世界初の電子楽器「テルミン」を作ったテルミン博士の
ドキュメンタリー映画なのですが、下手な映画より凄いです。

何が凄いって、テルミン博士の数奇な運命。

テルミンの発明、演奏会の成功。様々な楽器の作成。
地位も名声も手に入れ、順風満帆かと思われた人生。
ところがテルミン博士は、ある日忽然と姿を消してしまうのだ。

もともとソ連から来ていたテルミン博士。
テルミン奏者のクララによれば、ロシア人に拉致されたと言う。
結局そのままテルミン博士行方は分からず、処刑説が飛び交った。

実はテルミン博士。
ロシアに拉致された後、収容所で暮らしていたのだ。
しかも7年間も肉体労働をさせられていたらしい。

その後も盗聴器や軍事機器の製作に携わり
せっかく得た音楽学校での仕事も「電子は人殺しの道具」という
不当な理由をつけられてクビになってしまう。なんて運命…。

それでも93歳になった博士は、そのことに恨みつらみを言うわけでもなく
淡々と、まるで第3者なのかのように語っているのが凄いんですよ。
科学者として、人間として、超越したものを感じます。

90代になってからの、クララとの再会。美しいです。
ずっとテルミンを慕い続けたクララの愛は、本当に美しいです。

博士の最初の記憶は「母親の胎内から引き出される」ところ。
なんていうか…。変わってるといえばそれまでですが
やっぱり博士は天才なんですよ。全てにおいて。

しかも芸術的才能も素晴らしかったのだと思います。
だって凡人がラジオを弄ってても楽器という発想には結びつかないもの。

すごく魅力的な人です。
あの時代に黒人ダンサーと結婚するという点においても
博士の愛の深さや激しさを感じる事ができますよね。
しかもすっごいカッコイイんだよ。これが。

ところで
ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンのコメントは謎です…。