トゥルー・グリット | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本・製作 ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン

原作 チャールズ・ポーティス

音楽 カーター・バーウェル

撮影 ロジャー・ディーキンス

出演 ジェフ・ブリッジス、ヘイリー・スタインフェルド、マット・デイモン

2010年 アメリカ


本作は、強いアメリカのシンボルとして、愛国主義的な戦争映画や西部劇の
ヒーローを演じてきたジョン・ウェインが、アメリカン・ニューシネマの台頭で人気を
落としていた時期に、従来の、タフガイで保守的な父親のイメージをかなぐり捨てて、
大酒飲みで風采の上がらない、ダーティな片目の保安官役に挑戦した西部劇
『勇気ある追跡』を、『ノーカントリー』のコーエン兄弟が、40年ぶりにリメークした作品で、
ジョン・ウェインに、初のアカデミー賞をもたらした(『真夜中のカウボーイ』の
ダスティン・ホフマン、ジョン・ボイドが票を分け合う幸運もあって)作品としても
知られています。
流石に只者ではないコーエン兄弟は、ジョン・ウェインのために作られた、
勧善懲悪物のスター映画とは趣を変えて、原作どおりに、保安官に父の復讐を依頼して、
犯人追跡の旅に同行する気丈な少女マティの、どろどろした人間の暗闇と対峙する冒険談として、
リアリスティックに描くことで、アメリカが失ってしまった真の勇気(トゥルー・グリット)を、
等身大のドラマとして描くことに成功しています。

本作でジェフ・ブリッジスが演じる保安官は、彼がアカデミー賞で主演男優賞を
受賞した『クレイジー・ハート』の初老のカントリー・ミュージシャンに通じるものがあり、
自分のやり方を頑なに通そうとする少女に対して、『世の中なんて思い通りに出来るわけじゃ
ないんだぞ』と諭す場面に、アメリカン・ドリームを過去にしか見出せないアメリカの
現状を垣間見る事が出来ました。

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