桐野夏生『I'm sorry mama 』

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思うに。
移動する道すがらというのは本屋で目移りするのに似ている。行き先はわかっていながら、その道中を愉しむような。

『ローズガーデン』は表題作はともかくとして、その他の短編では我らが村野ミロの世俗への落ち着きっぷりがどうにも気に入らず。狂言廻しはそれくらいでなくてはならないのだろうけれども。

なので、どうにも凶悪なおんなのはなしを読みたくもなったわけだ。

とはいうものの、読後感はそうも悪くない。ピカレスク・ロマンがいつだって魅力であるように(あの魅惑の折原マヤ!)、この、うつくしくもなんともなく、むしろ醜悪で同情の余地がないはずの松島アイ子という女が終盤、一気に人間味さえ帯びて見えてくる小説世界の妙に、充分2時間あまり遊べた。
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宮部みゆき『理由』

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宮部みゆきでいつも驚くのは、中学生くらいの子の心理描写が巧みなことだ。凄惨な事件の頻発するミステリでは、得てして子どもの存在は書き割り的になりがちなのだが、この作品でもそれぞれの子どもや若者の在り方が、生き生きと嘘臭くなく立ち上がってくる。

その分もっとも犯人と言える人物の心理はわかりにくいままで、これは、ほかの人物が書き込んであるのと対象的に、わかりづらくすることでこの重奏のような物語の中心部の闇を強調させているのだとしたら、なんとも技巧的だ。

子どもの書き方を見た編集が(或は本人が?)『ブレイブストーリー』を書かせたのかも知れないな、なんて。これは映画が思ったより薄味だったので印象にあまりなかったけど、原作を読んでみようか。
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