第7章 章外1 あとがき

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空梅雨の候、いかがお過ごしでしょうか?

こんにちは、作者です。

今週は豪華?二本立てという事で、頑張って二つ書き上げました。

・・・と言いましても、章外1は短いですがw


章外1の当て字は・・・まあ、遊びですw 本来は没ストーリーの一ネタだったのですが、捨てるには惜しいかなと考えてしまい・・・まあ、すいませんでしたorz


第7章は、ジャガイモを掘りに行ったとき、スプリガンにタゲられて逃げ回ったという経験から作りました。ジャガイモ・ミミックは小説オリジナルなので、MOE内で探しても見つかりませんよー・・・って、探す人なんて居ないですね(小説内でも成功してないし)

スケープゴードミミックは、ファーストで使ってました・・・が、あまし役に立たないので切ってしまいました。

物理攻撃完全回避が実装されたら、また使えるようにしたいのですが・・・バランス崩れるかな?


明日は愛以裸さんのイベントですね。ライチはシレーナ様から逃げ切れたら参加しようと思っています。


では最後に次回予告を

「第8章 新クエストはベジタブル・サラダ」

もしかすると前後編に分けるかもしれません。頑張って書きますので、次も読んで下さい~ノ

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 「ふーん、ふふーん、らん、ららーん♪」
 鼻歌を歌いながら、ライチは厨房でフライパンを振るう。
 そこへ、シレーナが入ってきた。
 「あらあら、いい匂いですわね。」
 「あ、シレーナさま! おはようございます!」
 「ふふっ、お早う、ライチ君。今日はどうしたのかしら、やけに気合い入っているわね。」
 シレーナは、ライチの周りに積まれている箱を覗いて回る。
 「これは、こんがりポテトですわね。こちらはリンゴ飴ですか。あらあら、こちらはバナナミルクですわ、沢山ありますわね。」
 シレーナの言葉通り、ライチの周りには箱が何個も積まれていた。
 1つ目の箱には、小箱に一つずつ入れられた、こんがりポテトが並べられている。小箱には割り箸が添えてあり、買う人が食べやすいよう配慮されている。
 その隣の箱には、割り箸に刺さったリンゴ飴が、小さい紙袋に包まれている。箱の中で綺麗に並ぶ赤い玉は、見ているだけでヨダレが垂れそうだ。
 反対側の机には、バナナミルクがカップに入れられ、箱に詰められ、4段重ねになっている。その横には、まだ刺されていないストローが袋の中に沢山入っている。
 「ライチ君、こんなに沢山のお料理、どうするのですか?」
 「はい! 今日お祭りがあるって聞いたから、そこで売ってきます~!」
 「あらあら、ライチ君も商売が上手くなりましたわね。確かに、お祭りではお料理が沢山売れますわ・・・ですけど、戦勝祭も収穫祭もまだ先ですし、こんな時期にお祭りなんてありましたかしら?」
 「はい! 一昨日、テオ・サート広場で、ビラを貰ったんです。」
 ライチはポケットからビラを取りだし、シレーナに渡した。
 シレーナはそれを受け取り、開くと・・・そこには。
 
 FS・ERO主催イベント 
 【第1回 脱衣王決定戦!!】
~ボインでバボボンな姉ちゃんを、襲って!倒して!剥ぎ取りまくれ!!~

  開催日:7月1日 21時~
  開催場所:P鯖 ヴァルグリンドの巣
  集合場所:レスクールヒルズ城門出て左の辺り(SBとは逆の窪み)
  内容概要:一定時間内でアマゾネスを倒し、ドロップする装備品の数を競います。最終的に最もアマゾネスを脱がした人(装備品をドロップさせた人)に第一回脱衣王の称号を贈呈します
  ルール:ドロップ数に応じてポイントが付くポイント制です。
       レザー装備1個につき1点。
       ヒョウタンはエロ度が高いので5点とします。
       詳しいルールはココ を参照してください。

  発起人:愛以裸(IRA)
       恥露(TiRO)


 ワナワナと震える手で、シレーナはビラを握りつぶす。
 そして、少しだけ声のトーンを落として、言った。
 「ライチ君・・・このお祭りに行っては駄目よ。」
 「えぇ~っ、何でですか!?」
 (章外1 完)

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 それは、案山子のような物体だった。
 わらを束ねて、十字架のような形に編まれているそれを、ライチはじっと見上げる。
 それは、アルビーズの森の中に、ポツンと突っ立っていた。
 「うわ・・・何だ、これ? 何だろこれ? 何だ何だ?」
 一瞬にして興味を持ったライチは、その物体の周りをグルグルと回ったり、上に乗ってみたり、つついてみたり、叩いてみたり・・・。
 しかし、それは何の反応も見せない。
 「何に使うんだろ、これ。不思議だな~。」
 その物体から数歩離れて、全体を見つめていると・・・どこからともなく、声が聞こえた。
 「ふふふ・・・少年、その案山子が気になるでござるか?」
 「え? 誰・・・? 誰か居るの?」
 「ふふふ・・・拙者が何処にいるか、分からないでござろう。その案山子について特別に教えてあげるでござるから・・・すまないが少年よ、どいてくれないか?」
 「・・・え?」
 そこでライチは気がついた。自分が踏んでいるのが、土ではなくもっと柔らかい何か・・・例えるなら、人の身体のようなもの・・・だったという事に。

 ライチが足をどかすと、地面と同じ色をした布の下から、黒い頭巾に黒装束、剣を背負った忍者風の女ニューターが現れた。
 「あ・・・ごめんなさい、こんな所に人が居るなんて思わなかったから・・・あの、大丈夫ですか?」
 「かなり痛い・・・いや、大丈夫でござる。踏まれるという事は、拙者の隠れ身が完璧だったという事でござる。」
 そう言いながら、女忍者はしかめっ面で赤くなった鼻の頭をさする。
 「ねえ、それよりそれより、これって何なんですか?」
 ライチはそんな様子を気にかける事もなく、案山子を指差してそう問いかける。
 「・・・まあ、いいでござる。これは、スケープゴードミミックという技に使う案山子でござるよ。聞いた事は無いでござるか?」
 ライチは少しだけ考え、そして首をブンブンと横に振った。
 「そうでござるか。では特別に教えてあげるでござる。スケープゴードミミックとは物まねというスキルの技でござる。」
 「物まね?」
 「何と、物まねも知らないでござるか・・・物まねというスキルは、声や人や自然などの真似をして、相手を攪乱するスキルでござる。スケープゴードミミックは物まねスキルの中難易度ぐらいの技でござるが、拙者にかかれば・・・えい!」
 ドロン!
 女忍者が、急に煙に包まれる。その煙はすぐ風に飛ばされるが、そこには。
 案山子があった。
 「・・・うわー、凄い凄い!!」
 ライチはそれを見上げてはしゃぎ回る。
 「ふっふっふっ・・・凄いでござろう。このようにして、相手の攻撃を外させるのでござるよ。拙者がどこに居るか分かるでござ・・・ぶ!!」
 はしゃいで、案山子の周りをグルグル回っていたライチは、再び土ではない何かを踏んのであった。


 鼻にティッシュを詰めながら、女忍者はライチを睨む。
 「あ・・・あの、大丈夫ですか。」
 「・・・平気でござる。拙者のスケープゴードミミックが破られたわけではないでござるかなら。それより少年、君は何をしにここへ来たのでござるか?」
 「あ、そうだ! シレーナさまに言われて、ジャガイモを掘りに来たんです!」
 ライチはクワを取り出し、女忍者に見せる。
 「そうか、君はシェル・レランでござるな。ジャガイモはこの森を南に行って、川を渡ってすぐの所に自生しているでござるよ。だが、そこら辺はスプリガンの縄張りでござるから、気を付けるでござるよ。」
 「はーい、分かりました!」
 ライチはペコリと頭を下げると、南へ向かって走り出した。


 「あ、あった!」
 川を渡ったライチは、シレーナに渡されたのと同じ、先の尖った大きい葉っぱを見つけた。よく見ると、その葉を付けた草は、川沿いに沢山生えている。
 「よし、掘ってみようっと。」
 ガスッ!
 クワの刃が地面に浅く刺さる。ライチは続けて2度、3度、4度と振る。刃は少しずつ地面に埋まるようになっていき、土は少しずつ掘り出されていく。
 そしてついに、薄黄色が土の中から、ほんの少しだけ顔を出した。
 ライチはクワを置き、素手で土を掻き分け、ジャガイモを手に取った。少しだけ力を込め、ブチブチっとそれを根から切り離すと、表皮についた土を手で払う。
 そして、それを高々と掲げ。
 「1個目、げっとー!」
 と叫んだのであった。
 「・・・さてと、次々。」
 そのジャガイモを鞄に放り込むと、さっさとクワを握りなおし、2つ目の草へ目を向けた。
 ・・・しばらくは、土を掘る音と、「○個目、げっとー!」という声だけが、川沿いに響いていた。
 
 23個目のジャガイモを鞄に入れた時、ライチはふいに足音を聞いた。川の向こう、森の中。
 「・・・ん、誰か来たのかな?」
 何気なく森の中を凝視する。すると、木々の隙間から、人影が2つ見えた。木漏れ日の光が、2人を照らす。
 「あれは・・・。」
 その人の肌は緑色で、耳は長く、背が小さく身体は丸い。とんがり帽子を被り、その身体に不釣り合いな程に大きい棍棒をかついでいる。
 それが何者なのか、ライチは知っていた。
 「・・・スプリガンだ!」
 スプリガンとは、アルビーズの森を根城にする種族。同じ森に住むオルヴァンと闘争を繰り広げているだけでなく、通りかかる旅人をも襲う好戦的な種族である。
 2人はだんだん、川へ近づいてくる。喋りながら歩いているようで、ライチには気付いていない様子。
 「どうしようどうしよう、このままだと見つかっちゃう。」
 ライチはキョロキョロと辺りを見回すが、隠れられそうな場所は無い。
 「どうしようどうしようどうしょうどうしよう!」
 ライチはパニックに陥り、意味無くジャガイモ畑や周辺をウロウロと走り回る。
 だが、その時。
 ジャガイモの草を見て。
 川の水面に映った自分の顔を見て。
 そして、あの女忍者の「物まねというスキルは、声や人や自然などの真似をして、相手を攪乱するスキルでござる。」という言葉を思い出し。
 ピンと、閃いた。
 「そうだ!!」
 
 ライチはジャガイモ畑の真ん中で、ピンと背筋を伸ばしてしゃがみ込む。
 「(ふっふっふっ・・・僕の姿は、ジャガイモ畑と一体になっている筈。これぞ必殺、ジャガイモ・ミミックでござる!)」

ジャガイモ・ミミック発動!  


 ジャガイモ・ミミック 物まねスキル0
 ジャガイモ畑に溶け込み、姿を消す。
 緑髪のエルモニーのみ使用可能。


 スプリガン達はついに、森を出て川に差し掛かる。
 だが。
 「キーキッキッキッ、キッキー!! ・・・キッキッキッ。」
 「ギ ギギギギッ、ギッギー!! ギギギ。」
 2、3言、何か言葉を交わすと、そのまま森の中へ引き返していった。
 
 スプリガンの姿が完全に見えなくなったのを確認してから。ライチは大げさに飛び上がった
 「やった! うまくいった! 忍者のお姉さんありがとー! スプリガンって意外にバカだなー!」
 ライチはジャガイモ畑の中で、笑い転げるのだった。


 おまけ。その時の、スプリガンの会話。
 「キーキッキッキッ(おい、あんな所にしゃがみ込んだエルモニーが居るぞ。)」
 「ギ ギギギギッ(ホントだな。もしかしてあれで隠れてるつもりなのか?)」
 「キッキー!(そんなわけないだろ、ハハハ!)」
 「ギッギー!(それもそうだな、ハハハ!)」
 「・・・キッキッキッ(・・・可哀相だから見逃してやるか。)」
 「ギギギ(そうだな。)」
 (第7章 完)

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欄外編 ミュージカルバトン

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七式さんより今流行りのミュージカルバトンなるものが回ってきたので、回答します。

恐らく、かなり偏ると思いますが・・・。


■Total volume of music files on my computer(コンピュータに入ってる音楽ファイルの容量)
0MBです。音楽はMDに録って、車で聞く人なのです。

MP3でも聞きますが、パソコンに入れた音楽はすぐ消してしまうので、残る事はないですね。


■Song playing right now(今聞いている曲)
カラオケ用に、MP3で聞いている曲です。最近カラオケに行く事が多くなったので。

当たり障りのない曲ばっかですね。私の音楽趣向とはちょっと離れてますが・・・。

・アンダーグラフ/ツバサ

・スキマスイッチ/全力少年

・BUMP OF CHICKEN/天体観測

・ポルノグラフィティ/ネオメロドラマティック


■The last CD I bought(最後に買ったCD)
MDを買ってから、CDを買わなくなりました。この曲はレンタルビデオ店に無いから買ったような記憶があります。

・鈴木彩子/9 -nine-


■Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me(よく聞く、または特別な思い入れのある5曲)

・鈴木彩子/VOICE~明日への滑走路

鈴木彩子は私の神でした。2nd~6thまでのアルバムは聖書でした。その中で一番思い入れがある曲です。他にも好きな曲は沢山ありますが、代表で。


・篠原美也子/誰の様でもなく

オールナイトニッポン2部のDJをやっていたので、知っている人は知っているかな? 私はテープにとって聞いていました。小説書くようになったのは、この番組がきっかけです。


・鬼束ちひろ/月光

鬼束ちひろの1stアルバムは名盤です。好きな曲は多いけど、一番はやっぱこれかな。


・椎名林檎/幸福論

「無罪モラトリアム」「勝訴ストリップ」の歌はどれも好きですが、一つを選ぶならこれかな。


・川本真琴/ 1/2

何処行っちゃったんだろ、彼女。この曲は好きでした。


総括。やっぱり偏ったw

しかも、その歌手の代表曲と言えるような歌ばかり選んでる気がします。まあ、良い歌だから代表曲になるのでしょうけど。


■Five people to whom I'm passing the baton(バトンを渡す5人)

これが一番難しいです・・・て言うか、回せる人が5人も居ませんorz

というわけで、以下の2人に回します。宜しくです~ノ


・Irisさん「エルアン神殿に続く階段」


・Nicolaさん「[F.T.T]フライパンは縦に使え。」


・・・って、あんまし乗り気しなければ無視しちゃっても構わないですよー



第6章 あとがき

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・・・ええ、言われなくても分かっております。書いた私が一番分かっています。

第6章、とても長いですね、はい。もっと短くしないといけないのは分かってるんですけどね^^;

・・・・・次はもっとさっぱり読めるようにしますorz (そう誓って何度目だオレ)


最近、ダイアロス島内でちょくちょくと声をかけていただけます。らいちはとても喜んでいますので、見かけた方は遠慮無く声をかけてくださいー。まあ・・・イン時間はとても短いんですけどね。ネタ捜すのも、一苦労!


愚痴ばかりのあとがきになってしまいましたが、本人はけっこう楽しんでやっております。お暇な方はコメントを残してくれると嬉しいです^^


では、次回予告を。

「第7章 必殺技はジャガイモ・ミミック」

掲載予定日は6月26日の日曜です。ではまた宜しくです~ノ

 ピョコ! 
 緑色の髪が、陳列棚の向こうに一瞬だけ現れては、消える。
 ピョコ、ピョコ、ピョコ。
 その緑が棚を右から左へ進みながら、何度も現れては消える。シェル・レラン内に店を構える食べ物屋の女主人アリサは、その様子をクスクスと笑いながら眺める。
 そんな様子が数分続いてから、アリサは声をかけた。
 「ライチ君、ライチ君。何を捜しているのかな?」
 「あ、アリサさん。こんにちは!」
 ライチは元気良く挨拶をしてから、陳列棚をトトトッと回り込んで、カウンターの前まで来る。
 「あのね、醤油ってここに置いてないですか?」
 「お醤油? お醤油なんて何に使うの?」
 アリサがそう聞くと、ライチは胸を張りながら答える。
 「昨日ね、イプスバスを沢山釣ってね、白身魚の切り身を沢山手に入れたんだよ。そしたらね、シレーナさまがお刺身にして食べましょうって言ってね、レシピを教えてくれたんだよ!」
 「へー。成る程ね、それでお醤油を捜しているのね。でもごめんなさい、今切らしちゃってるのよね。お醤油って貴重品だから、全然入荷出来ないのよ。あ・・・でもねでもね!」
 ライチの表情を見て、アリサは慌てて言葉を付け足す。
 「ここには無いけど、売ってるところは知ってるわよ。」
 「本当ですか?」
 一瞬にして、ライチの表情が晴れやかになる。
 「ええ、勿論よ。ちょっと待ってね・・・今、地図書いてあげるわ。」
 そう言うと、アリサは紙とペンを取りだし、サラサラと地図を書いた。
 「はい、ライチ君。ここら辺はダーイン山の麓なんだけど、この辺りに白いテントがあるのよ。そこでお醤油を売ってるわ。」
 「はい、分かりました! ありがとねアリサさん、行って来ます~!」
 ライチはブンブンと手を振ると、店を飛び出していった。
 「(ふふふっ・・・ライチ君はいい男とはちょっと違うけど、可愛くていいわね~。)」
 まだ少しだけ揺れている扉を見ながら、アリサは少しにやついていた。

 

 西門を抜け、ミーリム海岸の草原を東から西へ、トコトコと走り抜ける。
 「えっと・・・こっちかな。」
 アリサから貰った地図を片手に、ライチは一路ダーイン山の麓へ向かう。
 陽はまだ高く、陽光は容赦なくライチを照らす。だがそんなものに気をかける様子もなく。
 崖を飛び降り、森を抜け。
 小高い丘を駆け上がったところで、ついにライチは白いテントを見つけた。
 「あ、あった!!」
 丘をトトトッと駆け下り、テントへ近づく。そして、程なく辿り着いたが・・・。
 三張りあるテントは全てビリビリに破れ、黒ずみ、人が居る印象を受けさせない。テント前に焚き火跡があるが、その炭はもう何年も前に燃え尽きたように見える。
 「(ここ? ・・・それにしては荒れてるな~。)」
 ライチがテント前をウロウロしていると、テント裏からいきなり声が聞こえてきた。
 「うりゃああああああああ!!!!!」
 「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」
 テント裏へ回り込むと、そこでは激しい戦いが繰り広げられていた。
 全身にチェイン系の装備を着込み、片手剣と盾を装備した戦士風のニューターが、戦斧を両手に構えたオーク歩兵と刃を交えている。
 カァン! キィン!
 2、3度、お互いの刃から火花が飛び散ったと思ったら、刃と刃を重ね力比べの押し合いになる。
 だが、どちらともなく後ろに飛び退き、間合いを取って対峙する。
 「あの、すいません。」
 ・・・ライチは、その場の空気を全く読まずに、1人と1匹に近づいて声をかけた。
 「あん? 何だよ、今忙しいんだ、見て分からねえか?」
 「ブウ! ブウブウブウ!! (訳:そうだ、邪魔だよこのチビ!)」
 当然の如く、1人と1匹から怒鳴られる。しかし、全く怯む様子はなく・・・というより、全く気にせず。
 「あの、ここにお店があるって聞いたんですけど、知ってますか?」
 質問を始めた。
 1人と1匹は「え?」といった表情を浮かべ、1人の方が聞き返す。
 「ここの店ってお前、夜間キャンプの事か?」
 「夜間キャンプ?」
 語尾を上げながら、首を傾げるライチ。
 その様子を見た戦士とオーク歩兵は顔を見合わせると。
 ニヤリと、その表情を変え、同時にライチの方を向いた。
 「そうか、夜間キャンプを知らないのか~」
 「ブヒブヒ、ブブブウ~(そりゃモグリか、素人だぜ。)」
 「まあまあ、どうやらチビ君はこの島に来たばっかのようだし、知らなくても仕方ないって。」
 「ブウブウ、ブヒヒヒ(そうだな旦那。まあ折角だし、この新人さんに教えてやりなよ。)」
 「へへへへ、そうだな。チビ君は、ここの店に買い物に来たんだよな。」
 「え、あ、はい。ここに醤油が売ってるって聞いたので・・・。」
 「ブヒブウ、ブブブウ、ブヒブヒブウ(そうかいそうかい。ならばここで合ってるよ、チビ君。けどここの店が開くのは夜なんだ。)」
 「夜?」
 「ああ、そうなんだ。そだな・・・夜の、8時半にここへ来な。面白い物がみれるぜ、なあ。ハハハハ!」
 「ブーブブブゥ(そうだな、ハハハハ!)」
 戦士とオーク歩兵は再び顔を見合わせると、ニヤニヤと笑い合った。
 一方のライチは、そんな様子を気にすることなく。
 「夜8時半ですね。ありがとうございましたー。」
 と元気良く挨拶してから、「時間あるから釣りしてこよー。」と言いながら海の方へ走っていった。


 そして、夜8時半。
 言われた通り、ライチはテントの前まで来た。しかし・・・。
 そこにあるのは、昼間と変わらず、朽ちたテントと火のつかない炭の固まり。
 「あれ? まだ誰もいないな。」
 暫くウロウロと、テントの周辺を徘徊するが、誰もいない、オークも居ない。ただ風が吹き、落ち葉が舞うだけ。
 「まあいいや、ちょっと待ってみよー。」
 ライチはテントの骨組みになっている丸太に背を付け、地面に座り込むと。
 「ふわぁー、ねむねむ・・・。」
 大きな欠伸を一つして、そのまま瞼を閉じてしまった。
 ・・・・・・そして。
 
 生暖かい感触が、ライチの頬を撫でる。
 「うにゃっ!!」
 ライチは驚いて飛び起きる。すると・・・目の前に、信じられない光景が広がっていた。
 ボロボロになっていた筈のテントが、新品のように綺麗に直っている。
 あの何年も前に燃え尽きたような炭に、赤々と炎が宿っている。
 そして、その炎の前に、人影が2人、見えた。1人は背の高い女性、1人は背の低いドワーフのように見えた。
 ライチはその人影へ近づき「すいません、ここって・・・。」と声をかける。それに気付いた女性が、ライチの方を向いた。
 その顔を見てライチは驚き、そして尻餅をついた。
 「あ・・・あ・・・。」
 そしてガクガクと震えながら、後ずさりをする。
夜間キャンプ

 女性の顔は青白く、透き通るかのように青白く、実際透き通っていて、その額からは血がドクドクと流れ落ちていた。
 「貴方・・・盗賊・・・イムサマス・・・違う・・・?」
 ブツブツと呟きながら、ライチに迫ってくる。
 「う・・・うわぁ!」
 ライチは飛び起きると、女性に背を向けて駆けだした。しかし、その直ぐ先には、ドワーフが。
 「わあ! こっちも!!」
 そのドワーフもまた透き通っていて、身体から血を流し「鉱石を・・・道具を・・・。」と呟きながら、ライチに迫ってきた。
 ライチは反射的に横へ飛び、そのまま目の前のテントへ駆け込んだ。
 しかし、そこにも。
 女性の幽霊が一体、佇んでいた。そして、ライチに話しかけてくる。
 「あら・・・お客さん・・・何か・・・欲しいの?」
 ライチは再び尻餅をつくと、「あの、醤油を、醤油を・・・。」と呟きながら、ゆっくりと下がっていく。
 しかし、その後ろには、2人の幽霊が迫っていた。
 振り返ったライチはそれに気づき、前を向くがそこにも幽霊が居て・・・。
 「・・・きゅう~。」
 ついに、気絶してしまった。
 
 「あらあら、気絶しちゃったわ。ちょっとからかい過ぎたかしら。」
 
 破れたテントの隙間から陽光が射し込み、ライチの鼻をくすぐる。
 その暖かみでライチは、ゆっくり目を覚ました。半身を起こすと、半分閉じ、半分開いた眼で、周りを見る。
 「・・・あれ? ここは・・・どこだ?」
 寝ぼけながら昨日の記憶を辿り・・・そして、思い出した。
 「!! そうだ! 昨日ここで幽霊を見て・・・って・・・あれ?」
 テントは全てビリビリに破れ、黒ずみ、人が居る印象を受けさせない。テント前に焚き火跡があるが、その炭はもう何年も前に燃え尽きたように見える。
 「もしかして夜のあれって・・・夢? ・・・なーんだ、夢だったのか。」
 ライチはほっと胸をなで下ろし、一旦ビスクへ帰ろうと、鞄を手に取った。
 ズシッ
 昨日と明らかに違う感触。
 鞄を開けてみると、そこには。
 瓶に詰められた醤油が20本、入っていた。
 「え? 何で? そう言えば夜、あの幽霊に醤油って言った気が・・・・・・もしかして昨日のあれは、本当?」
 ライチの顔からサァーッっと、血が引いた。
 そして。
 「しーれーいーなーさーまーー!! たーすーけーてー!!」
 ライチは、泣きながらミーリム海岸を西から東へ駆けるのであった。  
 (第6章 完)

第5章 あとがき

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ついにオリアクス兄貴の帰還イベントが始まりましたね。ライチも少しでも役に立とうと、ビスクで魚を釣ってました。

丁度、第5章で釣りの話を書いたから、タイムリーだったなとw

というわけで、第5章はいかがだったでしょうか? ちょっと長くなってしまって、そろそろ掌編の域を超えるかも・・・次こそ、あっさり読めるようにしますorz


第5章の補足をここで

作中で、アクセルがシレーナの事を「サー・シレーナ」と呼んでいますが、この「サー」は男性上官につける敬称です。女性上官には「マム」とつけるのですが、今作では「見栄えがいいし、分かりやすい」との理由で「サー」にしました。何人もの方から指摘を頂きまして、ありがたかったです^^  今後とも宜しくお願いしますノ


また、シェル・レランのクエストがよく分からないと言われていた方が居たので、ここで紹介します。

今回のお使いは、シェル・レランの星2つのクエスト「夢を託してギルド・アピール」を元にしています。達成条件は作中と同じ、3人に食料を届けるというものです。

これが時間かかる上に報酬は少なく、しかも食材は自己調達というマゾさで、2回以上やる人は少ないみたいですねw

作者はチーズを8個作ってしまったので、4回やりましたが。


それでは次回予告です。

「第6章 買い出し先はミーリム・ゴースト」

次回の更新は6月21日火曜日予定です(20日までサーバーメンテナンスが予定されているので)

それでは、次作も頑張って書くので、読んで下さい~ノ

 「ライチ君、ちょっといいかしら?」
 部屋でゴロゴロと丸まっていたライチを見つけ、シレーナが声をかけた。
 「ほえ? 何ですかシレーナさま?」
 立ち上がり、その元へトトトッと駆けていく。
 「ちょっとお使い頼まれてくれないかしら?」
 「お使いですか、いいですよー。」
 ライチは元気良く手を挙げた。
 「届けてほしいのはこの3つよ。チーズは、ラスレオ大聖堂のミスト様とイルミナ城の門番をしているガードのチョイさんに、ローストスネークミートは闘技場のアクセル様に届けるのよ。ほら、ちゃんとメモしなさい。」
 「あ、はい。」
 ライチはレシピノートを取り出すと、白紙の部分にそれを書き込む。
 「あと、三人の前に立ったら、こう言うのよ。ちゃんとメモしなさいね。」
 「はーい。」
 シレーナの言葉を一字一句漏らさぬように、ライチはペンを走らせる。
 「そうそう。あと、この手紙も一緒に届けてね。」
 そう言って、シレーナは宛名の書いてある封筒を三通、ライチに渡した。
 「はーい、分かりましたー。」
 ライチは元気良く手を挙げると、リュックサックにチーズとローストスネークミートと手紙を詰めて、レストランを出た。


 「お使い~ お使い~ はじめてのお使い~♪」
 ライチは即興音楽を口ずさみながら、ビスク港をトコトコ走る。
 「えっと・・・まずは、闘技場に行こう。また試合やってるかな~?」
 スロープを駆け上がって、ビスク中央へ入る。
 通路の樽をジャンプし、ラスレオ大聖堂にかかる橋を横目に走り抜け、魔法研究所の壁の上を歩く。
 そしてビスク西に入り、テオ・サート広場を駆け抜け、階段を飛び降り、真っ直ぐジオベイ闘技場へ進んでいった。
 
 「えっと・・・アクセルさま、シェル・レランからお荷物をお届けに参りました。どうぞご賞味下さい。」
 ライチはレシピノートに書き込んだメモを読みながら、ローストスネークミート入りの折り詰めをアクセルに渡す。
 「うむ、ご苦労であった。」
 「あ・・・あと、手紙があるんですけど・・・えと・・・(あれ、手紙って渡せばいいんだっけ? 読むんだっけ?)」
 ライチがオロオロすると、アクセルが声を荒げた。
 「どうした、まだ用があるのか?」
 「あ、は、はい。て・・・手紙があるので、えと、読みますね。」
 ライチは封を切ると、便せんを取り出し、文面を読み上げた。
 「アクセルへ。新緑の候、いかがお過ごしですか? このビスクに住んでいますと、貴方の活躍をよく耳にしますわ。随分と出世なされたようで、かつての上司である私の鼻も高いですわ。ですけど、私のシェル・レランに軍の食料を供給させようと考えるまで偉くなったんですの? 残念ですけど、シェル・レランは財政が厳しいので、そのローストスネークミートぐらいしか渡せませんわ。もしまだ欲しいのなら、私が交渉に伺いますわ。その時は、貴方がどれくらい強くなったか、闘技場で手合わせしてみませんこと? それはそれで楽しみですわね。それではお体にお気をつけて、ごきげんよう。シレーナより。」
 ライチは手紙を封筒に戻すと、アクセルに差し出した。しかしアクセルは座った体勢のまま、ピクリとも動かない。
 「あれ・・・アクセルさま、どうしたんですか? 風邪ですか?」
 「い・・・・いや・・・ななななな何でもないぞ・・・。」
 「だけど、もの凄い汗かいてるし、身体も震えてますよ? それに目も泳いでますし、顔色も・・・うわ、真っ青。」
 「えと・・・ラ・・・ライチ君だったか。ご・・・ご苦労だった。帰ってサー・シレーナ・・・いや、ギルドマスターに報告するとよい。」
 そう言うとアクセルは立ち上がり、ふらふらと歩きながら奥の部屋に消えていった。
 「・・・? まあいいや。次いこ。」
 ライチはさして気にせず、闘技場を後にした。


 イルミナ城の前で、ガードのチョイにチーズを渡した。勿論、手紙を添えて。
 特に何のトラブルも起きなかった。
 そう、何も。
 それはまさに・・・。
 何か起きたとすれば、ライチが去った後のビスク北西に、七賢者が降臨した事ぐらいだろう。
 
 広場を抜け、魔法研究所の壁をトトトッと走り抜け、木工屋を横目で見ながら、坂を駆け上がる。
 アルターが設置されている広場の端を走り抜けると、ラスレオ大聖堂とそこまで伸びる橋が見えた。
 「(あと一つ~ ミストさまに~ どっどける~ お使い~ お使い~♪)」
 鼻歌を歌いながら、その橋の手すりにトンと飛び乗って、バランスを取りながら歩き始める。
 「よし、このまま向こうまで行こう、っと・・・って・・・あれ?」
 しかし、ライチの道はすぐに途切れてしまった。
 行く手を遮ったのは、丸太のように太い、パンデモスの足。
 ライチは初め、「何でこんな所に立ってるの?」と不満を言おうとしたが、大男が手に持っている物を見て、すぐに興味がそちらへ移った。
 それは、釣り竿であった。糸は橋の更に下。池まで達している。
 パンデモスの男はその水面と浮きを見つめたまま、ピクリとも動かない。
 そして。
 その浮きが、少しだけ沈んだ・・・その瞬間、男は釣り竿をぐっと引き上げた。
 パシャァン!
 水飛沫と共に銀色の物体が水面から飛び出す。それは太陽の光をキラキラと乱反射させながら、綺麗な弧を描いて橋まで飛んできた。
 橋の石材に落ちてもまだ、パシャパシャと二,三度跳ねる。男はそれを掴むと、包丁を取り出して手早く捌き、身を鞄の中に入れた。
 「うわー、凄い凄い!!」
 一連の動きをポカンと眺めていたライチは、ついに感嘆の声を上げた。
 その声を聞いたパンデモスが、ライチに声をかけた。
 「何だ坊主、釣りに興味があるのか?」
 「え・・・あ、はい! やってみたいです!」
 ライチは元気良く手を挙げる。
 「そうか・・・なら、釣り竿と釣り餌を買ってくるんだな。この池に居るイプスバスなら素人でも簡単に釣れるぞ。」
 「本当? やりたいやりたい!! 釣り竿って何処に売ってるんですか?」
 「そこのアルター前に、洞窟があるだろ。その中にある雑貨屋で売ってる。」
 パンデモスはその方角を、そのごつい指で示した。
 「はーい、行って来まーす。」
 ライチは手すりの上でくるっと回ると、そのまま駆けていった。
 そして数分後。
 手すりの上を駆けて戻ってくる。
 「買ってきましたよ~。それでそれで、どうするの?」
 「まずは餌を針につけるんだ。それとな・・・。」
 パンデモスはぶっきらぼうに、だが丁寧に、ライチに釣りの仕方を教える。
 「そうだ。それを池の中に投げ込むんだ・・・よし、いいぞ。後はあの浮きが動いたら、勢いよく持ち上げるんだ。分かったか?」
 「はーい、分かりました~。」
 ライチはじっと、浮きを見つめる。すると、それは直ぐにピクッ、ピクッと動き始めた。
 「そら、動いてるぞ。引き上げるんだ。」
 「え、あ、はい! とう! やあ!!」
 釣り

 かけ声と共に竿を二度、三度と持ち上げる。そして、四度目に引き上げた時。

 バシャアン!
 水音と共に、魚が跳ね上がった。糸を引き、魚を手元に引き寄せる。
 「よし、それでいい。初めてにしては上手いぞ。そら、魚を貸してみろ、捌いてやる。」
 「はい、お願いします~。」
 ライチは針から魚を外すと、次の餌を取り付け、再び池へ放り込んだ。


 「シレーナさま、シレーナさま! ほら、見て見て! こんなに魚が釣れましたよ!」
 ライチはシェル・レランへ駆け戻ると、袋の中にある白身魚の切り身をシレーナに見せる。
 「あらあら、凄いですわね。今夜の賄いは白身魚の刺身かしらね。それよりライチ君・・・お使いは終わったのかしら?」
 「・・・え?」
 「アクセル様とイルミナ様からはお礼状が届いたのですが、ミスト様からは来てないのですよね。ミスト様は律儀な方ですから、何かしら届けられると思うのですが・・・。」
 「え・・・えと・・・あははははははは・・・・。」
 「ウフフフフフフ・・・・。」
 二人は暫く笑いあってから・・・。
 「す、すいませーーーん!!」
 脱兎の如く、ライチはレストランを飛び出していった。 
 (第5章 完)

第4章 あとがき

テーマ:

というわけで、第4章をアップしました。いかがでしたでしょうか?

ちょっと長くなってしまいましたが、クスッとでも笑って頂けたら幸いです。


ちなみにこのネタは、本当にあった事ですw モラズスタッフって意外に壊れやすいですね・・・。


そうそう、気づいた方もいるかもしれませんが、第1章から第4章までのタイトルを変更しました。シェル・レランのクエスト風に変えたのですが・・・まあ、微妙でしたね(汗


タイトルつけるのは苦手なんですよね・・・


最後に一つ。このブログのプロフィールではライチは旅人になってますが、ダイアロス島では既に料理師になっていたりします。けどブログはブログ内のスピードに合わせてプロフィールを変えていこうと考えています。

ダイアロス島でライチを見かけたら、気軽に話しかけて下さい。きっと奴は喜びますw


では、次回予告です。

「第5章 ビスクを駆けろファースト・デリバリー」

更新予定は6月12日の日曜日です。お楽しみに~ノ


 総勢50名は居るだろうか。ライチの周りはコック帽の集団で埋め尽くされていた。
 その先頭はギルドガイドのグロボ。
 グロボはそのいかつい顔をずずっとライチに近づけ、そのいかつい瞳を潤ませながら語る。
 「いい、ライチ君~、マスターの名前を呼ぶ時は~、ちゃんと「様」とか「さん」とかって、敬称をつけなきゃだめだぞぉ~。」
 「ええ~、でも・・・。」
 「お願いだから~、お願いだから守ってよぉ~。」
 ライチの顔との距離を更に近づけて、瞳のうるうる度を更に増しながら、懇願する。コック帽の集団も同じように瞳を潤ませながら、ライチに詰め寄る。
 「わ・・・わかりました! ちゃんと呼びます、はい、守ります!」
 流石のライチもその迫力に押されて、首をブンブンと縦に振るしかなかった。
 「本当? 本当だね~。じゃあ、シレーナ様がお呼びだったから~、すぐに行くんだぞぉ~。」
 「はーい。」
 ライチは元気良く返事をして、シレーナの部屋へ向かった。


 「あら、来ましたわね。」
 シレーナはいつもの笑顔でライチを迎える・・・が、やはり先日の一言が脳裏に浮かび、文字に書けないような毒が吐かれる。
 そんな事など露知らず、ライチも笑顔で答える。
 「はーい、来ました。用事って何ですか?」
 ちなみに、ライチの一字一句を、固唾を飲んで見守る者達が居た。勿論、グロボを初めとする、総勢50名のシェル・レランのシェフ達である。
 窓からドアの隙間から壁の穴から天井裏から、祈るような目線で二人を見ている。
 「用事はね・・・ライチ君の修行の事ですわよ。ウチに来た新人さんには、まずはここのコック達の賄い料理を作って貰う事になってるのよ。」
 「は~い! それで何を作れば良いんですか?」
 「ふふっ、元気がいいわね。ライチ君には、ローストスネークミートを作って貰いたいのよ。」
 「ローストスネークミートって、昨日食べたあの美味しい焼き肉ですよね!」
 「あらあら、よく分かったわね。その通りですわよ。この町の東門から出ましてすぐの草むらに蛇が居ますので、捕まえまして捌きまして、焼かれてから持っていらしてね。少ないけどお給料もあげますわよ。」
 「はーい、分かりました。それじゃ・・・えっと、シレーナさま、行って来ます~。」
 この瞬間。
 シェル・レランのシェフ全てが、いや世界が救われたと言っても過言ではないだろう。


 ビスク東を駆け抜け、東門をくぐる。そこには草むらが広がっており、目を凝らすと確かに小さな蛇を何匹も見つける事が出来た。
 「えっと・・・どうやって捕まえようかな・・・そうだ!」
 ライチはモラズスタッフを取り出す。そして、一匹の蛇に狙いを定めて、駆けだした。
 「えい!」
 気合いの声と共に、モラズスタッフを振り下ろす。しかし・・・。
 ガン!
 狙いを外れ、地面を叩く。
 「あ・・・あれ?」
 ガンガンガンガン!!
 ・・・・・・死闘、数十分後。ようやく、一匹の蛇を捕らえる事に成功した。
 「はあっ、はあっ・・・やっと一匹・・・。」
 勿論これだけではシェル・レランのシェフ全員分を賄う事などできない。ライチはモラズスタッフを握ると、二匹目に向かって駆けだした。
 
 初めはなかなか上手くいかなくても、慣れてくれば段々と上達する。それがやり始めなら目覚ましく。
 特にライチは物覚えが良かったようで。二匹目は一匹目より簡単に、三匹目は二匹目より簡単に・・・と、どんどんとそのスキルを上げていった。
 そして、気がつくと目に付く蛇はあらかた取り尽くしていた。
 「えっと・・・もう居ないな・・・・・・。」
 袋にはかなりの蛇が入っているが、まだ全員分には届かないだろう。ライチはその草むらを離れ、ウロウロと歩き出した。
 数分後。
 「あ・・・いたいた!」
 東門前の高台に、うねうねと蠢く生き物を見つけた。ライチはモラズスタッフを握ると、トトトッとそこまで駆けていき、そして。
 「・・・!!」
 驚きのあまり、立ち止まった。
 体長三メートルはあろうかという大蛇が、その巨体をくねらせながら、ゆっくりとライチの方を向いた。
 「うわ・・・うわ・・・こんなに大きいと・・・。」
 ライチはごくりと、唾を飲み込み。
 「焼き肉沢山出来る!!」
 そう叫びながら、大蛇へ迫っていった。
 そして、ライチがモラズスタッフを振りかぶり、大蛇の頭を目がけて思いっきり振り下ろした・・・その瞬間。
 バキッ!!
 鈍い音がライチの手元から響いた。
 「・・・え?」
 手の中のモラズスタッフを見ると・・・真ん中当たりからポッキリと、見事に折れている。
 「うわ・・・わわわわ、壊れちゃった!」
 大蛇は殴られた頭をスリスリと尻尾でさすりながら、憎々しい目線をライチに向けている。
 ライチはそれに気づき・・・一目散に、逃げ出した。
 草むらを突っ切り街の中へ逃げ込もうとした・・・が。大蛇の方が素早かった。
 ドン!
 大蛇の頭突きを受け、バランスを崩して転んでしまう。その拍子に、背負っていた袋からアイテムがバラバラと転がってしまう。
 「あ・・し、しまった!」 
 振り返ると、そこには鎌首をもたげた大蛇が、口からヨダレを垂らしながら、今まさに獲物に噛みつこうとゆっくりと距離を詰めていた。
 「ど・・・どうしようどうしようどうしよう!!」
 尻をついたまま、一歩、二歩と後ずさる・・・その時。
 手に何か堅い物が当たった。
 思わず振り返り、それを見た。それは・・・。
 長老イーノスが餞別にくれた袋の中に入っていた、つるはしだった。
 「(・・・そうだ、これなら!)」
 ライチはつるはしを握ると、飛びかかってきた蛇をそれで受け止める。そして、素早く二歩下がって立ち上がると、大蛇との死闘を開始した。

大蛇


 「・・・それから、ドン! バン! えい、やー! って戦って、頑張って倒したのがこの焼き肉なんですよ!」
 夜。一日の仕事を終えたシェル・レランのシェフ達の前で、ライチは身振り手振りを交えながら激闘を語る。
 シェフ達は思い思いのアルコールを片手に、ライチの焼いたローストスネークミートをつまみに、皆笑いながらその武勇伝に聞き入る。
 シレーナもどぶろぐ片手に、笑いながら聞いている。
 その日はいつにも増して、にぎやかな夕食となったのであった。
 (第4章 完)