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時間を活用しているか、それとも浪費しているか:『生の短さについて』セネカ著 学術書評vol.15

2011-01-08 13:12:00 テーマ:哲学
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『生の短さについて』 セネカ、大西英文訳、岩波書店、2010年。

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生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)
こんにちは、柏野尊徳です。

「忙しくて、いつも時間がない!」
今日の本はそんな人におすすめの一冊です。

時間の使い方は二種類あります。
浪費するか、それとも活用するか。

「時間がないのはムダに使っているからだ」

そう語るのは今から2000年ほどまえにローマで生まれた哲学者セネカ。
彼が残した著書『生の短さについて』は、いわゆる古典にあたります。

すらすらと読めたらいいのですが、そうもいきません。
日常会話ではまず出ない表現や漢字もあって読みにくい箇所があります。

でも、彼の言葉に触れると自分の生き方がぼんやりながら見えてきます。
「忙しさを理由にして、なんとなく毎日を過ごしているかも」
「実は周囲に流されて生きているだけかもしれない」
そんな具合です。

本の切り口は時間ですが、メインは生き方・人生の本。

また、同時収録の『幸福な生について』にも示唆に富む言葉がちりばめられています。
サッと読む本ではなく、ちょっと時間のある時にゆっくり読みたい本です。

「効率だけを求めるのは何か違うなー」と考えている人にもおすすめですね。


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◆『生の短さについて』
「われわれの享(う)ける生が短いのではなく、われわれ自身が生を短くするのであり、われわれは生に欠乏しているのではなく、生を蕩尽(とうじん)する、それが真相なのだ」(p.12)

「記憶をたどり、思い出してみられるとよい、
いつあなたがしっかりした計画をもったことがあったか、
一日があなたの意図したとおりに進捗(しんちょく)した日が何日あったか、

いつあなたがあなた自身を自由に使うことができたか、
いつあなたの顔つきがふだんどおりの落ち着きを保っていたか、

いつあなたの心に怯えがなかったか、
これほど長い生涯にあなたがなした働きとは何であったか、

あなたが何を失っているか気づかない間に、
どれほど多くの人間があなたの生を奪い取っていったか、

あなたの生のどれほど多くの時間を詮(せん)ない悲しみや愚かな喜び、
貪欲な欲望や人との媚びへつらいの交わりが奪い去ったか、

あなたがその生の中からどれほどわずかな時間しか自分のために残しておかなかったか」(p.17)

◆『幸福な生について』
「幸福な生を送りたいというのは人間誰しもが抱く願望だが、幸福な生をもたらしてくれるものが何かを見極めることとなると、皆、暗中模索というのが実情だ」(p.133)

「われわれは、まず自分の求めるものが何かを措定しなければならない。次には、周囲をよく見渡し、どの道をたどれば目的に最も早く到達できるかを見て取らねばならない」(p.133)

「多数の者が同意して受け入れたものこそ最善のものと考えて、事をなすに世評に頼ること(中略)、理性を判断基準にするのではなく、人と同じであることを旨として生きることほど、大きな害悪の渦中にわれわれを巻き込むものはないのである」(p.134)

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『生の短さについて』セネカ、大西英文訳、岩波書店、2010年。

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◆目次◆
生の短さについて
心の平静について
幸福な生について

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

「みんなでやれば怖くない」は間違いか?:『影響力の武器』チャルディーニ著 学術書評vol.14

2011-01-05 18:07:50 テーマ:社会心理学
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『影響力の武器』 ロバート・B・チャルディーニ、社会行動研究会訳、誠信書房、2007年。

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影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか
こんにちは、柏野尊徳です。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」
集団行動の話が出る時に、よく紹介される表現ですね。

「みんながやっているから」という理由付けはかなり強力です。

でも、よく考えてみると不思議なことに気が付きます。
「みんながやっている」だけを理由に行動して大丈夫なのでしょうか?
その行動は、本当に自分が望んでいたものなのでしょうか。

今回紹介する本は、このような人間行動の不思議を科学的に解説した名著です。
その名も『影響力の武器』。

影響力の武器とは、人を動かす力のことです。

多くの人が、自分の行動は自分が決めていると考えているはずです。
でも、知らないところで原理やルールが働いていて「動かされている」場合があるのです。

著者はアメリカの大学で研究をしている心理学者ですが、いつも悪徳セールスマンに騙されていたのだとか。
「あいつらはどうやって俺を騙しているのだろうか?」と不思議に思い、研究した結果をまとめたのがこの本です。

本の中では、人を動かす影響力の武器として6つの要素が紹介されています。
「気がつくとまわりに流されている」
「今よりもっと自律的に生きていたい」
「人の行動原理を知りたい」
そんな人におすすめの一冊です。

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◆固定的行動パターン
『人間行動の原理としてよく知られているものの一つに、人に何か頼みごとをするときには理由を添えた方が成功しやすくなる、というのがあります。人は単純に、自分がすることに対して理由を欲しがるものなのです』(p.8)

『人間の行動の多くは自動的、紋切り型のものです。なぜなら、たいていの場合、それが最も効率的な行動の形態であり、また、場合によってはそうすることが必要でさえあるからです』(p.12)

◆コントラストの原理
『カクテルパーティーで最初に魅力的な人と話をして、次に魅力的でない人に会うと、その人は実際以上にみすぼらしく見えてしまうものです』(p.24)

◆社会的証明の原理
『(社会的証明の原理は、)私たちは他人が何を正しいと考えているかにもとづいて物事が正しいかどうかを判断する、というものです』(p.189)

『他者がどうしているかによって自分の行動が適切なものかどうかを判断する傾向は、通常の場合はうまく機能します。(中略)

これは行動の仕方を決める簡便な方略ではありますが、同時に、この方法を悪用して利益を得ようとする人の餌食になってしまうのです』(p.190)

『バーテンダーは、よく、夜会が始まる前に何枚かのドル紙幣を見せ金としてチップに入れに混ぜておきます。それが、前に来た客が残したチップであると装い、お金をたたんでチップを払うのがバーにふさわしい行動であるという印象を作ろうとしているのです』(p.191)

『ナイトクラブの経営者のなかには、中に入れる余地がまだかなりあるのに、入場制限をして店の外に長い行列をつくらせる人がいます。目に見える社会的証明によって、自分たちの店の質の高さを示すブランドをでっちあげるのです』(p.192)

◆身を守るために・・・
『私たちは利用可能な関連情報をすべて利用するわけではなく、全体を代表するほんの一部の情報だけを使います。

こうした情報は、普通は正しい反応をするように私たちを導いてくれるのですが、賢い人に利用されると、自分が愚かな人間に見えてしまうような、明らかに馬鹿げた間違いをさせられてしまうのです』(p.434)

『私たちの手っ取り早い反応の信頼性を脅かすようなやり方で利益を得ようとするあらゆる試み、これこそが本当の裏切り行為であり、最も私たちが耐え難いものなのです』(p.443)

『戦うことなしに、ただ指をくわえて見ているわけにはいきません。失うものはあまりにも大きいのです』(p.444)


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『影響力の武器』 ロバート・B・チャルディーニ、社会行動研究会訳、誠信書房、2007年。

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◆著者◆
ロバート・B・チャルディーニ(Robert B. Cialdini)

米国を代表する社会心理学者の一人。現在、アリゾナ州立大学教授。社会的影響過程、援助行動、社会的規範などに関する数多くの業績で学界をリードしている。人の態度や行動を変化させる心理的な力について平易な語り口で解説する本書は、科学的知識に基づいて書かれた良書として専門家の間でも高い評価を受けており、米国でロングセラーとなっている。

◆目次◆
第1章 影響力の武器
第2章 返報性―昔からある「ギブ・アンド・テーク」だが
第3章 コミットメントと一貫性―心に住む小鬼
第4章 社会的証明―真実は私たちに
第5章 好意―優しい泥棒
第6章 権威―導かれる服従
第7章 希少性―わずかなものについての法則
第8章 手っとり早い影響力―自動化された時代の原始的な承諾

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

【本日11月19日(金)18時から書評番組に生出演】無料Web配信:号外

2010-11-19 00:20:24 テーマ:お知らせ
こんにちは、柏野尊徳です。
今日は号外でちょっとしたお知らせがあります。

このたび、インターネット上で無料視聴できる
「学びのとびら」チャンネル
を開設することになりました。

この「学びのとびら」チャンネルでは、
勉強熱心な現役大学生と一緒になって
次のような内容を対談形式で無料放送します。

・教養を身につける上で有益と思われる学術書の紹介
・学術書を読んで感じたことや考えたこと

「学術書紹介」と言っても、
知識がないと楽しめないような本格的な番組とは若干違います。

知識を得るための番組ではなく、
みなさんが既にお持ちの「学びへの欲求」がより高まる。
そんな番組になればと考えています。

ですので、
「高度な話を聞きたい」
「深い知識を身につけたい」という人にとっては
正直つまらない番組かもしれません。

どちらかと言うと、
「こんな本があるんだ。意外と面白そう。今度私も読んでみようかな」
「大学生はそう考えるのか。私だったらこう思うけどな」
といった形で、本を読んだり物事を考えたりする最初の一歩になればと思います。

学びのイントロダクションですね。


■11月19日(金)18:00より放映開始!
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初回の番組では、柏野が進行役を務めながら
2~3名の慶應義塾大学生と一緒になって以下の4冊を簡単に紹介します。

1 進化生物学:『利己的な遺伝子』 リチャード・ドーキンス
2 政治哲学:『社会契約論』 ジャン=ジャック・ルソー
3 芸術学:『芸術の意味』 ハーバート・リード
4 社会心理学:『影響力の武器』 ロバート・チャルディーニ

※過去の書評はこちら
利己的な遺伝子 』 『社会契約論 』 『芸術の意味

そして学術書紹介と同時に、
「イチローはなぜ凄いのか?」
といった話題について意見を交わしながら、
例えば「努力と才能の関係」「生まれか育ちか」なんて話もしたいと思います。


■放映詳細&URL

チャンネル名:「学びのとびら」
放送日:2010年11月19日(金)18:00~19:00

生放送のため時間が前後するかもしれませんが、
約60分の放送を予定しています。

▼チャンネルURLはこちら
http://www.ustream.tv/channel/manabinotobira

▼Twitterのハッシュタグ
「学びのとびら」チャンネルのハッシュタグは
「#manabinotobira」です。
Twitterをご利用の方は、ぜひ気軽につぶやいてください。
http://twitter.com/

なお、この番組は生放送ですが、
放送終了後に上記チャンネルURLにアクセスすれば
いつでも無料で全番組をご覧いただけます。



「メルマガ読者の方に有益な時間を提供したい」
そう考えた上での番組放送ですが、
今回の取り組みはあくまで実験的なものです。
生放送ということもあり、かなり気楽な内容になる予定です。

肩肘張って真剣に見るよりも、
お菓子でも食べながらリラックスして視聴して頂ければ幸いです。

そういう環境の中で生まれる知的好奇心にこそ、
「学びのとびら」があると僕は考えています。

「学びのとびら」チャンネル、
一人でも多くの読者にご視聴頂ければと思い、
号外でお届けしました。

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◆放送詳細
チャンネル名:「学びのとびら」
放送日:2010年11月19日(金)18:00~19:00

▼チャンネルURLはこちら
http://www.ustream.tv/channel/manabinotobira

▼Twitterのハッシュタグ
#manabinotobira
Twitterをご利用の方は、ぜひ気軽につぶやいてください。
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それではまた番組でお会いしましょう。

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