2009年11月10日

立冬

テーマ:二月堂便り

酒とホラの日々。-冬の木


早朝、冷え込んだ空気を切り裂くようにして走る電車に乗って
川を渡るときにふと窓から見える天地の色がまったく
変わってしまっていることに気がついた。
 
渋色になってきたと思った木の葉はすでに地面に落ちて
空には線状に群れを成す鳥の群れが移動していた。
鏡のような川は、まだ明けやらず晴れとも曇りとも
つかない空を水面に映しこんで、ひたすら静かだった。
 
いつの間に秋はこんなにも過ぎてしまったのか?、
誰にというわけでもなく、思わず私はと問わずにはおられなかった。
日々仕事は忙しく、行き帰りの電車も情報収集と勉強に追われる毎日で、
顔を伏せて本を読んでいる間に窓の景色ばかりか
季節までも移り過ぎ、時はすでに立冬に至っていたのだ。
 
草もなくあらわになった地面には冷たい露が降りていたが、
一枚の薄衣をまとうように霜で被われるのももう間もなくのことだろう。 
 


私たちは時代のうねりと世の中に流されては、ただ日々溺れまいともがくだけの
卑小な存在ではあるが、人工的な管理の優先する都市部にあってさえも
自然の大きな営みの中で生かされるとともに、まずは自分自身がその大きな
自然の一部で在ることは時々折に触れては思い出してみたい。



葉は褪せて地に還り、空に群鳥あり。
樹も土も被くものなく、水面も静に天を映す。
借問す、何時の間にか秋は過ぎしかと。時正に立冬に至れり。
露は凄として、朝には霜一枚の薄衣を纏わん。







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2009年11月03日

都会に残る風土性

テーマ:ブログ

先日、用があって東京人形町のオフィスに出かけた折、ふと思いだして首相の似顔絵を焼き込んだせんべいを売る店に立ち寄ってみた。


酒とホラの日々。-首相せんべい
首相の顔は鳩山さんになっていたが、客の応対をする姐さんたちは相変わらずで、世間話のついでに首相せんべいの売れ行きなどを聞いてみると、以前人気のあった小泉首相の時よりも今の鳩山さんの売れ行きが良いとのことだった。


ここは都心に程近いところではあるが、オフィスや全国チェーンの店に虫食いにされながらも昔ながらの味のある小さな商店が軒を並べる東京の下町で、待ち歩きついでの買い物にもそれぞれの店の人と交わす時間にも、かつての日本的人情と風情が息づいている。
大規模なショッピングセンターよりもこちらが落ち着くような気がするのは年のせいだろうか・・。
 
そもそも私の東京における田舎は千代田区の飯田橋というところで、古くはあまり身分の高くない武家の屋敷が並んでいたらしいが、当時は住宅地に行商人宿屋や小さな個人商店の点在するなかに、企業ビルや誰が住んでいるのかわからないマンションが入り混じり始めてきたころのことだった。


住んでいたのは皇居の外堀をはさんで新宿区との区界に近いところで、お堀にかかる牛込橋を渡ればすぐに神楽坂下に至り、日常の買い物などはこちらに出かけることが多かった。
 
神楽坂というところは今でこそタワーマンションがそびえ、おしゃれな飲食店が立ち並んでいるが、当時は高度に開発の進んだ都下にあって、黒い板塀で仕切られた小路に古い芸者置屋や料亭だの、さらには連れ込み宿屋(何と言う古い言い回し!)などが寄り集まった旧態依然とした歓楽飲食街で、ぽつりと時代に取り残された古い日本の商業コミュニティーだった。


もちろんいまでも芸者新道だのかくれんぼ小路だの狭い路地や、一部の店は残っていて、東京最後のワンダーランド的な扱いをされてメディアに紹介される機会は増えたし、神楽坂散歩ツアーなどと称した集団がやってくることも珍しくない。
昔ながらの商店街には人を惹きつける何かがあるのだろう。

 

買い物は郊外大規模ショッピングセンターやチェーン店で済ませるのは便利だし、きらやかな流行の店の揃った中を闊歩することには気分の高揚を覚えるかもしれないが、どうやら人はそれだけでは飽き足らなくなったのかもしれない。
この傾向が近年さらに顕著になったような気がする。


ここ1年、全国チェーンの流通グループによる大規模ショッピングモールの出店計画のつまづきや見直しが伝えられるのを目にするようになたのも、この風潮と無縁ではあるまい

 

これからも私は都内に残る古めかしい商店街に出かけることだろうが、残念なことに地方にはこれが残っていない。

’90年頃から顕著になった生活店舗の郊外化と大規模チェーン、ショッピングモールの波に洗われたあとにあるのは、街の中心部に並ぶ荒廃したシャッター街や、車での通過を前提にした道路端に立ち並ぶカラオケボックスとパチンコ屋、ファミレスが点在する全国の郊外に共通する光景である。
味のある個人商店の並ぶ地域の生活コミュニティーは地方ではどこもほとんど絶滅寸前だ。


私の今の実家は地方都市にあるが、帰省して大規模郊外店舗の散在する産業道路を車で走っても、東京のはずれの無機質な眺めとさして印象は変わらなくなった。
だからなのだろう、私も帰省するのに心ときめかなくなったのは。
 
これは日本全国が良くも悪くも同質化が進んだということなのだろうが、田舎道に大規模チェーン店がポツリポツリとあって、東京でも田舎でも同じ服、同じ食品、同じサービスが受けられるようにはなったものの、地域商店のコミュニティーはなくなってしまった。

 

皮肉なことだが、いまだに大都会とその周辺にだけはそれぞれの地域特有の独特の雰囲気を醸す田舎じみた零細商店街が残っている。

 

昨今は地方分権の議論が盛んで、地域の独自性を目標に掲げる動きも目立つが、
なんでも東京と同じにしようとしては、引き継ぐべき伝統を滅ぼして、均質化してしまって昔の田舎が滅んでしまった今となっては、各地域は昔ながらの風土性ではない、新しい独自の個性を創造しなければならない立場に立たされているともいえる。

 
いったい時代はどんな未来に向かっているのだろうか。

地方は実に難しい選択をしているのだ。
  

 

 

 

 

 

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