TPPに関する考察

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「リカード貿易問題の最終解決」の第一章には、TPPに関する考察がある。その内容は秀逸で、この部分だけを抜き出して、素人でもわかるように簡易化し出 版すれば、TPPに関しての最も価値のある一冊になるだろう(何の不足もなく説明されていると思うのだが、著者は最低限の説明と書いている)。細部では賛 成できないところもあるが、大筋で問題なく、大変説得力がある。それでは紹介していこう。

日本でのTPPの議論を観察すれば、産業間や生産者消費者の利害についてのものがほとんどであった。まずこの議論に関して考察している。
TPPに反対している第一次産業の言い分に関しては、必ずしも正しくないということを例をあげながら述べている一方、直接的でない公共的な利益もあること(正の外部効果)を失念してはいけないという重要な話を筆者は述べている。
利益を得る可能性が高い工業等に関しては、参加の利点が大きくないことも説いている。具体的な話は記述されていないが、現在の関税の状況、輸出の状況、為替の状況をみれば、推進派の主張が誇大広告であることは疑う余地はないだろう。
消費者の利益に関しては、それが近視眼的な主張であることを看破している。確かに商品の価格が下がることは消費者にとって利益になる。しかしその裏で、失業や賃下げが生じることに関してはほとんど考慮されていない。
利害関係に関しては以上のようなことが考えられ、TPPをそこまで推進する理由がないこともわかるが、そもそもこの議論自体は枝葉の議論で、本当に議論すべきことは別の話である。

本当にすべき議論は、貿易立国という方針自体が正しいかという議論だ。輸出を伸ばすことで雇用を維持できるかどうか考えてみよう。素晴らしい表現なので引用する。P22『日本よりはるかに賃金率の低い中国や東南アジア,インドが(中略)高い生産技術を獲得し始めている.これらの国の製品に対し,競争力を維持するには,(中略)大勢としては労働生産性を高めざるをえない.そのとき,総輸出量がそれほど変わらないのに,労働生産性が高くなると,どうなるか.輸出産業で働ける能動者数は減少せざるをえない.(中略)つまり輸出産業の競争力を維持するという戦略で雇用を維持することはできない.』
労働生産性が上がってもそれが賃金等に反映されないことが現在の日本の問題である。商品の価格を下げるために労働生産性を上げようとすることは愚かなことだ。それによって不況が解消される可能性はない。何よりも愚かなことは、労働基準法の運用を改悪して、長時間労働をさせたりすることで、労働生産性を上げようと主張する政治家がいることだ。政治家には是非この本で勉強していただきたいものだ。
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