dekadant4th

1. Of Acceptance & Unchanging
2. Dead Mountain
3. Pasijon
4. Enervation's End
5. Valburga ★
6. Beast Beneath the Skin
7. Keeper's Encomium

スロヴェニアのアトモスフェリック/ポストブラックメタルバンドによる4作目フルレングス。
DVD付限定盤は結構豪華な装丁のデジパックで、かっこいいブックレットもついています。

エピック!

まず、最初に言っておきたいのは、ポストブラックの中でもDeafheavenの台頭。
彼らは前作「Sunbather」で蕩けそうな陽性のブラックメタルという境地に達して人気を博しました。
だがしかし、Deafheavenのあの作品よりも前に陽性のメロディーを持つブラックメタルとしては、このDekadentの方が先輩!
彼らDekadentは1stアルバムから、ここぞとばかりに明るいメロディーを暴虐ブラックメタルに組み込み、異様な世界観を構築することに成功していて、前作「Venera: Trial & Tribulation」にて完成されたかのように思えました。
それほど、前作は傑作と言える出来で、後追いながらも私自身「うおぉ、ポストブラックってすげえ」と震えた記憶があります。
前作はそれほどまでに神々しい光り輝くメロディーを持った名盤であるように思います。
そしてその流れを受けての今作ですが、個人的好みからすると断然こちらの方が好み。
前作ほどの凶悪な音圧は控えめなものの、溢れ出るメロディーの洪水が凄まじい傑作に仕上がっています。
そして、曲の押し引きは今作もなかなか凄くて、陽性のメロディーの中で哀愁滲むギターフレーズを盛り込んだりと、より孤高の域に達しております。
今作、そこはかとなく全編にブルージーなトーンが覆っているのですね。
それが陽光のように降り注ぐトレモロと合わさると、どうしようもなく涙腺が刺激されます。
そして何より、メタリックな攻撃性は相変わらず全く殺がれていません。
ブラストは踏みっぱなしだし、うねるベースの躍動感、ざらついた基盤のトレモロという3本柱は揺らがず、あくまでギターメロディーの多彩さで幅を広げています。
そして何よりやり過ぎなほどの壮大さこそが、このバンド最大の売り。もう最初からクライマックス。
シューゲ的ギターノイズをファンタジックなメロディーに塗すという手法を実践して物にしているバンドって個人的には彼らくらいしか思いつかないです。
また、彼らの肝にはVoも挙げられます。噛みつくようながなり声は異常にかっこよく、この凶暴極まりないVoがあるおかげでギターの甘さと相克していると思います。
バッキングのクリーンVoもなかなかに朗々としていていい対比をつけています。

アンビエントなシンセに清廉なギターが絡み一気にディストーションをぶち上げていくやたら壮大なM-1、お日様キモチイイッなメロディーの下であらゆる生物が息絶えてるかのような対比が見事なブラックメタルM-2、わかりやすいトレモロ吹雪を撒き散らしてからアーアーコーラスで昇天させられるポストブラックM-3、一転ストレートなブリザードブラックを繰り広げてさらりとブルージーなギターを織り交ぜつつ徐々に飛翔していくようなM-4、大河のように芳醇な美メロに暴虐なメロブラを浸していく後半の美しいトーンも格好良しなM-6、まるでマイブラのような幾重にも重ねたトレモロとディレイの大海をグロウルが獰猛に泳ぐ光り輝くM-7と恍惚に浸れる約45分。
イントロの清いハープのようなギターにやられるM-5がお気に入り。
ばたついたブラストと合わさるとこういうギターでも途端にブラックメタルへと変貌するというのが何とも面白い。
この曲でも聴ける、不思議なVoエフェクトのおかげで、吹き荒れる暴風の中で咆えてる感が出ているのも彼らの特色ですね。
そして終盤に炸裂するピュアメタルのようなギターソロも、世界観を全く壊すことなく美しいです。

いやあ、私感動いたしました。
綿密に作り込まれた音世界こそ、このバンドの真骨頂。
哀愁と恍惚が入り乱れる怒濤の洪水にしてやられて下さい。
それこそ、Deafheavenが好きな人にこそ是非聴いて頂きたい一枚です。オススメ!
ちなみにBandcampでは、過去作品が全てNMPです、現在。

(2015年発表)

満:★★★★★★★★★★ (10/10)
薦:★★★★★★★★★★ (10/10)