今日という日を忘れたくないから文章に書いておこうと思ってブログを書きます。


蜷川幸雄さんが亡くなったニュース。


思い出すのは初めて観たシェイクスピア

蜷川さんが演出した1998年銀座セゾン劇場での『ハムレット』

ハムレットは真田広之さん、オフィーリアは松たか子さん。

しかも1列目。

今でも忘れられないあの衝撃。

今でも覚えているいくつものシーン。


劇場に入ったらすでにステージ場にいる役者さん達。


セットの上で思い思いにメイクを仕上げたり、アップをしたり、談笑したりする役者さんたち。


開演数分前になると役者さんたちはセットの中にある各部屋に座ってレースのカーテンを閉めてそれぞれの鏡に向かい合っている。

本番用の照明に近づく暗さの中でカーテン越しに見える役者さんたちの背中。


本編が始まって、あっという間に物語が走り去って、物語の最後全てが終わるその瞬間、兵士たちが開演前に役者さんたちが向かい合っていたセット上の各部屋の鏡を割っていく。

何から何まで衝撃的にカッコよかった。ハムレットなのに劇中にお雛様のひな壇が出てきたり。当時中学3年生の私には面喰らう世界の数々。


20年近く経つのにこんなに覚えているあんなシェイクスピアの初体験をした私は本当に幸せ者でした。


蜷川さんの演出するシェイクスピアもシェイクスピアじゃない芝居もその後いくつも見たけれど、私にはやっぱりあの中学3年生のあの日の衝撃が一番の宝物。


何年か前に一度だけ舞台稽古中の生の蜷川さんを劇場でお見かけしたことがあって、演劇界の隅っこの私には神様の様に見えたことを覚えています。


演劇ファンとして、もう蜷川さんの舞台を観ることが出来ないことが悲しくて、役者を始めて10年以上経つのに蜷川さんの舞台にかすりもできなかった自分も悔しくて、涙が出ます。


留学していた時、ロンドンのグローブ座の年史と壁に刻まれたYukio Ninagawaの名前を見た時から、日本でオリンピックを再びするのなら開会式の演出家は蜷川さんに違いないと勝手に思っていました。



さっきテレビで蜷川さんが亡くなったというニュースを見て、なぜか泣けたことで、私演劇が好きなんだって改めて自覚しました。


このニュースが日本の演劇界の端の端にいる私でこうなら、今日は日本中の劇場が泣いているんだろうな。



『theatre is such an attractive place where the silent people tell their dreams 舞台は沈黙する人々の夢を語る磁場だ 蜷川幸雄』


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今日はこれを再読する夜を過ごそうと思います。

R.I.P.