晩夏特急 | 酒とホラの日々。

晩夏特急

酒とホラの日々。-晩夏の空

列車で移動中にふと眺めた空には
熱射を放つ夕空の中に、ほうきで掃いたような秋の雲が混じっていた。


夏も後半、熟れた晩夏の空気は急速にエネルギーを失って、
私たちは本格的な秋の訪れまで

年老いた暑さをだらだらと引きずっていかねばならない。
 
夏とは言っても勢いとキレのある盛夏の時期は本当に短くて
夏序盤の梅雨時の湿った空気と
残暑と呼ばれる老いた夏の下り坂の辱暑が
日本の本来の代表的な夏なのかもしれない。


夏は老いていくが、失っていくもの、忘れたもの、
精力的な日々が思い出に変わっていくその過程に
私たちはやがて無常とはかなさを思い、自らもその一片に過ぎないことに
思い至ることになる。

  

こうした趣をもたらしてくれるとしたら、
老いた夏もまた悪いものではない。