「ワンコイン健診」の挑戦 ~民間主導で予防医療を推進~
ケアプロ株式会社 代表取締役社長 川添 高志
日本人の死因の第一位は生活習慣病で、全体の約60%を占めています。
そして、30兆円ある日本の総医療費のうちの約10兆円は生活習慣病
関連の予算に使われています。
生活習慣病予防の第一歩は健康診断です。お金の面でも、70歳以上で
定期健診を受けていない人は、受けている人に比べて年間30万円も医
療費が高いというデータがあります。ところが、自治体や企業健保によ
る健診を受けていない「健診弱者」が約3500万人もいるというのが
医療大国日本の現実です(厚生労働省のデータ)。この健診弱者に含ま
れる方たちは、健康保険証を保有していないなどの社会的な事情や、費
用を負担できないなどの経済的な事情、あるいは時間的な余裕のなさな
どを理由に、健康診断を受けることができずにいます。
私はこのような実情を何とか改善したいと思いケアプロを立ち上げまし
た。ケアプロでは健診弱者を対象に、駅ナカ、商店街、パチンコ店など
で気軽な予防医療の機会を提供しています。具体的には、低価格、短時
間、そして健康保険証不要で利用できる「ワンコイン健診」というサー
ビスを提供しています。生活習慣病の予防と我が国の医療費の削減、こ
の2つがワンコイン健診のミッションです。
昨今、既存の行政サービスではまかなえない社会問題を解決していくソ
ーシャルビジネス(社会起業)が注目されています。その背景には、法
律などに基づいた行政システムでは、個人個人で異なる状況から起こる
多様な問題に対応できないという問題があります。
それにもかかわらず、旧態依然とした行政が壁になっている側面もあり
ます。ケアプロの取り組みは厚生労働省の官僚から「社会保険財源を使
わずに予防医療が推進できて画期的だ」と、また、地方議員から「うち
の自治体でもやってほしい」と励ましの声をいただく反面、自己健診ス
ペースを提供するというサービスは今までになかったため、いくつかの
保健所担当者からは、「前例のない自己健診の血液検査は認められませ
ん」、「前例のない方法ではなく、医療機関または検査機関として事業
をやって欲しい」といった行政指導があり、出店中止となることもあり
ました。
私たちは過去に固執するのではなく、未来をよりよく創るために変わっ
ていかなければならないと考えます。行政サービスが本来的な限界のた
めに対応しきれない問題ならば、私たちが自分たちで工夫していく必要
があります。これからもケアプロの事業を通して、一人ひとりに健康の
大切さを呼びかけるとともに、保健行政や医療政策の在り方に一石を投
じていきたいです。
川添 高志(かわぞえ・たかし)
2005年慶應義塾大学看護医療学部卒業。看護師・保健師。経営コンサル
ティング会社を経て、東京大学病院で看護師勤務。ケアプロの事業を構
想して以来、様々な社会起業家コンテストで受賞多数。2007年12月、ケ
アプロ株式会社起業。2011年、日経ビジネス「次代を創る100人」に
選出される。
*ケアプロ公式サイト
http://carepro.co.jp/