえでが、かえでが生きているわ!?」 「ばかな、そんなことがあるものか。しっかりしなさい」 夫人は声を上げたが、主人のほうは冷静にそれを制した。いや、主人も取り乱していることを、見せないように必死だったのかもしれない。 「どうしたの?」 少し後ろを歩いていた、るりかとあかねも駆け付けた。 「いやいや、大丈夫なんだ。おおごとになってしまって、すまないね」 主人は、抱えるように夫人を起こしながら、話し続ける。夫人はダークネスグリーンを凝視したままだ。 「実はね、過去に娘がいてね。不幸にも事故で亡くしてしまってね。」 「はい、ばあや、からお聞きしましたわ。お気の毒ですわ」 相槌をうちながら、みつばが悲しい表情で答えた。 「とても、大人しくて、調和を愛する子だったの…」 そいうって、夫人がダークネスグリーンを指さす。 「みつばちゃんのお友達、そっくりなの。かえでに」 「え? わ、わたしが…!?」 この時、一番面食らった表情をしたのは、他でもないダークネスグリーンはだった。 「お嬢さん、申し訳ないね。違うことはわかっているんだよ。もう何十年も前の話なんです。お騒がせしたね」 「そうですね…、本当にごめんなさいね。でも、もしかしたら、ひょっとしたらって思ってしまいましてね」 翡翠森(ひすいもり)老夫婦はダークネスグリーンに頭を下げた。 「おねーさんは、ちえりたちのお友達だから、こんどおじーちゃんとおばーちゃんち行くね!!」 ちえりが明るく、そういった。アテのない約束かもしれないが、ちえりの笑顔は夫人の心にじんわりと染みこんでくるようであった。 「ありがとうね、お嬢ちゃん、みんなで来てね」 夫人も笑顔を取り戻すことが出来たようだ。 そして、ダークネスグリーンまで歩み寄り、彼女の手を取る。 「あなた…いつでも来てね。待っているわ」 「い、いつでも…待っている…?」 その言葉の意味を噛み砕くようにダークネスグリーンは復唱した。どんな表情をしていいか判断できない、複雑な顔をしている。 「さあ、いこうか。じゃあ、お騒がせしたね」 「ごきげんようですわ、おじさま、おばさま」 みつばは心配そうな表情で手を振り、見送った。 老夫婦が去ったあと、自然と4人の視線はダークネスグリーンに集まった。 「そういえば、ねーさんって名前なんて言うんですか?」 初めに口を開いたのは瀬々良木るりか。確かにそうだ、ガァル!ズたちは、誰も目の前の娘の名前を知らなかった。 「え?」 「あたしら、ちゃんと全員、自己紹介したよ」 あかねがダークネスグリーンに、一歩詰め寄った。 「え? な、名前?」 「そうですわ。よろしければ、お名前をお伺いしてもよろしくて?」 まさか、「名前は、ダークネスグリーンよ」と言うわけにもいくまい。ここまで近づけたのに、すべてが水の泡になる。 ダークネスグリーンは焦ったが、とっさに適当な人間の名前など、思い浮かばないし、考えられるはずもなかった。 しかし、このまま黙っていれば、確実に不審がられてしまう。 「…そうよ、か、『かえで』よ。あたしの名前は『かえで』」 投げやりな感じでダークネスグリーンはそう答えた。そう答えるしかなかった。今しがた聞いた…それくらいしか人間の娘の名など出て来るはずもなかった。 「なんだって! じゃ、じゃあ、本物なのか!? まさか…なく、亡くなったはずの!」 あかねはびっくりしている、というよりビビっている。ソッチ系は苦手です、な表情だ。 「ちょいちょーい! そんなわけないでしょーが!」 るりかがオーバーアクション気味に両手でダークネスグリーンの前を塞(ふさ)いで、あかねを制止する。 「どういうことですの?」 みつばは目を丸くしている。ちえりは、いつもながら、ふーん、そうなんだー、と、言う反応だった。 「つまりさ、ホントーに、偶然なのよ。ね、名前まで一緒だったってことですよね、ねーさん。ほら翡翠森(ひすいもり)のご夫婦だっけ? あんだけ驚いていたでしょ」 「確かに。悲鳴をあげたからさ。びっくりしたけど。ちえりがいたずらでもしたのかと思った」 あかねがちえりの頭のうえにポムポムと手を置いた。 「しないよーだ」 「おじいちゃん、おばあちゃんが勘違いしそうになっているところにさぁ、これで名前まで一緒だってわかったら、どーなることか。おばあちゃんなんか、大パニックになっちゃうでしょ」 るりかはダークネスグリーンの表情や様子を伺いながらしゃべっている。 「確かに、混乱しますわね」 「そ、だから黙っていたってワケ。名前を言うの、思わず躊躇(ちゅうちょ)しちゃったってことですよね。展開的に」 るりかの必要以上に深く状況を読んだことが幸いして、ダークネスグリーンは逆に窮地を脱出できてしまった。 「そ、そういうことなのよ。ちょっと、言いづらくなっちゃって」 複雑な感情で、かえでことダークネスグリーンは答えた。 「じゃあ、かえでさん。あまりゆっくりできる時間はないかもしれませんが、どうぞおあがり下さい。ばあやも紹介しますわ」 みつばに促され、みんなとダークネスグリーンは玄関の庭に中に入って行った。 「間一髪、バレなかった」 と、胸を撫で下ろすところだが、ダークネスグリーンはそんなことよりも胸がモヤモヤとしていた。 翡翠森(ひすいもり)老夫婦が、頭から離れない。 わかっている。自分自身に用があるわけではないと言うことを。 知っている。老夫婦が求めているのは、私に似ている、死んでしまった娘だと言うことを。 それなのに、「いつでも来てね。待っているわ」と言う言葉が、声が、表情が、そして手の温もりが、ダークネスグリーンの脳裏から離れない。 「かえでちゃん、ここね、お靴脱がなくていいんだよ!」 ちえりは、ダークネスグリーンの手を引いた。 人間に化けていた曖昧(あいまい)な存在に、「かえで」という名前がつけられた。 架空の人物が、具現化する。 「そうなの、すごいのね」 かえでを演じようとする。 ダークネスグリーンにとって、「かえで」という存在はモヤモヤした。 それは、とても心地の良い、モヤモヤだった。

      テーマ:
  • 30 Jun
    • 第05話(RM)-04「ダンス後は玄関前の自販機付近でたむろする」

      2時間ほど経って体験ダンスレッスンは終了した。 「いい汗をかきましたわ」 「おう、ほんとだな。なんか普段使わない筋肉が刺激されて良い感じだ」 みつばもあかねも初めてのヒップホップダンスだったが、ご満悦のようだ。 終わったあと、玄関前の自販機付近でジュースを飲みながら、各々感想を述べていた。 「あれ? おねーさんはジュース飲まないの?」 ふと見ると、ダークネスグリーンは自動販売機の脇で、ぼーっと立っていた。 ちえりが思わず話しかける。 「え? 飲み物?」 ポカンとするダークネスグリーン。 「飲まないと、ネッショウチュウになるのです」 ちえりがさも恐ろしそうな顔でダークネスグリーンに忠告した。 「そうそう、暑さで頭がおかしくなって思わず歌っちゃう。まさに熱唱中って、違うわ! それを言うなら熱中症でしょうが」 と、瀬々良木るりかは言いながら「どう? 今の王道なツッコミ。逆に清々しくて、美しくない? 洗練されてるってゆーか」と皆からの称賛を促した。 ノリ→ツッコミ→ボケの見事なコンボだったが、全員称賛はせず、スーパームカツクモードだった。 「じゃあ、はい、ちえりのをどーぞ」 ちえりはダークネスグリーンに自分のジュースを手渡した。 彼女は恐る恐る口をつける。 「つ、つめたっ!」 「ちべたいよね。凍らせて持ってきたの。おいしいよね~?」 「…そ、そうね。…冷たくて、おいしい」 なんなのだろう…この感覚は。 ダークネスグリーンは、何かモヤモヤとしていた。 先ほどの凄まじいフラッシュバックのような変な感覚も、確かに戸惑った。しかし、それとはまた別の、不思議な感覚。 そう、さっきまでのダンスレッスンでも、なかなかリズムを取ることが出来なかった。ただ、ちえりの呼吸に合わせると、すんなりとリズムがあった。 その感覚が、なんだかこそばゆかった。調子が狂うというか。しかし調子が狂うなら、気持ちが悪いはずだ。 ダークネスグリーンは、心地良い不思議な感覚に戸惑うしかなかった。 「そろそろ帰りましょうか。ばぁやも夕食を作って待ってますわ」 ペットボトルのフタをしめると、みつばが皆を促した。 「つかそのまえにシャワーよね。汗だく」 るりかが首にかけたタオルで汗を吹きながら言った。 「おねーさんは?」 ちえりは不意にダークネスグリーンに聞いた。 「え? わたし? え~っと、みんなで合宿やってるの?」 「そうだ。秘密の強化訓練だ」 あかねが拳を突き出した。 「コラコラ。軽々しく口外している時点で秘密じゃないし」 るりかが苦笑いしながら言う。 「ねー、おねーさんも一緒にあそぼう! ちょっとだけ、ぶんぶんちで!」 屈託の無い笑顔でちえりはダークネスグリーンを誘った。 「コラコラ。ちえり、いきなり遊ぼうは無いでしょ。おねーさんも予定あるのよ…ってさくらんぼう! アンタね、強化訓練でしょ。一緒にあそぼーじゃないっての!」 るりかは、ちえりを小突いた。今日はツッコミ作業に精が出るなとるりかは思った。 「まあ、とは言っても訓練なんて表向きですわ」 みつばが茶化す。 「いや、昨日の神経衰弱は、本当に衰弱したけどな」 あかねが頭を抑えていった。 「要領がわるいのよ、あかねは。あんたホント、バカなんだか鋭いんだかよく分からないわよね」 などと、また話が脱線し始めた頃、俯いていたダークネスグリーンが、顔を上げた。 「あの、じゃあ、少しだけ、私も遊びに行っていい?」 「え、本当に?」 るりかが面食らった。なんだ、まんざらでもないのか。 るりかからすれば、無理なお願いに女性が断りきれず困っているのかと思っていた。 「わーい! ぶんぶん、大丈夫だよね!?」 「ええ、少しだけなら、大丈夫ですわ。…いまさら4人も5人も迷惑なことには変わりませんわ!」 みつばは躊躇なく笑顔でどくをはいた! ちえりはかわした! るりかはかわした! あかねはどくにおかされた! 「…みつば、やはり大変ご迷惑を…」 神妙な面持ちであかねが謝罪する。 「冗談ですわ。あかねさんたら」 「じゃあ一緒に行こう、おねーさんも行こう」 ちえりはマイペースにダークネスグリーンの手を引いて歩き出した。 「あらら。あのおねーさん、ちえりに気に入られちゃってるわね」 るりかが前を歩くふたりを見て言う。 「なんか、あの人の頼りない感じが、ちえりのおもちゃになっちゃってんじゃないか?」 あかねも頭の後ろに両手を組みながら、苦笑した。 「ちょっと、ちえり様! みつばの手もつないで下さい!」 ふたりをみつばが追う。 「こらー! 公道は横に広がって歩いちゃだめだよ~!」 声の主をふりかえると、そこにはそあらがいた。 「あ、そあら先生! 今日はありがとうです。また明日もよろしくね」 「うん、るりかちゃん、また明日。あかねちゃんも!」 そあらは笑顔で手をふった。 「ありがとうございました!」 あかねもそあら先生には丁寧に挨拶をした。 スタジオに入るそあらの背中を見ながら、しんみりとるりかが言った。 「そあら先生ってあたしとタメなのにしっかりしてて、なおかつ、なんつーか、爽やかよね」 「あん? まーそうだな。るりねーとは正反対って感じだな」 あかねがニヤリとした。 「正反対っていうことは…しっかりしてなくて、なおかつ、むさっくるしいってことか!」 おのれ! くきゃー! と奇声を上げると、るりかはうしろからあかねを羽交い絞めにした。 「しっかし、性格もさることながら名前がアヤシイわね…。あかねほら、あれは、ちょい役の名前じゃないわ!『天神(あまがみ)そあら』って! なにこれ伏線? 伏線なの?」 ぐへっへへとるりかがよだれを垂らした。 不意にるりかが背負ったカバンから、使者のかあらが顔を出した。 「まーた、るりちゃんは、変なこといってるカラ!」 確かに、色彩元珠(パステルオーブ)も4つしかなく、仲間も4人揃っていたから、これ以上、主役は増えようがないのだ。

      2
      テーマ:
  • 25 Jun
    • 第05話(RM)-03「レッツ・ダンス!の前に柔軟体操」

      「いだだだっ! ちょ、ちえり加減してよ!」 るりかが悲鳴をあげた。 「へへ。るりかちゃん、カタいね」 いたずらっぽくちえりが背中をさらに押す。ぐぎゃーと叫ぶ、るりか。 るりかはジャージ姿でまたを大きく開いて座って、その背中をちえりに押されている。 ここはちえりの通うダンススタジオ。ちえり他の3名は予定通り体験教室に来ていた。今はダンスの練習云々の前に、しっかりとケガをしないようにストレッチをする時間だ。 「体が硬いのはあたしだけ? みつばもあかねも、なんでそんな体やわらかいのよっ」 「わたくしは小さい頃から、バレエをたしなんでおりましてよ。今はやめましたが、未だにストレッチはお風呂上りにしてますわ」 まあ、庶民には少しレベルの高いたしなみかもしれませんことね! と高らかに嗤(わら)った。るりかを小馬鹿にするのが目的で。 「体が硬いとケガするんだ。柔軟とか準備運動は大切なんだよ」 あかねもそう言った。 「むむー。あたしも演劇部だからね、ストレッチとか腹筋は結構鍛えてるんだけど。なんつーか思いの外、柔軟はニガテ…」 「ええ~、演劇やってるんですか!?」 るりかに声をかけてきたのは、同年代の女子だった。ポニーテールみたいな髪型だが、その結び目は左側にある。サイドポニーと言うらしい。 「うちの演劇部は結構本格的なんですよ。春、夏と年末で、身内だけじゃなくて、ちゃんと一般の人も招いて公演やってま~す!」 「ステキ!」 サイドポニーの少女は、興味津々にるりかの話にかじりついた。 「そうなんす。OGの先輩が劇団に入ってて、よく面倒みてくれるんで」 るりかも悪い気はしないようで、ペラペラとしゃべり続ける。 「そあちゃん、ミュージカル女優になりたいんだよね!」 ちえりが、その娘の袖をひっぱりながらそう言った。 「あ、わたし、天神(あまがみ)そあらっていいます。るりかちゃんと同じ中2だよ」 そあらは笑顔で挨拶した。 「へ~、中2で体験レッスンの先生やってるなんてすごいですね」 「まあ、体験といっても基本的なことしかやらないから。先生たちも他のレッスンあるし」 なんて雑談をしていると。 「すみません、体験ダンスレッスンまだ、いいかしら?」 入り口の扉のスキマから半分身を乗り出してる女子がいる。時間はレッスンがスタートして10分ほど経過していたが。 「あ~、まだ大丈夫ですよ! どうぞどうぞ!」 そあらも新規生徒を獲得するのに必死なのだろうか。営業スマイルのような感じで女子を招き入れた。 どうぞ、と言われ、若干挙動不審な感じでその女子は入ってきた。高校生ぐらいだろうか。もっと上にも見える。髪は長く後ろで縛っていて、シンプルな緑色のジャージと「GREEN」と緑で書いてある白地のTシャツを着ている。 懸命な諸兄には説明する必要は無いが、蛇足的に言わせていただくと明らかにダークネスグリーンであった。 ただし、いつもの様に頭や背中から大根の葉っぱは生えていない、いわゆる人間モードだった。 「おねーさん、こっちあいてます!」 ちえりが彼女を早速誘導した。 「じゃあ、次は曲に合わせて軽くステップの練習をしてみましょう」 そあらが手をパンと叩いて、みんなに号令した。 「パステルガァル!スキを見つけて、色彩元珠(パステルオーブ)を奪って見せるわ」 緑の女子は誰にも聞こえないように、そうつぶやいた。 4人そろったパステルガァル!に脅威を感じたのだろう。四天王(ダークネスフォー)は、パステルガァル!の内側に入り込み、内部から崩そうという企(くわだ)てなのであろうか。 「あ、おねーさん、ちがうよ、手、逆!」 ちえりが緑のジャージの女子、ダークネスグリーンに教えている。 「…パステルチェリー」 一瞬、ダークネスグリーンは小さくつぶやいた。 ダークネスグリーンにとって、この英ちえりこと、パステルチェリーは「未知数」であった。 つまり、この少女が絡むと、いつも想定範囲外に物事が進んでしまう。自分の思い通りに行かない。 「みどりのおねーさん、手こっちだよ。聞いてる?」 ダークネスグリーンは、ちえりに手を掴まれた。 ブワッ! 実際にブワッという音はしていない。 しかし、ダークネスグリーンの目に飛び込んできた、ものすごい光は、ブワッ表現するに値する現象だった。 「な…なに!」 視界を奪われたダークネスグリーンは、今度はこの人間の層(レイヤー)で馴染んできた自身の体重から、瞬間的に開放されたような感覚に陥った。 まるで、自分自身が何かに溶けてしまいそうだった。そう、それは存在ごと。自分が丸ごとフェードアウトして行く。 「ちょっと、もー、おねーさん!?」 ちえりが大きな声で叫ぶと、はっとダークネスグリーンは我にかえった。 光はない。もちろん、身体も元通り、ちゃんと重みがある。遠のきそうになった意識も、ちゃんとある。 「…あれ? 何、今の?」 「おねーさん、まさか一瞬で寝ちゃったの!?」 びっくり仰天しているちえりのセリフに、まわりのみんなも注目して笑い声が起きた。 「ちょっと、ちえり~。ふざけないでよ。おねーさん、困ってるでしょ」 天神(あまがみ)そあらが近づいて来る。何をしているんだか。 「ちえり、ふざけてないよ」 「ごめんなさい、ちょっとボーっとしちゃって」 ダークネスグリーンは、気をとり直し、とりあえず謝っておいた。怪しまれたら面倒だ。 「おねーさん、テンネンなんだ!」 と言うちえりに、「お前が言うな!」と言うセリフが全会一致の団結のもと浴びせられた。 「ちえりだって、最近でしょ、この振り覚えたの。それまで地上で溺れたのにねー」 そあらがちえりのオデコに軽くデコピンした。 「とにかく、ちえりはおねーさんに責任持って教えてね。わたしは、るりかちゃんたち3人教えるから」 「わかた!」 ちえりは元気よく返事をした。 ダークネスグリーンは先程握られた手を見つめていた。 「さっきの、あの感覚はなんなの?」 「はい、じゃあ、おねーさん、手はこうです」 もう一度、ちえりに手を握られたが、今度は何も起きなかった。

      テーマ:
  • 20 Jun
    • 第05話(RM)-02「スーパームカツクるりかフェイス」

      「あのね、うちのダンススタジオで、ヒップホップの体験レッスンするんだよ」 「ヒップホップの体験レッスン?」 みつばがチラシを覗きこんだ。 「うん。タダで出来るんだって!」 えっへん、とちえりが得意げに答えた、  るりかは、イマイチピンと来てないメンバーどもに顔を近づけた。 「そう! これに参加するの! いーい? あたしらは4人揃ったと言えど、かあらたちが言う四天王のダークネスフォーには到底敵わないワケ! チームプレイを強化するために、ダンスで呼吸とかリズムとかを学ぶのよ!」 「だ、駄目だ! 出来るわけない!」 るりかが喋り終わる前にあかねが完全拒否宣言。 「そ、そんな『ヨー!』とか『チェケラ!』とか言えない!」 あかねは顔をバーミリアン色にして、必死に抵抗する。 「ファッ!?」 るりかが思わず吹いた。 「あかねさん…。ダンスを何と勘違いしてるんですの?」 みつばのツッコミに全員が大笑いした。 「え? 歌わないのか? でもな、ダンスなんて」 「あ~ら。ダンスを馬鹿にするの? まあ、あかねは空手やってるもんね。リズム感覚は抜群か」 乗り気じゃなさそうなあかねを、るりかはどう転がすのか。 「そりゃあ、間というか、呼吸というか。空手は大事だから。ダンスくらい」 「そうよね。天下のあかねさんが、まさかビビってやらないってことは無いわよね」 「あ、あったりまえだ!」 あっという間にムキになる穂ノ尾あかね。 「じゃあ、決まりね。グヘヘヘヘ…」 瀬々良木るりかは気持ちの悪い笑い声をあげると、全員に背中を向け、一気に振り返った。 「いーい!? イマドキの変身(もしくは魔法)少女は、エンディングでダンス踊れるのが必須事項なのだ!」 確かにプ*キュアとかエンディングソングで全員ダンシングしている。当たり前のように踊っているが、ちえりパステルガァル!はスキルもないのに突然踊れたりしない! プラクティスせよ、パステルガァル! るりかはゴホン、とひとつ咳払いをして、言い直した。 「アイコンタクトで互いに意思表示出来るくらいの仲にならないとね。とにかく、一緒に練習することが大事なのよ」 「こちらの呼吸と、相手の呼吸を知ることは、確かに大事だ」 あかねも頷いた。 「ちえり、楽しみ! みんなとダンスの練習するの!」 純粋にちえりはワクワクしていた。最もこの気持ちがみんなの根本に無いと続かないはずだ。 「そうですわね! わたくしも、ちえり様と一緒なら、楽しいですわ」 もともとバレエを習っていたみつばもダンス自体には抵抗がなかった。 「ねー。おとまり会もたのしみだよねー」 全員が同じ方向に向かっていることがわかったるりかの眼の奥が怪しく光った。 「ひひひひ、思惑通り。取りあえず、なし崩し的にみつばんちもOKになったしね」 まったく、うちの部屋のクーラー壊れちゃって、この夏どうしようって悩んでたとこだったのよね。 リーダーの悪意ある組織利用とは、正にこのことだった。 「あらあら、みつばちゃん、おともだちいっぱいでにぎやかねぇ」 「あ、翡翠森(ひすいもり)のおばさま、おじさま!」 不意に庭越しの柵から顔を出したのは、隣の豪邸にすむ老夫婦だった。 品の良い老夫婦が、笑顔でガァル!ズたちを見ている。確かにお金持ちなのだろうが、服装は至って質素。しかし、そこから醸し出すオーラは気品が漂っていた。 「こんにちは。ご機嫌いかがですか? 騒がしくて申し訳ございませんわ。すぐにお部屋に戻りますわ」 みつばはきっとこのガァル!ズたちが騒いでいるので、注意されたかと思った。 たしかに、庭先でこんなに騒ぐのは初めてだ。 「いやいや、大丈夫だよ、みつばちゃん。むしろみんなの元気な声が、聞きたくてね」 翡翠森(ひすいもり)の老紳士はそう言った。 「ええ、まるで、そう、『かえで』もね、ちょうどあなたたちと同じくらいにですね…」 夫人は遠い目をしながら、意味不明なことを口走っている。 「これ、よさないか、ほらもう時間だ」 老紳士が夫人の話を遮ると、玄関に待たせている車の方へおばさまを誘導する。 車はアメリカのリンカーン、コンチネンタルマーク∨。見るからに年代物で、相当お金をかけて手入れされていることが、少女たちの目にも分かった。  「それでは失礼するよ、みつばちゃん、お友達。気にしないで、おしゃべりしててくださいね」 ぽかーんとする、他3人。 「となりの、お金持ちさん? ヒスイモリ?っていかにも金持ちって感じの苗字ね」 るりかが移動するリンカーンを目で追いかけながら、そういった。 「ええ、そうですわ。でも、昔、子どもを交通事故でなくされたんですって。ばあやが言ってましたわ」 「そ、そうなのか…」 あかねがぼそりといった。 「そうですの。ちょうどわたくしたちと同じくらいの年代で亡くなられたんですって。最近よくお話しするようになったんですけど、たまにお食事とか誘ってくださいますのよ」 「きっと、さみしいんだね。かわいそう」 ちえりもほろりと言う。 「なんだか、しんみりしちゃったけど…合宿の間は、あのおじさん、おばさんに会ったら、元気に挨拶しようか!」 はーい! と、みんな元気に返事をしたが。 「って、合宿をうちでやることは、決定なのですわね!? るりかさん!」 オートマチックに合宿が決定になっていて、みつばはドン引きだ。 「えへ。みつば、よろぴくゥ(はぁと)」 てへぺろしている、るりかの顔が、夏の暑さと相まって、スーパームカツク感じであった。 しかし、こんなほのぼのとした雰囲気のガァル!ズたちを、冷ややかな目で物陰から見ている者がいた。 「パステルガァル!たち…強化訓練をするつもりなのね…」 緑色の長い髪の女。ダークネスグリーン。全身真っ黒なレオタードよような出で立ちで、頭と背中から葉のようなものが2枚ずつ出ている。 ちえりたちの敵。四天王(ダークネスフォー)の1人である 「だんす・すたじおとか言ってたわね…」 夏の日差しも入り込まないような暗い場所で、彼女は何かを企んでいるようだった。

      テーマ:
  • 15 Jun
    • 第05話(RM)-01「夏の強化合宿宣言」

      一部地域を除き、全国的に夏休みに入ったようである。 圧倒的な存在感の「太陽」と言うヤツは、まったく空気を読まず、午前中からやる気満々であった。満々というか、サンサンというか、ギンギラである。 そしてセミ氏らもやかましい。鳴き過ぎである。とくにアブラゼミ。全力で祖父を呼んでいるのか。「ジジー! ジジー!」と。 「ああ、もう、本当に暑いわね」 瀬々良木るりかが、不機嫌そうに言葉を吐き捨てた。さらに不毛なセリフは続く。 「ねえ、みつば。氷の像とか、プールとかないの、このお屋敷には。あとよくショッピングモールとかで、扇風機のおばけみたいので冷たい風がバーっとでるやつあんじゃん。そういうのないわけ?」 投げかけられた分部みつばは、よくも好き放題言えたものだ、という顔をして、 「夏休みはいつも南極に行って、極寒の中、かまくらであっついチゲ鍋を家族でつつきあいますの。ですから、こんなむさ苦しい庶民の夏は初めてでしてよ!」 と、もっとイラつく言葉で返してやった。 そう、ここは富豪である分部(ぶんぶ)みつばの屋敷。彩鳥町(いろどりちょう)の高級住宅街。 とはいえ、るりかが妄想するような、氷の像やプールまでの冷房設備はさすがになかった。 見ればるりか、みつばの他に、ちえり、あかねもいる。パステルがァル!オールスターが揃っていた。揃いも揃って夏の暑さに茹(うだ)っていた。 「く、金持ちは夏の過ごし方のスケールが違いすぎる! それじゃあ、みつばは、オーストラリアで真夏のクリスマスも経験済みだとでもゆーのか!?」 あかねが、みつばの冗談を真に受けて、経済的格差に愕然としたが、面倒くさいので誰も突っ込まなかった。 「さーて、本題にはいろうかしら…」 皆様にお集まり頂いたのは他でもありません、と言いながら、るりかは頭に青いハチマキを巻き始める。そして… 「ここに! パステルガァル!夏の強化合宿を宣言する!」 満を持して、瀬々良木るりかは、声も高らかに拳を振り上げた。 「お! おぉ~、強化って言葉が、なんか燃えるな!」 朱色の炎を目に映らせながら、穂ノ尾あかねも拳を振り上げる。 彼女は、ミーティングと称して、パステルガァル!ズたちをみつば邸に召集した。 「合宿って…どこで、ですの?」 みつばは自分が描く不安が、的中しないように祈った。小学生、中学校で合宿なんていっても、子どもだけで宿泊できる施設なんてあるはずがない。お金もかかるだろうし。と、すると。考えられる場所と言えば…。 「え? じゃあ何か? みつば別荘でも持ってるってか?」 るりかがニヤリと笑った。何だこの有無を言わさないプレッシャーは。 「もともとこの屋敷が別荘みたいな扱いだったのですわ。わたくしが引っ越して来ましたからね、他に別荘は無くてよ」 なぬー!? っとちえりがみつばに駆け寄った。 「別荘!? ぶんぶんすごーい! じゃ、じゃあ、ってことは…実家みたいなおうちが他にあるの? そこは何畳? 何えるでーけー!?」 ちえりの垂涎が止まらない。ちえりは、家が好き、というよりも間取りが好き。自分の家がアパートで狭いこともあるだろうが、スケッチブックにはいつも理想の間取りを描いていた。こういう子にはCADでも憶えさせると良いのではないだろうか。 ちえり様、落ち着いて下さい、とちえりを宥めながら、みつばはるりかを睨んだ。 「…るりかさん、合宿場所はこの屋敷で…そう仰りたいのでしょう?」 「あ~ら、あたし何も言ってないわよ。うっそ! いいの? みつば邸使っても!?」 「…し、白々しいですわ…」 白々しいと言うより、腹が黒々しかった。ダークネスキングの下僕かと疑ってしまいますわ、だ。 「まあ、考えてもみなよ。中2のあたしと、中1のあかねがいるのよ。みつば、ちえり。合宿期間中はふたりの夏休みの宿題くらい面倒みてやろうじゃないの」 ねえ! と、るりかはあかねの肩をたたいた。 「る、るりねー。あたし、勉強はちょっと…」 勉強や宿題の話となると、あかねは弱腰だった。ポリポリと後頭部を掻いている。 「もう! ちゃんと授業聞いてないから! って、あんた、そういえば、クラスメイトと仲良してるの!?」 もともとあかねは、「力こそ正義!」的な荒くれファイターで、ぼっちな子だった。入学式なんか男子と衝突し、あやうく相手を病院送りにするところだった。ただ、その男子も絵に書いたような乱暴もので、入学式から周りを嫌な雰囲気にしていたのだ。 ある意味、あかねが暴れたおかげで、他に怪我人や犠牲者が出なかったという見方も出来た。 まっすぐゆえ、卑怯なこと卑劣なことが許せない。そして融通も聞かず、誤解され、敵をつくり孤立していた穂ノ尾あかね。 自分は悪くないから、胸を張って堂々としよう。文句があるなら、正面切って言って来い! という態度でいれば、クラスメイトは誰もそばに寄り付かなくなる。 あかねは、先日のダークネスレッド戦における「賭け」で、るりか負けた。…と言うより、るりかのハッタリに巻き込まれ、結局3つの約束をした。 ひとつは「るりかお姉様」と呼ぶこと。 もう一つはクラスに馴染むこと。 そして最後は兄と仲良くすることだ。 そんな背景があっての発言だった。 「じょ、徐々に馴染むから。いきなりフレンドリーにしたら逆に引かれるってば」 確かにあかねの言う通りだった。しかし、真面目ゆえ、約束したことを断じて守るこの姿勢は長所でもあった。 「まあ、それは後でいーわ。本題よ本題。ちえり、例のチラシある?」 「うん! あれ? ありません!」 ちえりは笑顔で答えた。 「って、コラ! あれほどチラシ持って来てって行ったでしょ! それじゃ話がすすまない…ってそれよ! ちえり、その『3えるでーけー』って、ウラに落書きしてるその紙! 貸しなさい! コレよ!」 るりかはちえりの手から、「3えるでーけー」と書いてあるチラシをぶんどった。 チラシのオモテには「3日間の体験ダンスレッスン! スタジオパッパラダイス」と書かれていた。

      テーマ:
  • 10 Jun
    • 第05話(RM)、改めて公開します。

      お世話になります。 さて、どうやって販売しようかな、なんて思いつつ、 中編も仕上げて行かなければなりません。 あんまり間があくのも嫌なので。 とにかく着手出来るうちに着手しますってことで。 ライトノベル中編の第05話(RM)…つまりリメイク版を徐々に公開していきいます。 前編の続きってことですね。ライトノベル読まれた方は、そのまま違和感なく読めます。 一週間に1~2節ずつ、なんてスローペースな更新になってしまいますが。 よろしくお願いします。

      1
      テーマ:
  • 26 May
    • 【完成】ついにライトノベルができました。【同人誌】

      ついに、できました! いわゆるちまたで売っているライトノベルなどの文庫本サイズなのですが… 想像以上に、文庫本してます! こりゃあ、文庫本だ!(笑) いや、もう本当に、関係者各位…みなさまのおかげです。 本当にありがとうございます。

      6
      テーマ:
  • 30 Apr
    • 【イラスト】バーミリアン【完了】

      出来ました。 バーミリアンです。 通常ヴァーミリオンとか言いますが、うちはバーミリアンでいいんです。 これはカラーバージョンですが、モノクロはこちら ということで、めでたくイラスト完了しました。 時間が経って見えてきたところとかあるので さまざま手直しをしようと思います。 が、それではきりがないのである程度にとどめ、遂に製本作業に入ります!

      4
      テーマ:
  • 14 Apr
  • 08 Apr
    • 【惨劇】あかねイラスト2枚。完成するも…【イラスト】

      やっと、イラストすこし進みました。 もう4月です…(T_T; 気がつけば、娘も中学生…。 小学校3年のときに始めた活動です。 こうやってjpgに書きだしたあと、まちがって 作業用データをけしてしまいました…。 まあ、またこれをなぞって描けばいいんです…。 次は緊迫のシーンです。 効果線などはまだ描いてませんが。 (こっちは削除しませんでした^^;) のこり、イラスト一枚で、製本です。

      2
      テーマ:
  • 22 Mar
  • 20 Mar
    • 【イラスト・下描き】穂ノ尾あかね【あとご報告】

      ブログ更新します。 ちょっと午前中時間あったので下描きました。 こう、一ヶ月くらい、ただひたすら絵を練習する時間が欲しいものです^^; しかしこのペースだと、ちょっと前編は出来ても、中編、後編は難しくなります。 せめて、文章ならば、時間が空いた時に喫茶店で書いたりできますが さすがに喫茶店でタブレット持って絵を描くとなると。バッテリーの関係もあります。 お絵かきはわりと場所を選ぶものですね。 そこで、今、絵師さんを探している最中です。アタックしてます。 中編、後編についてのイラストは自分はあきらめ、他の方にお願いしようかと思ってます。 可能性は広がる、と思ってます。 もちろん自分も絵やマンガは隙あれば、チャレンジしようかと思ってます。

      2
      テーマ:
  • 11 Mar
    • 【イラスト】パステルハニー×ダークネスセピア

      前回の更新から一ヶ月…、本当に休みがないので仕方ないですTT でも、ちょこちょこと、睡眠不足にならないように、描きました。 ダークネスセピアがなんでイカ系デザインなのかというと、 セピア色ってイカスミの色なんですって。 というかイカスミそのものを指したり、イカ自体をセピアっていうことも。 このままですとイラストが一ヶ月に1枚…あと3枚。頑張ります。

      2
      テーマ:
  • 03 Feb
    • 【イラスト】ダークネスレッド

      本年1/1ぶりの休みがもらえました。 なんとかイラストがやっと一点描けましたのでアップします。 まあ、じゃあ長い休みがあったらいっぱい描けるかといったら、それもまた別の話で。 ただ純粋に物理的に睡眠時間以外はほぼ働いている状況なので、描く時間は少し欲しいです。よく頑張ってるなとは思います(笑) のこりイラスト4点で、製本化出来ます! 頑張ります! あとグッズもストラップ以外で作りますぜ、こうなったら(^△^;

      2
      テーマ:
  • 01 Jan
    • 新年のご挨拶と、イラスト公開

      新年明けましておめでとうございます。 昨年は世間もわたくしも激動の年で、今年はすでに去年を上回るほど激動です。 ohhhhhh… 取り急ぎ、ライトノベルの同人誌を完成させる。 ここに使命があるわけです。 なので年越しで淡々とイラストを描いています。 しかし、正月休みは元旦まで。ohhhhhhh…(笑) 時間をこじ開ける戦いです。もうこれは、時間との戦争だ!! そしてSKE48 チームEの「みつばちガール」をお楽しみ下さい。 それでは本年も宜しくお願い致します^^

      4
      テーマ:

プロフィール

しまりょういち

お住まいの地域:
埼玉県

読者になる

AD

カレンダー

1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30

ランキング

このブログはランキングに参加していません。

AD

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

      ランキング

      • 総合
      • 新登場
      • 急上昇
      • トレンド

      ブログをはじめる

      たくさんの芸能人・有名人が
      書いているAmebaブログを
      無料で簡単にはじめることができます。

      公式トップブロガーへ応募

      多くの方にご紹介したいブログを
      執筆する方を「公式トップブロガー」
      として認定しております。

      芸能人・有名人ブログを開設

      Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
      ご希望される著名人の方/事務所様を
      随時募集しております。