2001年 西回り世界一周ふーふー夫婦旅行(妻編)です。最初の一歩をどうするか、旅に出ることは決心したものの、具体案が何も出ていません。世界一周という無謀にも思える夢に夫婦して、わくわく、びくびくしているところから、この日記を始めます。 



part1 旅の計画! 無謀な希望と野望で多忙?



 人生のエコノミークラスに座っている小心翼々の中高年夫婦。そんな二人で、畏れ多くも「世界旅行」に出てみることにした。小金も貯めた。(予算一人200万円なり。) 仕事も辞めた。期間はせいぜい一年間。さて、どこに行くか、どこから始めるか、それが問題だ。自由気ままに旅をしよう!と思っても、予算の制限がある。時間の制限がある。おまけに体力の制限まで関節の節々に出てきた今日この頃。とまぁ、色々な制約が後から後から出てきて、なかなかいいプランが立たない。



 地球上の全大陸に行ってみたい。しかし、駆け足の旅は嫌だ。一つの街には、最低1ヶ月は腰を落ち着かせたい。飛行機はなるべく使わず、陸路で移動したい。美味い物食べたい。エトセトラ。あれこれ希望を出していくと、収拾がつかない。で、まず安いチケットを見つけることから始めた。



 しかし、安いチケットは安いなりに、これまた色々な制約があるのであった。連日、インターネットや情報誌と首っ引きで、格安チケットと移動方法を検討する。「○○航空・創立△△周年記念企画!世界一周特別格安チケット!!」なんていうのも見つけた。なんと13、4万円で世界一周できちゃうという破格の商品だ。しかし、ルートが限定されていて、結局我々の都合と合わなかったりする。



 じゃぁ、日本を船で出発して、上海あたりから中国入りし、陸路アジアを渡り歩くってのはどうよ、と調べてみた。おや、意外とお安いんじゃない?と、よく見ると、それは上海―沖縄間の船のお話。埼玉県在住の我々の家から、まず上海行きの船の出る港(神戸とか、下関とか)まで日本国内を移動するだけで、ロサンゼルス辺りまで飛んでいけそうな、とんでもない出費になってしまうではないか。その上、乗船料もガーッと高くなっているのであった。 



 じゃぁ、とりあえず、貧乏旅行者の集まるバンコクまで行って、バンコクで安いチケットを買うという手もある。バンコクなら何度か行ったこともあるので、多少勝手もわかる。しかし、今回の旅行は我々にとって、“生まれて初めての世界旅行”だ。最初の一歩は、アポロ11号のアームストロング船長ならずとも、こだわりたい一歩である。月面ならずとも、いままで自分が足を踏み入れたことのない地、まっさらな初対面の地に、記念すべき一歩を降ろしたい。



 で、地名で選んだ。とりあえず、響きのいい地名。それは、サイゴン! ヴェトナム戦争で、爆音の中、非業の炎とともに陥落した都サイゴン。「サイゴン。サイゴン。」口の中で唱えてみると、サイゴンから旅が始まる気分になってくる。



 ところが、だ。調べてみると、ヴェトナム行きの片道だけの航空券というのは、売られていないのであった。私がひとたびヴェトナムに入国したら、テコでも出国しないで居座るとでも、当局は思っておるのだろうか? おまけにヴェトナムはタイより日本に近い位置にあるくせに、タイに行くより飛行機代が高い。くーぅっ、なぜだ? 飛行機代というのは、距離と比例しているわけではないということを、改めて思い知らされるのであった。



 さてそこで、ヴェトナム‐日本往復のチケットを買って、帰りの分を捨てて、ヴェトナムからそのまま陸路アジアの別の国に移動するという手を考えた。が、ヴェトナム‐日本往復チケットを買ったら、きっちりそのチケットを使って帰ってこなくてはいけないという。ぬぬ。さすが社会主義共和国。道理の通らぬ命令だ。



 (夫談:これは、妻の勘違い。ヴェトナム行きの片道チケットは売られていたが、それはストップオーバーできないものだったので、僕が却下したに過ぎない。往復チケットの帰りの分もきちっと使わなければならないのは、“ヴェトナム航空”のチケットに限ってのこと。“チャイナエアライン”だと、台湾にストップオーバーできる上に、帰りのチケットを捨ててもいいということなのでした。)(妻談:そうならそうと、最初っからちゃんと言ってくれないとっ。憤(ぷん)っ。) (夫談:最初っから、そう言ってるでしょ? もう、人の話をちゃんと聞かない人だね。)(妻談:言って・ま・せ・ん。)……続く。ので、割愛して、検討中の場面に戻ろう。



 いっそ、ヨーロッパやアメリカから始めるという手もあるが、それは許されないのであった。なぜなら、出発の時は4月。同行する夫は、超寒がり。「とても4月のアメリカやヨーロッパなど行けない! 凍えて死んでしまう!」との仰せである。あっつ暑(あつ)のアジアからスタートしなければ体が持たないとの、厳としたご宣託を賜った。



 もーっ、決まりゃしない。……悶々と考えに考え、検討に検討を重ねると、終にはもう何でもどうでもよくなるのが、O型血液のいい所か、悪いところか。ケセラセラ。ええぃ、地名がいいからやっぱりサイゴン! サイゴンで決まり! 折りしも、ヴェトナム‐日本間の往復チケットのうち、帰りのチケットを捨てて、陸路で出国してもよいというチケットを発見。これだ!(夫談:あなたが発見したように聞こえるね。僕が見つけてきたんですよ、それ。)(妻談:はい、はい。)(夫談:「はい」は一回でいい。)(妻談:はぁぁぁぁい。)(夫談:伸ばさないで、いい。)……続く。ので、割愛。 それにしても、捨ててしまうことになる“帰りのチケット”はもったいない。しかし、それを人に売っても譲ってもいけない、という。ビザも必要だ。となると、なんだ、なかなか出費が大きいぞ。あれこれ無駄も出る。



 しかし、とにもかくにも、もう決めた。サイゴンから始めて、アジアの国々を巡り、中国なんぞにも寄って、インド、ネパールを経て西へ西へと進み、ああ、アフガニスタンやバングラディッシュにも寄らなくちゃ。シベリア鉄道に乗っていくというのも、いいかもしれない。モスクワも見逃せないね。で、トルコから“東洋”を出て“西洋”に入る。東西文化の境界を跨がなければ、世界一周の意味がないからね。そしてギリシャ、イタリア、フランス、ドイツなどなど西ヨーロッパを一巡り。できたらドーバー海峡渡ってイギリスにも寄りたいもんだ。そこまで行ったら東欧も一通り寄りたいね。スペイン辺りに来たら、目と鼻の先にあるアフリカにもちょいと寄ったりして。それから、海を跨いで北アメリカに入る。途中メキシコなどにも寄ったりして、ついでに中南米にも足を伸ばしなどしつつ、北アメリカを東から西へと移動して、再び海を跨いでアジアに帰ってくれば、“地球横断”世界一周の旅になるぞ。北極大陸と南極大陸とオーストラリア大陸はさすがに寄っている余裕はないだろうな。(などと、夢のごった煮のような大雑把なプランを、この時はまだ思い描いて喜んでいたのであった。)



 サイゴン。サイゴン。なんと、美しい響き。その名が我らを招くよ。(現在はホーチミンシティと改称されてしまっているが、この際、そうしたことには目をつむる。)



 ということで、気の変わらないうちに、サイゴン行きのエアチケットを買いに走ったのだった。



 (余談だが、私の持っている『広辞苑』第3版で、「ヴェトナム戦争」を引くと、なんと、まだ戦争が終わっていないではないか。今現在出版されている『広辞苑』第4版では、きっと終結していることだろう?)

          

               つづく   (part2へ)


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