大阪―水戸を行く(水戸市 後藤秀文さん) | ぶろぐ・で・あさひ

大阪―水戸を行く(水戸市 後藤秀文さん)

実家は茨城県。アオムシです。



週末に友人の結婚式があり、帰省してきました。

大阪―水戸間、およそ650キロ。
新幹線と特急を使うと5時間くらいです。


往復すると一日の半分近くが移動ということになりますが

友人のことを思うと

今回に限ってはあまり「遠い」と感じる時間ではありませんでした。


もちろん一つは、人生の困難を乗り越えて、ひとまず結婚というゴールを迎えた
お祝いだからということ。


そして、もう一つはその友人が昨年の12月に成した、


自転車による大阪→水戸間走破という出来事。


道中送ってもらっていた写真。

富士山がうまく撮れなくて、心底葛飾北斎に畏敬の念を抱いたとか。


もともと自転車にはほとんど乗ったことがなかったという人でしたから

実際にやってみたいと話を聞かされたときは

「可能だとは思うけど自分ならやろうとは思わない」

と答えました。

危険が伴うし、結婚という大事を控えた時期でもありましたから。


ですが、


「陸続きの道なのだから、自転車で少しずつ漕いでいけばやがて着くだろう」


「こんなことが出来るのは最後の機会だろうから、学生のようなことをしてみたい」


という彼の言葉には穏やかな決意があり、


僕は僕自身にできる最低限のアドバイス、


つまり自分が一日に走れる距離をあらかじめ知っておくこと、

パンク修理の方法、

リタイアするときに自転車を公共機関に積む方法を説明するなどして

出発の日まであれこれ準備をお手伝いさせていただきました。



結果、12月後半の冬の本州を7日間かけて

無事に大阪府吹田市から茨城県水戸市までを走破。

途中、鈴鹿や箱根の峠を越えての道行きです。


僕自身、長距離のツーリングは経験が無く、

またほとんど自転車に乗っていなかった人がそれを実行したことは印象深い出来事でした。



ちょっと他人行儀ですが、せっかくなのでお話を伺ってきました。



Q.何もかもが初めてづくしだったとは思いますが、どうでしたか?


A.予想していた困難はもちろんのこと、予想していなかった困難も多かった。
 一日目は「雨天」。
 東山から山科にかけての寒さは全行程のなかでも屈指で、雨というより氷雨でした。
 雨の京都は風情がありましたし、スタートが雨だったことで、そのあとの行程では
 多少の困難が気にならなくなったと思う。

 ただ、「箱根」は予想を遥かに凌駕した苦行でした。
 きついきついとは聞いていたし、相応の覚悟もしていましたが、本当にしんどかった。
 あのキツさは他にあまりないので他の難所も軽めに感じられるようになった。
 箱根を越えたあとは、「こんなの、箱根に比べれば」と呪文のように唱えながら漕いだ記憶があります。
 健康な方は一度やってみることをお勧めします。
 人生に役立てようと思ってやったわけではありませんけど、ちょっとしたことなら

 何でも無いと思えるようなると思います。



Q.おそらく、今回の出来事でだいぶ運動不足が解消されたことと思うんですが

 それとは別に得られたことがあればお願いします。


A.1つだけあげるとするなら、「壁について」でしょうか。
 よく壁にぶつかると言いますが、自転車に乗っていて壁にぶつかることはまず無いんですね。
 あるのは坂。
 越えられそうにもない山。
 その山もその坂も一歩の積み重ねで確実に越えることが可能だということ。
 それを深く実感しました。
 人生にも壁は無いと信じますね。
 よりよいルートを見つけるのも大事でしょうけどね。



Q.道具についてお聞きします。

 自転車、荷物の積載方法、衣類については出発前にだいぶ悩まれていましたが

 使用感のほどはどうでしたか?


A.自転車はタイヤが太いので走りが重くなるかという懸念があったけれど

 実際はあれでよかったと思う。

 どちらかというと道が悪いことが多かったし、ハンドルについては

 今回は慣れていなかったからまっすぐのものにしたけれど

 疲れてくるとグリップの端を握っていて、腕の向きはこう(前に倣えの姿勢)の方が

 楽なんだと分かった。あの端っこは後半けっこう活用した。

 

(使用したのは小ぶりなバーエンド部分のあるergonのエンデューログリップ GE-1 「HBG066」



 荷物は、背負うのはさすがにと思っていたけれどあさひさんの提案してくれた

 ドイターのバッグラックパックII 48L 左右セットは使いやすかった。

 初日の雨もカバーが凌いでくれたし、食事や宿をとる際に簡単に取り外しできるのは

 疲労が溜まった状態ではありがたかった。作った人の思いやりすら感じましたね。

 雨といえば、最初はウインドブレーカー的なものを考えていた上着はほんとに助かりました。

 これ(A11 Freedom Jacket )で無ければ初日の雨で挫折していたと思う。

 挫折というか、危険を感じてリタイアしていたと。

 ポケットについてはちょっと、使いどきがよく分からなくてあまり活用できなかったんだけど

 雨風に対してタフだし、袖口や脇の下の開けたり締めたりの使いやすさが良かった。

 雨合羽のような不快感が無くて、上着は止まったり休憩中は脱ぎたくなるものだと思うんですが

 ずっと着てました。





 一つ失敗だったのが、スタンドを適当なものにしてしまったこと。

 どのタイミングでか分からないけれど、クラックが入ってしまったんです。

 東京の自転車屋さんで整備をお願いしたときに見つけてもらったんだけど

 事情を話したら各部をすごく熱心に点検して、いろいろとアドバイスを頂きました。


 街に修理のできる自転車屋さんがなかったらどんなに不便か。

 これは今まであまり自転車に乗っていなかったから気づかされたことの一つです。

 道中、お世話になった自転車屋さんには感謝しています。



Q.最後の質問です。

 もう一度やりたいと思いますか?


A.休みが、とれないだろうね。
 実際すごく楽しかったので違うルートでもう一度行くのも正直やぶさかじゃない。
 少なくとも自転車は乗り続けていきたいですね。
 ただ、それだけじゃなく新しいことに出来る範囲で挑戦したいと思っています。
 「出来る範囲」ですから何でも素人の域を超えないだろうけれども、
 いつも新鮮な気持ちで楽しんでみたいと思う。
 具体的に今は何もありませんが、とりあえず仕事に専念したいと思います。



Q.すいません。

 最後にもう一つだけ。

 奥様に一言お願いします。


A.幸せにします!



後藤さん、ありがとうございました。

末永くお幸せにお過ごし下さい。

 


水戸-大阪走破後の友人、後藤秀文さん。

自転車はGTのフルリジッドクロモリMTB。

タイヤは26×1.95、荷物はリヤキャリアにドイターのラックパックIIを積んで移動した。