桐野夏生『OUT』
テーマ:桐野夏生
桐野夏生『OUT』
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞。(文庫裏表紙より)
とにかく読んでいて愉しい。嬉々として頁を繰った。
鬱屈した生活を続ける一人の主婦が、周りを巻き込みながら逸脱していく感じ、たまらんね。死体をバラバラ? どうぞどうぞ、どんどんやっちゃって♪ 虚構の強み。
カズオや佐竹だけでなく、私も惹かれちまうよ。香取雅子。いい女だな。
不満点は、ラスト。
桐野さんは、江戸川乱歩賞受賞前にすばる文学賞にも応募し最終選考に残っているように、純文学もやりたかったようで、そういうのがこの作品にも表れている。花村萬月とおんなじような作り方、ストレートなエンタメではない。
普通のエンタメミステリーであれば、たとえばヒーローのごとくカズオが現れて助けるとか、犯罪が露見して逮捕されるといったパターンがエンタメとして(読者も)すっきりするだろう。
そうしないのは、最終章に「出口」とあるように、あくまで雅子の、あるいは女たちの境界を越えていく姿、その行き先が本旨であり、お行儀のよい定型に落ちていかないところは好ましい。
しかしながら、毀れている女と男の魂の邂逅、まぐわいみたいなのは、いささか興醒めだった。私は、もっとべつの出口が見たかった。
ただ、この作品全体から立ち上ってくる熱、これは書かねばならぬという作者の意思が感ぜられて、一気に読まされ、それはとても心地の良いものだった。桐野さんは、書きながら陶酔していたのはもちろんのこと、恍惚、エクスタシーすら感じていたのではないかと邪推してしまうほどの圧倒的な熱。
文庫解説で松浦理英子が「階級」について言及しているけれども、たしかに最近とみに格差うんぬんが声高に叫ばれるし、そういった点からの興味深さも。
78 点







