本作は、宮中の不穏な空気に神経過敏になり、暴君と化した朝鮮王が病床に
臥してしまい、謀反を恐れた側近の長官が、王に瓜二つの道化役者を見つけて、
影武者に仕立て上げるのだが、保身のためには、民の犠牲も止むなしとする、
権力者たちの横暴を目の当たりにした道化役者は、正体がばれるのを覚悟で、
自分の言葉で、真に国を思う王としての役目を全うしようする感動作で、
影武者が主人公の傑作、ロッセリーニの『ロべレ将軍』や黒澤明の『影武者』を
思い出しましたが、『遠山の金さん』や『水戸黄門』のような、世直し時代劇の
雰囲気を持つ、笑いあり涙ありの勧善懲悪物の人情劇として、
善人も悪人も鋳型に嵌った登場人物に、メッセージ性や政治色を排した
劇画的な分かりやすいストーリーと、万人向けの映画に仕上がっていて、
それを裏付けるように、韓国国内では、歴代3位の興行収入を上げるヒット作に
なりました。
本作の朝鮮王のモデルになっているのが、李氏朝鮮(1392年から1910年まで続いた
朝鮮半島最後の王朝)第15代国王光海君(1608年~1621年在位)で、
豊臣秀吉の遠征軍との戦い以後、国交を断絶していた日本との貿易を再開したり、
貢納をなくし農民の税制負担を軽減し、商業は発展させるための法律を導入するなど
困窮する国内の立て直しに尽力した人物で、最近では、暴君と言われるほど
悪人ではなかったのではないかという説もありますが、反日ファンタジーで迷走する
現在の韓国では、劇中でも蛮族呼ばわりされている日本人と貿易を再開した事が
親日的とみなされているのか、客受けするための悪人としては、打って付けの
キャラクターだったようで、その点に関しては、ブロバガンダ的と言えなくは
ありません。その証左として、韓国の行政機関である文教部主導で、国内映画産業の
振興目的で生まれた、韓国映画界のアカデミー賞である大鐘賞を15部門受賞していて、
愛国心に主眼が置かれていることが評価されたのではないでしょうか。
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