「うーーーん。」
 炊きあがったライスを一口食べて、ライチは顔をしかめる。
 「おかしいなー。作り方はあってると思うんだけどな・・・。」
 鍋の前で、ライチは思案する。しかし、どこを間違えたのか、全く分からない。
 と、その時。
 「おやおやライチ殿、どうされたのかな?」
 ライチを見かけたカマロンが、その様子に気付いて声をかけた。
 「あ、カマロンさん。あの、ライス炊いたんですけど、パサパサして美味しくないんです。何でかなー?」
 「ほう、ライスですか・・・どれどれ、では失礼して。」
 手を伸ばし、ライスを指で摘むと、口の中へそっと入れた。そして味わうように食べる。
 しっかり飲み込んでから、カマロンは言った。
 「・・・成る程、分かりましたよ。ライチ殿はライスを炊く時、ミニウォーターボトルを使っておりますね。」
 「あ、はい。そうです。」
 「それが原因で御座います。ライスを炊く時は、ミニウォーターボトルを使ってはいけないのです。」
 「ええっ、そうなんですか? 何で何で?」
 困惑顔のライチを見て、カマロンはにこやかに笑いながら答える。
 「ミニウォーターボトルは、硬水なのです。硬水でライスを炊きますと、このようにパサパサになってしまうので御座います。」
 「え・・・こうすい?」
 首を傾げるライチ。構わずカマロンは話を続ける。
 「シェル・レランでライスを炊く時は、軟水を使用しております。軟水ならば、ふっくらとした美味しいライスが炊けるのです。」
 「え・・・なんすい?」
 今度は反対側に首を傾げる。
 「えと、えと、カマロンさん。じゃあそのなんすいって何処で買えるんですか?」
 「残念ながら、軟水は売っておりません。その代わり、軟水の採り方をお教えしましょう。」


 釣り竿と釣り餌を持って、ライチはレスクール・ヒルズへと足を運ぶ。
 向かうは北東、レスクール・リバー。
 カマロンの説明はこうだった。
 「軟水はレスクール・リバーの水源から湧く、湧き水で御座います。しかし水源から直接採取する事は難しいのです。そこでシェル・レランでは、川に住むグリードルに目を付けました。グリードルは綺麗な水を好む性質がある故、その腹から湧き水を採取出来るのです。」
 橋を渡り、坂を下り。アマゾネスから身を隠しつつ。
 目的地に到着した。
 「うわー、結構沢山居るなー。」
 川を覗くとそこには、掌ぐらいの大きさの魚が、数匹まとまって泳いでいた。
 色も形も、カマロンに聞いた通り。
 「あれがグリードルだな。よーし。」
 背負っていた釣り竿を降ろし、針に餌を引っかける。そしてポーンと、それをグリードルがいた場所付近へ投げ込んだ。
 程なく、浮きが反応。すかさず竿を持ち上げる。
 糸の先にはグリードル。地面に落ちてからもビチビチッと元気よく跳ね回った。
 「よーし、一匹目、げっとー!」
 ライチの釣りは調子良く。
 またたくまに数匹釣り上げる。
 その場所に魚が居なくなったら、場所を移して再び釣る。
 それを繰り返していた。


 何度目かの場所移動中。ライチは、川を覗き込んでいる人影を見つけた。
 「(あれ? 同じ釣り人かな・・・)」
 しかし、それにしては様子がおかしい。しきりに川を覗いているだけだし、何より釣り竿を持っていない。
 近づいてみると・・・その人の顔まで、はっきり見えてきた。
 「(エルモニーの女の子か・・・わー、すっごい可愛い。)」
 しかしその表情は、明らかに困った時に浮かべるものであった。
 思わず、ライチは声をかける。
 「あ・・・あのあの、どうしたのですか?」
 エルモニーの女の子はハッとしてライチを向く。だがライチの表情や服装を見て、ホッとしてから事情を説明しはじめた。
 「あのね・・・宝物、川に落としちゃって、取れなくて・・・。」
 「川に?」
 ライチが川を覗き込むと、川底にキラキラ光る物が見える。
 「あの光ってるやつ? それだったら僕が取ってきてあげるよ!」
 そう言うと、ライチは川に飛び込んだ。
 しかし・・・。
 「うわわわわわ!! 痛い痛い!!」
 すぐに川から飛び出してしまった。水面では何匹ものグリードルが、逃げていった獲物を睨み付けつつ、歯をカチカチと鳴らしている。
 「あ、あの・・・大丈夫ですか?」
 「ええ・・・だ、大丈夫だよ。」
 尻をさすりながらも、ライチは気丈に答える。
 「これじゃ、確かに取ってこれないね・・・。」
 その言葉を聞いて、女の子は下を向き、更に落ち込んだ表情を浮かべる。
 「(うーん・・・何とかしたいなどうしようどうしよう・・・ってそうだ!)」
 ライチは自分の手にある物を見て、思いついた。
 「そうだ! 僕がこの釣り竿で、ここのグリードルを全部釣っちゃえばいいんだ!」
 「え? そんな事が出来るんですか?」
 「えと、多分出来る! 任せてー!」
 そう言うとライチは、いそいそと釣り竿に餌を引っかけ、水面に投げ込んだ。
 程なくグリードルが一匹、気中に上がる。
 続いて二匹、三匹、四匹と。
 釣った魚を回収する手間さえ取らず、どんどんと釣り上げていった。
 そして。
 沢山釣った

 
 「えと・・・これなら大丈夫かな?」
 水中を覗いて、グリードルが見当たらない事を確認してから、ライチは再び川へ飛び込む。
 川底へ向かって泳ぎ、キラキラ光る物をしっかり握って、素早く浮上。
 「ぷはーっ・・・取ったよ!!」
 その物はライチの右手の中、太陽の光を受けて一段と光り輝く。
 それを見た女の子は、その表情を太陽に負けないぐらいの晴れやかなものに変えた。
 「(わわっ、笑うと更に可愛い!)」
 顔を赤く染めながら、ライチは水面を泳ぎ、陸へと戻る。そしてその物を女の子へ手渡した。
 「はい、取ってきたよ。」
 「あ、ありがとうございました。良かった・・・。」
 女の子はそれを、ギュッと両手で、大事そうに抱え込む。
 その表情に、更に更に照れながらも、ライチは会話を続けようと必死で言葉を考える。
 「・・・えと、それって、何なの?」
 「これですか? これはですね・・・。」
 そう言いながら、女の子はそれを胸の前で構えるように、ライチに見せた。
 「これは、オリアクス様の直筆サイン入りブロマイドなんです!」
 四角いガラスケースには、黒いサインペンで「歯ぁ食いしばれ!Oriax」と書かれた、暗使の元ギルドマスター・オリアクスの写真(爽やかな笑顔、白い歯が光ってます)が入っていた。
 「・・・え? オリアクスさま? っていうか暗使? っていうか趣味はそっち系なの?」
 頭の中でグルグルと、知りたくもなかった事実が回り、立ち尽くすライチ。
 ブロマイドを胸に抱え、いつの間にかウフフフフフと、ちょっと気味の悪い笑い声になった女の子。
 そんな二人の周りを、未だ回収されない何匹ものグリードルが、ピチピチと跳ね回るのであった・・・。
 (第16章 完)

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第15章 あとがき

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ここだけの話ですが。

「あとがき」と銘打って書くのなら、制作秘話の一つぐらい載せた方がいいのかな。

と言う事に、今気づきました。


というわけで、今回は「まとも」なあとがきを書いてみたいと思いますw

今回の話ですが、実は書き上げるまで、けっこう苦労しました。

初めの構想では、TiROさんやFSリズムさんを入れる事まで考えていなかったんですけど、たまたま会った時に思いついて、話を振ってみたら意外に好感触だった。だったら書いてしまえ!

そんな感じで書き始めました。

おかげで・・・ネタの数が多すぎて、泣く泣くカットした場面も多数。思いついたネタ全てを消化していたら、第15章は今の1.5倍は長くなっていたでしょう。

それに、オチがなかなか決まらず、書き上げるまで、いつもの倍近い時間をかけた気がします。

書き上げたのが日曜の夕方。飯食べてから校正して、アップしたのが夜。

ホント、ギリギリでしたw

最後に、ご協力頂いたTiROさんとFSリズムのみなさん、改めてありがとうございました。


では次回予告です。

「第16章 君の為のグリードル・フィッシング」

アップ予定は8月28日です。では次回も宜しくお願いします~ノ

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 ビスク西、闘技場前。
 そこは、ダイアロス島で一番の、強者が集う場所。
 その理由は一つ。ダイアロス島一の戦闘系ギルド「武閃」の本部が置かれている為。
 今日もまた、ギルドの斡旋する仕事を求めて、腕に覚えのある冒険者達が本部内を賑わしていた。
 そんな中に、場違いな厨房師装備で身を包んだライチが、扉を開け入ってきた。トコトコと、冒険者達をかき分け、一直線にギルドマスター・オグマの座るカウンターまでやってくる。
 「あの、すいませーん。護衛を頼みたいんですけど・・・。」
 「何だ? 坊主は俺のファンか? 悪いが依頼は隣のカウンターで受け付けているから、そっちへ行ってくれ。」
 「あ、あの。紹介状があるんです。それをオグマさんに渡せばいいって言われて・・・。」
 ライチはぞうさんリュックの中から、封筒を取り出してオグマに渡す。
 「誰だ、紹介状なんて書いた奴は。生半可な奴だったら承知しないぞ!」
 そう言いながら、オグマは封筒を破って手紙を取り出し、目を通す。
 すると。
 それまで赤かった顔色が、まるでリトマス紙のように、いきなり青く染まった。
 そして、手紙を大事そうに折り畳むと。
 「えとな・・・坊主。明日の朝、とびっきりの護衛を用意しよう。」


 「エスリン、今ビスクで一番腕の立つ傭兵団を至急来させろ!」
 「ええーっ、ですけど、そんな方達は皆、仕事が決まっていますけど・・・。」
 「どんな仕事でもキャンセルさせろ! こっちの仕事はサー・シレーナからの依頼だ! 超S級のクエストと考えろ!!」
 「え? あ、はい! わ、分かりました(あのオグマさんがこんなに震えるなんて、一体どんな方からの依頼なのかしら・・・)」


 翌日、朝。ライチは装備を調えて、再び武閃本部を訪れる。
 扉を開けると、いきなり声をかけられた。
 「お、貴方がライチさんですね。厨房師装備だから、すぐ分かりましたよ。」
 「あ、お兄さんが護衛の人ですか?」
 男は、にっこりと笑いながら受け答える。
 「ええ。私と、ここに居る十人で貴方の護衛にあたらせて貰います。えと、自己紹介をしないといけませんね。まずは団長から・・・って、団長は?」
 他の傭兵団員が一斉に辺りをキョロキョロと見回すと。
 「ねえ、エスリン。こんなつまらない仕事さぼってさ、僕とデートしようよ、ね?」
 「あ・・・あの・・・困ります・・・。」
 カウンターに両手をついて、女性を口説いている赤髪のニューター。エスリンは顔を赤く染めて、うつむいている。
 「ったく貴方って人は、どうしてそんなに節操ないんだ!!」
 男の手裏剣が、赤髪のど真ん中に命中した。そして、ぐったりした赤髪のニューターを引きずってくる。
 「はあ・・・はあ。お見苦しいところをお見せしました。さあ団長、依頼主に挨拶を。」
 「ん? もしかして君が、例のシェル・レランからの依頼主?」
 赤髪のニューターは一瞬で生き返ると、ライチと目線を合わせるように屈んで話し始める。
 「え? えと・・・シレーナさまからの紹介だから、そうなのかな。」
 「シレーナ様! シレーナ様といえば、シェル・レランの美人オーナーだよね?」
 その言葉に、ライチは首をかしげる。
 「えと、綺麗な事は綺麗ですけど・・・。」
 「この仕事を完璧にこなせば、シレーナ様からお褒めの言葉を貰え、もしかするとご褒美を上げましょうって言われて寝室とか連れて行かれて・・・ふふふふ・・・よーし、野郎共、気合い入れていくぞ!!」
 赤髪のニューターは、1人で盛り上がる。他の団員は、冷ややかな目。ライチは状況についていけず、ポカンとしている。
 「おっと、自己紹介がまだだったね。僕らはリズム傭兵団、僕は団長のチロっていうんだ。宜しくな!」
 
 噴水を潜り、再びやってきた地下水路入口。
 リズム傭兵団とライチは、マップを中心に車座となる。突入前の、最後の打ち合わせ。
 まとめ役は、副団長と名乗った黒髪のニューター。
 「依頼内容の再確認をいたしますけど、モヤシとこんにゃく芋の自生区域調査、収穫中の護衛、及びマップ作成補助だけで宜しいのですね?」
 「はい。お願いしますー。」
 「了解しました。それでは、次に作戦ですけど。このマップは我々が調査した時に作成したものなのですけど、奥の方はまだ未調査となっております。ですが、モヤシの自生区域は発見したので、そこまではすぐに案内出来ます。」
 副団長はイクシオンボーンを指し棒代わりに、説明を続ける。
 「まずは大水路まで駆け抜けましょう。それからモヤシの自生する部屋へ行き、収穫。ここまではきっと簡単ですね。それからこんにゃく芋が自生している場所を探索しましょう・・・これで宜しいですか、団長。」
 その時、団長は。
 「ねえ、彼女。僕と一緒に夜の地下水路を探索しない?」
 他パーティーのニューター女をナンパしていた。
 次の瞬間、イクシオンボーンが、その側頭部に深々と突き刺さったのであった。


 モヤシ発見!

 副団長の言う通り・・・にはいかず。モヤシが自生する部屋に到達した時、パーティーは既に肩で息をする状態に。
 原因は勿論。
 「うわー、広いなー。あっちってどーなってるのかなー?」
 と言ってはウロチョロしたり。
 「わ、変なゴーレムだ・・・って、こっちに来るよー、助けてー!」
 と言ってはトレインさせたりと。
 原因の根元は、何事もなかったかのようにモヤシを摘み始める。それを見ながら、団員の1人は呟いた。
 「・・・はあ・・・このミッションが、超S級って言われる理由が・・・分かったぜ・・・。」


 モヤシの収穫を終え、再び地下水路を歩く。
 程なく、マップのUnknown部分に踏み込んだ。未知の領域、未知の敵。そんな中、副団長は冷静にペンを走らせ、団長と団員は敵を次々に屠りさる。
 しかし・・・ライチだけは相変わらず。
 「ねーねー、あっち行ってみようよ。何かずっと奥の方まで続いているみたいだよー!」
 マイペースで、進みたい道を進み始めた。傭兵団は半ばあきれ顔で、その後をついていく。
 トコトコと、細く長い通路を歩くパーティー。と、そこで副団長が気付いた。
 「変ですね。この通路だけ、やけに長いですね。まるで最奥に続いているような・・・。」
 しかし構わずライチは歩く。そして、曲がり角を見つけると、真っ先に曲がった。
 と、次の瞬間。ライチはあまりの光景に、足を止めた。続けて傭兵団が、その光景を見つめる。
 その先には、ゴーレムの大群。その中に、一際大きいゴーレムがゆっくりと首を回し、パーティーの方を向く。その顔を見て、副団長は呟いた。
 「ラスレオ大聖堂の文献で見た事があります・・・あれは史上最強のゴーレム、ガイアです。そんな怪物がこんな所にいるなんて・・・どうします、団長?」
 と、副団長がチロを向くと。チロはニヤリと笑って、こう言った。
 「あんな獲物を前にして、おめおめ逃げられるか。野郎共、いっちょ・・・。」
 「いや、逃げましょう。危険ですし。」
 拳を振り上げるチロを無視して、ライチは冷静に言った。
 「そうですね。あれをやるには準備不足でしょうし。団長は女性にあげるお宝目当てですし。任務はこんにゃく芋とモヤシを取るだけですしね。」
 副団長がチロの後頭部にミートボムを叩きつけてから。パーティーは来た道を引き返した。
 
 その後、パーティーはこんにゃく芋が自生する部屋を発見。滞りなく収穫を終える。そしてそのまま、地下水路を出たのであった。
 地下水路の最奥で、膝をついて哀しむゴーレムが居た事など、知るはずもなく。
 「タタカイトカ・・・シナイノカヨ・・・オレノデバンハ・・・コレダケカヨ。」
 (第15章 完)


 おまけ
 翌日、団長はシェル・レランへ。
 程なく、ビスク港に浮かんでいるところを団員に発見されたとか、されないとか・・・。

 (おまけ 完)

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第14章 あとがき

テーマ:

今更な話ですが・・・

先日のパッチ(8月3日のやつ)で、シェル・レランのクエストが追加されましたね。

その中に「野菜を、パリパリ」ってのがありました。

内容は、ツナサラダを2つシレーナに渡す、との事。

サラダを2つシレーナに渡す。

サラダをシレーナに渡す・・・・・・

おおっ!

うちの小説の「第8章 新クエストはベジタブル・サラダ 」がパクられてる!!

・・・・・・

・・・・・・・・・なわけないですね、はい。


このサイト内の話ですが、先日MOEのオフィシャルHPに、リンクを申請しました。

それに伴って、もう少し見易いように、ちょっと改造をする予定です。

1クール以上続いたので、小説も大分溜まりましたからねー。

具体的に言えば、過去の小説が読みやすいように目次を作るだけですが。

まあ、いつになる事やらw


さて、次回予告ですが。

「第15章 再探索セヨ ビスク・アンダーグラウンド」

なんと、ゲスト様を登場させる予定になっています。

誰かって、それは秘密です。ヒントはエロい人です。

では次回も宜しくお願いします~ノ


 発端は、BUSC(ビスク地下水路探索同好会)の緊急記者会見であった。
 「我々の調査によって、ビスク地下水路に新たなエリアが発見された。そこには未知のモンスターが大量にはびこっていたが、未知のアイテムや採掘エリア、また食材なども確認出来た。」
 その事実がマスコミを通じて冒険者達に広まり、一夜にして街には一攫千金を狙う冒険者達で溢れかえる。探索の準備をする者、道具を生産し売り出す者、護衛を募集する者・・・その日、ビスクは祭りのような騒ぎになった。
 そして。その余波はビスク港のレストラン、シェル・レランにもやってきたのであった。
 ビスクタイム紙の号外を、眼鏡片手に読むシレーナ。その目は、ある文字で止まっていた。
 そう、「食材なども確認出来た。」という文字である。
 「これは・・・すぐにでも調査しなければなりませんわね。さて、誰に任せましょうか・・・。」
 と、丁度その時。ドアがノックされた。
 「シレーナさまー、お茶を持ってきましたよー。」
 湯飲みと茶菓子を乗せたお盆を持って、ライチが部屋へ入ってきた。
 「あらあら、ありがとうですわ(ふふっ、丁度いいカモが来たわ)・・・そうですわ、ライチ君、ついでにもう一つ頼んでも宜しいかしら?」
 「はい? 何ですか?」
 「ちょっとビスクの地下水路を探索して、未知の食材を持ってきてくれませんこと?」
 「・・・・・・え?」
 
 厨房師装備にドラゴン装備を重ね、ウッディンポールを手に持ち、大量のワインを鞄に詰め。
 ビスク東の細い坂を、トコトコ歩くライチ。
 「ひどいなシレーナさまは、これってついでに頼む事じゃないよね、ね?」
 通りすがりの猫に愚痴をこぼすが、猫はニャーと一声鳴くと、我関せずと言った表情でそのままトコトコ走り去ってしまう。
 「はあー、でも何か持って帰らないと、シレーナさまにカミナリ落とされるしな・・・仕方がない、頑張っていこーかな。」
 ビスク東を抜け、ビクトリアス広場に入る。大きな彫像の間を通り、広場の中央へ向かうと、そこに大きな噴水がある。
 見ると、装備を固めた冒険者のパーティーが、次々と池に飛び込んでいた。
 実は地下水路の入口は、この池の排水溝である。ライチもまた、大きく息を吸って、止めて、そして池に飛び込んだ。
 排水溝までの短い距離を泳ぎ切り、水面から顔を出す。そのまま、地下水路の入口まで歩いた。
 すると、そこでは、先程のパーティーだけでなく、大勢の冒険者がまさにこれから探索を始めようと最後の準備をしている所であった。
 「うわー・・・これだけ居れば、未知のモンスターってやつもみんな倒してくれるかも。」
 ライチはこっそりと、ちょうど出発したパーティーについていった。
 しかし。
 「うわー、凄い凄い! こんなダンジョンみたいな部屋、一体何で作ったんだろう?」
 キョロキョロとチョロチョロしているうちに。
 ライチはいつの間にか、1人になっていた。


 地下水路でかっ

 そこは、地下ダンジョンにしては、あまりに大きすぎる場所だった。下にはレクスールリバーなんかよりずっと幅の広い排水路が流れ、天井は遥か上にあり、排水路を渡る橋が2本も架けられている。いや、崩れ落ちた橋を加えると、3本。
 ライチはその部屋の隅で、どうしようか悩んでいた。
 周りには誰もいない。遠くにはゴーレムが見える。
 ゴーレムに与えられた役割は、侵入者の排除。近づくと、無言で襲い掛かってくる。ライチでは到底敵わない。それほど強力な敵。
 だがライチは能天気だった。
 「ま、ワインもあるし。ゴーレムもしつこく追いかけてこないし。何より面白そうだし、探検してみよー!」
 ライチは周りをキョロキョロと見回して、敵がいないことを確認してから、ダンジョンを一歩、歩いた。
 と、その時。
 後ろから気配を感じる。独特の起動音、足音。ゴーレムの気配。
 早速ワインを取り出し、飲み干す。
 「・・・フフ、もう僕を襲うとはね。だけど僕の逃げ足に敵うかな? ゴーレム一匹程度だったら、簡単に逃げ切ってあげるよ!」
 と、格好よくライチが振り返ると、そこには。
 サンドゴーレム、ストーンゴーレム、ロックゴーレム。
 ロードランナー、アイアンゴーレム、シャドーストーカー・・・等等。
 計10体ものゴーレムが、ライチ目掛けて走っていた。
 「・・・フフ・・・なんで・・・こんなにいるの?」
 ライチは足の進むままに、全力で逃げ出した。


 「うわーん! 何で僕ばっかり襲ってくるのー!!?」
 階段を駆け下りると、そこには回りこんでいたシャドーストーカー。その漆黒の豪腕から繰り出されるラリアットのような打撃。ボーンレス(酩酊1 酔った状態で予測不可能な動きをして攻撃をかわす)で何とか避け、そのまま脇を抜けて更に走る。
 しかし前には、ロックゴーレムとストーンゴーレム。2体ともすでに腕を振り上げている。
 転がりながら2本の腕をかいくぐり、更に駆ける。
 「う・・・欠伸が出そう。けど止まったら・・・。」
 振り向くと、相変わらず追いかけてくるゴーレム軍団。
 歯を食いしばって、足の速度は緩めず、ひたすら逃げていった。


 何処だか分からない小部屋で、ライチは一息つく。周りには見知らぬパーティーと、先ほどまでライチを襲っていたゴーレムの残骸。
 「大丈夫でしたか? こんな沢山に追われるとは、不運でしたね。」
 チョッパーを持つニューターの戦士が、ライチに声をかけた。
 「はい・・・危なかったー。もうワインも切れちゃって、怖かったでしたよ。あ、あの、皆さんありがとうございました。」
 ぴょこんと、頭を下げる。
 「いえいえ、どういたしまして。」
 「ウチらもいい儲けになったよ。アイアンゴーレムが珍しいブーツ持ってたしな。」
 と、他の冒険者たちから声をかけられる。
 「(・・・そうだ、この人たちに頼めが、何とかなるかも!)」
 ライチは、魔法使い風の冒険者に、こう頼んだ。
 「ねえ、ねえ。リコールアルターだしてもらってもいいですか?」
 
 そして夕暮れ。
 ライチはバタバタとシェル・レランの廊下を走ると、シレーナの部屋に飛び込んだ。
 「シレーナさま、シレーナさま! 新しい食材、見つけましたよ! ほらほら!!」
 ライチは手の中の野菜を、シレーナに見せる。
 「あらあら、本当に見つかったのですわね。これは、もやしですわ・・・そしてこれは、こんにゃく芋ですわね。ライチ君、これはどこで見つけたのですか?」
 「え・・・あ、あの、えと、地下水路の奥の方・・・だったかな。」
 笑顔で答えるライチに、笑顔で受け答えをするシレーナ。
 「へー、そうですか。てっきりビスク西の露店かと思いましたわ。」
 「・・・え!!」
 凍り付くライチの笑顔。シレーナの笑顔は・・・コメカミに青筋が。
 「ジャニが見てましたわよ。ライチ君がビスク西で、冒険者の持ち帰った食材を買っていたと。」
 「あ・・・あはははははは。」
 「うふふふふふふ・・・・。」
 乾いた笑いのライチと、冷たい笑いのシレーナ。
 「もう一度、行ってらっしゃい。今度はちゃんと、収穫場所のマップをつけてね。」
 (第14章 完)

第13章 あとがき

テーマ:

というわけで、長かった厨房師装備への道も、ようやくピリオドを打てました。

これで大手を振って、白と赤の服で歩けるようになりました・・・って、元々歩いていますがw


さて、大型パッチが導入されて一週間が経ちました。そろそろ感想も出尽くした感がありますが・・・

私は、ほとんど触ってないってのが実状です;;

まあ、それでも少ない自由時間をフルにMOEって、地下水路を2時間近く探索したりもしましたが。

感想

私みたいな一日1時間も出来ないユーザーが楽しめるようなものも欲しいな・・・と。

地下水路は死にやすすぎて怖いです。リザも死体回収も見込めないソロオンリーの身では辛い・・・。

あ、ちなみにファーストキャラの話です。ライチだとどうなるのだろう・・・。

というわけで次回予告。

「第14章 探索セヨ ビスク・アンダーグラウンド」

それでは来週も宜しくお願いしますーノ


そうそう。盆踊りは楽しかったねー。参加した方、お疲れ様でした。

・・・・・・重すぎて、踊りまで見えなかったのが残念なり;;


 ゆっくりと、赤塗りのお椀が持ち上がる。
 立ち上がる僅かな湯気を気にもせず、その中身をじっと見てから、お椀の縁にキスをするかのように、そっと唇へ近づける。
 ズズズ・・・
 一口啜ってから、トンと、お椀を机へ置いた。
 「美味しいですわ。合格です。ライチ君、貴方を厨房師と認めますわ。」
 「本当ですか? やったー!」
 顔をほころばせて飛び上がるライチ。それまでの、机の前でピーンと背筋を伸ばしたまま固まっていた姿とはかけ離れ、全身で喜びを表現する。
 「やったー! 厨房師だー! 厨房師だー! あ、シレーナさま、あの服ください、あの服!」
 両手を伸ばして、服をねだるライチ。
 シレーナはニコニコと笑いながら、ゆっくりと手を伸ばして、その両手を軽くパシッと叩いた。
 「残念ですけど、まだあげられませんわよ。」
 「ええーっ、何でですか?」
 途端に、不満の表情がライチの顔に浮かぶ。
 「厨房師装備は、厨房師としてのスキルを満たしただけでは、あげられませんわ。あともう一つ注文をクリアしていただきますわよ。」
 「ええー、まだあるのー?」
 「そうですわよ。ライチ君、先程のように両手を出していただけますか?」
 ライチが声に従って再び両手を伸ばすと。
 その上に、大きな麻袋が乗っかった。
 「うわっ・・・冷たい! シレーナさま、何ですかこれ?」
 「それはシーフードミックスですわ。小エビなどの小さな海産物をまとめて冷凍したものですわよ。ライチ君には、それを使ってシーフードリゾットを作って貰いますわ。」
 「シーフードリゾットですか? えと、レシピとかは?」
 「ふふっ・・・ちゃんと、教えてあげますわ。」
 困り顔のライチを見て軽く微笑んでから、レシピの書かれた紙をライチに手渡した。
 
 ミニウォーターボトルは、シェル・レランの売店で買えた。
 バターは、売店で手に入る材料から、作る事が出来た。
 精米は、既に持っていた。イルヴァーナ渓谷で玄米を採ってきた事があったから。
 だが、一つだけ、材料が足りなかった。
 それは、とうもろこし、であった。


 ヌブール村の急坂をトトトッと駆けながら、ライチはアルビーズの森を目指す。
 左手にはアルビーズの森の地図と、赤い大きな○が一つ。
 「とうもろこしは、この辺りに自生しております。しかし、この辺りはスプリガン共の縄張りとなっております故、十分に装備を調えてから出掛けるのが宜しいでしょう。」
 そのカマロンの言葉に従い、ライチの右手にはウッディンポールが握られていた。銘入りドラゴン装備一式も着込んできたし、鞄にはアレを詰めてきた。
 「よーし、モンスターなんかに負けないぞ!」
 決意を新たに、ライチはアルビーズの森へと続く細道を駆け抜けていった。
  
 「あ、あった!」
 ○のついた場所では、確かに細く背の高い植物が生えていた。遠目でも、その茎に作物が実っていることが分かる。
 ライチはウッディンポールを仕舞うと、鞄から収穫鎌を取り出す。そして周りをキョロキョロと見回して、誰もいない事を確認してから、木陰を飛び出した。
 ドドドッと、ダッシュでトウモロコシの前まで来る。そして鎌を構え、実っているトウモロコシに当てようとした。
 その時。
 「ギギギ!(誰だ!)」
 いきなり怒号を浴びせられ、ライチは固まってしまった。
 トウモロコシの茎の、背の高さが仇になった。密集しているその茎の奥から、それより背の低いスプリガンが姿を現した。
 「・・・あ・・・あ・・・そだ・・・アレを。」
 しゃがんだ姿勢のまま、ジリジリと後ずさるライチ。と、それと同時に鞄に手を突っ込んで、ゴソゴソとまさぐる。
 「ギギー、ギギギギ、ギー!(ウチの食料を盗もうとしやがって、覚悟しろ!)」
 スプリガンは、自分の背丈ほどもある棍棒を振り上げて、ライチ向けて振り下ろす!
 ドン!!
 大きな音が響いた。
 しかし、それはライチに当たった音ではなく、地面へめり込んだ音であった。
 ライチはその棍棒から、数歩離れた地点に立っていた。
 「フフフ・・・僕は・・・厨房師なんだ・・・だからもう逃げないよ。」
 ライチの目はトロンとして、半開きになっていた。右手には相変わらず収穫鎌が握られていたが、左手にはいつの間にか。
 空になった瓶が握られていた。
 間一髪、ライチは攻撃が来る直前に、ワインを0.02秒で飲み干し、センスレスを発動したのであった。
 フラフラと、よろめきながらもライチは構えをとる。左手の瓶を投げ捨て、再びワインを取ると、栓を抜いて再び飲み干す。
 「ギギ! ギャギャ! ギーー!!(えい! この! でやー!)」
 ひょい ひょっ ぴょん!
 繰り出される棍棒を2度、3度と簡単に避け、収穫鎌を振り上げると。
 トウモロコシに向けて、振り落とした。
 ザク! ぴょん! ゴクゴク ザク! ぴょん! ゴクゴク・・・
 収穫、センスレス、ワインを飲む・・・その繰り返しで。
 「フフフ・・・とうもろこし、げっと・・・フフフ」
 ふらつきながら、緑色の細長いトウモロコシを、天高く掲げた。
 「・・・ギギギ!(こっちを無視するな!)」
 肩を大きく上下させながらも、スプリガンは大声で怒る。
 しかしライチはその声が耳に入らないかのように、全く動じず、そのままヌブールの村に向けて歩き始めたのであった。
 
 「シーフードリゾット、完成~!!」
 海を思わせるような真っ青な皿に、白いご飯と色とりどりの具が湯気を立てる。
 「あらあら、美味しそうですわね。それならば、お客様も納得してくださるでしょう。ではライチ君、それを配達してきてくれませんこと? 場所は分かりますわよね。」
 「はーい、行ってきま~す!」
 皿をおかもちに入れ、ライチは走り始めた。
 そして、あっという間にビスク東の、マーレの前へ到着。
 「すいません、シェル・レランですけど。マーレさんですね。シーフードリゾットをお持ちしました。」
 「おお、待っていましたよ。さあ、こちらへお願いします。」
 マーレは穏やかな笑顔を浮かべながら、丸机の前にライチを呼ぶ。
 その上にお皿を置くと、マーレは感嘆の言葉を述べた。
 「ほう・・・素晴らしいですね。この匂い・・・そして。」
 スプーンを手に取り、口に運ぶ。
 「この味・・・美味しいですね。このような辺境にこのような美味しいレストランがあるとは、本当に想像もしておりませんでした。おっと、そうでした。お代を払わなければ。」
 そう言うと、マーレは鞄から紙をペンを取り出し、サラサラと数字を書き込む。
 「これでいいかな。ありがとうね、小さなコックさん。」
 「あ、はい。毎度ありがとうございました~!」
 ライチはぴょこんと頭を下げると、その紙を受け取って、数字を見た。
 「(小切手だ・・・初めて見る。えっと・・・丸が1つ、2つ、3つ・・・4つ? 1万ゴールド? シレーナさま、ぼりすぎじゃ・・・)」
 「おや、どうしたのかな?」
 「い・・・いえいえいえいえ、なななな、何でもないです、はい。」
 ライチはそれを慌てて懐へ仕舞うと、ダッシュでシェル・レランへ戻っていったのであった。
 
 とにもかくにも、これでライチに課せられたミッションはコンプリートされ、シレーナの手からライチへ、厨房師装備が贈られた。
 しかし、ライチはまた一つ、シレーナの怖さを知ったのであった・・・。
 「ま、まあいいや! 厨房師服、げっとーー!!!!」

厨房師服げっと
 (第13章 完)

第12章 あとがき

テーマ:

第12章はいかがでしたでしょうか?

本来ならイライラと作業的になりがちな呪文抵抗上げですが、ちょっと妄想を加えてみました。

本当にこうだったら、楽しいんですけどね・・・と、12章をみてしみじみ思い・・・あ!!


挿絵(写真)入れてない!!

・・・・・・・・・orz


忘れてました・・・後でちゃんと入れておきます。


それはそうと、ついに大型パッチが来ましたね。

新レシピやマップ追加は、格好のネタになるので大歓迎です。

早速ファーストキャラでインし、地下水路を探索。

そして迷子。切れかけた触媒。

結局時間が無くなり、排水溝側の部屋でログアウト。

さーて、どうやって脱出しようかしらw

早く帰らないとカオスにいけないよ・・・って、今週のカオスって盆踊りとかぶってる?

・・・・・・orz


さて、次回ですが。

第10章から続けてきた厨房師への道のりの、最終章となります。

「第13章 厨房師服へのファイナル・オーダー」

更新予定は8月7日です。では、次回も宜しくお願いしますーノ