2006-11-09 10:07:55

ゆったりとした気持ちで。

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 たまたま朝のラジオから、『感情の赴くままに動いて吉の日』

というメッセージが入って来ました。今日は肩の力を抜いて、

ゆったりとした気持ちで一日を過ごそうと思っています。












   ピースマン VOL.8
 ボクの目に一人の女性が飛び込んで来た。
    
 画面に映し出された一枚のポートレートにはしなやかなロングヘアー

に不思議な色のピュアーな瞳を輝かせた天使のような女性がボクに向っ

て微笑んでいた。

 ボクの胸が、キュンと甲高い音を立てたと同時に、ボクは画面の中の

彼女に瞬く間に恋に落ちた。

 彼女は、『エンジェル』という名の女性ミュージシャンだった。

 出身地はロンドン。趣味は旅。好きな男性のタイプはワイルドな男性。
 
 一週間前に更新されたメッセージには、

『今は、レコーディングの最中。スタジオに缶詰めで窒息しそう(笑)。
でも一生懸命歌ってるから、みんなデビューアルバムを楽しみに待って
てね。これが終わったら、また旅に出たいな。今度は、どこに行こうか
な? みなさんいいところがあったら教えて』

と記されている。

 旅か、ボクは画面の中の彼女に向ってぽつりと呟いた。

 ボクは本屋まで全速力で自転車を走らせると、無我夢中で旅の本を片

っ端から読み始めた。

『地球の歩き方』、『世界ひとり歩きのススメ』、

『やっぱり旅はおもしろい』

 はじめは彼女に旅スポットを提案するために読んでいたはずが、気が

つけば自分が旅気分。

 オレも旅してえ、いや絶対に旅しよう。

 旅に出たら世界のどこかで彼女に会えるかも知れない、もしかしてど

こかに自分の居場所が見つかるかも知れない。旅に出たら、ボクの人生

も晴れるかも知れない。

 旅なのか、そうか、分かったぞ、オレは旅がしたいんだ。

 これまで眠り続けていたボクの心に魂に新しい光が差し込んだ。
 

 その日の夜、ボクは鼻息を弾ませながら両親の前に躍り出た。

「お父さん、お母さん、オレ、とうとうやりたい事が見つかったよ」

 お父さんは半信半疑で見つめ、お母さんは本当に嬉しそうに目を輝かせた。

「オレ、世界を旅したい、いや、旅する」

「旅だと?」

 お父さんはボクの言葉に強い不快感を示した。

「あら、素敵じゃない」

 一方、お母さんは目を細めて素直に喜んだ。

「お前は黙ってろ」

 お父さんはそう言ってお母さんを制した後、みるみるうちに顔面を紅潮さ

せた。

「もう一度言ってみろ」

「オレ、旅…」

 言い終わる前にボクの左頬は熱い感触に包まれ、目の前の画面が奇妙な形

に歪んだ。

「どこまで無茶を言えば気が済むんだ」

 お父さんは鬼のような形相でボクを怒鳴りつけた。

「オレはやりたい事をやる、お父さんが何と言おうと曲げられないんだよ」

「お前、誰に向って口を聞いてると思ってるんだ! もう勘当だ、出てけ、
この家から出てけ」

「お父さん、ちょっと何言ってるの?」

 お母さんが慌ててなだめようとするが口を真一文字に結んだまま、ここで

大地震がいきなり起こったとしても恐らく微動だにしないだろうと思わせる

だけの迫力でボクの顔を睨みつける。いや、違う、今、目の前でその大地震

が起こっているのだ。

 これはドラマなんかじゃない、勘当? ボクは今、父親から勘当を言い渡

されたのだ。

「分かった、オレ、家を出てく」

 言葉が先に口をついて出た。
2006-11-08 11:31:58

ANGEL

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 太陽に向い、両手を肩の高さで大きく広げ、その両手を頭上へと移動

させながら、清澄な空気を大きく吸い込み、向上心、善の気が上半身に

満ち、天空と一体になってゆくイメージを行う。

 今度は、高く掲げた両手をゆっくりと肩から腰の高さまで下げながら

大きく息を吐き出し、邪心や嫉妬といった悪の気が下半身へと深く沈澱

し、地へと放出してゆくイメージを行う。
 
 これを10回ほど繰り返すと、身体に真直ぐ、気が通ります。

 一度、試してみて下さい。










   ピースマン   VOL.7

 いつかはきっと…。
 
 やがて二人が寝静まった頃を見計らってリビングへと降りてゆき、

どうでもいいような深夜番組をはしごしながら人生の空白をひたすら

埋めてゆく。それでうまく眠りにつける夜はラッキー。

 大体はそれから深夜の第二章が始まる。

 眠りにつきたいからベッドに入るものの目は固くなかなか眠りにつく

ことができない。時計の針が刻一刻と刻む音を数えながら、悶々とした

ブラックホールがボクの精神をじわじわと侵食するのをただ無抵抗に受

け入れる。

 カー、カー、カー、近くで真夜中のカラスがそんなボクを嘲り笑うか

のように啼いている。

 このブラックホールは時間と場所を超越し、どこまでも孤独な絶望の

深淵へとボクを突き落とす。

 そこには一点の光りも希望も存在しない。

 どこまで進んでも進んでもその先に何かがあるわけでもないのにボク

はその暗闇のさらに深みへと進んでゆく。

 健常な人間が覗くことのない世界、

 意識と無意識の狭間にある摩訶不思議ワールド。

 この世界を追い掛けることが危険なこと、無謀なこと、それはよく分

かっていた。

 それでもその先を知ろうともがき、意識と無意識の狭間をボクはさま

よい、やがて脳は激しく錯乱し、例えるならラジオのノイズにも似た

雑音が脳の中で大音量で鳴り響く感じ。それでもひるむことなくさらに

奥の世界を突き進み、ただ念じる。進め、進むんだ。

 すると体全体に電流が貫通したかのように全身がわなわなと激しく震

えはじめた次の瞬間、身体を反転させるイメージでクルリ、身体はする

りと肉体の殻を抜け出し、天井近くまで上昇し、すやすやと眠るもう一

人の自分を真上から見る。

 そこまで進んではじめてボクは恐怖を覚える。

 これが幽体離脱?

 すやすやと眠るもう一人の自分と意識を持つ自分、このまま放っておけ

ばどうなるんだろう?

 いや早く元に戻らなくちゃ!

 そう思った瞬間、ボクは意識を失い、いつしか眠りにつくのだった。
 
 翌日、目を覚ますと一日の半分はもう終わっていた。起きた瞬間からボ

クの気持ちはブルーを通り越して、グレー。

 重油まみれの海鳥のように、心も身体も油膜に覆われたみたいにとにか

くだるい。

 また昼下がりの公園、目の前では一羽のアヒルが優雅に水の上を泳いで

いる。

 ベンチに腰掛けてラッキーストライクをふかす。吐き出す煙りで輪を作

り、だんだん大きくなっていく輪の中に新たに作った輪をくぐらせる。

『I am saling. I am sailing, stormy waters,far away.…』

 大好きなロッド・スチュワートの『Sailing』を口ずさみながら、ボクは

大空を自由に羽ばたく自分を想像した。

 もうこれ以上、この街にいても何も前に進まないことだけははっきりとし

ていた。このまま月日が流れれば、ボクはいずれ精神病院に放り込まれるだ

ろう。もうこんな生活もこんな自分もうんざりだった。

 そうは言っても、具体的にどうすればいいのか、はじめの一歩の踏み出し

方が分からない。

 ボクはいつものネットカフェに向った。平日の昼2時過ぎだというのに、

店は暇を持て余した若者達で大繁盛だった。ほとんどの連中は、フリーター

かプータロー。そう考えると、ボクの劣等感も少しだけ和らぐ。

 見覚えのある顔もちらほらあるが、お互い挨拶を交わすこともなく、

それぞれがそれぞれの画面に向う。

 ボクは思いつきで、『ANGEL』と入力した。

 上から順に、適当に興味のあるサイトを開けては、閉じ、開けては、閉じ、

を繰り返す。

 と、その時だった。

 ボクの目に一人の女性が飛び込んで来た。

 
  
2006-11-07 12:05:00

強風注意の秋晴れ!

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 今日の東京は朝から強風。天気は秋晴れで最高だけど、朝から

コンピューターの前で『ボク』と向い合っていると、少し気分が

どんよりしてきました。

 そろそろ『ボク』の人生にも光が欲しいですね。

 自由というのは目的があってはじめて、自由になれるわけで

目的もない自由は、ただの堕落。

 実は、これが一番、辛いんですよね。

 これからもう少しばかり、『ボク』を通じて、自身が経験した

堕落の世界を書き綴ってみようと思います。

 一度、堕落を経験すると、人間って真面目になります(笑)








   

  ピースマン   VOL.6 
   
 眩いばかりの黄色い太陽がドーンと一つ。
 
 と、目を覚ます、首まわりにびっしょりと寝汗をかいている。
 
 もう外は夕暮れ、再び公園へと足を運ぶと、今度は例のアヒルが陸地

に上がっている。
 
 お前はいいよな、ボクみたいに人生に悩んだりしなさそうだもんな。

 お前は今、何を考えているんだ。

 言葉も持たないアヒルが思考するわけもないか、って吸いたいわけで

もないのにボクはラッキーストライクの先に火をつける。

 学校を終えた同年代の学生、仕事帰りのサラリーマン、買い物を終え

て急いで家路につく主婦、みんながみんな立派に輝いて見える。

 今日一日、ボクのやった事と言えば、昼に起きて公園でタバコをふか

して、少しだけ村上春樹の小説を読んで、お昼寝して、もう一度この公

園に戻ってタバコをふかしただけ。

 誰の役にも立たず、何かをやろうという気力もない。

 鉄は放っておくと錆びるようにボクもこのままだと錆びついてしまう

のかも知れない、いやもうすでに錆びかけているのかも知れない。

 この公園にふらっと現れる浮浪者を見る度に自分の落ちぶれた未来像

が重なり、ものすごく恐ろしくなる。

 家に帰れば、仕事を終えた二人が淡々と食事の支度に取りかかってい

る。ボクは声が掛かるまで自分の部屋に閉じこもり、ラジオの音に耳を

傾ける。

 西麻布のスタジオからライブで流れてくる人気女性DJの声、もう人

生が楽しくてたまりません、と言わんばかりのハイテンションだ。

『今日はねジェットスキーを体験してきたんですよ。もうその迫力とス

ピード感と言ったら、これは最高という言葉以外…』

「御飯よ、降りてらっしゃい」

 階下からお母さんの元気な声が聞こえてくる。

 表向きは円満な家庭を取り戻したかのように見える明るい食卓、でも

本当のところ、両親共にボクの今の状態を杞憂していることは明らかだ。

 それでも親の愛は深い。少しでも元気づけようと明るい話題をどちら

からともなく振ってくる。それでいて最後は、

「知り合いに心理カウンセラーの専門の人がいるからお話するだけでも
会ってみない」なんてさり気なく言ってくる。

「大丈夫、自分の事は自分が一番分かってるから」

「それが危ないんだって。もちろんあなたの言う事も正しいんだけど、
それは自分から見た自分でしょう、他人から見た自分というのはまた別
物よ」

「それも分かってる。社会から見れば今のオレはただのプータロー、流
行りのニートでしょう」

「もうよせよ、そんな話」

 眉間に深い皺を寄せたお父さんのイライラがこちらにまでひしひしと

伝わってくる。

 明るく幕を開けた食卓もボクの将来という地雷を踏んだ瞬間、いつも

このパターンにはまってしまう。

 で、結局、ボクは自分の部屋へとまた閉じこもる。

 ラジオも聞き飽きて、小説に目を通すのも億劫で、適当にその日の気

分で選んだ音楽を聞きながらベッドに横たわる。

 中古で買ったロッド・スチュワートの『out of order』の楽譜をなぞ

りながら、わざとしゃがれ声を出して本物の声に似せて歌ってみる。
 
 本物の声と作り物の声、埋めようのない差、星と石ころ。この人もは

じめはただの石ころだったのだろうか?

 やっぱり石ころはいつもでたっても石ころ。

 でもボクもロッド・スチュワートと同じ人間。

 いつかはきっと…。