◆月の着信をうける窓<8・最終回>◆
テーマ:◆モノガタリ降る夜◆[photo]
「…寝てるね。」
「おう、盛大に寝てるよ。」
さやかと涼二の声がする。
…だめだ。
眠くて眠くて目を開けられない。
「おまえんとこでも、こんな酷な使われかたするの?アルバイ
トなのに?」
「…うん。というよりも、二葉がムチャなシフトを入れるんだ
と思う。」
「げ。俺にはそんなことできんなぁ。」
さやかは本当に勘が鋭い。
「ところで、さっきの写真何?」
「ああ、これ?」
ガサガサと紙の音がする。
「土蔵?」
「そう。お前は奇跡的に入れられてないよなぁ?
みんなで悪さすんのに、お前だけじいさんが探すといなくな
ってたから。
桜なんてそのうちお前とつるむようになりやがって…」
「いいから見せてよ。」
さやかが写真を受け取る音がする。
「何か書いてあるよ。」
「そう。小学生くらいのとき、二葉と俺で、じいさんの盆栽割
っちゃって…」
「嘘だね。」
遮るさやかの声が妙に確信に満ちていて、びっくりする。
だけど、眠くておきあがれない…
「え、なんで…」
「何となく。」
「お前さ、ほんっとうに勘が鋭いね。
…そう。あれはね、美咲が割っちゃったんだ。」
「そうなの?」
涼二のヤツ…
「だけど、盆栽割れてんのじいさんが見つけた時、
俺ら運悪くその場にいたんだよね。
で、俺らがやったと勘違いして、二人でお縄に。」
ふっと笑う声がする。
「なんで本当のこと言わなかったの?おじいちゃんに。」
「うーん、それがね。
二葉と二人で美咲が盆栽割ったの見てたんだけど、何だかふ
らふらしてて…
でも、鉢をきちんと持ち上げて割ってたんだよね。
今考えれば、あの時は中学受験とか重なってて、ちょっと不
安定だったのかな。
ただその割った瞬間、(やっちゃった!)って顔になってて
さ。
美咲みたいな優等生でも、そんな気持ちになるんだなって思
って、
だから何か言えなかったんだよ。」
「それで、二葉が黙ってようって?」
「あ、やっぱりわかった?」
「そうよ、あんた暗いところ嫌いでしょう?せまいところも」
そうなんだ、だからあんなに怖そうな顔を…
今初めて知った。
「これ、良く残ってたね。クレヨン持ってたの?」
「そう。直前に塗り絵やっててさ。
クレヨンて意外と残るモンなんだよ。それに、はじっこに書
いたからな。」
得意げな涼二の声。
確かあのときに書いた言葉は…。
『ひみつ』
そう、あのとき月からそっと降り注ぐ光でそう書きながら、そ
う思った。
目覚めたら、真っ先に涼二に文句を言わなきゃ。
そして、新しい土蔵にまた書くのだ。
今度はさやかと3人で。
(了)







