会社がすぐ隣だったため、勤務日の半分くらいは訪問していた会社がある。
社長は同年で、えらく可愛いい秘書がいた。
その日彼は、少し顔色は悪かったが、薄ら笑いを浮かべてこう言った。
やられちゃいましたよ。
そう言って彼は指を3本立てた。
ははーん。
あの美人秘書に、車でもねだられたかな、と思った。
しかし、300万Bとはデカイ。
彼女もやるなあ、と思った。
が、これは私の勘違いであった。
指3本は、300万Bではなく、3億Bだった。
うまい話に引っ掛かったらしい。
会社をたたむことにしたという。
その会社敷地が更地だった頃から知っていたから、私も悲しかった。
親父が多少は余裕があるから、また国に戻ってやり直しますわ。
その声がむなしく響く。
当時の3億Bは、邦貨30億円に近い。私などは見たことさえない金額だ。
親は台湾ではギリギリ小金持ちの仲間らしく、負債は親がもってくれるらしい。
社会勉強として、息子に海外で会社を作らせたが、海千山千に食われてしまった。その国の役人絡みだから、泣き寝入りするしかない。
海外経験に乏しい彼でも、その程度のことは知っていた。
週末に、飲み会に招かれた。
それまでは何度か似た誘いがあったが、すべて断ってきた。
が、最後だし利害関係も生じない。
友人として、2つ返事で了解した。
店は驚くほどのものではなかった。
が、お土産についたネーデルランドとのハーフの後ろ姿には、ひどく驚いた。
キュートながら、一部は私のイメージの2倍以上。
ホッテントット並みであった。
彼は無事本国で、いや海外で生きているだろうか。
ホッテントット並みとともに、思い出された。