名古屋場所千秋楽(その4)~幕下優勝決定戦、優勝:深尾さん~
名古屋場所千秋楽。その4では、この日に決まった幕下優勝についてお伝えします。
(敬称略。インタビューはテレビから採録しています)
<幕下優勝決定戦>
幕下は、13日目に、ただ一人全勝だった松谷が敗れたことにより(13日目その3
参照)、1敗で8人が並ぶ展開となりました。
優勝決定戦に出るのは、双大竜・華王錦・深尾・松谷・中西・竜電・玉皇・南海力。全員がまだ十両に上がったことのない力士で、楽しみな顔ぶれとなりました。
【一回戦】
○双大竜-竜電●
双大竜がまず左から攻めて、突きはなそうとします。右のまわしが欲しい竜電と、突きはなしたい双大竜。双差しになりかけた竜電ですが、双大竜がうまくまきかえて左四つに。右上手の双大竜ですが、竜電も左下手、右上手の体勢で、胸を合わせて竜電が寄ります。しかし双大竜が右上手から引きずるような投げで、上手投げを決めました。
*竜電も健闘しましたが、双大竜がさすがの地力を見せました。来場所の新十両が確実な双大竜、まず一つ勝ちあがりました。
○深尾-松谷●
右からイナシ気味に立った松谷。深尾が突きはなしてどんどん攻めます。深尾の左おっつけに、腰が入りかかった松谷ですが、よく残して、今度は松谷が逆襲、左が入って右はおっつけから上手を取って寄りましたが、土俵際、深尾の右突き落としが来ました。軍配は松谷にあがりましたが、松谷が落ちるのと、深尾が左手を着くのが同時と見て、取り直しとなります。
取り直しの一番は、今度は松谷が頭からいい当たりで、右前まわしから出し投げ、出し投げで横から攻めた後、双差しになって一気に寄りましたが、最後のツメで一瞬体が伸びたところを、深尾の右突き落とし。今度の突き落としは決まりました。
*二番とも、激しい相撲となり、館内は大いに盛り上がりました。180キロを超す深尾の体は、波打つように躍動しながら、土俵際もしぶとく残します。好勝負となった一番は、深尾に軍配です。
○中西-玉皇●
中西が当たってすぐに左上手、深めですが、これでも中西には十分に力の出る上手です。上手投げから引きつけて寄る中西、右からすくって残す玉皇。一呼吸おいて、また上手から寄る中西、上手投げを打ちつつ寄りますが、玉皇はよく残します。上手を切りたい玉皇、腰を動かしてなんとかしようとしますが、中西は上手を離さず、腰を寄せて、寄り切りました。
*30秒を超す相撲は、終始中西が攻勢でしたが、玉皇もよく粘りました。ただ、体勢はやはり中西にあり、玉皇は上手を切ろうとしたことで、かえって中西の力が出る形となりました。今場所は攻めに勢いのある中西が、この相撲もぐんぐん前に出て、勝ちあがりました。
○華王錦-南海力●
華王錦が左おっつけから、右を封じられた南海力が苦しくなって引いてきたところを、華王錦が一気に押し出しました。
*今場所、幕下で初めて勝ち越した南海力と、幕下上位の経験も豊富な華王錦の対戦は、華王錦が力の違いを見せたような一番となりました。花道では、新しい東関親方である、元・潮丸の姿もあり、弟子の華王錦の相撲を見ていました。
【準決勝】
改めてクジが引かれた結果、次のような顔合わせとなりました。
○中西-華王錦●
先に両こぶしを下ろして待っていた中西が、立ち合いやや左に動き、左上手には届きませんが、右の下手を引きます。華王錦が左小手に振ってくるのは、軽く振り払った中西。ここで華王錦の右が入って、華王錦が出ましたが、中西も左上手に届いており、中西が下がりながらその上手を離し、右からすくい投げを打ちました。
*最後は逆転勝ちの形になりましたが、序盤から流れは中西にあり、前へ前へと出る姿勢も見られました。今場所の好調ぶりがわかるような、堂々とした相撲で、中西が決勝進出を決めました。
○深尾-双大竜●
両者体当たりでぶつかり合って、深尾の突きはなし。右にまわりこもうとする双大竜ですが、まわりこめず、最後も左前まわしで出し投げを打とうとしましたが、深尾がかまわず押し出しました。
*味のある実力者どうしといった顔合わせで、楽しみな一番は、深尾が圧倒する展開となりました。70キロ近い体重差がある両者ですが、重い深尾の速さとパワーが炸裂。機敏なはずの双大竜の動きも間に合わないほどで、こうなると双大竜はどうしようもありませんでした。
先ほどの松谷との相撲では、柔らかい粘りで突き落としで勝った深尾ですが、今度は前へ前へと出る相撲。持ち味を存分に発揮し、決勝進出です。
【決勝】
○深尾-中西●
次々と取組が進んでいく、優勝決定戦。両者とも汗をかいていますが、特に深尾のほうは、呼出しに汗を拭いてもらうほどの汗のかきようで、息も上がり、咳込みつつ土俵に上がりました。
息を整えるためもあって、時間をかけて仕切る深尾。蹲踞の姿勢から立ち上がろうとして後ろにバランスを崩しかけ、さらには「待ったなし」の声がかかってからも、いつもの斜めに構えた姿勢から時間を稼ぐような格好で、館内にはどよめきが起きてきます。
そんな中で迎えた決勝の相撲では、頭から当たって右を差しにいった深尾。深尾が左からおっつけて左も差しにいったところ、中西もまきかえて左を差します。左四つ、右上手になった深尾の寄り、右で外掛けにいきつつ寄りますが、こうした外掛けは自分の腰が浮きやすくなるものでどうかと思ったところ、やはり少し無理があり、中西が左下手投げから体をあずけてきます。しかし土俵際、深尾が右からの上手投げ。松谷戦に続き、またしても土俵際の柔らかさが出た深尾、幕下優勝です。
精一杯取り切ったという表情の深尾は、相撲を取った西方から土俵を下り、直後に行われる表彰式に向かうため、東の花道へ移動。途中、向正面の二人の審判に「おめでとう」などと声をかけられていました。
*幕下優勝:深尾さん(木瀬部屋)
【今場所の相撲:2日目その2
、5日目その4
、13日目その3
】
8人による優勝決定戦を制したのは、深尾。取り直しも含め、4番取った末の優勝でした。本場所で一日に4番取ったのは初めてですし、「取り直しも初めてだった」そうですが、「集中力を切らさないように」、一番一番しっかり取っていきました。
優勝決定戦では、一回戦から熱戦で館内を沸かせ、優勝に一番近そうなオーラを感じさせました。内容的には、突き押しの攻めと土俵際の粘りが光った松谷戦、突き押しで圧倒した双大竜戦、そして、決勝の中西戦では最初から四つに組んでの相撲、攻めに粘りと、深尾らしさが全部出たような決定戦となりました。
埼玉栄高から日大を経て、昨年初場所初土俵。各段優勝は、序ノ口の場所以来(08年春場所13日目その4 参照)で、序二段のときには優勝決定戦に出たこともありました(同年夏場所千秋楽その4 参照)。
昨年秋場所に幕下に上がって、今場所が幕下6場所目。先場所、幕下東7枚目に上がり、入門以来初の負け越しとなりましたが、そこから考えることも多かったようで(13日目その3 参照)、幕下西16枚目の今場所は、見事優勝を果たしました。
愛知県春日井市出身で、今場所はご当所。「深尾頑張れ、と声援が聞こえてくるので、嬉しい」と語ります。
木瀬部屋からは、朝日大学出身で一年兄弟子の徳真鵬が、来場所の新十両を確実としており、深尾も続いていきたいところ。「また稽古しなおして、悪いところを徹底的になおして、頑張りたい」と、課題も見すえつつ、意欲を見せます。
今の課題は「引いてしまうことが多い。土俵の中で勝負をつけるのではなく、土俵の外までもっていけるような力士になりたい」と深尾。ときおり笑顔で目を細めながらのインタビューでした。
☆三段目優勝は宝富士さんで、千秋楽その3
に記事を掲載。
序二段優勝は栃飛龍さん、序ノ口優勝は相坂さんで、13日目その4 に掲載しました。





