2007年03月05日

ぬるい眠り / 江國香織

テーマ: 江國香織

文庫の新刊です。ここのところ東京タワーなど夫婦を書いたものが多かったのですが、どうも私にはしっくりこなくて・・・。でも、久々に「あぁ、昔の江國さん風だぁ」といった作品です。なので以前の江國さんの作品が好きな人にはかなりオススメ。ところが、なんでいきなり昔風なんだろーと思っていたら、実はこの短編の多くは江國さんが20代前半の頃に書いたものの寄せ集めなんだそうです。どうりで!と納得。


この本には9つの短編が入っているのですが、「ケイトウの赤、やなぎの緑」は「きらきらひかる 」という作品の主人公たちが10年後という設定で登場します。睦月、笑子、紺くんの3人が主人公ではないのですが少しだけ登場するのがとても懐かしい気持ちになりました。 あとがきで江國さんが自分の小説の登場人物が、「その後もどこかで何とかやっている」と考えることが好きと書いています。ケイトウの赤、やなぎの緑はそんな江國さんの「何とかやっている」がちらりと見えた作品でした。

ラブ・ミー・テンダー

 エルヴィス・プレスリーに恋をした母。
 毎晩電話をくれるエルの愛に応えるため離婚するといいだして・・・。

ぬるい眠り

 別れた彼のことが忘れられずに眠れなくなった雛子

放物線

 大学時代の奇妙な友情

災難の顛末

 起きたら右足が1.5倍に膨れ上がっていた!

とろとろ

 信二といると幸せ。

 とろとろの恋、とろとろの日々、とろとろの人生。

夜と妻と洗剤

 妻が「別れたい」と言った。夫はそのとき・・・。

清水夫妻

 人の葬式に出るのが好きな奇妙な夫婦と出会ってしまい、

 葬式の楽しみ方を知ってしまった。

ケイトウの赤、やなぎの緑

 博愛主義の不良中年・郎に恋してしまい、離婚してしまったちなみ。

 郎と出会った場所は睦月と笑子夫妻の家。

 風変わりな夫婦の下に集まる風変わりな人たち。

奇妙な場所

 中年の3人の女性が、1年に一度同じ場所で行う奇妙な行動とは。

とても奇妙な人たちや行動。江國さんらしい不思議ワールドな作品です。
久々に江國さんのゆったりとした奇妙な世界を味わうことができて、堪能しました♪

タイトル:ぬるい眠り
著者:江國 香織
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2006年11月02日

スイート リトル ライズ / 江國香織

テーマ: 江國香織

スイート リトル ライズ

甘い 小さな 嘘


タイトルを訳してしまうとこんな感じでしょうね。そして、この本は確かに甘くて小さくて、そしてとても大切な嘘のお話でした。


主人公の瑠璃子は自宅でテディーベーアを作る仕事をしている。夫の聡は毎日会社へ出かけ、夜になるとうちへ戻ってきてたいてい自宅でご飯を食べる。そして、聡は食べ終わると1人で部屋に鍵をかけて閉じこもり、パソコンでゲームをするのが日課。2人は多少の不満はあっても、お互いに必要な存在だと感じている。でも、瑠璃子は「この家には恋が足りない」「夫といると、時々とても寂しくなる」とも感じている。そんな2人がそれぞれに抱えていく小さな嘘。それは、とても甘くて小さな嘘。2人が一緒にいるために必要なもの・・・。


と、漠然とした説明になってしまいましたが、結論から言ってしまいますとこの夫婦はお互いに不倫しているのです。なので「そんなの許せないわ!」という真面目な方にはおすすめしません。でもね、相変わらず江國さんらしいなぁというふんわりとした作品に仕上がっています。以前読んだ赤い長靴 に近い夫婦だと思います。2人でいるのに表面上はお互いに寄り添っていない。でも、実はひっそりと寄り添っている感じがします。


この本の中にとても心にぐっときたフレーズがありました。瑠璃子が不倫相手に言った言葉なのですが、


私はあなたに絶対に嘘はつけない。知ってるでしょう?

あなたも私に嘘をついてくれないもの。

   (途中略)

なぜ嘘をつけないか知ってる?人は守りたいものに嘘をつくの。

あるいは守ろうとするものに。


これってものすごい真理だと思います。大切に思っているからこそ嘘をつく。関係を壊したくないから。そのためには絶対に必要な物なんです。瑠璃子にとって不倫相手の彼は守りたいものではないんです。守りたいのはやっぱり夫である聡。そして、聡も同じ。お互いに小さな甘い嘘を抱えながら、夫婦関係を続けていくんです。


ちなみに、この瑠璃子が言っていることって私が結婚したときに夫に言ったことと同じだと思うんです。


どうしてもしたくなったら浮気してもいいけど、絶対に隠し通してね。

ばれたらどうなるかわかってるよね?私はきっと許せないと思う。

だから、絶対に上手に嘘をついてね。


大切だと思うからこそ重ねていく嘘ってあると思います。

って、結婚してすぐにこんなこと言ってる妻って変ですか!?(笑)


タイトル:スイートリトルライズ
著者:江國 香織
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2006年02月07日

いくつもの週末 / 江國香織

テーマ: 江國香織

サラリーマンと結婚した江國さんが結婚2~3年目になる頃のことについて書いたエッセイ集です。1997年に書いたものなので少し古いですが、とてもリアルに結婚生活が書かれていています。時折、私と同じことを思ったりする江國さんの言葉にウフフと笑ってしまいます。どうも彼女の結婚生活は私のそれとはかけ離れているみたいなんですけどね。心の中というか、そういう部分では共感できるものがいっぱい詰まっていました。


「よその女」では江國さんがリビングで寝てしまったダンナさんを「ベットで寝たら」と起こしてうるさがられるシーンがあるんですけどね。このシーンがね、好きなんです。

江國さんがもしダンナさんにとってよその女だったとしたら・・・うたた寝している彼に毛布をかけてあげれば感謝されるだろう。でも実際は違う。よその女ではない彼女がもしも起こさなかったとしたら、翌朝に必ず「なぜ起こしてくれなかったんだ」と文句を言われるだろうというのです。それはよその女ではないから。


この江國さんの発想ってとてもよくわかるんです。私も同じだから。仕事から帰ってきたダンナがテレビを見ながらうたた寝している時、そのまましばらく寝かせておいても起きない場合はやっぱり江國さん同様「うるさがられながら」も起こしてあげるのです。理由は簡単。起こさなければ、結局文句を言われるから。こんなとき、もしも私がよその女だったらうるさがられることも、文句を言われることもないのにね。


こういう些細な日常が描かれている江國さんの結婚生活は、なかなかおもしろいです。彼女のエッセイの行間に流れる幸せな結婚生活の雰囲気が、ほのぼのとした気持ちにさせてくれますよ。

タイトル:いくつもの週末
著者:江國 香織

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2005年03月05日

赤い長靴 / 江國香織

テーマ: 江國香織
日和子と逍三の夫婦の話です。結婚して10年ですが、まだ子供はいません。逍三がうちへ帰ってくると、急に家の中がさわがしくなります。今までの空気をがらりと変えてしまうくらい。日和子は昼間の出来事など、いろいろ話しかけるのですが逍三はまったく聞いていません。必要最低限の会話は成立しているのかもしれないけど、日和子の言いたいことは伝わっていないみたいなんです。自分の言葉が伝わらないたび、日和子は思わずクスクス笑ってしまう。悲しみを閉じ込め、諦めを込めて。

週末の昼間、友達に会いに行くことすら逍三には不機嫌の対象になるんです。3週間も前に言ってあっても、当日の朝になると機嫌が悪い。「昼ごはんはどうすればいいんだ?」って。

一緒に行った散歩先のバザーで、欲しくもないものをどんどん買い与えられ「もういいだろ」って感じで満足げの逍三。日和子は何度も「欲しくない」と伝えたのに。

そんなの、我が家だったらありえない。「お昼?適当に自分で食べてよ」って言っちゃう。お互いが欲しくもないものを、ダンナサマが買っているのを見かけたら「なんでそんなもの買うの?」って止めちゃう。でも、日和子にはできないんです。「ほんとうのこと」は言ってはいけないから。「ほんとうのこと」に取り憑かれてしまったら、最後にたどり着く先は1つしかないから。

ほんとうのことを言えない2人って幸せなんだろうか。確かに本当のことを言ってはいけないものもあるし、どこかで諦めなければいけない(妥協とも言うのかなぁ?)箇所もあると思う。だけど、日和子と逍三は100%のうち90%くらいすれ違っているように見えるんです。もしかしたらこの夫婦って逍三は幸せかもしれないけど、日和子にとっては幸せとは言えないのかも。でも、なんで夫婦を続けているのか。きっと、どこかに好きなところがあるからなんだろうなぁ。私には理解できない部分で。

今回の作品は共感できる部分もあり、理解できない部分もあり。前回読んだ「東京タワー 」に近い感想。私的にはイマイチな作品でした。ただ、相変わらず日常の一部をきれいに切り取り、描写するのがとても上手だなぁと感じました。言葉の選び方がきれい。内容としてはとてもきれいとは言えないのに、なぜか透明感のある感じがします。


著者: 江國 香織
タイトル: 赤い長靴
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2005年02月15日

東京タワー / 江國香織

テーマ: 江國香織
2005年1月から黒木瞳さん、岡田准一さんの2人が主役として映画化された作品です。映画のタイトルも「東京タワー 」で原作と同じです。

年上の女性に恋焦がれる大学生のストーリーです。
詩史と透、耕二と喜美子。どちらも女性が年上かつ不倫の恋。ただ、1つ違うのは、詩史と透は精神的なつながりを大切にしたもの、耕二と喜美子は肉体的なつながりを大切にしたものというところです。どちらが良いとかそういう問題ではなく、気がついたら落ちてしまっていた方法の違う恋愛なのです。ところが愛する比重が変わってしまうと、やっぱりうまくはいかず・・・。好きなのにダメになってしまうんですよね。恋愛って、どちらか一方が重たくなってしまうと、受け入れるほうの限界を超えたとき壊れてしまう。

江國さん独特の文体で、詩史と透の恋愛はサラサラと流れていくような大人の雰囲気の素敵なものになっています。ただ、透の恋愛は私としてはちょっと受け入れにくいような・・・。だって、詩史が好きなものを愛し、自分のものとして受け入れる。そして、それだけに浸り、いつかかってくるかわからぬ電話を家で待つ19歳の男の子ってどう思います?私が詩史のような大人の女性になりきれていないせいでしょうか。そんな100%受け入れモードの男の子がかわいいとか、いとおしいって思えないんです。詩史の大人の女性らしいずるさというのも気になるところ。だから、どちらかというと耕二と喜美子の方が理解可能。ただ、こちらの恋も喜美子には夫、耕二には彼女とお互いにパートナーがいるあたりが微妙。

江國さんの作品ってとても好きなものが多いのですが、今回はいつものように「あぁ、好きだなぁ」という感じではありませんでした。江國さん自身が結婚し、生活が変わったことで作風も変わったのではないかと思います。(過去の作品は相変わらず読み返しても好きだと思えるので・・・)
私がどちらかの年齢にもっと近ければ共感できる部分もあったのかもしれないのですが、きっと中途半端だったんでしょうね。結婚して4年目なので、結婚というものに対して希望もありますし。(^_^;)

「私、自分の人生が気に入ってるの。そんなに幸福っていうわけじゃないけれど、でも、幸福かどうかはそれほど重要なことではないわ」

「一緒に暮らしてはいなくても、こうやって一緒に生きてる」


こんなセリフが出てきてしまう結婚って、不幸せですよね・・・。
そんな風に思ってしまうのは、私だけ??

著者: 江國 香織
タイトル: 東京タワー
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