2012年02月12日 11時03分25秒
ショーン・タン『ARRIVAL』『遠い町から来た話』
テーマ:読書やあれこれ
●ショーン・タン『ARRIVAL』
『遠い町から来た話』
さる高貴なお方からプレゼントされた素敵な絵本『ARRIVAL』。身近に置いて何度も読み返しています。先ず、古い皮表紙を模した装幀が良い感じ。表紙をめくると古い顔写真のような絵がずらり。いきなり60人に見つめられる感じですこし怯む。男性女性、子供から老人まで、様々な人種の顔・顔・顔。この多様な人達がこの物語を予感させるのです。
夫と妻と幼い娘がひとりいます。夫は母と娘に見送られ、トランクひとつさげて列車に乗ります。夫は大きな客船に乗り大洋を渡ります。客船の甲板には多くの貧しい人達が乗っています。おそらく夫もそのひとり。やがて船は大きな港に到着、入国審査を受けてるもよう。20世紀初頭のニューヨークに到着したヨーロッパ移民を想わせる光景。新しい国に到着した夫、しかし言葉が通じず身振り手振り。雑多な人種のなかで生活を始める夫。出会った人達も、それぞれ貧困や迫害や戦争から逃れて、この国に渡ってきたらしい。やがて夫も仕事にありつく。月日は巡り、夫は故国の家族に手紙とお金を送る。妻と娘が夫の暮らす新しい国に到着し、新たな家族の暮らしが始まる。
物語のあらすじはこんなです。夫を見送る妻と娘の不安げな表情、新しい国で夫に迎えられる時の妻と娘の幸せな笑顔がやはり印象に残ります。
しかし、この物語を豊かにしているのは、ストーリーというより絵の表現力です。緻密な描写により心象が描き出されます。この絵本はマンガのコマ割りのように進行し、そしてセリフがありません。言葉がありません。絵がセピア調単色で描かれているせいか、サイレント映画を見ているようにも感じました。
奇妙な小動物も登場します。ひとりに一匹ペットのように寄り添います。幻想的な街、そして気球のような奇妙な乗り物。奇妙なファンタジックな世界なのに、人間の営みはリアルな生活感に溢れています。
奇妙な生き物といえば、彼等の故国をのたうつ影のように覆っていた巨大な怪物、あれは「不安」という名の怪物だったのではないかと思います。今、私達日本人も「不安」という巨大な怪物にのしかかられていますからね。
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奇妙な世界といえば『遠い町から来た話』のほうが奇妙でしょうか。こちらは絵と文による短編集。『ARRIVAL』に感動したので、同じ作者のこれも読んでみたくなったのです。紅葉の葉っぱのような身体をした異次元からの交換留学生エリックの話。棒人間たちもキャラクターが凄い。19世紀オーストラリアの真珠産業を支えた日本人潜水夫達の悲話を元にした「壊れたおもちゃ」はシリアスな話し。まあ奇妙な話しとはいえ、あると思えば、あったかもしれない、あったらいいな、そんなお話しの数々が奇妙に楽しい。
原題は「TALES FROM OUTER SUBURBIA」。大都市の郊外、オーストラリアでいうなら、そこは異界への入り口だったりするのかも。
作者ショーン・タンは1974年オーストラリア生まれのイラストレーター、絵本作家。父は中国系マレーシア人で、母はアイルランド系移民の3世とあります。移民の国オーストラリアの移民の息子。かたや単一民族国家っぽい日本に住む自分。あらためて日本人の多様性のない社会に息苦しさを覚えました。
『遠い町から来た話』
さる高貴なお方からプレゼントされた素敵な絵本『ARRIVAL』。身近に置いて何度も読み返しています。先ず、古い皮表紙を模した装幀が良い感じ。表紙をめくると古い顔写真のような絵がずらり。いきなり60人に見つめられる感じですこし怯む。男性女性、子供から老人まで、様々な人種の顔・顔・顔。この多様な人達がこの物語を予感させるのです。
夫と妻と幼い娘がひとりいます。夫は母と娘に見送られ、トランクひとつさげて列車に乗ります。夫は大きな客船に乗り大洋を渡ります。客船の甲板には多くの貧しい人達が乗っています。おそらく夫もそのひとり。やがて船は大きな港に到着、入国審査を受けてるもよう。20世紀初頭のニューヨークに到着したヨーロッパ移民を想わせる光景。新しい国に到着した夫、しかし言葉が通じず身振り手振り。雑多な人種のなかで生活を始める夫。出会った人達も、それぞれ貧困や迫害や戦争から逃れて、この国に渡ってきたらしい。やがて夫も仕事にありつく。月日は巡り、夫は故国の家族に手紙とお金を送る。妻と娘が夫の暮らす新しい国に到着し、新たな家族の暮らしが始まる。
物語のあらすじはこんなです。夫を見送る妻と娘の不安げな表情、新しい国で夫に迎えられる時の妻と娘の幸せな笑顔がやはり印象に残ります。
しかし、この物語を豊かにしているのは、ストーリーというより絵の表現力です。緻密な描写により心象が描き出されます。この絵本はマンガのコマ割りのように進行し、そしてセリフがありません。言葉がありません。絵がセピア調単色で描かれているせいか、サイレント映画を見ているようにも感じました。
奇妙な小動物も登場します。ひとりに一匹ペットのように寄り添います。幻想的な街、そして気球のような奇妙な乗り物。奇妙なファンタジックな世界なのに、人間の営みはリアルな生活感に溢れています。
奇妙な生き物といえば、彼等の故国をのたうつ影のように覆っていた巨大な怪物、あれは「不安」という名の怪物だったのではないかと思います。今、私達日本人も「不安」という巨大な怪物にのしかかられていますからね。
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奇妙な世界といえば『遠い町から来た話』のほうが奇妙でしょうか。こちらは絵と文による短編集。『ARRIVAL』に感動したので、同じ作者のこれも読んでみたくなったのです。紅葉の葉っぱのような身体をした異次元からの交換留学生エリックの話。棒人間たちもキャラクターが凄い。19世紀オーストラリアの真珠産業を支えた日本人潜水夫達の悲話を元にした「壊れたおもちゃ」はシリアスな話し。まあ奇妙な話しとはいえ、あると思えば、あったかもしれない、あったらいいな、そんなお話しの数々が奇妙に楽しい。
原題は「TALES FROM OUTER SUBURBIA」。大都市の郊外、オーストラリアでいうなら、そこは異界への入り口だったりするのかも。
作者ショーン・タンは1974年オーストラリア生まれのイラストレーター、絵本作家。父は中国系マレーシア人で、母はアイルランド系移民の3世とあります。移民の国オーストラリアの移民の息子。かたや単一民族国家っぽい日本に住む自分。あらためて日本人の多様性のない社会に息苦しさを覚えました。
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