インポッシブル | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督 J・A・バヨナ

脚本 セルヒオ・G・サンチェス

撮影 オスカル・ファウラ

編集 エレーナ・ルイス

出演 ナオミ・ワッツ、ユアン・マクレガー

2012年 スペイン


2004年に、スマトラ島北西沖のインド洋で発生した、マグニチュード9・1の地震により、

タイのアンダマン海に面する地域では、津波によって、5,000人以上の死者、

8,000人以上の負傷者を出す大きな被害を受けました。

本作は、アンダマン海に面する高級リゾート地のカオラックでバカンス中に、

津波に遭遇して、ばらばらに流されてしまったスペイン人一家の実話を基に、

重傷を負った母親と、彼女を介添えする長男が、家族との再会を信じて、

サバイバルする姿を中心に描いた感動作です。


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら


映画が始まって間もなく、特殊効果を生かした津波のスペクタクル場面が、

10分近くに亘って展開されますが、2年前の東日本大震災当時に公開されていたら、

津波被害者の遺族に対する配慮から、イーストウッド監督の「ヒアアフター」や

「唐山大地震 思い続けた32年」等の作品と同じく、上映の自粛に追い込まれて

いたことは間違いない、凄惨な光景が繰り広げられます。

ただ、震災のニュース映像で映し出された、津波に飲み込まれていく町の様子が、

現実に起こっている光景とは思えない無表情さだったのに対して、本作では、

津波の恐怖を被害者の視点で描いているので、主人公の痛みや苦しみを共有した、

他人事ではないリアルな恐怖が、ストレートに伝わって来ます。

さらに、津波によって、失われていた家族の絆を確かめ合うと言った、

よくある家族の再生を描いて、安易なヒューマニニズムに逃げるのではなく、

ひたすら家族の見る地獄絵図によって、命に対する尊さや、自然に対する人間の

無力さが客観的に描かれているので、主人公を自分に置き換える事が可能になり、

映画の世界だけに留まらない、日常の中に潜む現実的な危うさとして、

いつまでも心に残る作品に仕上がっています。


本作の、もう一つの見どころは、深い傷を負って、生死の淵を彷徨ながら、

家族のために生き延びようと苦闘する母親を演じたナオミ・ワッツで、

その演技が評価されて、アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされています。


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