• 18 Feb
    • フライデーに記事が載りました

      フライデー2017/03/03号に角盈男さんの 記事が載っています。著名人のがん体験を取り 上る不定期の企画です。これまでに膀胱がんや 腎がんの手術を受けたスポーツ選手の話が載 ったそうです。今回の話は前立腺がんを宣告さ れた角さんが最初に最先端の重粒子線を選ん だところ、ホルモン治療の継続が必須でアルコー ルも飲んではいけないとの制約に縛られQOLの 低下が明らかとなりました。 そこで、角さんはさらに色々と調べた結果、トモ セラピーという治療法に行きつきました。 実際、従来の重粒子線治療では、前立腺全体に 高線量を投与する方法でがん治療が実施されて いるため、ホルモン治療にてがんを縮小させて 直腸との間隙が生じる必要があることや尿道被曝 を軽減される変調がかからないため、尿道に浮腫 を生じる可能性のある飲酒は制限されていました。 トモセラピーでは直腸壁に急峻な線量勾配を配置 できるため、原発巣サイズの縮小のためや潜在的 リンパ節転移の予防のためののホルモン治療が 不要であること、尿道線量も同時軽減が可能であ るため、尿道浮腫や狭窄を生じないで済むこと、 さらに周辺の転移リスクの高いリンパ節も同時に 治療することが可能です。ただし、正確に尿道の 位置を描出するため、排尿CTは必要となります。 (http://ameblo.jp/cccc-sc/entry-12209448355.html)参照。 これらのきめ細かい計画を実施した上で角さんの 治療が実施されました。1ヵ月程度の治療期間中 角さんは治療寝台の上で毎回爆睡されていました。 その後も再発なくお元気な様子でなによりです。 結果的に自分のライフスタイルに最も合致した治療 を模索しQOLの維持と厳密ながん治療を同時に 実現できた例でした。

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  • 14 Feb
    • 現代医学の発展と超高齢者がん患者

      ルネッサンス以降、西洋文明により近代科学 の発展をツールとして、自然界や地球世界は 支配されるべきものとしてみなされてきまし た。その一環としての医学においても病は克 服されるべきものとの前提に立ち、主として 感染症の領域で勝利が宣言されてきました。 20世紀後半から今世紀に至り、循環器や脳血 管疾患においても相対的ではあるものの勝利 により近づいてきた様相を呈しています。そ のため相対的ではありますが、ヒト特に先進 諸国のヒトの寿命は限界に近づき、最終的に 認知症になるかがんになるかの二者択一を迫 られるようになってきました。その結果でし ょうか、最近ではしばしばがんの超高齢者の 相談を受けることがあります。 従来、超高齢者がんの患者さんは天寿がんと いわれ積極的ながん医療が適応されないと言 われてきました。しかし、最近では比較的早 期に発見されたがんでは積極的に手術を勧め られるようになってきました。がんの手術と なると全身麻酔が前提となり1週間程度の入 院を必要としますが、これらの医療的介入は 超高齢者にとって認知症の発症リスクとなり ます。無論、医療者側ではそのようなリスク についての説明がなされるはずですが、そう でなくても、おじいちゃんおばあちゃんに大 変な思いをさせたくない、でも少しでも元気 で長く生きてほしいという希望を持たれる家 族の思いも極自然なものと考えられます。 これまでみてきたように、放射線治療を中心 としたがんの機構に迫る低侵襲治療では数週 間の外来通院のみで全身麻酔や入院は不要で す。 (http://ameblo.jp/cccc-sc/entry-12212059742.html) (http://ameblo.jp/cccc-sc/entry-12214950959.html) そういった意味で超高齢者がん患者さんにと ってQOLの維持にふさわしいがん治療といえ ます。    

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  • 10 Feb
    • 手術されるって本当ですか?

      多くの日本人は、がんが見つかった時点で 「悪いところは取って捨ててしまえ」という 考え方に基づき、手術を希望されます。また、 がんを診た医者も手術の可能性を第一に診療 体系を構築していきます。 一方、欧米ではがんは薬剤で治すものという 考え方が支配的と言われています。 だいぶ前のことになりますがこのような日本 と欧米のがん治療方針の差についてコメント がありました。 欧米のがん治療において最初の成功体験は 乳癌の薬物療法であったのに対し、日本での 最初の成功体験は胃癌の手術であったという ものです。 それにしても、我が国では転移病変に対して も「切ってほしい」と手術を希望される方に しばしば遭遇することに違和感を感じます。 手術するということはがんだけをくり抜く わけではなく、周りの正常組織でくるんで 一緒に取り出すことが必要とされています。 本来必要な機能を担っていた臓器が失われる こと、その替わりを果たすなんらかの方法を 講じる必要があることにまずは思いをめぐら せることが重要です。さらに、手術された体 は傷を治すために様々な因子を大量に放出し ますが、その因子とは実はがん細胞を増やし 体中にまき散らす働きのある因子と等しいと いうことも既に分かっていることです。 そのため、がんの手術を受けた時点でもし体 内にすでに小さな転移があった場合には手術 しなかった時と比べて転移が拡がる速度が大 きくなるというリスクもあります。   最近、急な通過障害で発症した食道がんの 患者さんに出会いました。 内視鏡検査にて下部胸部食道に突出する腫瘍 認め、生検にて扁平上皮がん。手術を勧められ てその適否につき相談にこられました。 通常の手術では食道を全部取り、胃を使って 食道の代替をさせるのですが(それでも頸の 接続部分で引っかかることが結構あります)、 今回の場合には胃の入り口にもがんが及んで いるため、腸を使った再建となります。病気に なる前と同じような食事を続けることはかなり 難しくなります。また、手術したとして完全に 再発しないで治るかというと確実ではないこと から患者さんは手術をしない治療を希望されま した。 そこで、病理組織の免疫染色を追加したところ P53陽性。PET-CTにて原発巣と所属リンパ節 に陽性、肺に多発のGGNを認めました。 全病変に44Gy/20F/4WのIMRTおよび原発巣 にrAdP53局注を併用しました。 3か月後のPET-CTでCR、 内視鏡にては炎症残存のみで病理組織は陰性。 通過障害は消失し放射線食道炎も認めず、食欲 旺盛となりました。   図1 治療前内視鏡画像 食道内腔から隆起する病変を認めます   図2 治療3か月後内視鏡画像 一部炎症性瘢痕認めるのみとなりました   図3 治療前PET-CT 下部胸部食道に腫瘤を伴う強い取り込み 中部胸部傍食道リンパ節にも取り込み   図4 治療3か月後PET-CT 下部胸部の腫瘤は消失し取り込みもなく 傍食道リンパ節も消失しています    

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  • 06 Feb
    • 小林麻央さんの放射線食道炎

      これまでも何度か小林麻央さんの闘病に関する 記事がネット上で報道されていました。2月4日 のYahooニュースには『小林麻央、放射線食道 炎の症状が快方へ「少しお腹が空く感覚戻って きた」』とありました。   一般に骨転移は根治的適応とはならないため、 がんを制御することを目的とした放射線治療は 行われないこととなっています。 そのためがんと周辺の正常組織にはほぼ等しい 放射線量が投与されます。そしてその投与量は 周辺の正常組織がそこそこ耐えられると想定され ている量となります。 そのため、一時的と考えられる放射線食道炎は 生じることがほぼ確実となります。 ただし、この症状自体はちょうど寿司屋で熱い 「あがり」を間違えて飲み込んだ時のような のどの「ちりちり」感が主体となります。さらに お腹は空いていても飲み込む時の痛みや通過障害 のために実際に物が通りにくいという状況となり ます。 なのでお腹が空かないという症状は放射線食道炎 とは別の原因である(おそらくは放射線被曝によ る全身倦怠感や嘔気)と思われます。   脊椎転移で以前に放射線治療が行われた部位から 再発した場合、再治療は不可能といわれることが ほとんどです。それは前治療において病巣と正常 組織の投与線量が同じであるためです。 それでも、十分な線量勾配を設定することにより 正常組織のダメージを限りなく減らして再治療を 行うことは不可能ではありません。     脊柱管進展を伴う脊椎転移の再照射例線量分布です 脊髄(水色矢)と食道(黄色矢)をしっかり保護し 40Gy/5Fの照射にて疼痛著明改善、下肢神経症状 消失しました。放射線食道炎症状は全くなく3か月 後のPET-CTにてCRとなりました。  

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  • 23 Nov
    • 健康食品あれこれ

      昨日、知り合いの患者さんから相談を受けました。「とりあえずのがん治療は終了したのだけど、何もしないのも不安なので健康食品を飲みたい。候補としてA,B,Cを考えているがどれがいいか?」 EBMを標榜する医師の立場からいえば、「効く根拠のないことはしてはいけない」といえば事が済みます。 一般に大病院の専門医は、自分が行った医療行為のみが正当化されるべきであり、他のすべての選択肢は統計学的に劣っているから棄却されるべきというテーゼに立っています。 でも再発の不安を抱える患者さんの気持ちに寄り添った対応(NBM)の立場からは一概に否定して済む問題ではないように思われます。 がんにいいといわれる健康食品ですが、その効果には前提のなる根拠が確立しているものは殆どありません。一方、使用経験例の検討はなされていることが多いので、服用した場合の毒性に関しては「この程度」というデータは示されています。 そのことを前提としてどのような選択をするのが望ましいでしょうか?まず言えることは、どの健康食品も効果が実証されているわけではなく、摂取し続けて元気に過ごせたとしてもそれはあくまで結果的にそうなったとしか言えないということです。ここで重要なことは、「結果として」再発せず副作用もなかったということです。 ということは、自分でこれはいいと思われるものが3つあるのであれば全部試してみる、もし副作用が出た場合にはどれかまたは全部をやめるという選択が、この場合最もふさわしいと考えられます。 ただし、あくまでその摂取については自分の判断でという条件付きではありますが。 皆さんはどうお考えでしょうか?   

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  • 08 Nov
    • がん幹細胞とHIF-1

      がんは無限に増殖する能力をもっていると考えられていますが、実際のがん組織中のすべてのがん細胞にその能力が備わっているとは限りません。一般にがん組織は多種多様な(ヘテロな)性質の細胞の集合であり、増殖能力を持っている細胞を特に「がん幹細胞」と呼びほかのがん細胞とは区別しています。このがん幹細胞の性質として、一般の幹細胞と共通な性質である自己複製能と多分化能(多種類の細胞に分化する能力)以外に薬剤耐性トランスポーター*を有すること放射線耐性を有すること* 細胞外に薬剤を汲み出す機構 など治療に対しての「打たれ強さ」があげられています。そのため、いくら抗がん剤や放射線治療でがん組織を縮小させたとしてもごく少数のがん幹細胞が生き残るとやがてがんは再増殖してくる可能性があります。また、がん幹細胞は他の正常幹細胞と同様に生存により良い環境を探し定着する(ホーミング)高い能力を持っているといわれています。そのため、原発巣を手術で切除してもこのがん幹細胞を根絶させることは容易にはできません。 がん幹細胞に関する研究は細胞表面マーカー(CD)による分類を主体として行われています。最初に白血病の幹細胞としてCD34+CD38-のマーカーを持つ細胞が同定されました。固形がんにおいても同様の検討が進み、多数の固形がんにおいても主としてCD44(v)、CD133などのマーカーが見つかっています。数年前胃癌の幹細胞マーカーであるCD44(v)陽性細胞の特異的抑制剤として潰瘍性大腸炎用の薬剤が再発見され、臨床治験が行われています。 一方CD133陽性細胞の特異的抑制剤のほうはあまり進歩がないようですが、私は数年前に粘り強く文献検索をしていたところちょうどクリスマスイブ明けの朝、再発見することができました。これらの薬剤をがんに直接投与して低線量の放射線治療を実施した例を示します。 症例 56歳女性 子宮悪性腫瘍10年前子宮筋腫手術  病理にて悪性病変指摘8年前 多発リンパ節転移 手術するも切除不能で抗がん剤投与し制御されていたが再増殖認め当院受診30Gy/1週5回のCD44(v)およびCD133の特異的阻害剤併用を伴うIGIMRT実施半年後PET-CTにてすべてCR治療前PET-CT傍腹大動脈および左閉鎖リンパ節に有意の取り込みを認める  治療半年後PET-CT病変はすべて消失 さてこのようながん幹細胞の特異的抑制剤はともにNF-KBを抑制するという性質があります。一方、抗がん剤や放射線などの細胞ストレスに対する「打たれ強さ」については、低酸素誘導性因子HIF-1タンパクと深い関係があることがわかっています。 直接がん幹細胞性とこのHIF-1との相関について、最近の研究ではあまり注目されていないようですが、HIF-1タンパクの直下でシグナル伝達に関与している因子がNF-KBであることがわかっています。 HIF-1タンパク自体については、VHL(vonHippel Lindau)タンパクの存在下でユビキチン化され分解されることが知られています。多くのurothelial系のがん(腎臓、尿管、膀胱系に一般的な上皮性悪性腫瘍)ではこのVHL遺伝子に変異が認められ、結果的にHIF-1タンパクが蓄積されるといわれています。このことは、腎臓がんなどが抗がん剤に抵抗性で難治がんといわれる要因のひとつと考えられます。当院ではこのようなurothelial系悪性腫瘍に対しても、がん幹細胞の特異的抑制剤を併用し放射線治療による局所制御効果をあげています。今後、膵臓がんなどさらに難治性のがんに対しても、有効と考えられる薬剤を使用し治療効果の向上をめざしたいと考えています。 症例 49歳 男性3年前 左腎臓がん 手術1年前 多発リンパ節腫大認め 標的薬開始するもPD当院初診30Gy/1週5回のがん幹細胞阻害剤併用を伴うIGIMRT実施4か月後PET-CTにて完全消失 治療前PET-CT多発リンパ節転移(黄色矢)を認める 水色矢は正常な右腎 治療4か月後 PET-CT多発リンパ節はすべて完全消失している 

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  • 02 Nov
    • エピゲノムの変調と修復

      エピゲノムとは、ゲノムの配列ではなく、ヒストンの脱アセチル化やDNAのメチル化のような化学修飾により規定される遺伝情報のことでした。このエピゲノムの変調ががんだけでなく生活習慣病や各種神経精神疾患の原因の一つであることもわかっています。一方、妊娠中の母体が極端なダイエッターであった場合、生まれてくる子供が太るということが知られています。その原因として低栄養状態で胎児期を経過することにより、胎児のエピゲノムに変調が生じ生下時に脂肪を蓄積するような代謝が優位となることが最近の研究で判明しました。おそらく胎児は生まれてくる環境が生残に厳しいものになるであろうことを感知し予め代謝系を修飾したことによるものと推定されています。 しかしエピゲノムの変調は継続するわけではないようです。普通の栄養状態で育った子供は数年で正常なプロポーションに戻ります。 ということはエピゲノムの変調で生じる疾患ももとに戻る可能性があることが考えられます。現時点でどのような環境の変化により、その変調が修復されるのかについて全容は解明されていません。今後、適正な環境の個別最適化が進むことが期待されます。    

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  • 31 Oct
    • ゲノムとエピゲノム

       がんの発生は多段階の遺伝子異常(ゲノムの改変)が原因であることが示されています。特にP53というがん抑制遺伝子はゲノムの守護者ともいわれておりその異常はがんの約半数で認められるともいわれています。 細胞が分裂する際にゲノムがコピーされますがその時点で分裂をいったん停止させコピーミスがあるかないかをチェックし、もし修復可能なミスであれば修復を試み、不可能であればその細胞は自死させるという機構があります。 P53はこの細胞分裂の重要な段階(分裂の停止、コピーミスの修復、自死回路への誘導など)に関係していることがわかっています。もしP53に異常があれば、がん細胞の分裂にブレーキがかからないだけでなく、ゲノムに異常を持った細胞でも自滅せずにどんどん増殖を繰り返すこととなります。では実際の患者さんでこのP53の異常の有無はどのように検索できるのでしょうか?より直接的な手段としてはがん病理組織の免疫染色を行う方法があげられます。当院では必要に応じ病理組織もしくは細胞診で免疫染色を行っていますが手術ではないため部位によっては検査が実施できない場合もあります。一方、汎用性の高い手段としては、血液検査で抗P53抗体値を計測する方法もあります。 話は飛びますが、今年のノーベル医学生理学賞の大隅先生の「オートファジー」という機構と近似のものとして「ユビキチンプロテアソーム系」という機構が知られています。この系は特定のタンパクは不要になった時点でユビキチンにより運搬され、ちょうど坩堝のような装置であるプロテアソームで分解される一連の過程のことを示しています。これに対しオートファジーは非特定のタンパクを必要に応じ作成される小胞により分解するものといわれています。しかし両者の間にはクロストークも存在するといわれており全容が解明されたわけではありません。 話をP53タンパクに戻します。正常なP53タンパクであれば、不要となった時点でユビキチンプロテアソーム系の分解を受けるのですが、構造に異常がある場合にはユビキチン化されずに細胞内に蓄積していきます。その細胞がなんらかの理由で死滅した際にこの異常なP53タンパクが血液中に放出されます。通常は血中に存在しないタンパクであるため免疫系の認識を受け抗体が作成されます。血中の抗P53抗体が陽性の場合P53タンパクの構造に異常があることがわかります。長々と分子生物学話を書いてきましたが要するにがん抑制遺伝子であるP53の異常が見つかった場合、ゲノム傷害を通して細胞を殺すタイプの抗がん剤や放射線治療の効果が期待通りにいかないことを意味しています。 最近の研究により、遺伝子異常によりがんが発生増殖するというパラダイムはすべてのがんを網羅しているとは言えない状況となってきました。タンパクがゲノムから転写されるには様々な過程を経る必要があります。通常、ゲノムはヒストンという糸巻状の構造物に巻かれた状態で保存されています。実際にはその糸巻がいくつも連なっている状態にあると想像してください。その糸に相当するのがゲノムです。細胞内でこの形で保存されるためには糸のはじめと終わりがちゃんと糸巻に止まっている必要があります。その留金の役割を果たすのがヒストン脱アセチル化酵素といわれています。転写が実行されるためにはまずこの部分がアセチル化される必要があります。また、長いDNA情報の中から必要となる遺伝子コードを正しく読み取るために特定のコードの前にプロモーター領域という前書き部分が設定されています。通常はこのプロモーター領域にメチル基という印がつけられています。メチル基をはずすことにより転写が開始されます。ゲノムの配列ではなく、ヒストンの脱アセチル化やDNAのメチル化のような化学修飾により規定される遺伝情報をエピゲノムといいます。正常細胞では分裂時にゲノムだけでなくエピゲノムも伝承されることがわかっています。最近、がん細胞では不必要なヒストン脱アセチル化やDNAメチル化が生じているため、ゲノム自体に異常がなくても適正なタイミングで適正なタンパクが転写されなくなっているというようなエピゲノムの異常が生じていることがわかってきました。なお、エピゲノムの異常はがんだけでなく生活習慣病や各種神経精神疾患にも深く関与していることが指摘されています。 特定のゲノムやエピゲノムの異常を伴うがんを制御することは一般には難しいことがわかります。そのようなたちの悪いがんを制御するため様々な方法が試みられています。 現在我が国では放射線の効果を増強する方法として、過酸化水素の局所投与(KORTUC)が注目されています。この方法の理論的背景は放射線治療時にがん組織に供給されるラジカルの量を過酸化水素の併用により増加させるというものです。この方法はラジカルが放射線治療の生体への影響の中心をなすというパラダイムに依っておりいわば「屋上屋をなす」手法といえます。集中性の高い放射線治療(IMRT、粒子線治療)を行えば不要な方法です。 当院ではたちの悪いがんのメカニズムを打破できる特殊な放射線増感法を用いて局所制御に成功しています。 症例1 66歳 男性胃癌手術後に肝転移指摘され、抗がん剤行うもPD PET-CTにて多発肝転移認め当院受診30Gy/1週5回の放射線増感(P53系)を伴うIGIMRT実施半年後PET-CTにてすべてCR抗P53抗体 2.8(治療前) 0.9(治療終了時)0.8(1年後)  治療前 PET-CT  治療6か月後 PET-CT多発肝転移はすべて消失 症例2 91歳 男性老人ホーム入所中、タール便、通過障害出現入院絶食となる 内視鏡にて幽門および前庭部の腫瘍指摘 高齢のため緩和ケアといわれ当院受診CT上幽門前庭部に腫瘤多発、幽門部狭窄抗P53抗体正常 21Gy/3日4回の放射線増感(エピゲノム系)を伴うIGIMRT実施1週後より下血止まり食事摂取可能となった3か月後CTにて腫瘤消失、幽門部狭窄なし3年経過し再発認めず 治療前CT幽門前庭部に多発する腫瘤認め(黄色矢)同部で通過障害を生じる  治療3か月後CT腫瘤はすべて消失し通過障害認めず     

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  • 25 Oct
    • 抗がん剤なしに治癒 ─悪性リンパ腫─

      侵攻性の悪性リンパ腫の標準治療は抗がん剤+標的薬です。放射線治療は併用する場合もしない場合もありますが、もし併用する時はIFRT(病変のある領域をすべてカバーする超広範囲照射野での治療)となっています。最近、悪性リンパ腫の放射線治療はPET-CTなどで確認された病変のみに限局した高品位照射(ISRT)が勧められるという報告が見られます。ただしその場合でも全身治療である抗がん剤+標的薬を省略できるわけではありません。7年前に標準治療を拒否した侵攻性悪性リンパ腫を経験しました。たまたま成功した例であり、今でもこの方法をお勧めする根拠はないことをお断りしておきます。でもこの方が治ったのは事実ですし、今日、電話で元気なお声を聞き、これでよかったと安心しました。やはり、自分のがんを治すのは自分自身なのだということを改めで感じました。  症例 50歳 女性 悪性リンパ腫 ステージ23年前 左鼠径部腫大 生検実施するも放置次第に増大しCTなどで複数のリンパ節腫大生検にてML(DLB)、標準治療として抗がん剤+標的薬勧められるが拒否当院初診 PET-CTにて腹部-骨盤部のリンパ節腫大確認標準治療がR-CHOPであることを再三説明するも拒否され、放射線単独での治療を希望 全病変に43.3Gy/13回3週のIGIMRT(画像誘導下強度変調照射) 6か月後 PET-CTにてCRsIL2R(腫瘍マーカー)治療前2640 → 3か月後258(正常)7年経過後も無再発生存  図 IGIMRT線量分布図IFRTでなくISRT用の分布が選択されている  図 治療前 PET-CT 腹部大動脈以下の多発リンパ節腫大(水色矢)中央に正常膀胱の取り込みを認める    図 治療6か月後PET-CT病変の完全消失を認める正常な心、腎、膀胱への取り込みのみ            

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  • 24 Oct
    • がん免疫療法

      プロフィールや本記事の下のADコーナーには、多くのがん免疫療法施設の広告が出ていることと思います。今回はこの免疫療法について現在想定されていることを書こうと思います。 手術、抗がん剤、放射線治療に次ぐ第四の治療法としてがん免疫療法が注目されています。具体的には樹状細胞、Tリンパ球細胞(αβT、γδT、活性化リンパ球、細胞障害性リンパ球など)、NK細胞と様々な免疫細胞を用いたがん治療法が提唱されています。 がんの全身治療といえば一般に認められているのが化学療法(抗がん剤や分子標的薬)です。これらの効果については概略30%といわれていますが、実際には全症例の中で標準的な投与方法を継続できる割合が30%ですのでトータルでみると0.3×0.3≒0.1(10%)の方に有用となります。 一方でがん免疫療法についても全体的には数%程度の有効性といわれています。なぜがん免疫療法の効果は高くないのでしょうか?多くの免疫療法では細胞を点滴で全身に投与しますが、1回の点滴で体内に入る細胞数は多くても数億個です。もし、治療を受けようと思っている方は施設に問い合わせてみると正確な数値がわかると思います。仮に6億個とすると、全身の細胞数は60兆個なので、10万個のがん細胞に1個の免疫細胞が遭遇するという計算となります。免疫細胞がいくら強力であったとしても寿命がありますから、これでは全く歯が立たないことがよくわかります。 またよく考えてみると、もしがんに対する免疫機能が働いていたとしたらそもそもがんにはなっていないはずですが、現実には体内の免疫監視機能を掻い潜ってがんは発生し増殖転移をしてきています。どうしてがんが免疫監視機能を掻い潜ることができるのかについて、色々なことがわかってきました。ひとつには、がん細胞が攻撃型リンパ球の攻撃性を発揮させないような因子を出していること、もうひとつにはがん細胞はある程度のサイズになると自分の周囲に抑制型リンパ球というバリアになる細胞をまとっていることがあげられます。 最近ではこれらの事象を取り除くような薬剤であるチェックポイント阻害剤が開発されてきました。前者に対しては抗PD1抗体、後者に対しては抗CTLA4抗体があげられます。しかし抗PD1抗体は有効性が10-20%程度と低く、抗CTLA4抗体には間質性肺炎や肝炎などの自己免疫疾患という副作用が問題となっています。 がんの免疫療法を行う際に重要となることは体内に存在する多数のがん細胞の機能を確実に制御するとともに、周囲にある抑制型リンパ球を効率良くはぎ取ることです。そのために最も有効な方法が、全がん病巣への高品位な強度変調放射線治療を免疫治療に先立って実施することです。これにより、がん細胞の制御にあわせ、周囲の抑制型リンパ球の一掃が確実に実現できます。これまで樹状細胞を使った免疫治療では、がん細胞の表面に発現しているであろうと推定されるペプチド(タンパクの断片)をナイーブな樹状細胞に認識させた「ワクチン」を、がんとは無関係な表在リンパ節周囲に皮下投与する方法がとられていましたが、使用するペプチドがそれぞれの患者さんのがん細胞表面抗原とは必ずしも一致しないことから、有効性は極めて限定的でした。 一方で加温やエタノールなどの化学物質ではなく、放射線により制御されたがん細胞の表面抗原は、タンパク変性を伴わないため体内の免疫細胞(特に単球系のマクロファージや樹状細胞)により認識され、特異的ながん免疫の再構築の可能性がより高いと考えられています。そのような特異的ながん免疫をより効率よく再構築させるには、放射線治療を行ったがん組織にナイーブな樹状細胞を局所投与する方法があります。こうした患者さん体内で特異的ながん免疫を再構築する場合に重要なこととして、癌周辺の正常リンパ節を破壊しないことがあげられます。従来の放射線治療ではがん病巣の所属リンパ節は、予防的に同時治療することが推奨されていました(推奨されないまでも技術的に正常リンパ節を保護できませんでした)が、特異的がん免疫の成立のためには正常なリンパ節を極力温存することが重要と考えられます。 当院でのトモセラピーによる複数病変照射では周辺正常リンパ節を確実に温存することが可能となっています。 もし免疫治療を考えている方がおられましたらまずはその治療に先立ち、がん病変を確実に制御したうえで再発しないために免疫治療を行われることをお勧めします。  

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  • 22 Oct
    • 粒子線断られ組  ──高齢者肺癌──

      人口構成の高齢化に伴い、高齢者の肺癌はまれなことではなくなってきました。以前であれば「高齢なのだから何もしないで天寿を全うしましょう」といわれていましたが、最近ではどんどん手術できるといわれる年齢があがってきています。しかし高齢者が手術をうけると全身麻酔や連続したベッドレストを経験することにより認知症が発生することも危惧されています。このような患者さんにとっての朗報が粒子線治療です。以前、放医研を管轄していた旧科技庁(現文科省)の官僚は「風邪引いたら1週間は具合悪いけれど肺癌なら1-2日重粒子受ければ治る」といったとか。確かに粒子線治療の適応となった症例の局所制御効果は80%を遥かに超えており患者さんの身体的負担は極めて少ないことがわかっています。ただし、粒子線治療適応には厳格な制限があります。重要臓器近傍の腫瘍や直接浸潤があるような場合には治療できませんし、以前に粒子線治療を実施された患者さんの再治療は粒子線施設でなくても不可能といわれることがよくあります。当院では粒子線治療を断られた患者さんに対しても安全かつ有効なIGIMRT(画像誘導下強度変調照射)を実施しております。 当院での治療が有効だった2例を示します。 たとえ治療を断られたとしても、あきらめる必要はないということがよくわかります。 症例1 86歳男性半年前、検診にて肺異常陰影指摘され生検にて非小細胞肺癌2か月前より重粒子線や陽子線施設にて治療希望するもいずれも断られる(理由:大動脈直接浸潤のため粒子線にて大動脈穿孔のリスクがある) 当院初診 PET-CTにて原発のみであることを確認28.1Gy/2週10回のIGIMRT実施後、画像評価し縮小を確認26.1Gy/2週10回(39.2Gy/2週10回の標的内同時追加)のIGIMRT実施3か月後 PET-CTにて完全消失を確認 図 治療前半の線量分布図(大動脈浸潤部を含む高線量域を設定)  図 後半の線量分布図(大動脈への被曝量を制限)  図2 治療前後のPET-CT治療前に認めていた取り込み部分(左)(黄色矢)は治療3か月後には完全消失(右)  症例2 81歳女性 肺癌 リンパ節転移5年前 左下葉の肺癌原発に陽子線治療実施2か月前 縦隔リンパ節に再発を指摘された複数の施設で以前に陽子線治療を受けているため今回の再発には治療手段がない、緩和ケアの適応であるといわれた当院初診 PET-CTにて縦隔に2個所の転移を指摘48.5Gy/2週10回のIGIMRT実施5か月後のPET-CTにて完全消失 図3 線量分布図左上縦隔リンパ節および食道近傍のリンパ節に対して集中性の高い治療を実施  図4 治療前後のPET-CT左側の治療前には上縦隔(水色矢)および中部食道周辺(ピンク矢)にも淡い取り込みを認める。治療5か月後の右側ではともに完全消失している  

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  • 14 Oct
    • 前立腺「ちょいワル」がん 親父達

      検診でPSA値が高かったといわれたら 一般に泌尿器科を受診することになります。 泌尿器科の前立腺がん診療ガイドラインは 2012年版が最新のもので多くの患者さんは このガイドラインに則って診療を受けて おられることと考えられます。その原則は 大まかには非進行期では手術、進行期では ホルモン治療ということになります。 そしてホルモン治療を行っても再燃してきた 場合には抗がん剤が使用されます。 抗がん剤や強いホルモン治療に耐えられなく なった場合には緩和ケアとなります。 患者さんの中にはこれらの方針に納得できず 他の治療方法を探しておられる方もおられる と思います。 当院では8年前からこのような患者さんが何人 も来られ治療を受けています。 そのような方を診ている中で気になったこと がいくつかありました。 1. 病期診断 がんが前立腺内に留まっているのかリンパ節 や他の臓器に転移しているのかを診断するた めにガイドラインでは骨シンチグラフィー、 CT、MRIが勧められています。 ほとんどの患者さんでは骨シンチと骨盤内CT およびMRIのみが実施され病期診断(ステージ ング)がなされています。 ところがこれらの検査では骨盤外のリンパ節 転移や骨以外の実質臓器転移は十分に診断さ れるとはいえません。 また骨転移に関しても骨シンチは単に骨代謝 の亢進を見ているため実際に活動性のある 転移病変が存在しているかどうかについては 不明です。 一方でがん転移を検索するために用いられる FDG-PET-CTは前立腺がんでは取り込みが高く でないこともあってそれほど有用とは言われ ていません。 当院ではFDGの代わりにCholineを用いたPET-CT をお勧めしています。 その結果従来の検査法では見つからなかった リンパ節転移や実質臓器(肝)転移が判明し た例が何例かあります。 今後は全身MRI DWIBSがCholine PET-CTにとって 代わっていくと考えられています。 2. 前立腺がん局所治療の適応 非進行期の前立腺がんには局所治療として 手術(ダビンチなどの低侵襲手術も含む)、 放射線治療(IMRTなどの外照射や小線源治療) が適応されます。 1.でも述べたように本来の転移病変が見過さ れて前立腺のみに対する局所治療が実施され た場合には早晩再燃してくることになります。 3. 外照射の治療回数 IMRT(強度変調照射)などの外照射は我が国 でも1回毎に治療費が算定されています。 そのため極端に多い治療回数と長い治療期間 (40-50回 8-10週)が選択されています。 しかし周辺正常組織へのダメージが少ないIM- RTでは放医研の重粒子線治療がそうであるよ うに少ない治療回数(12-20回)でも局所制御 率及び周辺正常組織障害の軽減は極めて良好 なものとなります。 一方、粒子線治療についてですが、1990年代 から治療が行われています。 かつて重粒子治療を希望された何人もの患者 さんを紹介したことがあります。 これらの患者さんは前立腺がんの制御効果は 絶大なものがありましたが、いずれの方も 数年後に尿道狭窄が発生しました。 当時の技術では前立腺内の尿道への被曝を軽 減する方法がなかったためでした。 これらのことを踏まえ、当院では尿道浸潤の ない前立腺がんの患者さんには尿道線量を 1割低減した中等度寡分割(20回4週間)IMRT を実施しています。 治療に先立ち、Choline PET-CTなどによる全身 検索を実施し、有意な転移病変も同時に治療 していることはいうまでもありません。 4. 救済放射線治療 3.で述べたように前立腺に限局していなかっ た場合、手術など局所治療に終始していたの では早晩再発をしてきます。 そのような場合泌尿器科医はTumor bed(手術 した周辺領域)への救済的放射線治療を依頼 してきます。 以前より私は本当にその領域に再発している のか疑問をもっていました。 そんな折たまたま知り合いの院長が、前立腺 がん手術後にPSA値が再燃したため大学病院 にて救済放射線治療を実施することとなった 時点で相談を受けました。 早速Choline PET-CTを実施したところ手術した周辺領域ではなく1個所の骨転移がみつかりました。もし救済放射線治療を実施していたとしてもPSA値は改善せず、照射に伴う腸管障害などが発生していたところでした。この方は適正なホルモン治療の継続で PSA値の増悪を見ずに数年元気で経過しています。 5. ホルモン治療の継続 前立腺がんではホルモン療法も有用な治療で はありますがそれだけで完治することはあり ません。 そのうえホルモン療法により不快な副作用が 生じることもありますしホルモン療法を6ヶ 月以上実施された方では心筋梗塞を生じる可 能性が高くなることも知られています。 前立腺がんの進行状況や全身状態や高脂血症 糖尿病などの合併症があるかないかなどを含 めてホルモン療法を行うか行う場合にはどの 程度の期間行うかなどを考えるべきです。 10年くらい前は強度変調放射線治療(IMRT) を行うのに半年間待っていただく施設があっ たのも事実です。この待機期間中にやむなく ホルモン療法を行っていた時期もありました。 現在では当院を含めて受診後1ヶ月以内、 早ければ1週間以内にIMRTの開始が可能な 施設もあります。 前立腺がんと診断されてすぐに放射線治療を 行えばホルモン療法を行う場合でも最低限の 期間ですみます。このような状況であるにも かかわらずホルモン療法を長期間実施した後 にIMRTを依頼されることが多々あります。 なかには狭心症や心筋梗塞がある方に対して も半年以上のホルモン療法が実施されている こともあります。 ホルモン療法に関する医学論文から下記の事 実が示されています。 A. ホルモン療法は虚血性心疾患、心筋梗塞お よび関連死亡を増やす。 B. 両側睾丸除去はこれらを増加させない。 C. 虚血性心疾患が生じても生命予後の短縮は ない。しかし、虚血性心疾患が生じればQOL は明らかに低下する。 D. ホルモン療法の開始後は数ヶ月で肥満、高 脂血症、糖尿病の悪化などが生じる。 E. ホルモン療法はカソデックス単独であれば 増量しても虚血性心疾患は増加させない。 しかし、ゾラデックスを併用すると増加する。 今回のまとめとして診療ガイドラインはあく まで総論としての枠組みを示しているに過ぎ ず個々の症例に対して患者さんが望めば個別 最適化を考慮した治療を実施することが肝要 であるといえます。 最後に当院開設初期に受診された寡転移進行 期前立腺がん 「ちょいワル」がん 症例の まとめ(2010年時点)を記載します。 その後も全員生存しており 1例(肝転移)以外では無再発のままです。  原発+精嚢および骨転移(水色矢)も同時 照射した前立腺がん症例の線量分布です。 尿道線量の軽減(オレンジ色矢)も図って います。  

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  • 13 Oct
    • 安心してください、ちゃんと消えてますよ!

      最近の症例 66歳女性  卵巣がん術後多発リンパ節転移 1年半前、卵巣がん手術 術後抗がん剤*3コース実施 半年前 腫瘍マーカーCA125 22→43と急上昇 腹部リンパ節腫大 手術勧められたが拒否 PET-CT画像センターよりの紹介にて当院初診 リンパ節転移は腹部大動脈周囲から両側 総腸骨レベルに多数存在、CA125 86↑ 40Gy/2週10回のIGIMRTを実施。 3か月後PET-CTにて全病変消失。 CA125は9(正常値は35以下)↓ 図 腹部大動脈レベル治療前PET-CT 図 腹部大動脈レベル治療3か月後PET-CT 図 総腸骨レベル治療前PET-CT 図 総腸骨レベル治療3ヶ月後PET-CT 多発リンパ節の取り込みはすべて消失  

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  • 09 Oct
    • 複数病変が全部消失 ─ 乳癌 ステージ4 ─

      進行期の段階でみつかった乳癌では乳腺に がんがあることは自明の事実であっても全身 のどこかに転移している可能性が高いので、 しこりだけを取り去る手術をしても残った 転移部位からどんどん再発してくることが わかっています。 まるで”木をみて森を見ず“のような対処法と いえます。 もっと悪いことに、複数病変があり原発の 乳腺とリンパ節だけを手術した場合、骨や肺 などの残存転移病変は勢いづいてきます。 外科医はこの事をわかっていても話しません が手術した傷を治そうとする正常組織からの 修復信号が癌の増殖因子と同じために起きる 現象です。数か月であたかも癌が“やられたら やり返す10倍返しだ!”といわんばかりの結果 に終わることがよくあります。 そのため進行期乳癌では全身に効く可能性の ある抗がん剤と感受性がある場合のホルモン 治療が標準治療となっています。その反応性 には様々な報告がありますが一般論として 固形癌の化学療法の有効率は30%、治療期間 と同じだけの生命延長という相場です。ただ しこれらは欧米人を対象としたデータであり 人種間の差なのか、潜在体力の差なのか不明 ですが我が国を含む東洋系の人では標準量の 抗がん剤投与が継続できる確率が30%程度と いわれています。 つまり、抗がん剤で利益を得られる可能性は 30%×30%=10%ということになります。 そのため、有用性がほぼ同等と考えられる 全身免疫療法が代替療法として注目されて いるという現状にあります。 ただし全身免疫療法だけで確実な局所制御が 得られる可能性はほぼ期待できず、評価すべ き効果もあいまいです。なぜなら培養し全身 投与される免疫細胞は多くて数億個ですが、 人間の体は60兆個もの細胞から成り立って いるため、10万個レベルの癌細胞に対し漸く 1個の免疫細胞が到達するという勘定になる からです。免疫細胞には寿命があり癌細胞を 殺す能力には自ずと限界があります。 一方で、乳癌や前立腺癌でホルモン感受性の 高いことが証明されている場合に使用される ホルモン療法の有用性は抗がん剤とは異なり 癌細胞に感受性がある限り無再発状態を継続 できる可能性があります。 その場合でもやがて癌細胞のホルモン感受性 が変異していき数年のスパンで再燃してくる ことがしばしばみられます。これは上皮増殖 因子変異を伴う非小細胞肺癌に対する低分子 標的治療にみられる事象とよく似ています。 当院では進行性の固形癌(主にステージ4) で標準治療が無効もしくは継続不能となった 患者さんに対し、全病変制御を目的とした IGIMRT(画像誘導下強度変調照射)を主体と した局所治療を実施しています。手術と異な り、放射線治療の場合正常組織ダメージが少 なく傷を治す修復信号の量の発生もわずかで あることがわかっています。また、従来の放 射線治療は複数病変があっても1個に限定し て照射を行っていましたが、この方法では 画像検査で判明したすべての病変を同時期に 治療することでいわゆる“やり残し”がないこ とが特徴です。 比較的若年の進行性乳癌患者さんの治療例を 3例提示します。 症例1  44歳女性 11年前(33歳時)右乳癌温存手術 ホルモン感受性(+)のため、ホルモン治療 +ファーストライン抗がん剤 8年前 多発骨転移出現 ビスフォスフォネート投与、セカンドライン 抗がん剤 1年前 疼痛悪化しモルヒネ開始 9か月前 疼痛悪化し下肢麻痺出現、 胸椎に定型的放射線治療(30Gy/10回) 2か月前 多発骨転移出現、疼痛および下肢 麻痺悪化 当院初診 MRI、CT上胸椎は骨皮質を残し ほぼ全体に腫瘍に置き換わっており一部 脊柱管内に進展している。放置すると確実に 下肢完全麻痺となる状態。 放射線照射の既往があり通常の再照射では 半年後に放射線障害による下肢麻痺が出現 してくる。 当院での全病変IGIMRTでは脊髄損傷を 生じずに腫瘍制御できる確率は8割-9割程度 と説明する。 40-48.5Gy/2週10回のIGIMRTを多発骨転移に 実施。 1-CTP(骨代謝マーカー)  治療前12.7→3か月後8.5と低下。 PET-CT再検にて完全消失。 図  胸椎レベル治療前PET-CT 図 胸椎レベル 治療3か月後PET-CT  多発骨転移および脊柱管内進展はすべて消失 心および左腎は正常な取り込み 図 骨盤レベル 治療前PET-CT 右腕の取り込みは注射剤のもれ 図 骨盤レベル 治療3か月後PET-CT 多発骨転移はすべて消失 両側腎および膀胱は正常な取り込み 症例2  39歳女性 4年前 右乳癌指摘され 部分切除+術後放射線治療。 1年半前 リンパ節転移出現し切除 その後 全身免疫治療行うも腫瘍マーカー上昇 PET-CTにて多発骨転移出現 左肺に結節指摘 当院初診 多発骨転移は全病変IGIMRT適応。 左肺病変は間質性肺病変の可能性高く、薬物 治療を勧めると説明 44Gy/1.5週7回のIGIMRTを多発骨転移および 右腋窩リンパ節に実施予定し 32Gy/1週5回時点で骨髄抑制のため終了。 同時に間質性肺病変への薬物療法を2回実施。 3か月後 CTにて左肺結節および右腋窩リンパ節消失、 PET-CTにて完全消失。 CA15-3(腫瘍マーカー)  治療前 120.5→3か月後 7.4(正常化) KL-6(間質性肺疾患マーカー)  治療前 2550→3か月後256(正常化) 図 治療前PET-CT 図 治療3か月後PET-CT 多発骨病変、右腋窩リンパ節および左肺結節 のすべてが消失 脳、心、両側腎、膀胱には正常な取り込み 症例3  48歳女性 3年前 左乳癌S1指摘され、代替療法のみ 半年前 両側乳癌リンパ節転移と診断  代替療法施行するも2か月前から背部痛出現 PET-CTにて 両側乳癌 左腋窩リンパ節 超多発骨転移、 微小多発肺-葉間リンパ節転移 当院初診。 超多発転移のため全病変IGIMRTを実施すると しても投与量を軽減する必要がある。 照射の効果を増すため、癌幹細胞抑制効果の ある経口薬を併用すると説明 40Gy/2週10回のIGIMRTを全病変に実施予定し 20Gy/1週5回時点で骨髄抑制のため終了。 マーカー等異常値認めず。治療終了時点で 疼痛緩和し、乳癌本体も縮小。 以後、ホルモン治療を継続。 図 治療前PET-CT 図 治療1か月後MRI DWIBS 骨盤部から大腿骨にかけて一部残存を認める ものの治療前に認められた多発骨転移、両側 乳腺左腋窩の取り込みの大部分は消失する

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