2007年05月01日

死神の精度 / 伊坂幸太郎

テーマ: 伊坂幸太郎
この本の主人公は死神。死神である千葉が、自分の担当する「死ぬ予定の人」を観察する様子を描いています。設定がなんだか奇抜ですが、これがまたおもしろい。死神っていうとなんとなく私のイメージでは暗くて恐ろしいという感じの印象なのですが、この本に出てくる死神たちはちょっと違う。どちらかというと人間的で感情もあるし、好みもある。もちろん死神なので食欲や睡眠欲といった人間にある普通の欲求はないのですが、彼らにも不満の感情があったりするんです。なので、読んでいるとちっとも恐くなくて、たんなる「死神」という職業の人という印象です。

死神に目を付けられてしまった6人のストーリー。死神である千葉は情報部から依頼された人間を調査して、1週間後に死を迎える人間として「可」「見送り」の判断をする仕事をしている。趣味は音楽を聴くこと。死神である千葉が出会った6人の人間は、8日後に死ぬのか、死なないのか・・・。いったい死神は何を思って仕事をしているのか・・・。

死神の仕事がターゲットである人間に接触して会話し、この人間が死ぬべき人かどうか決めるというシステムだからおもしろい。伊坂さんの頭って本当に不思議な発想でいっぱいですよね。いつも彼の作品を読むたびに驚かされます。この死神の仕事は基本的にほとんどの人間は「可」になって8日目には死ぬことになるのだけど、それを見送ることもできるんです。それを決めるのは担当している調査部の死神しだい。何を基準にするかも、担当の死神しだい。死神にも感情があるわけです。クールなのに、意外と情にもろい部分なんかもあったりして死を書いているわりには読み心地が爽やかな感じです。


しかも、死神である千葉は人間の風習や言葉遣いが微妙に理解できてない部分があり、不思議そうに聞き返したりするシーンは思わずくすりと笑いたくなる感じなんです。本人は真剣なだけに、よけいに面白みが増すというのでしょうか。相手は死神ってわかっていてもなんだかこの千葉さんがかわいらしい男性に思えて、読み終わる頃にはすっかり好きになってしまいました。6つの短編なのに、微妙にリンクしている辺りも伊坂さんらしくておもしろかったです。


死神・千葉さんのシリーズをもっともっと読んでみたいなと思わせる作品でした。続編でないかなぁ。


タイトル:死神の精度

著者:伊坂 幸太郎

>>Amazon  >>bk1  >>楽天  >>7&Y icon

AD
いいね!した人  |  コメント(10)  |  リブログ(0)
2007年04月23日

フィッシュストーリー / 伊坂幸太郎

テーマ: 伊坂幸太郎
伊坂さんの13作目にあたる作品です。タイトルのフィッシュ・ストーリーはホラ話大げさな話作り話という意味を持つ単語。まさにこの本にぴったりのタイトルだった気がします。短編が4つで、それぞれは別のストーリーになっています。ですから、長編のような伊坂ワールドを堪能できるほどのパワーは感じませんでした。でも、これはこれ。相変わらず伊坂さんらしい、不思議で優しい雰囲気が溢れている作品でした。
過去の伊坂さんの作品に登場した脇役たちが登場するという点でも話題になっていますが、私は「んー、この人ってどっかで出てきたかなぁ・・・」というレベルで、唯一わかったのは黒澤さんのみというお粗末な記憶力でしたが、本書そのものは問題なく楽しめましたよ。でも、覚えているともっと楽しめたのかな?という気もしました。

「動物園のエンジン」

伊坂さんのデビュー第1短編。地下鉄にゆられながら、昔の不思議な記憶を思い出す。真夜中の動物園でうつ伏せに眠る永沢さん。彼が動物園にいるというだけで、なぜか動物園全体にエンジンがかかったみたいに嬉しそうに震える。
「サクリファイス」

頼まれた人を探して、山奥にある小暮村へ向かった黒澤。そこで古くから伝わる「こもり様」という風習にまつわる騒動に巻き込まれてしまう。
「フィッシュストーリー」

表題作。売れないロックバンドが「僕の孤独が魚だとしたら」という一節で始まる小説を歌詞にした曲を作り、謎の無音な間奏が入ったレコードを発売する。このレコードがめぐりめぐって、時代を超えてたくさんの人の命を助けることになる。
「ポテチ」

主人公は間抜けだが優しい空き巣の今村。そして、脇役はサクリファイスでも登場した黒澤。空き巣に入った家で留守電に吹き込まれた「自殺する」というメッセージ聞いてしまい、まったく他人なのに助けに行ってしまう今村。同じ日に生まれた野球選手の尾崎が気になっていて・・・。

表題作でもあるフィッシュストーリーは二十数年前、現在、三十数年前、十年後と時代が4つ登場します。キーワードは正義。この正義がいいんです。大きくてあからさまな正義じゃなくて、どちらかというと小さくて謙虚な正義。父から「正義の味方になれ」と育てられた青年がいるんです。正義の味方というと、ついつい警察官や消防士のような職業を思い浮かべてしまうのですが、彼のお父さんは違う。「大事なのは職業や肩書きではなくて、準備だ」というんです。心と体の準備ができていれば、そういう肩書きや職業がなくてもいつでも正義の味方になれる。すごい発想ですよね。私も息子たちに「正義の味方になれ」と育てようかな。


そして、小説の一節として出てくる「僕の孤独が魚だとしたら、そのあまりの巨大さと獰猛さに、鯨でさえ逃げ出すに違いない」というフレーズが、「孤独」の部分と共に形を変えて何度も登場するんです。そのひとつひとつが心に残る感じで、伊坂さんの言葉遊びはいい!と感じさせてくれます。相変わらず伊坂さん、うまいです。


タイトル:フィッシュストーリー
著者:伊坂 幸太郎
>>Amazon  >>bk1  >>楽天  >>7&Y

AD
いいね!した人  |  コメント(6)  |  リブログ(0)
2006年10月25日

アヒルと鴨のコインロッカー / 伊坂幸太郎

テーマ: 伊坂幸太郎

アヒルと鴨は何が違うのか・・・。アヒルは鴨を改良したものなんですよね。しかも外国生まれ。だから2つは似ているけど異なる。 この本はそんな似ているけど異なる人間のお話。現在と2年前が交互に語られてストーリーが続いていきます。


【現在】

大学進学に伴い1人暮らしを始めた僕(椎名)は、引越しの当日に隣人・河崎に出会った。初対面にも関わらず「一緒に本屋を襲わないか」と河崎に誘われる。しかもたった1冊の広辞苑を奪うためだというのだ。何がなんだかわからないうちに襲撃の手伝いをすることになってしまったのだが・・・。


【2年前】

琴美はペットショップ勤務の女の子。ドルジというブータンから留学してきている男性と一緒に暮らしている。最近ちまたで動物を虐殺する事件が起きているが、偶然そのペット殺しの犯人たちの会話を聞いてしまい危ない目にあう。逃げる途中でパスケースを落としてしまったところから住所と名前を知られてしまい、危険なことに。昔の恋人である河崎も絡んできて、ペット殺しの事件は解決するのか・・・。


本の説明はとてもはしょってしまいましたが、この河崎という人物がどちらの時代にも登場していて重要なキーになっています。河崎さんね、変な人なんですよ。かなーり。例えば文中に出てくる変なやつ例としてはですね。


街を歩いていた椎名が河崎を見かけるんです。彼はなぜか歩道と車道にある自転車置き場からはみ出している自転車を片っ端から蹴飛ばしながら歩いているんです。それだけでも「え!?」って驚いちゃうんですけどね、よく見ると河崎の背後にサングラスをして白い杖をついた男性が歩いているんです。おそらく目が見えない方なんでしょうね。点字タイルの上にはみ出している自転車を蹴飛ばして歩いていたってことが発覚したのはいいんですけど、別に蹴飛ばすことないじゃないですか。手でどけてあげればいい話で。でも、河崎はあくまでも蹴飛ばして歩いているだけで助けてあげている雰囲気ではないわけです。こういう人間ってどっかにいたなぁと思ったんですけど、チルドレン の陣内に近いタイプだなぁと。違いますかねぇ。どうも私には河崎という人間が陣内と同じような系統の人に思えました。ね、そういう意味ではやっぱり変なやつなのです。


ちなみに、タイトルのアヒルと鴨の話は本の半ばまでには登場するのでなんとなくわかるのですが、コインロッカーがなぜ関わってくるのかさっぱりわからないまま最後を迎えました。最後になってようやくコインロッカーの意味がわかるんです。ネタバレになってしまうのであまり詳しくかけませんが、おそらくあちこちに伏線が張られていたのでしょう。でも、私はちっとも気がつかずに最後まで読み終えてしまいました。最後までいって、ようやくすべての伏線がどーっとつながって気持ちが良いくらい。あぁ、あれにはこんなつながりがあったのかぁと感動してしまいました。相変わらず伊坂さんの伏線張りはすばらしいです!あまりにおもしろくて一気読みの本でした。


タイトル:アヒルと鴨のコインロッカー
著者:伊坂 幸太郎
>>Amazon  >>bk1  >>楽天  >>楽天ダウンロード

AD
いいね!した人  |  コメント(1)  |  リブログ(0)
2006年09月19日

陽気なギャングの日常と襲撃 / 伊坂幸太郎

テーマ: 伊坂幸太郎

陽気なギャングが地球を回すの 続編です。前作では成瀬、響野、久遠、雪子の4人のギャングが銀行を襲ったにも関わらず、現金輸送車強盗と車の接触事故を起こして盗んだ金を奪われてしまった話でした。今回はこの4人組の日常がちょっぴり描かれていていますが、なぜかそんな日常が連鎖して誘拐事件に巻き込まれてしまう話しへとつながっていきます。この4人ってば銀行強盗だから悪人なはずなのに、今回はヒーローになっています。なんせ誘拐事件を解決するんですから。相変わらず強盗はしているので、やっぱり悪者なんですけどね。(^_^;)


伊坂さんのセンスが好きだなぁと感じる部分はタイトルの付け方にもあります。

各章のタイトルがちょっといいんですよ。


第1章(1章だけは4編入ってます)

 巨人に昇れば、巨人より遠くが見える

 ガラスの家に住む者には、石を投げてはいけない

 卵を割らなければ、オムレツを作ることはできない

 毛を刈った羊には、神も風をやわらげる


第2章

 一度噛まれると、二度目は用心する


第3章

 愚か者は、天使が恐れるところに突進する


第4章

 最大の富はわずかな富に満足することである


どれも確かに内容とぴったりなんですよ。ちなみに作中でも使われていて「ことわざ」って言ってるんですけど・・・。こんな奇妙なことわざって本当に存在するんですかねぇ。


2作目は単独で楽しむよりも、1作目を読んでからの方がおもしろいです。なぜなら1作目の話がチラホラと作品中に出てくるから。私はこのシリーズの続編がでたら、また読みたいなと感じています。



タイトル:陽気なギャングの日常と襲撃
著者:伊坂 幸太郎
>>Amazon  >>bk1  >>楽天

いいね!した人  |  コメント(10)  |  リブログ(0)
2006年09月13日

陽気なギャングが地球を回す / 伊坂幸太郎

テーマ: 伊坂幸太郎

2006年春に映画化 された伊坂幸太郎さんの作品です。

 

他人の嘘が見抜ける人間嘘発見器・成瀬、演説の名人・響野、天才スリ・久遠、正確な体内時計を持つ女・雪子のギャング4人組。この4人は普段それぞれの仕事を持っているけど、実は銀行強盗。彼らは銀行強盗するのにもポリシーを持っていて「最小限の変装で近づき、警報装置を使わせず、金を出させて、逃げる」というシンプルな方法をとっている。成功率は100%。ところが横浜のとある銀行を襲ったとき、4000万を持って逃げる途中で他人の車と接触事故をおこしてしまうのです。しかも相手は現金輸送車を襲撃した強盗たち。せっかく盗んできた4000万を奪われてしまった成瀬たちが起こした行動は!


ということで、この4人のキャラクターがいいんです。嘘発見器にしても体内時計にしてもこんな人間いないだろうって思うんですけど、読んでいるとちっとも不思議な感じがしないんですよ。さすが伊坂さん!ストーリーもとても軽くてほとんどが4人の会話で成り立っているので、まるでコメディー映画を見ている感じです。読みながらついつい笑ってしまうような軽さがあります。


強盗をする前の彼らの決まり文句は「ロマンはどこだ」なんですけど、彼らは銀行強盗をするにもとても強い信念というか美学を持っているんですよ。やるからにはかっこよくスマートに。


きっかり時間を計って行動し、誰も傷つけない。

現金輸送車を襲うなんてもってのほかと考えている。


まさに正統派のギャングといった感じです。悪いことをしているはずなのにかっこいいって思えてしまうんです。成瀬と久遠がお金を金庫から出している間に、響野は銀行にいた一般の人や行員の目を逸らすためにきっかり4分の演説を毎回しています。これがまたおもしろい。ちょっとしたウンチクみたいな感じなんです。


映画化は成瀬が大沢たかお、響野が佐藤浩一、久遠が松田翔太、雪子が鈴木京香というキャスティング。なんだか私がイメージしていた雰囲気とぴったりです。既に公開は終わっていて2006年10月にはDVDが発売されるそう。ちょっと見てみたくなりました。

ジェネオン エンタテインメント
陽気なギャングが地球を回す プレミアム・エディション
  
タイトル:陽気なギャングが地球を回す
著者:伊坂 幸太郎
>>Amazon  >>bk1  >>楽天

いいね!した人  |  コメント(12)  |  リブログ(0)

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。