千秋更紗 - バスの車窓から ~ 新人バス運転士の乗務日誌

とある小さな街、とある小さなバス会社の新人バス運転士(前職はSE)の乗務日誌。免許取得から転職活動、新人研修、乗務までを網羅するバス運転士志願者必読のブログ。新人バス運転士が綴る、笑いあり、涙あり、へぇ~と納得の無駄知識も満載のハートフルストーリー。


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そして最後の出勤の日。
私はこれまでと同じように乗務していました。
何も変わったことはありませんでした。

寂しくはありませんでした。

それよりも明日からは自由に動ける。
そのことに安堵していました。

前の会社を辞める時も、最後のお客様についてはよく覚えていましたが、この会社でもなぜか強く印象に残りました。

私の最後の運行は、ドル箱路線とは到底呼べない空気ばかり運ぶとある地元の路線。

駅からの最終便にご乗車になったのは、3名の男性でした。
スーツ姿だったり、作業着姿だったり。
皆、仕事帰りだったのでしょう。

3名様とも、駅から出発してすぐの住宅街の停留所で降りて行かれました。
何事もなかったかのように、ただ目的地に着いたから。

お客様の後姿に向かって私は丁重にご挨拶をさせていただきました。
ありがとうございます。

私はすぐには扉を閉められませんでした。
これが最後なのだと思いました。

歩道を歩いてバスを離れていく男性の後姿にもう一度小声で呟きました。
ありがとうございます。
言ってから、涙が出てきました。

あの日以来…。
家族があの病であると言われたあの日以来、私はもう何回泣いてしまったかわかりませんでした。

涙をぬぐって後ろを振り返りました。
車内には誰もません。
この先の停留所から人が乗って来ることなどないことは、たった半年間の経験ではありましたが、わかりきっていました。



カラになったバスで、私は最後のドライブを楽しみました。



こうして、次の日から、私の病院通いが始まりました。
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