2006年01月08日

裏庭 / 梨木香歩

テーマ: 梨木香歩

新年最初の1冊に選んだのは、最近お気に入りの梨木さんの作品です。みなさんのblogをウロウロしていて評判がよかった「裏庭」を読んでみました。そして、評判どおりだぁ♪と嬉しくなりました。相変わらずの梨木ワールドといった感じですが、りかさん と同様に不思議な世界が入り交ざったタイプの作品でした。ストーリーの雰囲気は少し「はてしない物語 」に似ているように感じました。


この裏庭は13歳の女の子照美が主人公のお話です。照美は双子の弟の死をきっかけに、両親にですら心の内をみせることができなくなってしまっています。そんな照美が唯一心を許したのが、友人のおじいちゃん。そのおじいちゃんが聞かせてくれた「バーンズ屋敷の裏庭」の話は照美の心を揺さぶります。その裏庭は特別な資格をもったものだけが行くことができる心の中の庭。今では人も住んでおらず、荒れ放題になっているバーンズ屋敷にある大鏡がその入り口だという。照美はバーンズ屋敷に入り込み、思いがけず大鏡から心の旅にでかけることになります。長い冒険の末、照美が手に入れたものは・・・。

弟の死後、両親は忘れようとして忙しく働き出します。その結果、照美は放っておかれることに。傷ついていたのは照美も同じだったのに、両親は自分たちの痛みで手一杯になって気がついてあげることができていなかったんです。そして、照美も同様に何もなかったように心にフタをして日々を暮らしている。照美が行った裏庭は、初めは川も水が枯渇して枯れ果てた状態でした。裏庭は照美の心の中ですから、照美の心がいかに病んでいたのかが伝わってきます。傷を浅く見せようとフタをしてしまう行為は、とても手軽だけどとても危険。一時的には治ったように見えるけど、実は奥深くではまだ傷ついたままなんですよね。照美は心の庭へ旅立ち、そういったことをひとつづつ学んでいくんです。


ファンタジーのお話の中で少女が成長していく過程がとても上手に描かれています。愛、憎しみ、悲しみ、友情などをうまく心の中で整理していく術を手に入れた照美は、裏庭から戻るときとても大人に成長しています。勇気を持って自分の心を向き合うことの大切さを教えてくれたような気がします。


タイトル:裏庭
著者:梨木 香歩
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2005年12月08日

西の魔女が死んだ / 梨木香歩

テーマ: 梨木香歩

少女まいが西の魔女と1ヶ月ほど過ごした日々を綴っています。ゆったりと時間が流れている2人の暮らしぶりはうらやましくなるほどです。梨木さんの描く生活というのは、なぜどの本でも時間がゆったり流れているように感じるのでしょうか。とっても不思議です。


中学生になってから学校へ行きたくないと感じるようになった少女まい。母親のすすめで母方の祖母(2人はこの祖母を西の魔女と呼んでいる)の元で過ごすことになりました。まいは大好きなおばあちゃんから「魔女になるための手ほどき」を受けることになりました。修行の一番重要なポイントはなんでも自分で決めることなんです。 生活の様々なことはもちろんのこと、幸せも、喜びもです。まいは西の魔女との暮らしの中で、次第に元気になって生き生きとしていきます。


西の魔女との暮らしが本当に素敵なんです。庭のワイルドストロベリーをつんでジャムを作ったり、洗濯はタライの中で足ぶみして、ラベンダーの茂みに干しておくんです。現実に日々の生活としてやっていこうと思ったらもちろん大変なんでしょうけどね。とても憧れます。


作品の中でまいが「おばあちゃん、大好き」というたびに西の魔女が「アイ・ノウ」と答えるシーンがあります。私はこれがとても好きだと感じました。普通、人から大好きって言われたらなんて答えます?「ありがとう」とか「嬉しい」とかかなぁって思います。でも、西の魔女は違う。「アイ・ノウ」なんです。大好きだってことは前から知ってたわよってにっこり答えるのって、とても深い愛だなぁと私は思うのです。大好きって言った方は心から安心して、幸せな気持ちになれる気がしませんか?西の魔女は外国人なので答えが「アイ・ノウ」ですけど、私だったら「知ってるわよ♪」って感じになるのかな。息子に「ママ大好き♪」って言われたら、私も「知ってるよ♪」とにっこり笑って答えてあげたいと思いました。


児童文学者協会新人賞作品ということで中学生くらいが読者対象らしいのですが、私はぜひ大人にも読んでもらいたい作品だと思います。私は特別魔女になりたいとは思わないけれど、西の魔女が教えてくれたこと。心の中で大切にしておきたいなぁと感じました。読み終わると、とても暖かい気持ちになれます。


タイトル:西の魔女が死んだ
著者:梨木 香歩
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2005年12月02日

沼地のある森を抜けて / 梨木香歩

テーマ: 梨木香歩

先祖伝来のぬかどこを受け継いだところから始まる不思議なストーリーです。相変わらず梨木さんらしい雰囲気いっぱいの本でした。が・・・、後半は細菌の話にこだわり過ぎて、なんだか終わりが難しいものになっていたような気もします。


主人公の久美は叔母の死をきっかけに、彼女のマンションと彼女が受け継いでいたぬかどこを相続します。そのぬかどこは久美の曾祖母の時代から長女が受け継いできたもので、久美の母が死んだときにまだ幼かった久美の代わりに時子叔母が受け継いでくれていたのです。その受け継いだぬかどこは、嫌いな人が手入れをすると呻くという不思議なぬかどこでした。毎日手入れをしているうちに、ある日ぬかどこの底からあるはずのない不思議な青い卵を見つけます。その卵から生まれてきたものは・・・。


呻くぬかどこって気持ち悪いですよね。しかも、勝手に卵が湧いて出てきて、卵からはなんと人が産まれてくきちゃうんです。しかも、久美の叔母や祖母たちはみんなその事実を受け入れてきている。途中まではずっとそのぬかどこの話なんです。ぬかどこがどうしたの、こうしたのって。ところが、途中から「ん?」といった感じで不思議なストーリーが混ざり始めて、気がつくと生命の神秘を描き出している壮大なスケールのお話になっていました。


一部残念なのが、久美の周りにいる人間のイメージが薄い気がすること。他の梨木さんが書いている作品は、とても人物像がはっきりしていてイメージが描きやすかったんです。でも、今回の本では久美と一緒に後半旅にでる風野という男性もいまいちつかめませんでした。私が人物よりも設定のほうにのめりこみすぎちゃったせいなのかなぁ??でも、ちょっぴり残念です。


人はどこから生まれて、どこへ帰っていくのか。

永遠のテーマなのかもしれないですね。


何度も読み返さないと、深く・深く理解することはできないんじゃないかなと感じる本でした。


タイトル:沼地のある森を抜けて
著者:梨木 香歩
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2005年11月07日

りかさん / 梨木香歩

テーマ: 梨木香歩

からくりからくさ の関連本です。からくりからくさ に登場する蓉子が子どもの頃のお話で、ちょうどりかさんが蓉子の家に来たころの出来事が描かれています。温かな優しさを持つ蓉子がどんな子どもだったのか、そしてその成長に大きく影響を与えたおばあちゃんである麻子さんとの会話が堪能できました。


主人公の蓉子おばあちゃんから「ひな祭りのお祝いに何が欲しい?」と聞かれ、欲しかったリカちゃん人形を頼んだのです。しかし、届いたのは真っ黒な髪の毛の市松人形。確かに名前はりかですが、大きさもリカちゃんの倍はありそうな立派なものでした。最初はショックを受けていた蓉子ですが、おばあちゃんお手製の説明書きに書かれていた通りにご飯を食べさせたり一緒に寝ているうちに、りかさんから不思議なものを感じるようになっていきます。そして一週間後、りかさんに話しかけられて驚きます。りかさんとの会話をするようになってから、蓉子は様々な人形たちの声が聞こえるようになって・・・。


蓉子がリカちゃん人形が欲しいと頼んだのに、届いたものが市松人形だった辺りがおばあちゃんらしくて微笑ましい感じでした。蓉子のがっかりする気持ちもよくわかります。でも、蓉子はりかさんと話ができるようになり、様々な人形たちとの交流の中でリカちゃん人形じゃなくてりかさんが届けられたことを嬉しく思うようになります。そして、一生の友として大切に側にいることになるんです。(後々の詳しいことはからくりからくさ に出ています)


蓉子が人形たちの声を聞き、苦しんだり悩んだりしている人形たちをなんとか救ってあげようと試みます。そんなときに頼りになるのがおばあちゃんの麻子さん。麻子さんが蓉子に話してくれたこんな言葉があります。


死者の念が籠もることも確かにある。でも、人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持ちをとんとん整理してあげることにある。


いいお人形は、吸い取り紙のように感情の濁りの部分だけを吸い取って行く。これは技術のいることだ。なんでも吸い取ればいいというわけではないから。いやな経験ばかりした、修練を積んでいない人形は、持ち主の生気まで吸い取りすぎてしまうし、濁りの部分だけを持ち主に残してどうしようもない根性悪にしてしまうこともあるし。


人形には大切な役目があったんですね。人の気持ちの濁った部分を吸い取ってくれるという、とてもすごい役目。そして、いい人形に巡り合うことができれば(正確には大切にされてきた人形)、濁った部分をきれいに人形が吸い取ってくれるということですよね。確かに昔私が人形遊びをしていた頃、いろんなことを人形に話しかけた記憶があります。楽しかったこと、哀しかったことなど。それらの濁った部分を、きっと人形が吸い取ってくれていたのかもしれません。


麻子さんとりかさんは人形との係わり合いのなかで、蓉子に命あるすべてのものと共存してくことそして様々なものを慈しむ気持ちを教えていきます。それはとても素敵だけど、難しいこと。蓉子は麻子さんから教えられたとおり「澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行く」そして「どんな『差』や違いでも、なんてかわいい、ってまず思う」という方法を身につけていったのだと思います。だからこそ、蓉子の優しさのようなものがからくりからくさでたっぷり表現されているような気がします。


りかさんとからくりからくさ、どちらが先に読むべきなのか悩ましいところですが、初めて読むならからくりからくさが先の方がおもしろいかもしれません。なぜなら、文庫版のりかさんに収録されている「ミケルの庭」という作品はからくりからくさの続きになっているからです。読んでからの方が、よりいっそう理解できると思います。


その他の読んだ作品はこちら。

*からくりからくさ

*家守綺譚

*村田エフェンディ滞土録


タイトル:りかさん
著者:梨木 香歩

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2005年10月22日

からくりからくさ / 梨木香歩

テーマ: 梨木香歩

私が読んだ梨木作品3作目です。またもや梨木ワールド全開で、古きよき時代を彷彿とさせてくれます。 彼女の作品のよさは、古き良きものへの思いが伝わってくるところだと感じています。


主人公の蓉子は植物を使った染色を勉強をしています。祖母が残した古い日本家屋を学生のための女子寮にしようと両親が決めたときにふと思い立って自分が管理人として住むことを提案し、人づてに下宿人を探す。1人は前からの知り合いで古い日本に興味を持っているマーガレット。そして、美大で機織を専攻している紀久とテキスタイルの図案を研究している与希子が紹介された。糸を染め、機を織り、節約のために庭に生えている植物を食べて暮らす不思議な共同生活。蓉子の大切な人形、りかさんによって蓉子・紀久・与希子の3人をつなげる不思議な縁。次第に4人は家族のような絆を作り上げていきます。


蓉子には大切な人形、りかさんがいます。りかさんは蓉子が9つのときに祖母からもらった市松人形です。祖母が作った「取扱説明書」には「付属しているりかさん専用の食器を使い、蓉子が自分の朝晩の食事から一口づつよそってあげること」いう項目があり、蓉子はずっとそれを忠実に守っていています。毎日繰り返すうちに、蓉子だけにはりかさんが話す声が聞こえるようになってきます。今回のお話はこのりかさんが4人の縁をつなぎます。ひょっとすると4人はりかさんによってこの古い家に呼び集められたのではないかと感じるくらい、とても深い深い縁です。人形がしゃべるだなんてとても不思議に感じるのですが、この本の生活でだったらおかしくはないと感じてしまう雰囲気があります。古い日本家屋、広い庭に生える草木、まるでここだけ不思議な結界に守られたようなクラシカルな暮らし、機織の音を聞きながらゆったりと流れる時間。憧れてしまいます。


作中にこんな言葉があります。


伝えること 伝えること 伝えること

大きな失敗小さな成功 挑戦や企て

生きて成功していればそれだけで何かが伝わっていく

  省略

私はいつか、人は何かを探すために生きるんだといいましたね。でも、本当はそうじゃなかった。

人はきっと、日常を生き抜くために生まれるのです。

そして、そのことを伝えるために。

人は探すために生きているんじゃない、生き抜くために生まれるんだ。この言葉にドキッとしました。ただ生きているだけで、伝えることになっているという考え方は素敵だなぁと。無理して何かを探さなくても、生きて伝えるだけで意味がある。私が生きていることも、きっと自然と何かを伝えていることになるんでしょうね。


その他の読んだ作品はこちら。

*村田エフェンディ滞土録

*家守綺譚

*りかさん


タイトル:からくりからくさ
著者:梨木 香歩

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