腐った耳は、耳朶のかたちもゆがみ、リンパ液がぬらぬらと糸をひくまま、

そのうちどろりと融けて落ちたのであります。


残った穴は、暗ぐらとして茫漠として、粘液に覆われて、

とめどもなく、しとどな液体をとろとろ、とろとろと吐き出し続けます。


見ると、その双眸は、これもまたどろりとしたにごりをたたえて、

その目の持ち主が、もはや正気ではないことをはっきりとつたえています。

くちびるははんぶんひらいて、そしてその冥い赤い色が、つながっている粘膜が

すべてすべて炎症を熾していることをしめしています。

ぶくぶくと膨らんだ舌が、そこだけやけに白々と光った歯に囚われて、

ちろり、とだけ見えました。


もう片方の耳は、腐って落ちこそはしていませんが、やはりとろりとした液体を垂らして、

それがみみたぶの下の部分から、ぼたり、ぼたり、と落ちているのです。


突然、それまでなんでもなかった鼻の穴からも、どろどろ、どろどろと

最初はうす黄色の、そしてついには桃色がかった灰色に見える

豆腐をつぶしたかのようなものが、どろどろ、どろどろと流れ落ちはじめたでは

ありませんか。


そのどろどろしたものには、たまに赤い塊り状のものが混ざり、

そんなものを実際に見たことのあるものは殆どいないというのに、

その様子をみたものはみな、「あああ、これは脳髄が腐って溶け出しているのだな」と

納得せざるを得ないのでした。


いつのまにか、とろとろと流れていた耳からの液体も、

どろりどろりとした灰色のものにかわり、

どんよりと濁っていたその瞳はもはや、

この世ではない灰色の砂漠を映し出しているのでした。

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昔、あるところに、悪い女の子がいました。
女の子は、長い棒に糸をつけ、針をつけ、おさかなをたんと釣っていました。
女の子は、おさかなはいくらでもつれるものだと思っていました。釣り上げたおさかなを、女の子は食べてみたり食べなかったり。勝手に逃げていったおさかなもありました。

ある日、いつものようにおさかなを釣ろうとして、針を水に投げると、しばらくして確かな手ごたえがありました。おさかながかかったと思った女の子は、糸をたぐりよせますが、おさかなはなかなかあがってきません。とうとう最後までたぐりよせると、やっぱりそこには一匹のおさかながかかっていました。

でもそのおさかなは、きれいな目をしてこういいました。
「おや、うっかりひっかかってしまっちゃった。糸は切れてないかい?針はおれなかったかなあ。迷惑かけちゃったかもしれないね。」
女の子は、急に胸が痛くなって、糸を切って、針を折って、おさかなを針からはずしました。おさかなのキズをだまってなでていると、なみだがぽろぽろこぼれました。
「やあ、針をとってくれたんだね。ありがとう。」
おさかなはそういうと、そのまま女の子のひざでうとうとしたり、たまに鼻歌なんか歌ってくつろいでいました。女の子は、ああ、もう、人間でいることをやめて、このまま一緒にいてもいいなあ、と思いました。そうして、そのままにひきのおさかなはよりそって、ずっといっしょにくらしました。

このおさかなたちがうまれかわって、わたしたちふーふになりました。
そんなわけないか。
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