れすくーる・ひるずのれすくーる・まうんてん。
 そのふもとに、くっくはやってきました。
 くっくはこの山でうまれ、そだち、ライチとであったのです。
 くっくは山をみあげます。そして、ぶるっとみぶるいをしました。
 「こわいけど・・・いかないとごしゅじんさまが・・・。」
 おそるおそる、くっくは足をいっぽ、ふみだしました。
 
 なぜ、くっくはこわがっているのでしょうか?
 それは、この山にすむくまたちには、こういうおきてがあるからです。
 いちど山を出たら、にどと戻ってきてはいけない、というおきてが。


 あんのじょう、くっくは山にすむくまたちにかこまれてしまいました。
 いっとうのくまが言いました。
 「おまえはベアクロウだな。どうしてもどってきたんだ。この山のおきてをわすれたわけじゃないだろう。」
 ちなみにベアクロウとは、くっくがこの山にすんでいたときの名前です。
 くっくはみんなにたのみました。
 「ぼくのごしゅじんさまが、びょうきでくるしんでいるんだ。だからびょうきにきくグリードルをつかまえにきたんだ。おねがいだからここをとおして。」
 しかし、くまたちはどいてくれません。
 それどころか、みんなさっきだっています。
 「おきてをやぶったものにはばつがひつようだ!」
 「そうだ! ベアクロウをつかまえろ!」
 じりじりと、くまたちはくっくにせまってきます。
 だけど、くっくはいっぽもひきません。
 いままさに、くまたちがくっくにとびかかる・・・と、そのときです。
 「まて!」
 大きなこえがきこえました。
 くっくとくまたちは、いっせいにこえのしたほうをむきました。
 そこには、ひときわからだのおおきい、くろいけのくまがいました。
 「カムイ!」
 くっくはさけびました。
 カムイとよばれたくまは、ゆっくりとあるいてきます。ほかのくまたちが、カムイのとおるみちをつくるため、よこにそれていきます。
 そしてカムイは、くっくのまえに来ました。
 「ベアクロウよ、なぜおきてをやぶって、山にもどってきた?」
 くっくはりゆうをせつめいしました。
 「ぼくのごしゅじんさまが、びょうきでくるしんでいるんです。だからびょうきにきくグリードルをつかまえにきたんです。」
 カムイはいいました。
 「そうか。それはたいへんだな。だがおきてはおきてだ。おまえをとおすわけにはいかん。」
 くっくはくいさがります。
 「おねがいします。ここをとおしてください!」
 カムイはくっくをにらみつけますが、くっくは目をそらしません。
 さきにおれたのは、カムイでした。
 「そこまでとおりたいか・・・ならば、力ずくでとおるんだな。このわたしとすもうでしょうぶして、かったらとおしてやろう。」
 そのことばをきいて、くっくはあせりました。
 カムイはこの山のくまたちのおやぶんです。とうぜん、この山のくまたちの中で、いちばんつよいのです。
 じじつ、くっくはカムイとすもうをして、一回もかったことがありませんでした。
 しかしほかに手はありません。
 くっくはいいました。
 「わ、わかった。しょうぶする!」


 いっとうのくまが、じめんにどひょうをかきました。
 その中で、くっくとカムイは向かいあいます。
 「ベアクロウよ、うらみっこなしの一回しょうぶだぞ。まけたらすなおに山を下りろ。」
 「わ、わかった!」
 くっくはそういいましたが、からだはブルブルふるえています。
 ここでまけたらグリードルはつかまえられません。
 つまり、らいちはたすかりません。
 「よし、いくぞ!」
 そういって、カムイはかまえました。くっくもまけじと、かまえます。
 「それじゃ、いきます。」
 ぎょうじのくまが言いました。
 すもうのるーるはかんたんです。ぎょうじが「はっきょい、のこった」といったあと、あいてをじめんにたおすか、どひょうの外に出せばかちです。
 カムイはしんけんな目で、くっくをみつめます。
 「(こわいけど・・・ここでかたなきゃ、かたなきゃ!!)」
 くっくは、さらにしんけんな目で、カムイをみつめます。
 そして。
 ぎょうじがいいました。
 「はっきょい、のこった!!」
 くっくとカムイはあいてをおしだそうと、ものすごいいきおいでぶつかりました。
 どん!
 どひょうじょうで、2とうがとまります。
 まわりで見ているくまたちから、「おー!」というこえがあがりました。
 くっくはふしぎに思いました。それもそのはず、むかしはここでふきとばされて、負けていたからです。
 くっくとカムイはおしあいます。その力は、ごかくでした。
 「(カムイにまけていない、なんでだろう? ・・・そうか!)」
 くっくはきづきました。
 この山を出てから、くっくはライチとたくさんたびをしました。そして、たくさんのもんすたーとたたかいました。
 そのたびが、くっくをつよくしていたのです。
 くっくはこんしんの力をこめて、カムイをおします。
 カムイもまけじと、くっくをおします。
 だけど、じりじりと、じりじりと。カムイのからだが、さがっていきます。
 そして、カムイのあしが、どひょうを出ました。
 かったのは、くっくでした。
 
 「つよくなったな、ベアクロウ。やくそくどおり、とおしてやる。」
 カムイはすなおにまけをみとめ、くっくにそういいました。
 「ほんとうに? やったー!」
 くっくはとびあがってよろこびます。そして、いちもくさんに、グリードルがすむ川へ走っていきました。
 
 りょうていっぱいのグリードルをかかえ、くっくはレストラン、シェル・レランにもどってきました。
 そのグリードルをみて、シレーナとカマロンはおどろきました。
 「すごいですわ。これだけあれば、ライスがたけますわよ!」
 カマロンはグリードルからわき水をとりだします。
 シレーナはその水をつかって、ライスをたきます。
 「まっていてごしゅじんさま、もうすぐライスがたけるよ。」
 くっくは、ねつでうなされているライチのそばで、じっとその手をにぎっていました。
 そして、なべをもったシレーナが、へやに入ってきました。
 「ライスがたけましたわ。」
 シレーナはなべにはいっているライスをスプーンですくうと、ライチの口へはこびました。
 もぐもぐ。
 するとどうでしょう、ライチのかおいろは、みるみるうちによくなっていきます。
 あれだけくるしそうにしていたひょうじょうも、もうありません。
 「おいしい・・・。」
 ついに、ライチの目がさめました。
 「やったー!!」
 くっくとカマロンは、手をとりあってよろこびました。
 「ほら、おいしいからもっとたべなさい。」
 シレーナはライスをすくって、ライチにたべさせます。
 「おいしい! もっとちょうだい!」
 ライチはさいそくします。
 「そうだ! こうすればたくさんたべられるよ。」
 くっくはなべに手を入れると、ライスをたくさんつかんで、ぎゅっぎゅっとにぎりました。
 「はい、ごしゅじんさま、たくさんたべて!」
 くっくはらいちに、おにぎりをさしだします。
 「わーい、いただきます。」
 ぱくっ。
 ライチはおにぎりをたべました。
 ・・・すると。
 ライチのすがたが。
 くまになってしまいました。
 「・・・あれ? どうしてぼく、くまになってるの?」
 ライチはあわてふためきます。
 くっくとシレーナとカマロンは、口をあんぐりとあけておどろきました。
 
 くまがまごころこめてにぎったおむすびは、食べた人をくまにへんしんさせてしまうこうかがあるのでした。
 (第29章 完)

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第28章 あとがき

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先週は、本っっっっっっっっっ当に色々とありました。

箇条書きにするとこんな感じです。

1、北海道へ行きました

2、ビデオボードが壊れました

3、レプリカ高橋名人キャップが手に入りました

以上

あ、意外に大したこと無かったな・・・いや、ありましたってw

北海道は寒いです。雪とか降ってました。凄いです。

ビデオボードが半分逝きました。でもまだ一応MOE出来ます。画面ぐちゃぐちゃに映りますが。恐らく3D機能のどっかが逝かれたのだと思います。よって現在・・・MOEほとんど出来ません。労働者イベントも参加できませんでした・・・・・・orz

レプリカ高橋名人キャップかぶっています。けどどこにも行けないです。・・・新しいビデオボード買おうかな・・・9600proでいいや、この際。

いつ買えるかは、不明です。


さて、前置きはこれぐらいにして。

第28章、いかがでしたでしょうか?

時間がなかったってのもありますが、たまにはこういうお話もいいかな?と思って書いてみました。

作成時間20分程度・・・いや、今週は楽をさせてもらいましたw

けど意外に気に入っている作品だったりします。


では次回予告です

「第29章 くっくのぼうけん 後編」

更新予定は11月27日です。では次回も宜しくお願いしますノ

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 ビスク東のぺっと屋に、くっくという大きな熊がいます。
 くっくのかい主はライチです。ライチはビスク港にあるレストラン、シェル・レランのコックさんです。
 くっくとライチは大の仲良し。ぼうけんの旅はいつもいっしょ。だけどくっくは町に入れないから、ライチが町に入るときは、ぺっと屋にあずけられるのです。
 だけどくっくの事が大好きなライチ。あさひるばん、ごはんは欠かさず持ってきて、いっしょに遊んで帰っていきます。
 くっくもライチが大好きで、ライチが来るのをいつも楽しみにまっています。
 だけど、ある日。
 あさ、いつまでまってもライチは来ません。
 「あれ? どうしたんだろう?」
 くっくが心配していたら、見たことのないおじいさんがくっくの前に来ました。
 「君がくっくだね。私はカマロンというんだ。実は、ライチ君がびょうきになってしまってね、今日はこれないから、かわりにごはんを持ってきたよ。」
 くっくはとてもおどろきました。
 「ほんとうに? ごしゅじんさまは大丈夫なの?」
 カマロンは言いました。
 「大丈夫だよ。あしたにはげんきになるよ。」
 くっくはそのことばを信じて、一日おとなしくまっていました。
 しかし、次の日に来たのもカマロンでした。
 「ごめんね。君のごしゅじんさまは、まだ良くならないんだ。早く良くなるように、医者も呼んでいるんだけどね。」
 くっくはしんぱいしました。早く良くなって、早く遊ぼうよ。そう祈りながら、一日をすごしました。
 しかし、その次の日も、その次の日も。
 ライチは来てくれません。
 もう、いてもたってもいられません。ついに、くっくはぺっと屋をとびだし、町に出てしまいました。
 
 ライチの匂いを追って、くっくはレストラン、シェル・レランまでやって来ました。
 そして、開いているまどをのぞいたら。
 そのへやのベッドに、ライチが寝ていました。
 「あ、ごしゅじんさま!」
 くっくはこえをかけますが、ライチは気付きません。それどころか、とっても苦しそうなひょうじょうです。
 それもそのはず。ライチはびょうきがなおらず、高ねつにうなされているのです。
 そのへやに、女のひとが入ってきました。そしてまどのくっくに気付きました。
 「あら? なぜこんなところに熊がいるのですか・・・もしかして、君はくっく君ですか?」
 くっくは答えました。
 「はい、ぼくはくっくです。」
 「やはりそうでしたか。私はシレーナといいます。ライチ君のかんびょうをしているのですわよ。」
 くっくはしんぱいそうに、聞きました。
 「あの、ごしゅじんさまは、大丈夫ですか?」
 シレーナは答えました。
 「ええ、くすりさえ作れれば、すぐに良くなりますわよ。今はくすりのざいりょうがそろうのを待っているのですわ。」
 すると、その部屋に、また別の人が入ってきました。
 「シレーナさま。いま、れすくーる川からもどってきました。今日もだめでした。グリードルのすがたは、一匹も見えませんでした。」
 釣りざおをもった男の人は、うなだれてしまいました。
 「そうですか・・・困りましたわね。」
 シレーナは、困ったかおをします。
 「あの、どうしたのですか?」
 くっくが聞いたら、シレーナは答えました。
 「じつはですね、ライチ君のびょうきを治すくすりは、おいしいライスなのですけど、ライスをたくのにひつような「わき水」が無いのですわ。「わき水」はグリードルという魚のおなかにたまっているのですけど、そのグリードルがつかまらないのですわ。」
 くっくはそれを聞いておどろきました。
 「それじゃ、ごしゅじんさまのびょうきはなおらないの?」
 シレーナはさらに困った顔になります。
 「「わき水」さえ手に入れば、すぐによくなるのですけど・・・。」
 すると、くっくが言いました。
 「ぼくのすんでいた山に、グリードルがたくさんいる川があるから、ぼくがつかまえてきます!」
 そう言うと、くっくは走っていきました。


 しかし、その山では、おそろしいできごとがまちかまえていたのでした・・・。
 

 (第28章 完 → 第29章へ続く)

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第27章 あとがき

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ええっと・・・

まあ、こういうわけでして・・・。

「全員犯人なんておかしいだろ!」と思われた方、申し訳ありませんでした><

P鯖で会った時に石を投げないでください。


というわけで、第27章はいかがでしたでしょうか。

4週連続連載企画 推理系MOE小説 「事件現場はシェル・レラン」

これにて閉幕とさせていただきます。

最後までお付き合い頂いた方、誠に有り難う御座いました。至らない部分ばかりの小説でしたが、何とか纏められて作者的には良かったです。

(まあ、矛盾点やおかしい点は、おいおい直しておきますw)

また何か思いついたら始めますので、その時は優しい心でお一つ。


では次回予告ですが。

「第28章 くっくのぼうけん」

今週は私用で家から離れる為、執筆時間が殆どありません。そのために、ちょっと簡単な文章でも書こうかなと思っています。

というわけで、更新予定は一応11月20日ですが・・・遅れる可能性、特大です^^;

では次回も宜しくお願いしますノ

 「シレーナ様、見つけました。テオ・サート広場で露店を開いていた複製屋が、確かにアレを2冊、あのお方に売っておりました。」
 「シシシ、調べてきたデスよシレーナ様。睨んだ通り、地下墓地のダンテライオンからあの技書を一揃い、しかも2冊ずつ買ってたデスよ・・・こりゃ間違いないデスね、シシシ。」
 「シレーナ様、これってやっぱアレだな。アルビーズの森のヴェントからも、アレをアレだけ買ってたぜ。編集長としてこの事件をアレしない手はないな。」
 調査に向かっていたシェフ達が、ぞくぞくと帰還してくる。その手に携えた情報は、どれもシレーナの予想した通り。
 「これだけ証拠が揃えば、もう疑わない理由はありませんわ・・・ライチ君。全員を、ホールに呼んできてくれません事?」
 「あ、はい!」
 勢いよく、ライチはシレーナの部屋を出ていった。
 そして。
 ジョニーが、怪しい男が、睡蓮が、フランチェスカが。
 カマロンもグロポもライチも、そしてシェフ全員が。
 ホールに集まった。
 「犯人が分かったって本当ですか?」
 「一体誰がやったんだ? ここまで来て自殺でしたとか言ったら笑うぞおい。」
 「・・・本当に、誰だか分かったの?」
 ざわめくホール内。扉が開いて、ここの主人が入ってきた事を誰も気付かないぐらい。と、その騒ぎをうち消すかのように、凛としたシレーナの声が響いた。
 「お静かにお願いします。」
 シレーナは事件があったテーブルの前まで歩き、そして振り返った。
 「皆さん・・・この事件のレシピは、解明いたしましたわ。」
 シレーナは力強く、はっきりと言い切った。
 先程よりも大きなざわめきが、ホールに響く。
 そして、シレーナはその細い腕をすうっを水平に持ち上げ、人差し指で指しながら、言った。
 「怪しい男様、ジョニー様、フランチェスカ様、睡蓮様・・・あなた方4人全員が、犯人です。」
 
 フードを被った男が、シレーナの前まで進み出た。
 「ちょっと待てよ、何を証拠にそんな事を言うんだ!」
 青髪のコグニードも、慌てたように言い返す。
 「そ、そうですわよ。何で私がそんな事を・・・。」
 ジョニーもフランチェスカも、口々に不満を言う。
 その言葉が一通り終わった所で、シレーナは口を開いた。
 「この事件の最大の謎は、ジャスティン様が何処で毒を飲まされたのか・・・その一点でしたわ。そして、その毒はワインに入れられていたのですわ。そして毒を入れたのは・・・睡蓮様、貴女ですわね。」
 いきなり名指しされ、ビクッと驚く睡蓮。だが首を横に振り、そして反論した。
 「そ、そんな事しませんわ。何を証拠に・・・?」
 「証拠はこれですわ。」
 そう言いながら、シレーナは毒が入っていた小瓶を取り出す。
 「どうですか睡蓮様、この瓶に見覚えはありませんか?」
 睡蓮は再び首を横に振る。
 だがシレーナはそれを意に介さず、話を続けた。
 「この中には致死量の3.5倍の毒が入っておりましたわ。恐らく貴女がお酌をする為にコルク栓を抜いた直後、この小瓶の毒を入れたのですわ・・・ほらこの通り、手の平に隠せば、誰にも気付かれず毒を入れられますわ。ワインボトルも色が付いておりますし、恐らくホール係の者も気付かなかったのでしょう。」
 シレーナは親指と手の平で小瓶を隠すように握り、ワインボトルへ注ぐ様を実演する。
 「他に毒を入れる手段はありませんでした・・・ですから、貴女が毒を入れた事に間違いはありませんわ。」
 「ちょっと待った!」
 ジョニーが大声で、シレーナの言葉を遮った。
 「何でしょうか?」
 「それはおかしいです、ミス・シレーナ。もし万が一ミス・睡蓮が毒を入れたとすると、一緒に飲んだ私や怪しい人も死んでしまうではないですか。」
 再び、ホールがざわめく。
 「ええ、普通ならば、そうでしょう。ですけど、貴方と怪しい人様は、あるトリックを使って毒を無効にしたのですわ。」
 一呼吸置いて、言った。
 「テオ・サート広場の複製屋さんから、証言を得ておりますわ。先日、ジョニー様にドルイドの究極奥義の書を2冊、売ったと。」
 ジョニーの顔色が、みるみる青くなる。
 「それだけではありませんわ。貴方がアルビーズの森で、スキル40までの自然調和の技書を2冊ずつ、そして怪しい男様が地下墓地でスキル40までの暗黒命令の技書を2冊ずつ買っている事も分かっておりますわ。他は調べるまでもありませんわね。そして貴方達が夜中にそれらの練習を積んでいた事も、判明しておりますわよ。」
 「ちっ」
 怪しい男は表情を崩し、舌打ちを一つ。
 「つまりジョニー様と怪しい男様は、今日の為にドルイドマスタリーを得ていたのですわ。ですから、ジャスティン様と一緒に毒のワインを飲んだ、そしてワインの毒が見つからないよう、お肉を食べ終わる前にも関わらず、ワインを飲み干したのですわ。致死量の3倍以上の毒を用意した理由は、言うまでもないですわね。」
 「ちょっと待てよ。今の推理に矛盾があるぞ。ジャスティンは死んでないんだ。おかしいじゃねーか。」
 怪しい男が苦し紛れに抗議する。しかしシレーナは表情を変えず。
 「それは、貴方達の計画ミスですわ。ただ3.5倍の毒を入れればいい・・・と思った時点で間違っておりましたわね。毒とワインの比重が合わなかったのですわ。毒が浮いてしまったか、もしくは沈んでしまい、ジャスティン様は致死量以上の毒を飲むことなく死なずに済んだのですわ。少し甘かったですわね。」
 怪しい男は何も言い返さず、ただ唇を噛む。
 「あの、じゃあ私を犯人に挙げた理由は何なのよ?」
 その怪しい男を押しのけて、フランチェスカが進んできた。
 「勿論、理由はありますわよ。」
 シレーナは微笑みながら、フランチェスカを向く。
 「一つは、ジャスティン様のポケットに入っておりましたこの小瓶ですわ。これを入れる事が出来たのは、真っ先に駆け寄ったフランチェスカ様しかおりませんわ。恐らくワインボトルに毒を入れた睡蓮様から、ジョニー様、そしてフランチェスカ様へと小瓶の受け渡しが行われていた・・・誰にも気付かれないよう、机の下を通してですわね。」
 「で、でもそれって状況証拠だけじゃないですか。」
 「ええ、そうですわね・・・ですけど、お酒好きな貴女達がワインを飲まなかった、それだけでも十分な証拠ですわ。全員で飲んだら毒が薄まってしまいますし、何より酔ってしまったら毒をワンボトルへ入れたり、小瓶をポケットへ入れるといった細かい作業が出来なくなってしまいますわね。」
 フランチェスカは、何も言い返せなかった。
 「さて、私の言いたい事は以上ですけど、何か反論はございまして?」
 
 ・・・4人の誰からも、声があがる事はなかった。
 つまりそれは、自らが犯人であるという事を、明確に認めたものであった。


 そして。
 「おーい、皿洗い! ペース遅いぞ、ちゃっちゃと洗え!」
 「ちゃんとやってますわよ! そう怒鳴らないでくださる!」
 シェル・レランの厨房は、夕食時とあって、さながら戦場のよう。そんな中、一人の女エルモニーがシンクで一生懸命皿を洗っている。
 「この料理は三番テーブルさんだ。失礼の無いようにな。」
 「はぁ・・・はい、分かりましたわ。」
 青髪の女コグニートは、厨房とホールを行ったり来たり。歩きすぎで足が痛むが、注文と料理は待ってくれない。
 そう、この2人はフランチェスカと睡蓮である。
 シレーナの下した判決は「シェル・レランで一年間ただ働きの刑」であった。
 「あー、もう洗っても洗ってもー!」
 「あー、少しは休ませて欲しいですわー!」
 ぐったりとうなだれながら、弱音を吐く2人であった。
 一方、男2人はと言うと・・・。
 「うおおおおおお!!」
 バルドスの群れから逃げていた。
 「ええい、怪しい男、お前がちゃんと見張ってないからだぞ!」
 「へっ! ワイルドバルドス如きにそんな時間かけてるからいけないんだよ!」
 罵り合いながらも、器用にも足は全力で回している。
 「第一バルドスの肉を100個持ってこいって指令が無茶じゃねーか、おい。」
 「仕方ないだろ、マスター・シレーナからの指令なんだから、無理でもやらなければ・・・ってうわぁ!」
 イルヴァーナ渓谷に男2人の悲鳴がこだまするのであった・・・。
 (第27章 完)

第26章 あとがき

テーマ:

思いつきで始めたこの小説ブログも、気づけばもう2クール終了。

単純計算で半年もやっていたんですね。

一作5分で読めるという触れ込みでしたが、26章もなると5×26=130分。

全部読むのに2時間以上かかるって計算ですね・・・って、普通の文庫小説並みですな、をいw

まあ・・・新規の方は、のんびりと何度かに分けて、読んでみて下さい。


という訳で第26章、いかがでしたでしょうか?

4章構成の第3章、ついに事件の全貌が明らかとなりました。この証拠の数々から、探偵シレーナは

一体何に気づいたのでしょうか?

というわけで、ヒントは下のリンクからどうぞ~


第26.1章 シレーナからのスリー・ヒント


それでは次回予告。

「第27章 事件現場はシェル・レラン その4」

更新予定は11月13日です。では次回も宜しくお願いしますノ

 シレーナにせかされて、ライチはメモを読み上げる。
 「ええっと・・・まずジャスティン達が来店したのは、19時頃です。予約は、怪しい男の名前で取られてました。席は、ドアからぐぐっと奥入って左の、壁際の丸いテーブルでした。席順は時計回りに、ジャスティン、怪しい男、睡蓮、ジョニー、フランチェスカでした。料理は3000ゴールドのコースで、追加でワインが一本。今日のコース内容は・・・ええっと。」
 メモをめくる。その下から、ミミズがのたうち回った跡のような文字が現れるが、ライチは意に介さずそれをすらすらと読み始める。
 「前菜がチーズパイ、スープが黒トリュフのスープ、魚料理が白身魚とホタテのワイン蒸し、肉料理がローストバルドスミートでした。ジャスティンは、ローストバルドスミートを食べ終わった後に倒れたらしいです。」
 そして、メモから視線を上げ、更にしゃべる。
 「ええっと・・・ホールには僕を含めて4人居たけど、怪しい動きとか変な事している所とかは誰も見なかったです。えと、えと・・・それぐらいかな?」
 「席に座る時は、変な動きとかありませんでしたか?」
 ライチの言葉が終わると同時に、シレーナの質問が飛んだ。
 「え・・・えと、特に変な動きは・・・ジャスティンは最後だった事ぐらいしか分からないです。」
 「そうですか。ワインを頼んだタイミングは?」
 「あ、はい。最初っからでした。まずは乾杯だって怪しい人が言って、ワイン一本頼んで、えと、でも飲んだのは怪しい人とジョニーとジャスティンだけでした。」
 「あら・・・睡蓮様は、飲まなかったのですか?」
 ライチはちょっと首を傾げ考えるが・・・。
 「うん、飲んでなかったです。冷やした湧き水を飲んでいたかな?」
 「そう・・・分かりましたわ。それでは、それぞれの料理を食べ終わった順番は分かりますか?」
 「え?」
 ライチは少し狼狽し、同じホール係のシェフに目線を送る・・・が、皆一様に、首を振る。
 「分かりませんか。では食べ終わった料理の皿は、取ってありますか?」
 「えっと・・・。」
 今度は厨房担当のシェフに目線を送ってみるが・・・皿洗い担当の新人シェフ達は「どうなってる?」「いや分からないよ。」「お前は?」等とコソコソと話し始めるが・・・。
 結局、誰一人分からず。
 「すいません・・・分かりません。」
 新人シェフの一人が、そう答えた。
 「あらあら、それでは駄目ですわよ。すぐに調べてきてください。それとライチ君も、もっと細かい所まで、調べておかなくてはいけませんわ。」
 そう言いながらシレーナは立ち上がり、ポケットから毒の入っていた小瓶を取り出した。
 「細かく調べると、このような小瓶一つからでも、沢山の証拠が残っているものですわよ。」
 親指と人差し指で摘みながら、それを顔の前まで持っていき、そして言った。
 「底に残っている液体の色から、これがヘビ毒の一種という事が分かりますわ。この毒は飲んでから数分後に症状が現れる特徴がありますわ。致死量は体重一キロあたり0.04ミリリットルですわ。」
 空いている手で小瓶を摘むと、ねじ口式の蓋をキュッキュッと回して開ける。
 「それに、この蓋はしっかりと閉まっておりましたわ。つまり犯人は、この蓋をしっかり閉める余裕があったという事ですわ。」
 シレーナは、腕を伸ばして小瓶を突き出し、手の指で瓶の口付近を指す。
 「ライチ君、ここに何があるか、分かりますか?」
 そう言われ、ちょっと近づいて小瓶を見るライチ。
 そして、声を上げた。
 「あ! 緑色の線がある!」
 「その通りですわ。つまり、この位置まで毒が入っていたという事ですわ。量はおおよそ7ミリリットルですわね。ジャスティン様の体重が50キロぐらいですから・・・3.5倍の致死量を持った毒を使われたという事ですわ。」
  
 その後、ジャスティンからの事情聴取の結果や、他の客からの聞き取り調査の結果が報告された。
 目立った情報は、ジャスティン自身は自殺を否定した事や、毒を盛られた所がどこだかさっぱり分からない事、誰かが毒を盛っている姿を見た客は居なかった事である。
 
 全ての報告を聞き終えてから、シレーナは再びホールへ来た。
 5人が座っていた席は、ジャスティンが倒れた時のままで保存してある。
 もっとも、テーブルクロスを引っ張りながら倒れた為、机には何もない。
 皿、グラス、食べかけのローストバルドスミートが4枚、水、ナイフやフォーク、ナプキン、飾り付けの花と花瓶と、机にあったものは全て床に散らばっている。
 その様子を眺めるシレーナ。ふと、ワインクーラースタンドに手を伸ばした。
 ワインクーラーの中には、ワインボトルが入っていた。氷で冷やされていたのだろう、ワインボトルは水に浸かっていた。
 それを掴み、持ち上げる。
 チャポン、と穏やかだった水面に波紋が走り、ワインボトルに絡まった水が、その水面に無数の波紋を描く。
 シレーナはそれを持った瞬間、怪訝な表情を浮かべた。
 「ライチ君・・・空になったワインボトルは、すぐに片づけなさいと教えませんでしたか?」
 「・・・え?」
 ライチは困惑する。と、すぐに他のホール係がフォローに入った。
 「シレーナ様。私、見ていたのですが、お客様の一人がお酌して回っておりました。恐らく、それで空になったのではないかと思います。」
 「お酌を? どなたがしていたのですか?」
 「ええと・・・睡蓮様でした。」
 「睡蓮様ですか・・・。」
 そう言って、もう一度座席を見る。確かに睡蓮の席の隣に、ワインクーラースタンドが立てられていた。
 「あ! もしかするとシレーナさま、そのワインに毒を入れたんじゃ!!」
 ライチが声を上げる。
 「・・・ですけど、そのですと怪しい男様とジョニー様も、毒を飲んでしまいますわ。」
 そう指摘され、「ああ、そっかー。」と呟きながらも、ライチは考える。
 「ううんと・・・じゃあ、ジャスティンに注ぐ時だけ、毒を入れたとか・・・。」
 「そうですわね・・・では、お酌をした順番は覚えておりますか。」
 ホール係は、少し考え、そして答える。
 「あ、はい。覚えております。ジョニー様から時計回りに、ジャスティン様、怪しい男様へと注いでました。」
 「分かりましたわ。それですと、ジャスティン様だけに毒を盛るのは難しいですわね。」
 結論が出されてしまい、ライチはがっかりする。
 「そうですね・・・それに、ワインも全部飲んじゃったみたいだし・・・。」
 と、その言葉にシレーナが反応する。
 「あら、何でそんな事が分かりますの?」
 「だって、床にワインが一滴も零れてないんだもん。」
 そう言われ、シレーナはもう一度床を見る・・・確かに、ワインらしき赤い液体は、一滴も見つからなかった。
 「・・・本当ですわね。」
 シレーナはそこに、大きな違和感を覚えた。
 そして、考える。今までに感じていた、違和感。それらを繋げて見ると・・・。
 気付いた。
 あり得なくはない、一つの可能性を。
 「皆さん! 今から私が言う事を、全て調べてきていただけませんか?」


 「読者の皆様、やはりこの事件は殺人未遂事件、しかも周到に用意された、計画的な殺人未遂事件でしたわ。今、ウチのシェフ達が裏を取っておりますけど、間違いなく犯人は、このテーブルに居ましたわ。貴方様には、犯人は分かりまして?」
 (第26章 完→第27章へ続く)


ヒントはこちら→「第26.1章 シレーナからのスリー・ヒント

第25章 あとがき

テーマ:

生産者の集いに参加された方、お疲れ様でした。

わいわいと楽しくやれて、良かったです。次は漁業・・・?

釣りスキル65、料理スキル65のライチは、どこまで役に立てるでしょうかw

今回のイベント内容は、いずれ小説にしますので、それまでお待ちを。


さて、第25章はいかがでしたでしょうか?

まあ、4章構成の途中なので、盛り上がりとかありませんでしたが^^;

次回で事件内容がまとまります。ようやく推理小説として成り立つ・・・のかなw


というわけで次回予告です。

「第26章 事件現場はシェル・レラン その3」

更新予定は11月6日です。では次回も宜しくお願いしますノ