人間通
谷沢永一
「人間通」、だなんて随分不遜な人だなぁ、と思っていました。
私にとってのこの本の作者谷沢永一は、開高健の親友です。
高校時代は開高健のよきライバルであり、その後も旧交を温めつづけ、開高健がなくなったときには
「回想 開高健」という名著を書いています。これは心を打つ本です。
その後博覧強記の評論家として活躍するようになりますが、言っていることが難しく、著作には目を通していませんでした。
ですが「人間通」です。不遜なタイトルですが、どこかしら気になるところがあり、手に取ると
「私が40代、50代で得た若干の知見について、そのたびごとにもう少し早く知ることができれば、と思い、悔やんでいた。その内容を早くに読者に伝えたかったのが、本書執筆の動機」と書いてある。
これは自分自身をまな板の上に乗せている、それなりの率直さが感じられ、読み始めました。
内容は、思い至った言葉について、数ページをかけ、説明するもの。初めの4つについては、なんだか心に残る内容でした。
1、「人間通」人間は最終的に、何を欲しているか。それは、他人に理解されることである。
2、「吝嗇」吝嗇とは人の世が助け合いでできている事のわからない忘恩の徒であり、絶対に直すことのできない悪癖である。
3、「臆病」臆病もその本質は何かあれば一番に逃げ出す連帯感情の欠如であり、吝嗇とならぶ最悪の悪癖である。
4、「親友」それなりの人物が大成できないのは親友がいないせいであることが多い。お互いのことが腹蔵なく話し合える親友は大切なものであり、つくる努力を怠ってはいけない。また、長く続けるにはお互いを思いあう阿吽の呼吸が絶対に必要である。
と、この4つです。
一方的な部分もありますが、昭和4年生まれの実感ということであれば、何かしら本当の部分があるのではないかと思います。
最後には人間通になるための100冊が簡単な書評とともに選ばれています。
読んだことがある本は、開高健の「水の上を歩く?」でした。
たしかにこの本は今まで書かれたジョーク本の中で一番面白い。
しかしその他は難しそうで偏っているような気もしますが、書いている書評で面白そうなものもあるので、何冊か読んでみようと思います。
追記とメモ
しばらくたってから、思い出す言葉が出てきました。
「狐色」
「嫉妬は誰にでもあることであり、必ず心の中で疼いている。
だからといって嫉妬の炎に妬かれて黒焦げになってはいけない。
狐色程度に妬くのが、人間としての情も深くなり、ちょうどいい。」
なるほど、と思います。自分で自覚してコントロール。
私は嫉妬心はなるべく感じないようにしてきたのですが、そうすると情が薄くなんですよね。
松下幸之助の言葉だそうです。
メモ 読んでみたいと思った本
坂の上の雲 司馬遼太郎
海の都の物語 正続 塩野七生
斎藤秀三郎伝 大村喜吉
敦煌学50年 神田喜一郎
この世の果て サマセット・モーム