武士道ボクシングⅤ

~THE NOBLE ART~
NOBLESSE OBLIGE.
A BOXER IS ASKED FOR A NOBLE DUTY.
I WANT MANY BOXERS WHY BOXING IS CALLED
"NOBLE ART" AND THINK ONCE AGAIN・・・・・.
PROBABLY,THERE IS "BUSHIDO",WHEN IT COMES BACK
TO A CERTAIN CONCLUSION.


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2015.9.5 後楽園ホール

DANGAN138[日本暫定]見どころ

「なぜボクシングではランキング1位が王者ではないのか?」。ボクシングに疎い友人からよく受ける質問である。それに対して私はこう答える。「ボクシングの王者ってのは特別なんだ。1位とか2位とか、そんな概念を超えた唯一無二、絶対的な存在としての敬意の象徴が王者という立ち位置なんだよ」と。

 しかし、そんな王者の権威を著しく貶めている現実が今、世界にはある。煌びやかに見える世界の舞台において、正規王者と並列する形での暫定王者がもはや定着しつつあるのだ。本来の暫定王者の位置づけは、正規王者が怪我等のやむをえない理由で防衛戦を行うことができない期間に、一時的な措置として設けられる仮の王者であり、正規王者が復帰した際には、必ず統一戦を行うことが義務付けられている。

 我が国が、この規定に従い、暫定王者は、あくまでも暫定的な措置であるという位置づけを崩さず、厳正な運営で、その品格を堅守し続けていることは世界に誇るべき姿勢であろう。これは拳闘への、そして選手への敬意であると私は思う。

 

 本日のメインは正規王者、岡田博喜[角海老]の怪我によってセットされた「暫定王座」決定戦である。出場するのは日本Sライト級1位中澤将信(帝拳)。敗戦は’10年度東日本新人王ライト級決勝戦、対土屋修平[角海老]戦の1敗のみ。翌年11年度全日本Sライト級新人王を獲得し、その後も堅実に勝ち星を積み重ねてきた。

 この階級としては、破格の
180㎝を超える長身とリーチを武器とし、その立ち姿は、驚異的なスタミナで数々の大逆転劇を演じてきた同門の先達、元日本ミドル級、ウェルター級、Sウェルター級3階級制覇王者、中川大資[帝拳]を彷彿とさせる。中澤もスタミナには定評があり、距離の長いワンツー左ボディを軸に、淀みない攻撃をフルラウンド完遂する力を身につけている。更に接近戦の根性比べでも決して引かないハートの強さがあり、死角は少ないと言える。

対するは、本来ならば2か月前に岡田とのタイトルマッチを行うはずであった日本同級6位、小竹雅元[三迫]。サウスポーからのワンツー、左アッパーを軸とした思い切りの良い戦闘スタイルで毎試合会場を沸かせてくれる豪勇の士である。ただ、勝敗はイーブンであり、143月に行われた王座決定戦で岡田に敗れた後も、海外での試合を含めて勝ち星に恵まれておらず、戦績上の数字だけ見れば不安要素は多い。

 しかし過去の対戦相手は、岩渕真也[草加有沢]、近藤明広[一力]、ジムレックス・ハカ[比国]らの元東洋・日本王者や小池浩太[ワタナベ]、林和希[八王子中屋]ら国内の名高る猛者たちであり、勝ち負けの数だけでは測れない豊富なキャリアを重ねている。これは中澤と比べ、大きなアドバンテージであり、更に中澤は過去19戦、サウスポーとの対戦経験がない。加えて、本試合は岡田戦へのリトライが懸かった一戦である。小竹のモティベーションは最高潮に達しているはずであり、両者のハートがぶつかり合う烈烈たる勝負になることは確実であろう。

 今宵も両の拳を弾丸の如く練磨した拳闘家たちが織りなす、気韻生動の藝術を心ゆくまでご堪能ください。

日ノ本一(ひのもとはじめ)

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2015.8.8 後楽園ホール
DANGAN136 

 幼い頃、鉛筆をナイフで削るのが好きだった。母親から貰ったお小遣いを握りしめ、文房具屋で匂いつき消しゴムやサイン帳に目を奪われつつ、心ときめかせながら1ダースの鉛筆を購入。1ダース購入すると、いかにも子ども好きといった顔の文房具屋のおばあちゃんが、おまけでスーパーカー消しゴムをつけてくれるのも密かな楽しみだった。

 帰宅し箱を開けると、そこには12個の六角形が描く美しいアーキテクチャが拡がっていた。既に完成している美しい構図を崩すことに躊躇しながらも、そのうちの1本を抜き出し、まっさらな鉛筆の側面にナイフを入れる。どこにナイフを入れるかで完成形に違いが出る。緊張の瞬間だ。そして真っ黒な芯が顔を見せると、ここからが本番である。色の濃さで芯の強度も変わる。その強度に対して、どれくらいの力加減で削ればよいのか、指先の感覚は既に学習済みである。少しずつ角度を変えながら一心不乱に削り込む。いかに細い先端を作れるか。

 しかしここがもろ刃の剣である。追い込み過ぎたり集中が途切れると、いとも簡単に芯は折れる。小学生の心理発達では言葉に変換できない何とも言えぬ心の痛み。それが『自責感』という高度な心理であることは、あと十数年後に理解できるわけであるが、社会を知らぬ小学生の自分は、たかが鉛筆を削るという単純な作業の中に、主体性と自己責任という大人の厳しさを垣間見ていたのかもしれない。

 そして今、私の目には、この作業がボクサーにおける減量や試合に向けた追い込みのプロセスと重なって見える。思えばタイトルマッチという最高峰の舞台に向け、自身を削り上げていく途中で起きてしまったアクシデント。鋭さを増せば増すほど脆くなる。削り出す途中で折れてしまった芯のごとく試合は流れ、両者、忸怩たる想いを抱いたはずである。その出来事をどう捉え、今回どう自分にナイフを入れたのか。きっと今日のリングに答えがあるはずだ。

 本日のメインに登場する柴田明雄[ワタナベ]は、OPBF3日本V2の八面六臂。バスケをバックボーンにした独特のフットワークは、ボクシングの定義ばかりか日本中量級のそれを遥かに凌駕してきた。村田諒太[帝拳]に敗れた後、塞ぎ込み自宅の天井ばかりを見つめていた日々は彼に何をもたらしたのか。そして同門、内山高志という世界王者の存在から闘う意味と意思をどう受け取ったのか。そして柴田はどこに向かおうとしているのか。その答えが今宵リングで明かされる。

 対する指名挑戦者、日本1位、OPBF7位、秋山泰幸[ヨネクラ]は、自身の負傷によってタイトルマッチを流しただけに、仕切り直しの本戦に対する思いは柴田以上に強いだろう。繋ぎ目の少ないプレッシングでなぎ倒すパワーボクシングで勝利を重ねてきた秋山にとって、今宵2つの難関が待っている。1つ目は柴田の豊富な経験値。2つ目は、自身の10回戦以上の未経験値。10回戦以上を経験せず、東洋12回戦を戦うことは、秋山にとって未知の領域となる。

 戦前予想では柴田の完全優位。しかし両者、鋭く削り込んだ鉛筆の芯である。その強度は、キャンバスに一筆入れるまで誰も分からない。

 今宵も両の拳を弾丸の如く削り出した芸術家たちの作品を篤とご覧下さい。

日ノ本一(ひのもとはじめ)

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2015.7.17 後楽園ホールDANGAN134のみどころ
 フライ級は日本ボクシング界にとって誇り高き伝統の階級である。1952.5.19、故白井義男氏は世界フライ級王者のダド・マリノを下し、日本人として初の世界王者に輝いた。白井氏はその後、王座を4度防衛するなど、敗戦の哀しみに打ちひしがれていた日本国民の希望の光となった。世界フライ級王座は後に、ファイティング原田、海老原博幸、そして大場政夫らに受け継がれていくこととなる。我が国は白井義男と共に復興を歩み、フライ級戦士と共に高度経済成長を遂げてきたのである。
 

 本日のメインを飾るのは、その伝統のフライ級、日本王座決定戦。同級1位、元王者(防衛3)の粉川拓也[宮田]が満を持して登場。過去2度の世界王座挑戦はいずれも失敗。同門の元WBC世界フライ級王者、内藤大助の後継者としてバトンを託された粉川としては、本日の一戦はあくまで通過点。当時17度の防衛を果たしていた絶対王者ポンサクレックを3度目の正直で下し世界を獲った内藤大助に続くべく、3度目の世界挑戦に向けて絶対に落とせない試合となる。

 

 対するは、日本同級2位の斎藤洋輝[ワタナベ]前後の階級に河野公平、田口良一という2人の世界王者を擁する、意気軒昂、ワタナベジムからの刺客である。派手さはないが、アマ60戦45勝の堅実なボクシングには定評があり、閂(かんぬき)の如く距離を固め取れば無類の強さを発揮する。独特の間合いを持ち、攻防の引き出しの多い粉川に対して斎藤がいかに突破口を見い出すことができるかが本日の見どころとなる。

 

 セミには、OPBF東洋太平洋Sフェザー級挑戦者決定戦がセットされている。前王者ジョムトーン・チューワッタナー[タイ]が世界戦に臨むために空位となったこのベルト。本戦の勝者は、岩井大[三迫]と伊藤雅雪[伴流]とのOPBF王座決定戦の勝者に挑むことが内定している。江藤3兄弟の末弟伸吾は、昨年内藤律樹[E&Jカシアス]の保持する日本Sフェザー級のベルトに挑むものの、中差判定で涙を飲んだが、その後IBFアジアのベルトを獲得するなど2連勝を飾り、再び最前線に戻ってきた。

 

 対するガベハンはKokiというニックネームを持つ64戦ものキャリアを誇るベテランであるが、フィリピン国内では最も権威のあるGABのベルトを保持するなど、今勢いに乗るボクサーだ。過去には日本でもお馴染みのビンビン・ルフィーノやロナルド・ポンティリャスとも対戦しており、かつ勝利を収めているだけに、決して侮れない相手である。

 

 そしてセミセミは’09全日本新人王、WBC世界バンタム級19位、東洋太平洋フライ級11位、そして日本バンタム級4位の坂本英生[フジタ]に、20億光年の孤独、勅使河原弘晶[輪島]がチャレンジする大注目の一戦。坂本は当時WBC世界8位の椎野大輝[三迫]に5RTKOで勝利するなど現在6連勝と波に乗るが、一方の勅使河原も4連勝中と負けていない。その強打ゆえ拳のコンディションが気がかりであるが、どちらにしても両者のキャリアにとって潮目の一戦となるであろう

 

 今宵も両の拳を弾丸の如く練磨し、己の生き様を謳い闘う拳闘家たちの熱きドラマをぜひご堪能ください。

日ノ本一(ひのもとはじめ)

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拡散希望!!!皆様一人ひとりの声援が選手の力になります!!!

選手の活躍が一人ひとりの力になります!

2015.6.26 後楽園ホール
DANGAN131 & Tomorrow's Champ 30

 インドで使われている22の公用言語の中で、日本人が一番最初に思い出すであろうヒンディー語。そのヒンディー語で、明日は「カル」といい、昨日も「カル」という。昨日と明日が一緒で会話が通じるのか?と疑問に感じるが、彼らは文脈の中できちんと理解できるのだという。

 本日の興行のコピー『明日を賭けて』。

 ヒンディ語では明日なのか、昨日なのかはぱっと見ただけでは分からないかもしれないが、試合に臨む選手たちは、日々の体験的な文脈から、明日も昨日も等価値であると感覚的に理解するのかもしれない。すなわち、試合という当日を迎えたときには、様々なものを犠牲にしながら血と汗を滲ませてきた練習の日々は既に過去のことであるし、試合という本番を過ぎてしまえば、しばらくの休息はあれど、再び練習漬けの明日が待っている。
 
 昨日と明日の間にあるもの、それは今生きているまさにこの瞬間。ボクサーだけに言えることではないだろうが、このかけがえのない今という瞬間の意味を理解し、実行することが、昨日を意味のあるものにするであろうし、主体性のある明日というものが開けるのだと私は理解している。

 本日、リングに上がる選手たちが仮にこの文章を目を通してくれるとして、対戦相手の圧力に圧され、或いは精根尽きて手を出すことに躊躇いが生じた時、もう一度だけ、『昨日までの積み重ね、明日から見えるだろう景色、そしてそれを意味付ける今この瞬間』、を問うてほしいと願う。

 さて、本日のメインに出場するのは、日本スーパーフライ級6位白石ゼンマイボクサー豊土[協栄]29歳。その試合巧者ぶりには定評があり、チャンスを仕留め切る技術にも彼の重ねてきた昨日の重みを感じさせるのであるが、既に35戦ものキャリアを誇る白石は、3度のタイトルマッチにチャレンジした経験を持つ。過去に対戦した山中慎介[帝拳]は世界の頂点を掴み、赤穂亮[横浜光]、帝里木下[千里馬]、ホセ・サルガド[メキシコ]は世界挑戦の舞台にアタックしているだけに、白石としては諦めきれない明日があって然るべきである。この試合を足がかりに再度浮上を狙う心の強さは相当のものであろう。

 一方、対するはあまりに不気味な存在である日本同級13位中川健太[エルコンドルロペス]29歳。本来ならば、ランカーに勝利してこそのランキング入りが鉄則であるが、現在7連続KO勝利という実績から日本ランクを手繰り寄せた。日々の苦しい練習からの逃避で’05から約6年間のブランクを作った中川だが、高校時代の同級生である船井龍一[ワタナベ]の活躍に触発されカムバック。その後重ねた強烈なKOインパクトはコアなファンであれば知るところであろう。線が細く色白の印象からはかけ離れたサウスポーからの雷が落ちるような突如の強打。それは山中慎介のゴッドレフトの残像が脳裏を掠めるほどのインパクトがある。今回初のランカー挑戦は、中川にとってその実力がフェイクではないことを証明する絶好の機会。そして逃避した過去を意味ある明日に繋げる舞台でもある。両者の人生ドラマに心寄せれば寄せるほど胸の鼓動が高まる。

 今宵も両の拳を弾丸の如く練磨し、己の生き様を謳い闘う拳闘家たちの熱き生きざまに皆様の思いを重ねてください。リングに向かい湧き出た言葉。それがきっとあなたへのエールなのだと思います。

日ノ本一[ひのもとはじめ]

そしてアンダーカードもすんばらしいのです。
そのあたり、皆さまでワイワイ盛り上ってほしい!!!
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2015.5.10(日)後楽園ホール
DANGAN128のみどころ

 ラスベガスでは、史上最大の闘いと称されたメイウェザー
Jr.パッキャオとのメガマッチが行われ、うなるほどの大金が動いた。ボクシングという競技の持つポテンシャルをまざまざと見せ付けられた形となったわけだが、翻って日本ボクシングはどうだろう。

 現在9人(425日の時点)の男子世界王者がおり、地上波での放送も以前より増えてきている。1960年代のような黄金期には遠く及ばないものの、再びボクシングが注目を浴びる時代が来ているのは間違いないようだ。と同時に、海外のリングで戦う機会を得る選手たちも増えてきている。それは日本ボクシングが輸入大国から、輸出する側に代わりつつあることの証左でもある。一方、我が国は少子化という社会システムを根幹から揺るがす切迫した事態を抱えており、三十六計逃げるに如かずか、優秀な頭脳や才能の海外流失が既に始まっている。それはボクシングのみならず全てのスポーツに訪れるであろう競技人口減少の問題にも直結する。かつて辰吉丈一郎を見て、グローブを握った少年たちがたくさんいたように、井上尚弥(大橋)に憧れ、グローブを握る少年たちが増えていってほしいと思う。そして地域に根ざしたコミュニティーの拠点としてのボクシングジムが増え、プロ加盟するジムも増えること。そのために何をすべきなのか、考えなければならないときが今なのだろう。

 本日のメインに登場するのは、江藤三兄弟の末弟、日本スーパーフェザー級10位、江藤伸吾[白井具志堅]。伸吾のボクシング人生は決して順風満帆ではない。期待されながらも東日本新人王では準決勝敗退、8回戦で2度の敗北。そして怪我によるブランク。次第にジムから足は遠のいたが、長兄光喜のWBA暫定世界王座獲得に触発されリング復帰。とにかくベルトを巻く。強い思いで手繰り寄せた内藤律樹との日本タイトルマッチは善戦するも届かなかった。しかし伸吾のベルトにかける心の炎は消えることなく、韓国でIBFアジア・Sフェザー級決定戦を制し、再起に成功。再びベルトを狙うためにも今日の一戦は絶対に負けられない。

 対するは、2010年全日本新人王、山田智也[協栄]。突出したショットはないものの、ジャブ、ボディ、上下の打ち分け、クロス等、多くの能力が平均値以上とバランスが良い。そこに持ち前の粘り強さが加わり類希な勝負強さを発揮する。約3年のブランクを作ったが、昨年6月に復帰。前戦ではその勝負強さで元日本ライト級王者、テクニシャン近藤明広(一力)を下す金星を上げた。江藤の有利は揺らがないが、展開によっては山田の手が上がることも十分考えられる。

 セミには、国際ジムのプロスペクト、日本フライ級10位、松尾雄太が登場。基本に忠実で穴か少なく、詰めも甘くない。激戦のフライ級戦線の中でもまさに嚢中の錐。本日は東洋太平洋ランカー、アーデン・ディアレ(比)の持つランキングを狙う。

 本日も両の拳を弾丸の如く練磨し、己の生き様を謳い闘う拳闘家たちの熱いドラマを是非ご堪能ください。

日ノ本一[ひのもとはじめ]

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2015.5.2(土)17:45~後楽園ホール

DANGAN 127みどころ


 現在、文化や価値観は多種多様化し、メリット、デメリット、費用対効果等の言葉に代表されるように、多面的かつ合理的、そして効果的な手法が重要視されるようになった。


 いつからだろうか。ボクシングにおける敗北の意味が変わってきたのは…。その昔、敗北は引退することとほぼ同意義だったはずだ。だからこそファンは選手の勝利を必死に願いつつ、時に叫び、時に祈るような気持ちで応援しているわけであり、そしてその気持ちを2人のボクサーたちは背に受けているが故に、日々の生活、練習に一切の妥協を許さず、常に背水の陣でリングに立ち、どんなに苦しい場面でも歯を食いしばり、その2つの拳に魂を込めて闘ってきた。


 そんな一面的かつ限局的な非日常に命を注ぎ込まんとする非効率的な馬鹿さ加減。その姿こそがボクシングの美しさたる所以だと私は信じている。あえて、苦言を呈するが、全てのボクサーたちにもう一度、敗北を喫する意味を考えてみてほしい。そして今以上に勝利に貪欲であってほしいし、そのためには何が必要なのかを思い描いてほしい。その馬鹿馬鹿しさにこそ、noble artたるボクシング真髄があるような気がしてならない。

 

 本日のメインに登場するのは、元日本スーパーライト級王者、そして日本同級2位、東洋太平洋同級2位の岩渕真也(草加有沢)。ハリケーンのような回転力と破壊力で一気に日本王者に上り詰めたサウスポー岩渕ではあるが、その後、手痛い敗戦を重ねスタイルへの限界を見た。今はニュースタイルの岩渕真也になるべく自身のボクシングを変革中だ。未だ発展の途上ではあるが、それが完成した折には、新たな目的地が具体的になるであろう。


 一方、対戦相手の吉田龍生(F本田)は2004年度全日本Sバンタム級新人王で、現日本スーパーライト級9位。もともと足が使えるアウトボクサーよりの選手ではあるが、タイやマカオ、そしてオーストラリアという敵地で戦績を積み、倒さなければ勝てない厳しい環境にあえて身を置いてきた。ランキング入りした試合も敵地でホープをKOしてのランキング奪取。ぶっ倒し、弱肉強食の世を生き残ってきた吉田と、同様にぶっ倒し王者に上り詰めたものの、更なる高みを目指さんとスタイルチェンジを試みる岩渕と一戦。後楽園ホールという聖地が、この両者に何を教示するのか。


 この試合の鍵を握るのは、ずばりステップワークと足の位置取り。倒す拳は勿論のこと、その土台である足使いにも注目していただきたい。

 

 今宵も両の拳を弾丸の如く練磨し、己の生き様を謳い闘う拳闘家たちの熱いドラマを是非ご堪能ください。


日ノ本一(ひのもとはじめ)

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DANGAN112みどころ

29年前の1985年、阪神タイガースは打たれても打ち返す猛虎打線によって21年ぶりの日本一に輝いた。優勝の起爆剤となったのは、開幕当初の4月、ジャイアンツ槇原から放ったバース、掛布、岡田の甲子園バックスクリーン3連発。当時小学生だった私に強烈なインパクトを与えたこのシーンは、今なお脳裏に焼き付いて離れない。そんな1985年4月。この世に生を受けた両者が、今宵、この後楽園ホールで雌雄を決することとなるとは誰が想像しただろうか。

 本日のメインイベントに登場するのは、1985年4月5日生まれの粉川拓也(宮田)29歳と、同年4月2日生まれの久高寛之(仲里)29歳。

 粉川は11連勝(16勝1敗)の勢いそのまま4年前にOPBFタイトルを獲得した後、ポンサクレック(タイ)の持つWBCフライ級王座に挑戦するも失敗。すぐさま日本フライ級王座を獲得し、3度の防衛を果たしたものの、4度目の防衛戦において、現日本王者、WBA,WBC,WBO,IBF主要4団体の世界シングルランカーである村中優(F赤羽)にオール1P差の1-2判定で敗れ王座陥落。しかし、この試合はどちらが勝者となってもおかしくない内容であり、年間ベストバウトとの声も多数あがった。

 未だ勢いありと睨んだ宮田会長が選んだ次戦は、ヨドモンコン・ボー・サエンテップの持つWBA世界フライ級暫定王座。有効打は王者が上回るも、手数では粉川が勝り、一度は王者を倒す決定的な場面を作ったものの、敵地タイでのジャッジはスリップ。壮絶な打撃戦は最終ラウンドまれもつれ、結果は116-113、115-114、114-114の2-0。戴冠は果たせなかった。ここ2試合の敗戦はいずれも勝ちに等しいものではあったが、残った結果は2連敗。粉川が世界王者戦線を生き残るためには、本日の一戦は是が非でも落とせない。

 一方の久高も同様である。粉川を9試合上回る35戦のキャリアを誇る久高はこれまで坂田健史(協栄)、デンカオセーン(タイ)、ウーゴ・カサレス(メキシコ)、そしてオマール・ナルバエス(アルゼンチン)と4度の世界タイトルマッチを経験しているが、いずれも苦杯をなめている。前戦では伸び盛りのホープ、松本亮(大橋)の勢いに圧される形での3-0判定負けを喫しており、勝ち負けを繰り返しているここ数年のキャリアからも、本日の試合を落とすことは断じてあってはならない。プロデビューから2連敗のスタートを切りながらも、泥臭く世界タイトルマッチへと歩を進めてきた久高。プロ12年目。この試合にかける想いには並々ならぬものがあるだろう。

 奇しくも1985年4月に産声を上げた29歳、崖っぷちの男同士が、今宵、最後の生き残りをかけて闘うリング。メインイベントの幕が降りたとき、その拳を天に突き上げることができるのはたった一人。29年前の4月、私の脳裏に焼きついたバックスクリーン3連発のように、今宵、一生忘れられぬ「残酷にて美しき芸術」が、私の心のキャンバスに上書きされるに違いない。

 今宵も両の拳を弾丸の如く練磨し、己の生きざまを謳い闘う拳闘家たちの熱きドラマをご堪能ください。日ノ本一(ひのもとはじめ)
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2

2014.9.24(水)後楽園ホール
DANGAN111のみどころ 

「侍ほどの者は皆、秀吉にあやかりたく存ずべし」。君主織田信長が本能寺の変直前の謁見において、百姓から織田家の重臣にまで成り上がった羽柴秀吉(のちの豊臣秀吉)に送った言葉である。

 秀吉は、その「有り難き」言葉を受け、これまで決して見せることのなかった涙を微かに瞳に滲ませていたという。それは石ころがダイヤとして輝きを放った瞬間でもあった。

 昨今、残念なことに戦前から勝者が予測できるような予定調和の世界戦が多々見受けられることが多くなっている。しかし2014.9.5、人間が神に挑むが如き一戦が実現した。それは逆に言えば、神が人間に勝てるわけがないといった真逆の予定調和だったかもしれないが、WBC世界フライ級王者、八重樫東(大橋)は、その圧倒的な強さから世界中の誰もが対戦を避けてきたアマ87戦、プロ39戦無敗の生き神、ローマン・ゴンザレス(ニカラグア)を自ら挑戦者として指名し、結果、見事に散った。

 あの激闘から幾日が経過したが、真っ向から打ち合い、魂、肉体、頭脳、闘志、全てをぶつけ、そして散った、この価値ある敗戦は、観る者の心を今なおこれでもかと揺さぶり続けている。ボクシングの魅力、いや拳闘の本道ここにあり。己より強い者と戦わんがため、更に己を高め、真の「強さ」を求め歩む道。八重樫東は、ボクシングの真道を歩んだに過ぎないが、その原点の道こそが、多くの人の心を打ったのは紛れもない事実であった。信長が秀吉に送った称賛と同様、八重樫の選んだ拳は、何年後も何十年後も、いや何百年も語り継がれて然るべきものであるだろう。

 本日のメインイベントには、現在2つの引き分けを挟んで7連勝中と、「負けない距離感」を完全に掴んだ感のある日本ミニマム級王者、大平剛(花形)が登場。今宵’12年ミニマム級全日本新人王の山本浩也(全日本P)を迎え撃つ。

 大平はIBF世界ミニマム級6位にもランキングされており、山本からすれば、日本タイトルと共に、一気に世界王座獲得圏内に割り込む大チャンス。

 ミニマム級は1986年に創設された最も新しい階級であり、当時18歳9か月の日本記録で井岡弘樹(グリーンツダ)が獲得し、そして2012年にWBC王者、井岡一翔(井岡)とWBA王者、八重樫東(大橋)の間で日本初となるWBA・WBC世界ミニマム級王座統一戦が執り行われ、勝利した井岡が日本初の統一王者となった、日本人として誇り高き階級。本戦は、その誉れの頂に挑むための資格を得る戦いとなるであろう。

 今宵も両の拳を弾丸の如く練磨し、己の生きざまを謳い闘う拳闘家たちの熱きドラマをご堪能ください。


日ノ本一(ひのもとはじめ)

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 本日のメインに登場するのは、初防衛戦を迎える第
68代日本バンタム級王者、益田健太郎(新日本木村)31歳。今年4月、敵地大阪に乗り込み、川口裕(Gツダ)との王座決定戦を制し、プロ7年目、25戦目にして初戴冠となった。

 バックボーンは極真空手。鹿児島県大会2連覇、全日本選手権3位の実績を引っ提げ、’
06年にプロデビューするものの、キャリア前半は7勝4敗とアジャストに苦しんだ。しかしA級昇格後は、次第に本領を発揮し始め、当時10戦無敗の藤原陽介(ドリーム)を破りランキング入り。王者、岩佐亮祐(セレス)に臨んだ初のタイトルマッチは7Rに力尽きたが、その後は5連勝し王座に辿りついた。

 頻繁にスイッチを繰り返し、独特のリズムからセオリーにない攻防を生み出すテクニックは円熟期に入ってきたと言える。しかし、戴冠はあくまでも決定戦である。王座を防衛して、初めて真の王者だと益田自身も述べているが、その初防衛の相手が超のつく難敵。


 挑戦者、元東洋太平洋Sフライ級王者の冨山浩之介(ワタナベ)31歳。冨山は益田より2年早くプロデビュー。デビューから14連勝を記録し、’08には東洋王座を獲得。翌年には勢いそのままにWBA世界Sフライ級王者、名城信男(六島)に挑戦。1Rと6Rに会心の左フックでダウンを奪い、圧倒的有利に試合を展開。しかし、王座奪取がチラついた8R。痛恨の右ストレートを浴び防戦一方となったところでレフェリーストップ。その夢は一瞬にして消え果てた。

 その後、後の東洋王者、プロ5戦目の椎野大輝(三迫)に金星を献上。一時ボクシングから離れた。小口トレーナーの声かけにより再起したものの、プロ10戦目の江藤大喜(具志堅)に6RTKO負けを喫するなど、冨山の選手生命は終わりを迎えたように見えた。

 しかし一度世界を掴みかけた男の夢は終わらなかった。すぐさま野崎雅光(八王子)を4RTKOに仕留め、ランキング奪取。昨年7月にはマカオにてWBO世界Sバンタム級6位、21戦無敗のスター、ジェネシス・セルバニア(比国)と対戦。2度のダウンを奪い、最後はヒッティングカットによるTKOと勝利を確信したが、ジャッジはまさかのバッティング。疑惑の負傷判定負けとなったが、冨山の力が世界に通用するまでに復調していることを証明した。


 背負うものの重さに誰もが本領を発揮できない鬼門の初防衛戦。益田がこの難敵を退け、新の王者と成りえるのか。それとも大舞台に強い冨山が再び輝きを取り戻し、獅子のベルトを奪い取るのか。


今宵も弾丸の如き両の拳をぶつけあう男たちの熱きドラマを心ゆくまでご堪能ください。

日ノ本一(ひのもとはじめ)

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2014.7.30(水)後楽園ホール

DANGAN108のみどころ

 2007年の3月に産声を上げたDANGANも,足かけ7年,今年の5月で節目の100回を迎えた。単純に月に1回以上の興行をうってきた計算になるが,最近では月3回の開催も珍しくない異例のハイペース興行である。その頻度もさることながら,興行の質が厳しく問われるマッチメイクにおいても、DANGANは数ある興行の中でも類希な存在であろう。

 DANGANマッチメイクの意図は明確である。「ファンが見たい旬のカード」。マッチメイカーも「自分が観たいカードしか組まない」と公言している。無気力な外国人選手を使わない真拳勝負路線は勿論のこと,ランキング入りを貪欲に狙う勢いのあるノーランカーとランカーとのサバイバルマッチや、強かなベテランと将来性豊かなホープとの意地と勢いの激突からは,日本人が好む『心の勝負』も滲み出る。またデビュー前の選手や4回戦ボーイのボクシングに対する想いや、日頃からの練習への取り組み姿勢など、各ジムから得る生きた情報も大切にしたマッチメイクも魅力であり、第1試合から見逃せないカードが続く。そして日本ボクシング界の宝といえる日本タイトルマッチを何よりも大切にしてきたことは、これまでの軌跡を遡ってみれば、もはや説明の余地がないだろう。

 ファンからすれば、勝敗予想の難しい息の抜けない対戦が続き、DANGANを拠点に活躍するいわゆるDANGANファイターたちからすれば、心身削られる厳しい試合が続くわけだが、それは、より強い者に勝ち続けながら獅子のベルトを巻くという至極当然な道程でもある。ボクシングの魅力を極めて単純に凝縮させた興行。それがDANGANである。
 本日の興行は、それら魅力を存分に詰めこんだ、いわゆる「DANGAN祭り」である。アンダーカードからメインまで、よくぞこれだけのカードを揃えたと納得していただけるだろう。

 メインイベントは、まさにコアなファンが待ち望んでいた国内屈指のスーパーカードが実現。その実力故に対戦相手が見つからないマッチメイカー泣かせのIBF世界Sフェザー級5位の仲村正男(渥美)と日本Sフェザー級7位の伊藤雅雪(伴流)の両者。

 仲村はこれまで19戦18勝。18勝は全てKOというモンスターだ。単に腕力に頼るボクシングではなく、左ジャブを中心とした基本に忠実なボクシングスタイルがベースにあり、距離を測りながら隙あらば右ストレート、左ボディを叩き込む爆発力でKOの山を築いてきた。戦歴の殆んどは外国人選手であり、日本人選手とは3度しか対戦していないため、その実力が計り知れないとの評価も一部ではある。しかし、アマ64戦59勝(34RSC)、高校2冠、東洋太平洋Sフェザー級王者獲得の実績が語る通り、オフェンス、ディフェンス共に秀逸な正統派ボクサーであり、現在、世界に最も近い選手であることに疑いの余地はない。

 一方の伊藤はアマ経験なしのプロ叩き上げ。プロキャリアは15戦して未だ無敗。4回戦からスタートし ‘12年に全日本新人王獲得。昨年9月にはWBCユースライト級王座を獲得するなど、着実にキャリアを積み上げている。仲村とは対照的に15戦のうち14戦は日本人選手であり、DANGANを主戦場に鎬を削ってきた。左ジャブで距離を緻密に測るボクシングスタイル。東洋&日本ミドル級王者柴田明雄(ワタナベ)同様、バスケットボールで鍛えたバランス感覚が土台にある。一昨年までは「上手さは確かにあり、負けないボクシングをするが、逆に倒せない面白味のないボクシングだ」と嘲弄されていたのも事実だ。しかし現在3試合連続KO中と倒すタイミングを完璧に掴んだ感があり、山田健太郎(全日本P)、中野和也(花形)をマットに沈めた瞬間、目の肥えたリングサイドの常連たちが、まるで理解不能なイリュージョンを見たかのような顔で「何が当たったんだ?」と騒ぎ立てるほどの芸術的なKO劇が、伊藤の急激な成長とそのポテンシャルの高さを物語っている。何より国内には日本王者の内藤律樹(カシアス)、金子大樹(横浜光)、岡田誠一(大橋)らの実力者が犇く中で、世界に踏み出そうとする仲村が国内最後のやり残しとして選んだ相手である。

 持ち前のバランス感覚に加え、ここ数試合で急激な成長を遂げ、一瞬で切って落とす刀を手に入れた伊藤か、アマ、プロと伊藤を大きく上回るキャリアを持つパワーの仲村か。距離とタイミングが勝敗を決するポイントとなるだろう。仲村が勝利すれば、満を持して世界へのGoサイン。負ければ世界ランク上位から転落するだけでなく、逆に世界への切符も伊藤に総取りされる。

 現在、世界Sフェザー級の頂点には、WBA王者の内山高志(ワタナベ)、WBC王者の三浦隆司(帝拳)という二人の日本人が君臨している。内山、三浦に続く、もう一人の日本人として名乗りを上げるのは、仲村か、伊藤か。

 WINNER TAKES ALL。世界が大注目する一戦である。

 今宵も弾丸の如き拳をぶつけ合う男たちの熱き拳闘浪漫を心ゆくまでご堪能ください。

日ノ本一(ひのもとはじめ)
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