ITと法律 | 考えすぎ

ITと法律

ITも、法律も、もともと論理的に構成されているものであって、
相性は良いはずである。
特に、法的な理念や手続きの多くは、
IT化することで、現実社会の個々の場面において具現化できる。


かつては、法律関係者が直接関わらない限り、
法的な理念や手続きが現実社会のなかで明確に具現化されることは、なかなか難しかった。
なぜなら、
法の目の行き届かない場所では、法よりも慣習が現実社会を支配していたからだ。


慣習がいけないのではない。
現実社会においては、法も大切だが、慣習の役割も重要である。
人間同士で決めた、たかだか有限の言葉から成る法律だけでは、
現実社会の隅々まで円滑にまとめあげることはできない。


とはいえ、慣習が支配する社会の中で、法が“有名無実”化して良いわけではない。
法は、現実社会のすべてを網羅できないだけであって、
現実社会の中において法に違反することが許されているわけではない。
そこで、
現実社会の中にいる人々は、生きる上で、
法と慣習の区別をある程度認識し、把握しておく必要がある。


そのためのツールとして有用なのが、
(法律と同じく)もともと論理的に構成されている、IT技術である。
法的な手続きをすべてITシステムに落とし込んでおけば、
現実社会における日常の法的処理をすべてIT処理に置き換えることができ、
法的なルールを、慣習的なルールと明確に区別することができる。


ただし問題は、ITにも法律にも疎い人が、いまだ少なくないことである。
そういう人々が実際に現実社会の中に多くいる以上、
その人たちの日常にそぐわないシステムをその人たちに強要することは、
根本的に、法の理念に反している。


そこで現状では、実際の法的機関は、
法的処理を、IT処理“にも”置き換えられるよう環境整備を進めている、
・・・というスタンスを取っている(ように見受けられる)。
具体的には、IT化を進めつつ、従来の窓口対応も平行して継続している。
取り組み方としては、至極、妥当だと思う。


あと数十年もしないうちに、誰もがITに慣れ親しんでいるような時代になる。
その頃には、法的な手続きをすべてITシステムに落とし込んでおき、
法的処理をすべてIT処理に置き換えれば良いと思う。


もちろん、そうなったとしても、法的処理が全自動化されるわけではない。
ITシステムも、極めて重要な根幹部分については人間が直接監視、運用しているし、
そうされるべきものでもある。
法的処理においても、
裁判についてはすべての手続きを人間が直接監視、運用しているので、
そういう面でも、ITと法律は似通っていると思う。