ゼロ・ダーク・サーティ | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督 キャスリン・ビグロー

脚本 マーク・ボール
撮影 グレイグ・フレイザー

編集 ウィリアム・ゴールデンバーグ、ディラン・ティチェナー

出演 ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガートン

2012年 アメリカ


9・11テロ事件の首謀者とされる、アル=カーイダの指導者ウサーマ・ビン・ラーディンが、

CIAによって潜伏先を突き止められ、アメリカ軍の特殊部隊の奇襲によって殺害される

までを、当事者の証言に基づいて映像化した作品です。

事件の真相解明や、テロに対する批判、アメリカ政府のブロバガンダ等の政治的な

要素を持ち込まない、感情を排した客観的演出によって、アメリカ軍による、

捕虜にされたアル=カーイダのメンバーに対する拷問シーンやクライマックスの

襲撃シーン、実際にあったテロの生々しい自爆シーン等がリアルに再現されていて、

CIAをヒーロー、アル=カーイダを悪にした、勧善懲悪物にしていないところに

好感が持てました。

作戦の中心人物になった、CIAの女性分析官が主人公で、彼女のビン・ラーディンに

対する感情の変化がドラマ的要素になっていますが、遺体確認のために、

ビン・ラーディンの亡骸と対面する彼女が見せる表情には、

世界を震撼させたモンスターが、同じ血の詰まった人間であることへの虚しさで

曇っていて、監督の、対テロ戦争に対する思いが集約されていると言えるでしょう。



※タイトルの意味は、軍事用語の午前0時30分で、奇襲が開始された時間です。

最後に余談ですが、「カルロス」で国際テロリストを演じたエドガー・ラミレスを、

CIA捜査官役にキャスティングしたスタッフの遊び心に脱帽します。



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