容疑者Xの献身/東野圭吾

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物理学者湯川学シリーズの最新作。


数学教師の石神は隣室に住む母子の犯した殺人を知り、隠蔽工作を行う。


警察や大学時代の盟友、湯川の追及から逃れ、犯罪を隠し通し母子を守りきることができるのか。


作家さんが自薦されるだけあって、非常に完成度の高い作品でした。数式に絡めた「容疑者Xの献身」というタイトルもなかなかいいと思います。


最初に事件の犯人が明かされる形式なので、大まかな流れはアリバイ崩しをメインとした小説と言えます。


これまで湯川シリーズは、湯川助教授が主役で、草薙刑事が脇役という扱いになっていたんですが、今回は石神が主役で湯川が脇役のような印象を受けます。


シリーズモノではゲストキャラとでも言うべき石神の存在がかなり大きいのです。


それ程作家さんがこの石神というキャラクターに対して、力を入れて書かれたのでしょう。


本作は作品全体の雰囲気が重要な作品だと思うのですが、そういう点においては「白夜行」と共通点があります。


また、愛情が作品の構成要素となっている点も共通していると言えるでしょう。


殺人に関してのアリバイトリックは超難解という程でもなく、捻りの多い東野作品の中においては比較的シンプルな印象すら受けますね。


ただ、石神が母子へ協力するに至った動機と、徹底的に真相を隠すため、母子にも明そうとしなかった行動内容がとても重要なので、殺人トリックをシンプルにした点はむしろ高く評価するべきでしょう。


ストーリーの緻密さにおいては若干「白夜行」に及ばないような気もしますが、愛情を扱いつつも容易に単純な恋愛へと逃げ込まず、人間の深い情を描ききった点は傑作と言えます。


最後に石神が見せる慟哭の深さは、必ず読者の心を打つことでしょう。


ホトケ的採点

ストーリー:20

登場人物:22

文章:20

その他の要素:21

総合:83


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