去る1月15日キヤノン株式会社より、当組合に対して団体交渉の開催申し入れがありました。
会社側からの団体交渉の申入れは初めての事で、恐らく労働条件の不利益変更であるものと受け止め、当日の団交にのぞみました。

行われた団体交渉では、まず現在の宇都宮光学機器事業所のおおまかな生産状況などの説明がありました。
そして、現在生産するレンズがないため、工場を休業とするとの説明がありました。
同時に、2月末日で切れる雇用契約を再契約し、3月から半年間自宅待機にするとの説明がありました。
休業中は、平均賃金の85%を支払うが、その間他の就業をしても構わないとの事でした。
また、8月以降の契約更新については、現段階では分からないとの事でした。


当日の団体交渉にのぞんだ組合員は、その場で会社に抗議をしました。
実際に手元残る休業補償9万円程度では、家族を養っている組合員はもとより、独身の組合員でも生活する事は出来ません。


「みなさん、この金額で生活できますか?」
と、会社側に聞いたところ
「私だったら、妻に働いてもらうなどする」
と答える会社側の交渉担当者がいました。


宇都宮市内は、もともと非正規雇用が多い地域であり、現在の金融危機によって、多くの企業が派遣や請負切りなどを行っています。
その中で、容易に仕事を確保することなど、絶対に無理な話しです。
おそらく、今後は地域内で仕事の取り合いが起こるでしょう。場合よっては、他県などで就労せざるを得ないものと思われます。


「正社員との痛みわけはないのか?」
と聞きましたが、会社側はだまっていました。


社内で働く正社員は、休業も減額行われません。
共に力を合わせて働いてきたにも関わらず、非正規労働者だけが辛い思いをさせられるのです。


また、私たちの組合員は、長期間偽装請負という違法行為をさせられてきました。
その違法行為の責任をとって、正社員化を会社に求めていますが、会社はそれを拒否し続けています。


今回の休業措置は、一見国内のあちこちで行われている派遣・請負切りに比べれば、マシではないかと思われるかもしれませんが、私たち組合員は退職強要であると受け止めています。
したがって、会社には就労の確保を求め、労働条件の不利益変更は認めないと訴えていきます。
ご理解・ご支援をよろしくお願い致します。


以下は、当組合の声明です。昨日行われた記者会見で配布しました。


キヤノン非正規労働者組合



キヤノン非正規労働者組合




緊急声明:キヤノンの欺瞞的な休業措置=退職強要に怒りを込めて抗議する

2009年1月16日
                     キヤノン非正規労働者組合宇都宮支部
                  支部長  大野  秀之 
書記長  阿久津 真一
キヤノン非正規労働者組合弁護団

キヤノンは、さる1月15日、宇都宮光学機器事業所で働く全期間社員について、本年3月から6ヶ月の契約を更新した上で、3月から休業させるとともに、希望退職を募集する方針を明らかにしました。
 このキヤノンの方針を、非正規切りが相次ぐ中で穏健なものとする報道もあります、しかしながら以下述べるとおり働く者には極めて欺瞞的なものであり、私たちは、このキヤノンの方針に強く抗議するものです。

1 休業手当の労働基準法違反
 今回、キヤノンの期間社員への休業手当は給料の85%と言っていますが、実際の手取りはそれまで月額26万円程度の者でも9万円ほどとなります。これでは失業給付よりはるかに少ない金額です。
 これは、休日については休業手当を支給しないとの労基法の解釈に基づくものと思われます。しかし、4組2交替の勤務の場合、一日11時間の勤務をする代わりに休日が多くなり。それを、一日8時間労働の場合を想定した解釈に当てはめて休日分を控除して手当を支給することは、時間のごまかしとなり、労基法に違反しています。

2 実質的な退職強要
 上記の手取り9万円では、到底生活していけず、退職を選択した場合、特別退職金として約150万円提示されています。期間社員には退職金を支給しないと規定されていました。生きていくためには、退職を選択せざるを得ない組合員も出てきてしまいます。
偽装請負告発の結果なされた2007年10月に、キヤノンは私たちを正社員として雇用するべきであったのに、期間社員としてしか雇用しませんでした。さらにこの直接雇用申し入れ時に、キヤノンは、2年11ヶ月は雇用を約束すると言いました。
にも拘らず、今回の申し入れは2年11ヶ月もたたないうちになされる事実上の退職強要であり、正社員同然に働いてきた私たち組合員としてはとうてい認められません。

3 正社員との差別
 私たち、非正規社員に対して休業・「解雇」を打ち出す反面、正社員に対しては、配置転換などで(期間社員や請負が抜けた職場でしょう)済ますとしています。正社員・非正規でまったく痛みわけする事なく、期間従業員と契約社員だけが辛い思いをするこの大きな格差には納得できません。
 しかも、私たちは偽装請負・派遣法違反という状況下で長年正社員と同じように働いてきたのですから、本来であれば正社員として雇用されていなければならないのです。にもかかわらず、期間社員という立場にあるがためにこのような選択を迫られることは到底納得できるものではありません。

4 非正規切りの必要はない
 キヤノンは2008年度、5800億円の利益を見込み、株主への中間配当だけで715億円、内部留保も3兆3千億円ためこんでおり、十分な体力を有しています。生産が縮小しても、雇用を維持することはできるはずです。それが、日本経団連会長の出身企業であり日本を代表する大企業の社会的責任ではないでしょうか。

5 キヤノン非正規労働者組合を狙った不当労働行為
 宇都宮光学機器事業所の機関社員が多数を占める私たちキヤノン非正規労働者組合は、さる12月22日に東京都労働委員会に対し、組合員を正社員とせず、団体交渉の中で一部議題にキヤノンが応じないことを問題として不当労働行為救済申し立てをしました。
 その矢先に、キヤノンは、期間社員について全国で始めて、支部組合員が全員所属する宇都宮光学機器事業所の期間社員に退職勧奨をなすことは、キヤノン非正規労働者組合を敵視し正社員組合との差別化を狙っての究極の不当労働行為であると言わざるを得ません。
 
6 欺瞞的な休業措置=退職強要に強く抗議する
前述のように、キヤノンには十分な体力があり、私たちの休業・退職は回避しうるものです。にも拘らず、このような休業を提案することは、キャノンの「責めに帰すべき」ものとして、少なくとも、民法536条2項に基づき、従来どおりの給料の支給を再提示する様求めます。
 そして、吹き荒れる非正規切りの嵐に抗している多くの労働者とともに闘い、この欺瞞的な休業措置=退職強要に強く抗議し、働き続けられる措置を求めていくことを、表明するものです。
 
以上