「マイさん、説明してあげてくれるかな」

「はい、勝也くん、このシェリーブレンドは飲んだ人が望んだ味がするの。そしてこの黒ゴマのクッキーは、その力をさらに強くしてくれるんだよ。今、勝也くんが見たのは、勝也くんがそうなりたいと思っている将来の姿になるの」

そうか、それでわかった。オレは今見たような赤組にしたい、リーダーの姿にしたい、そしてオレ自信がそんな総リーダーになりたい。そう思っていたんだ。

「勝也、どんなものが見えたか、よかったら教えてくれないかな」

お父さんの言葉で、オレはさっき見た光景を話し始めた。話しているうちに、自分がなりたい総リーダーの姿がより明確になってきた気がした。

「なるほど、お前はそういうチームをつくりたいんだな。けれど、うまくいかなくてイライライしている。そうだろう?」

「うん、でもみんなオレの言うとおりに動いてくれないんだよ。応援歌を考えてきてって言っても、誰も考えてきてくれないし。五年生なんか勝手に話し合いを始めちゃうし。どうしてこうなっちゃうんだろう…」

「ははは、トップに立つ者の悩みを持っているな。お父さんも同じような経験があるんだぞ」

「えっ、お父さんも?」

「あぁ、お父さんは会社でプロジェクトリーダーっていうのをやっているんだよ。しかし、最初はなかなかメンバーが動かなくてね。そんなときにこの喫茶店を知ったんだよ。そして、あることに気づいたんだよ」

「あることって?」

「それを勝也に教えるのは簡単だ。けれど、これは教えてもできるものではない。自分で気づかないとな」

「自分で気づくって、どうやって…」

お父さんの言葉にオレは迷っていた。そこに気づけない。だから今悩んでいるのに。

すると、お姉さんがオレにこんな言葉をかけてきた。

「勝也くん、もう一つの白いクッキーをさっきと同じように食べてごらん。きっと、その答が見つかるよ」

白いクッキーを? オレは半信半疑で、先ほどと同じようにクッキーを手に取り口に運ぶ。

今度のクッキーはとても甘い。さっきのはちょっと固かったけれど、こっちはとてもやわらかい。そしてコーヒーを口に入れる。すると、溶けていくような感じがする。口の中で甘さと苦さがちょうどよく混ざり合う。と同時に、オレの頭のなかにある言葉が飛び込んできた。

「まかせろ!」

まかせろって、どういうことだ? その次に、加奈子の顔が浮かんできた。

「私の言ったとおりでしょ」

自信満々にそう言う加奈子。

いつもならイヤミに感じるのだが、なぜか加奈子がたくましく見える。さらに五年生たちの顔も見える。彼らも自信満々にこう言う。

「僕たちもがんばりました」

オレはその報告をうなずきながら聴く。

「よし、これで応援はばっちりだな。みんな、ありがとう」

そしてオレはこう言う。

「あいつらにまかせて正解だったな」

まかせるってそういうことか。オレがやっちゃダメなんだ。リーダーたちに動いてもらわないと。でも、本当にあいつらは理想通りに動いてくれるのか? ここでオレは無意識に、もう一口ミルククッキーを口に入れ、さらにコーヒーを飲んだ。そのときにまたさっきと同じように声が聞こえた。

「信じろ!」

信じろ。確かにあいつらに任せるのは不安が残る。けれど、あいつらを信じないと。それがリーダーとしてのオレの役目なんだ。

そうか、あいつらを信じて任せること。これがリーダーとしてオレがやることか。お父さんはそれをオレに気づかせたかったのか。

「勝也、何か見えたか?」

お父さんのその声で我に返った。

「うん、わかったよ。リーダーたちを信じて任せる。これが答えだね」

オレは自信満々に答える。
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