厄よけのために鬼の顔などの装飾を施した鬼瓦を作る「鬼師」を目指し、愛媛県今治市菊間町の「菊銀製瓦」で菊地晴香さん(21)が修業に励んでいる。

 高い装飾性を持ち、迫力ある表情を出すには10年以上かかるとされる鬼瓦作り。17軒の瓦業者が軒を並べる菊間町でも、女性鬼師はこれまでに例はないが、祖父、父ともに鬼師の家に育った晴香さんは日々、粘土と格闘している。

 鬼瓦は鬼の顔やワシ、家紋などをかたどり、屋根瓦の端にすえられる特殊な瓦。機械で作られることも多い一般的な瓦と異なり、職人が一つ一つ手作業で作り、鬼瓦を作る職人は尊敬を込めて鬼師と呼ばれる。

 晴香さんは、菊銀製瓦の社長で「日本鬼師の会」会長を務める陽一郎さん(46)の長女として生まれ、幼い頃から瓦作りを身近に見て育った。鬼師は伝統的に男の世界とされるが、「他人がしないことに挑戦したい」と高校卒業後、迷わず、瓦作りの世界に飛び込んだ。どっしりした鬼瓦の運搬も軽々とこなし、「これが当たり前ですから」と土で手などが汚れることもいとわない。

 修業を始めて4年目の今は、焼き入れ前の、石こうで形取った鬼瓦の表情に深みを加える作業を担う。瞳に緊張感を漂わせながら粘土に顔を近づけて黙々とヘラで削り、一つの瓦に半日かけて、荒々しい鬼の表情を彫り上げる。角やきばを加えて、20時間窯で焼き入れした後、2週間乾燥させれば完成。「うまく表情が浮かぶと達成感に包まれます」と話す。

 あこがれは「じいちゃんの作品」。今年2月に引退した祖父の壮三郎さん(74)は、全国でも名の知れた鬼師だった。無口で職人気質の壮三郎さんから直接、指導を受けることはないが「作り終わった作品をこっそり見て参考にしていました」と話す。

 菊の花を表現した香炉や、バラの花を描き、チョウを止まらせた置物など、女性らしい柔らかな作品も手がける。陽一郎さんは「技術はまだまだ」と笑いながらも「女性ならではの繊細さがある」と期待する。

 石こうの型を使わず粘土で一から大きな鬼瓦を作ることはまだ無理で、10センチ程度の小ぶりの鬼瓦を作るのが精いっぱい。だが、「いつか、じいちゃんのレベルにたどり着きたい」と意気込み、「一人前になれば、今までにないような、少しかわいい鬼瓦作りにも挑みたい」と夢をふくらませている。(奥原慎平)

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