「怒り」新作映画 | 永田よしのりの映画と唄と言霊と  映画批評と紹介記事など 

「怒り」新作映画

 

C 2016映画「怒り」製作委員会

   
「怒り」


9月17日より公開
142分
監督 李相白
出演 渡辺謙、森山未来、松山ケンイチ、綾野剛、宮崎あおい、広瀬すずほか
配給 東宝

 

06年の「フラガール」、10年の「悪人」と、日本映画で各賞を受賞している、季監督の最新作は、吉田修一の同名小説を基にして、出演俳優たちが、それぞれに力を発揮する人間ドラマ。
八王子で起きた殺人事件。壁に描かれていた血文字の〃怒り〃と言う言葉。それは何を意味するのか? やがて千葉、東京、沖縄の3カ所で暮らす人々の前に、流れるようにやって来るそれぞれの男たち。どこか理由ありげな男たちを中心にして、崩れていく人間関係の本音と建前。そして、八王子殺人事件に関与しているかのようなそれぞれの男たちの行動。果たして、彼らの中に八王子殺人事件の犯人はいるのか? また、彼らの目的や心理とは? ミステリーとしてもラストまでしっかり引っ張ってくれるので、理不尽な人間ドラマと共に観客の興味を置き去りにすることはない。
とにかく芸達者というか、俳優たちそれぞれが1本の映画の主演を張れる者たち。
その贅沢さも含めて、彼らが1本の映画の中の一人の登場人物として役に投影していく様は、もしも撮影現場をのぞくことが出来ていたならば、どれだけ感銘を受けるだろうか、と考えてしまう。
季監督は、新作を発表する度に、その年の日本映画賞を受賞する監督になっているので、今回もなにがしらの賞を獲得するだろうと思われる。
僕の印象に残るのは、やはり宮崎あおいの姿。
ノーメイクに7キロの体重を増やして臨んだ撮影では、多分、これまで見たことのない宮崎あおいの姿があった。
この人は役柄に自分を投影させるというよりも、役柄の中に自分を埋没させていくタイプの人なのだろう。
多分、キャメラの前で「それが出来ない」と言うことも、自分で感じることも拒否してしまうのではないだろうか。
それゆえに、要求されるものに埋没していく様を選んでいるのではないか、と思うのだ。
9月現在、僕の中では「怒り」「シン・ゴジラ」「葛城事件」が、今年度のテンの中で確実となっている。