2014シーズン振り返り第2弾です。
前回はバドゥ体制から森下監督代行が指揮したところまででしたので、今回は川勝良一監督体制になってからについてまとめようと思います。



バランスを模索しながらの戦い


森下監督代行の下で2試合を戦った後、川勝監督が就任し、第21節・磐田戦 から指揮を執りました。

この試合ではセットプレーの守備の甘さから失点を重ねてしまいましたが、後半にしっかり立て直す一面も見られました。
戦い方としてはまず守備の整備から入るオーソドックスな形で、第22節・愛媛戦 はスコアレスドローながら守備はほぼ完璧に相手を抑えましたし、その次の福岡戦 で逆転勝利を飾るなど、出だしは良好だったかと思います。
守備のバランスを大事にして、田森大己を中心として中央をしっかりと締め、攻から守への切り替えを素早くすることを徹底するようになったのが最大の要因だったでしょうか。


しかし、守備が安定した一方で、効果的な攻撃は少なく。
川勝監督は基本的にはリスク管理を怠らない方針で、ポジションのバランスに気を遣うタイプの監督でした。
これに対し、京都に所属する選手には攻撃的な選手が多く、守備意識やポジションバランスはやや薄れてしまっていた要素であったように思います。その足りない部分を植え付けようと強く意識づけた反動で前に出にくくなってしまった側面もあったのかもしれません。
守備は徐々に安定を見せていったものの、意識レベルの話でしかなく、攻守に渡って個人能力に任せた戦いでもありました。

運動量とスピード、切り換えの速さに高い能力を見せる駒井善成を左SBに起用して山瀬功治と組ませ、クロスが持ち味の石櫃洋祐のいる右サイドと合わせてサイド攻撃を活性化する試みもありましたが、中央で合わせるバリエーションの少なさや、サイドにどう展開するかというところで詰まってしまうことも多かった印象です。


守備は落ち着かせたいけれど、点を獲るために前に人数を掛けたいといったところで、どう折り合いをつけるのかがテーマとなっていたように思います。

夏に加入した田中英雄は運動量の豊富さと前線への飛び出しが持ち味ということで、駒井のSB起用とともに攻守両面で効くのではないかという期待があったでしょうし、第25節・水戸戦 では一定の成果が出たとは思いますが、折り悪く、中盤守備の軸であった田森が負傷。
攻守のバランスをどう取るのかにさらに苦労することとなり、奪っても奪われ、守りに入れば奪えず、と負のサイクルに陥り、第27節・大分戦 からは4試合連続ドロー。

第32節・山形戦 では、個人的に今季ワーストゲームと考えているくらいに質の低い試合を演じてしまいます。
その試合後には、「根本的に何かを変えないといけない」との発言が川勝監督から出るなど、昇格に向けての危機感が一層強まっていきました。


中2日で迎えた湘南戦 からは、田森をアンカーとした4-3-3にシステムを変更し、左SBに福村貴幸を起用。中盤に中山博貴と工藤浩平の2人を置きました。
田森、バヤリッツァ、酒井隆介の3人で中央を締めつつ、工藤&中山で支配力を高めるといった狙いがあったでしょう。
しかしこの形も、中山の負傷離脱によって早々に頓挫。
また、攻守にバランスを見ることができ、ボールを落ち着かせることのできる数少ない存在である中山が離脱したことにより、チームにおける「幅」は少なくなってしまいました。

その後、福村のクロスから逆サイドのドウグラスを活かす形を使いながら、工藤をトップ下に回すことによって大黒との連携を強めようとしましたが、今度はボールを前線に運べないために苦しむ・・・といった具合に、最後までどこか噛み合いそうで噛み合わないまま進んでいってしまいました。


第37節・松本戦第38節・磐田戦 の上位陣との連戦が最後の巻き返しのチャンスであり、気持ちの入った良い試合をできたのですが、共にドロー。
ほぼ昇格が絶望的となった第39節・岡山戦 で、これまでになかったようなリスキーな交代策を採り、逆転勝利に結びつけましたが、続く富山戦 では同じ形で最後に追いつかれてドロー。

最後まで、自分たちのペースで試合を進めながら勝利をものにする形を見出だせないまま、シーズンを終えることとなってしまいました。



川勝監督の評価


チームの立て直しと、J1昇格を目標として就任した川勝監督でしたが、目標は達成できず、今季限りでの退任となりました。
鉄拳制裁のイメージも根強く、戦う姿勢やプロ意識の重要性を強く説く厳しい指導方針には、ファン・サポーターから賛否両論がありました。結果がなかなか出てこないこともあり、「否」の方が多かったでしょうか。
ただ、やろうとしているサッカー自体は非常にオーソドックスで、難しいことを要求しているようにも思えませんでした(そういう引き出しは持たない、とも言えるかもしれませんが)。


バドゥ体制総括や、前回の記事でも書いた通り、試合に臨む上での甘さを選手たちに感じることは以前からあり、若い選手が多い京都で改めて強く指摘されたことは良い側面もあったように思います。
一方、トップチームとしての京都の目標を考えると、どこかハッキリしなかった面もありました。


言ってみれば、若手育成と勝負へのこだわりの間で揺れている感じでしょうか。
もしくは、ロマンと現実の間か。

負傷者やコンディション不良が重なった影響もありますが、石田雅俊と磐瀬剛の市船コンビは共に出場やベンチ入りを重ねましたし、杉本大地と高橋祐治のユース上がりコンビもリーグ戦デビュー。
駒井のSBあるいはボランチ起用は彼の特性を考えた上でチームにとっても有効である一方、守備意識やパス出しに抱える弱点の改善にも取り組ませる意図もあったかもしれません。伊藤優汰にも期待しているようでしたね。

結局のところ若手は使わねば伸びず(ただし、使ったら伸びるというものでもないですが)、なんとか川勝監督も起用しようとしていたフシが伺えますが、結果がついてこないことにより、その出番の与え方がやや安定しなかったように思います。


また、「守備を意識する」「結果にこだわる」と言いつつも、守備の得意な選手を起用せずに攻撃的な選手に守らせようとする試合が続くなど、根底には追い求めるものがあって、言葉ほどには割り切れなかった印象が強いです。


優位に進めながらも勝ち切れない試合も多く、監督からすると運の無さも目立ってしまったことによって、今ひとつ思うように進められないもどかしさもあったでしょうか。
早めに結果がついてきていれば、もう少し大胆にやれたとは思うのですが。。。

東京Vなど、これまで率いていたチームで選手に慕われていたようですし、基本的には育成向きの監督かもしれません。
少なくとも、途中登板で結果を求めるタイプの監督ではなかったということでしょうか・・・。