【三橋貴明】低金利で経済成長?不景気で株価上昇?【何を言っているかわからない】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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流行に浮かされずに独り立ち止まり、素朴に真っ直ぐに物事を観てみたい。
そういう想いのブログです。

「亡国の財政政策」 三橋貴明ブログ2015年6月23日
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12042132498.html

「 先日のチャンネル桜の番組でも解説しましたが、PBとは財政健全化(政府の負債対GDP比率の引き下げ)の一手法でしかありません。財政健全化するか否かは、
「プライマリーバランス(PB)」
「国債金利」
「名目GDPの成長率」
 の三つの組み合わせで決まります。PBが赤字だろうと、国債金利が低く、名目GDP成長率が十分であれば、財政は健全化するのです。

 すなわち、道具、あるいは手段の一つでしかないPBを、「目標」に掲げるわけで、現在の安倍政権はナンセンス極まりないのです。

 とはいえ、それ以上に酷いのが自民党で、PB目標に加えて「歳出削減の目標」まで「骨太方針」に入れようとしていました。結果、歳出増加の「目安」という、良く分からない目標的なものが入り、玉虫色の決着となりました。
 
 頭が痛いです。
 以前、財政議論を巡る官邸側と自民党側の争いについて、
「ダメなやつと、もっとダメなやつの議論」
 と表現しましたが、実際には、
「凄くダメなやつと、さらに途轍もなくダメなやつの議論」
 という感じでございますね。」


空き地ツイッター2015年6月23日
https://twitter.com/akichi_3kan4on/status/613179280994926592



 三橋貴明氏が、国債金利が低いままで名目GDPを成長させればプライマリーバランスの赤字は問題にならないと主張している。
 これに対し、空き地さんが、三橋氏の過去の発言との食い違いを指摘している。
 三橋氏の過去の著作をめくっていたら、たまたまこんな記述を見つけた。


三橋貴明 「経済ニュースが10倍よくわかる 「新」日本経済入門 目からウロコの経済の読み方」 (アスコム、2010年) 53,54ページ

低金利は、成長していない証だ!

 ずいぶん長い間、超低金利に慣れているせいか、日本人の中には金利は低いほうがいいと思っている人も多いようだ。
 確かに個人にとってはよいことかもしれないが、国家経済にとっては、市場から「あなたたちはたったそれだけしか成長しないんだよ」と思われているに等しい。少なくとも「いいこと」ではない。
 個人にとって、金利が上がると困る代表例として、よく登場するのが住宅ローンだ。マスコミや評論家は「金利が上がれば住宅ローンを返せなくなって破産する人が続出する」などと言う。
 よく考えてほしい。
 そうではなくて、金利上昇とは景気がよくなっているということなのだ。民間の資金需要が復活している以上、好景気の時、当然金利は上がる。銀行も「さすがに10年の国債金利が1,3%ではまずい。2%なら国債を買う」という形で金利が上がっていくことになる。」

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 三橋氏の過去の著作には、国債金利の上昇は景気がよくなっている証左だということが書かれている。 
 今の三橋氏は、国債金利が低くても財政健全化は可能だと言うが、国債金利が低いままならば景気はよくなっていないわけで、果たして財政健全化は可能なのだろうか。

 上の著書で、「金利上昇とは景気がよくなっているということなのだ。」と三橋氏は言う。
 三橋氏は最近、「景気」についてもブログに書き、あまりの珍説に物議を醸している。


「上海株式バブル崩壊」 三橋貴明ブログ2015年6月21日
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12041376659.html

「 現在の主要国の株式市場の特徴は、
「景気と無関係に株価が上がる」
 もしくは、
「景気が悪いのに株価が上がる」
 でございます。ここで言う景気とは、実質GDPの成長率(=経済成長率)もしくは実質賃金を意味しています。

 なぜ、景気が悪いのに、株価が上がるのか。これは実は話が逆で、
「景気が悪いから、株価が上がる」
 が正解になります。各国の中央銀行が金融緩和を継続拡大し(アメリカ除く)、今、銀行にはおカネがじゃぶじゃぶです。日本の銀行は、「最低」1.5京円のおカネを貸し出すことができるわけでございますが、実際には900兆円のM2でしかないことは、以前、解説した通り。」


 なんか、藤巻健史議員の「なぜ日本は破綻寸前なのに円高なのか」を彷彿とさせる言いっぷりだ(http://www.gentosha.co.jp/book/b5530.html)。
 いよいよ末期なんじゃないかと。


華昇宝ツイッター2015年6月21日
https://twitter.com/um_cachorro/status/612482620518076416


 過去の三橋氏はこういうことを言っていた。
 「景気」の定義に関する話だ。


三橋貴明 「増税のウソ」 (青春出版社、2011年) 120ページ

バブル崩壊後の低成長から抜け出せない理由

 先ほどから普通にこの用語を使っているが、現在の日本の状態は、実は「恐慌」である。ちなみに、歴史の教科書で習う一九二九年以降の世界経済は「大恐慌」であり、日本経済はさすがにその段階にまでは至っていない。
 恐慌とはなにか? ずばり「デフレの深刻化」である。
 国民経済の供給能力に対して需要(GDP)が極端に不足し、物価が継続的に下落。企業は寺社の供給を削りとるリストラクチャリングに邁進し、設備投資が抑制され、失業者が増える。失業者は、当たり前だがそれまで以上に消費をしなくなる。
 国民経済の需要であるGDPとは、、第一章で解説した通り民間の消費と投資、政府の支出、それに純輸出(輸出-輸入)の合計だ。企業がリストラクチャリングを進めると、消費や投資が削られ、ますます供給能力に対して需要が不足するという悪循環に突入する。
 特に、アイルランドの例からもわかる通り、バブル崩壊後の国では投資が激減する傾向がある。投資の定義は、「将来の成長のために現在の資本を投じること」だが、バブル崩壊後の国では、特に民間投資(GDP上の民間住宅と民間企業設備)が激減する。
 理由は明白で、そもそも「経済のバブル化」とは、民間の経済主体(企業もしくは家計)が借金を増やし、極端に投資を拡大する現象であるためだ。企業などが銀行から融資を受けて不動産などに投資をしまくった結果、バブルが膨張してしまう。
 バブル崩壊により、企業などが投資した資産の価値(時価)は暴落する。結果、民間企業のマインドが変わり、誰もが「借金して投資する」気が失せてしまう。
 要するに、「銀行から金を借りて不動産を購入したが、バブル崩壊で価格が半分になってしまった・・・・・・。もうこりごりだ。しばらくは借金も投資もやめよう」という気分になるわけだ。八五年以降の日本のバブルとその崩壊を経験した人であれば、しみじみ納得していただけるだろう。
 もちろん各企業(もしくは家計)にとって、バブル崩壊を受けて余分な金を借金返済に回すというのは、きわめて合理的な行動だ。ところが、それを国単位でやられてしまうと、その国のGDP(国内総生産)は激減する。なにしろ何度も書いた通り、GDPとは消費と投資、政府支出、それに純輸出の合計なのである。
 ミクロ(企業、家計)単位で合理的な判断であっても、それがマクロ(国家)レベルに合成されると、とんでもないほど「非合理的」な事態を引き起こしてしまう。これは「合成の誤謬」と呼ばれる現象だ。バブル崩壊後の国はほぼ一〇〇%の確率で合成の誤謬に陥り、経済成長率が低迷もしくはマイナスになる。

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 まず景気の定義だが、三橋氏は「増税のウソ」で、「恐慌とはなにか? ずばり「デフレの深刻化」である。」と言っている。
 恐慌は景気が悪い状態なので、ここで、三橋氏が景気の判断基準を物価変動に求めていると考えられる。
 21日の三橋ブログ記事には、景気の定義について、物価変動には触れられていない。これは別に構わないとしよう。
 次に、三橋氏は、「バブル崩壊後の国はほぼ一〇〇%の確率で合成の誤謬に陥り、経済成長率が低迷もしくはマイナスになる。」とも言っている。
 バブルは景気が良すぎる状態で、崩壊することによって景気が悪くなると考えると、三橋氏は経済成長率にも景気の判断基準を求めていることがわかる。
 飯田泰之「世界一わかりやすい経済の教室」(中経出版、2013年)には、「GDPの伸び率が経済成長率、この経済成長率が低いか高いかが景気の良し悪しと言っていい。」と書かれている(103ページ)。そして、「不況・不景気とは、この実質GDPの成長率が低いときのことで、好況・好景気とは実質GDPの成長率が高いときのことを言っている」とのことだという(114,115ページ)。
 21日の三橋ブログ記事が「ここで言う景気とは、実質GDPの成長率(=経済成長率)」という部分は、過去の発言と整合し、かつ教科書的な説明で、正当だ。
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 問題は、景気の定義に実質賃金を持ち込んでいるところだ。
 三橋氏が景気の定義を実質賃金に求めるのは初耳だ。
 これについてはakiraさんが論じているので見ていただきたい(http://ameblo.jp/akiran1969/entry-12041874638.html)。私としても、そもそも、景気は経済全体の雰囲気とでも言うべきものだが、これを賃金(の実質値)という経済の一要素で定義してしまうのには、言葉の意味からして違和感がある。
 デフレ不況下で失業率が悪化し、アベノミクスで失業率の改善が見られるわけだが、失業者が新規雇用・再雇用された時、賃金の平均値を下げる要因になってしまい、無収入の失業者が減って景気は良くなっていると言えるにもかかわらず、実質賃金の統計には景気回復が表れないということを、akiraさんは問題視していることを考えても、景気の定義に実質賃金を持ち込むのは適当ではないと考えることになるのだろう(http://ameblo.jp/akiran1969/entry-12019199812.html)。
 実質賃金が下がることによって、総雇用量が増え、失業者は減る(飯田「経済の教室」191ページ)。実質賃金のみに着目して景気を判断すると、実質賃金が下がる一方で、失業者という、賃金を得ていなかった者が賃金を得て消費意欲が高まっている側面があるにもかかわらず、景気は悪くなっていると即断してしまい、不当な結論に到ると思われる。実質賃金に着目するならば、同時に、関連する指標も見るべきだ。ところが、三橋氏は見ていない(http://ameblo.jp/akichi-3kan4on/entry-12042930260.html)。
 三橋氏は、高橋是清のデフレ脱却政策を模範とし、「コレキヨの恋文」という小説まで出したが、akiraさんによれば、高橋金融財政によるデフレ脱却過程においても実質賃金は下がったとのことだ(http://ameblo.jp/akiran1969/entry-11987700802.html)。さらに、三橋氏は、「資金を投じて需要を喚起し、企業活動を活発にしても、デフレからインフレに転じるまでには3年はかかるでしょう。」と言っていた(三橋貴明「消費税増税では何も解決しない 国債を発行し復興のためにカネを使え!」(ダカーポ特別編集「緊急発売!消費税増税はなぜダメなのか? 2012年5月」、マガジンハウス)30ページ)。
 とすれば、高橋金融財政を支持する三橋氏としては、デフレ脱却過程における実質賃金低下は許容すべきであり、また、第2次安倍政権が発足してからまだ3年は経過していないのだから、デフレ脱却過程にあっても当然であり(しかも民主党政権で既定路線化された消費税増税を実施することになってしまった)、実質賃金がいまだに上がらないことをもって、景気は悪いなどと言って安倍政権を批判するのは相当ではないと思われる。
 三橋氏が実質賃金で景気を定義するのは、おそらく、正社員が多数派だからではないか(http://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/employment/1.html)。正社員は実質賃金の低下により、景気回復を実感しにくい。実質賃金で景気を定義し、景気は悪いというと、多数派である正社員にはウけやすいかもしれない。商売上、多数派の感覚に合わせた方が都合がよさそうな気はする。

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 さて、問題の「景気が悪いから、株価が上がる」である。
 先に引用した「「新」日本経済入門」の続きに、こう書かれている。


三橋「「新」日本経済入門」54~58ページ

なぜ銀行は国債を買わないといけないのか?

 私の主張する健全なインフレが将来実現するとしたら、今後、国債を買う人はいなくなってしまうのではないかと考える人もいるだろう。
 国債の主な買い手は国内の金融機関だが、こうした話は無論、承知の上で国債を買っている。そもそも、なぜ銀行は、国債を買わなければならないのだろうか。
 日本の金利がなぜ低いのかと言えば、当然、金融機関がこぞって国債を買っているからだ。では、なぜ銀行が低金利の国債を買わなければいけないのか。
 それはもちろん、銀行に私たちの預金が積み上がっているためである。
 銀行にとって、預金というのは預金者からの借金だ。ただ預かっているわけではない。借りた以上何らかの形で運用し、利息をつけなければならず、返済もしなければならない。
 預金の運用における利ざやと支払利息の差が、銀行の稼ぎになる。結果、現在は運用先がないために国債を買っているのだ。
 現実問題として、国債以外に目ぼしい運用先などない。家計が銀行に中抜きされるのが嫌ならば、国債を直接買えばいいという話だ。しかも、国債には当然、ペイオフ制度はない。
 インフレが起きると、国の抱える債務が軽減される代わりに、債権者の資産としての国債は目減りしていくことになる。それがわかっているからこそ、国債には金利がついているのだ。
 国債利回りの指標となる新発10年物国債の金利は、現在1.3%前後だ。これは言い換えれば、市場では今後10年間の日本経済は、その程度の成長率しか見込めないだろうというコンセンサスが成り立っているということになる。国債は入札で調達され、その後は市場で売買できるからだ。
 今後、もしそれ以上の経済成長が見込めるようになったら、2%、3%と金利が上がって行くだけの話だ。
 こうした状況がわかっている以上、金融機関に勤めている人の中に、財政破綻を信じている人など一人もいないだろう。
 第一、金融機関にとっても、いまのほうが苦しいのだ。預金はどんどん集まってくるのに、貸出先も運用先もない。仕方なく国債を買って、わずかな利ざやを稼いでいる。金融機関のビジネスは、お金が回れば回るほど得をする。国債というのは、言わばお金を低金利で固めてしまう行動なのだ。
 そういう意味では、国債発行は金融機関にとってのセーフティーネットである。

「金利が上昇すれば日本は破綻する」のウソ

 例えば、国が「国債が増えすぎたから10兆円返します」と言って、銀行に返済してきたらどうなるだろうか。
 そんなことをされたら、銀行は困るに決まっている。
 突然10兆円を返されてしまった現金は、「運用されていない」わけだから、10兆円はいつまでたっても10兆円のままだ。
 一方で、もともとその10兆円が預金である以上、決められた利子を払わなければいけない。
 いくら超低金利とは言え、10兆円の利子と言えば大変な金額になってしまう。1%なら1000億円だ。いまの状況が変わらない限り、「どうしよう、何らかの形で運用しなければ・・・・・・。でも投資先がない。じゃあ、国債でも買おうか」となるに決まっている。
 要するに、問題の本質が違うのだ。現在の日本において、銀行は自分が預かったお金を民間で運用できる環境がない。だから、国債を買うしか手がない。
 別の言い方をすれば、そのために政府は国債の発行を増やしている。その部分については、お互いウィン・ウィンなのだ。国債金利が低いということは、銀行などの金融機関が政府に「もっと国債を発行してくれ!」と求めているサインでもある。
 本来の資本経済のあり方というのは、民間がどんどん資金を借りてくれて、経済を回していくことだ。そうすれば、銀行は金利1.3%で国債を買う必要はなくなる。企業に貸して金利を稼げるのならば、それは景気がいいということに他ならない。
 当然金利は上がってくるが、税収も増えるのだから、政府はそもそも国債を発行する必要がなくなる。これがあるべき姿なのだ。
 「好景気になって金利が上昇したら、銀行が国債を買わなくなる。それで日本は破綻だ」という警告がどれほど間抜けか、ご理解いただけるだろう。
 断言するが、そんなことにはならない。
 金利が上がる状況がどういうことか、理解していない証拠だ。少なくとも現在の日本の場合、金利上昇は民間がしっかりとお金を借りてくれる、つまり好景気ということだ。
 そんなときに、なぜ政府が国債を発行する必要があると言うのだろうが<ママ>。だいたいこの手の論調は、好景気・不景気、あるいはインフレ期・デフレ期がグチャグチャに混同されている。
 そして、常に結論を「日本は破綻する」に持っていこうとしているから、なお話がややこしくなる。
 付け加えれば、日本政府への貸し手は主として国内の銀行だ。銀行は国から金利を受け取るが、それは営業外収益だから、4割は政府に税収として戻ってくる。残りの6割のうち余った分はどうするのか――。
 当然運用しなければならない。好景気ならば資金需要先に行くだろうし、不景気ならば再び国債を買うだろう。ただそれだけの話だ。


 この本が出版された当時は民主党政権だった。
 そしてこの当時は、三橋氏によれば、金融機関は貸出先・運用先がなく、国債を買っていた。
 しかし平成24年(2012年)、第2次安倍政権が発足し、黒田東彦氏が日本銀行総裁に就任し、金融緩和が積極的に行われるようになり、景気回復の期待が高まった。
 そこで、金融機関としては、株式に投資先を見出している。
 そして株価が上がっている。
 「ただそれだけの話」ではないか。
 ていうか、今の三橋氏の「景気が悪いから、株価が上がる」(不景気→株価上昇)と、過去の三橋氏の「好景気ならば資金需要先に行く」(好景気→株価等上昇)は、ほとんど逆と言えるだろう。
 景気が良くても悪くても株価が上昇するという妙な話になる。

 ちなみに、上念司氏は、株価について以下の解説をしている。


上念司 「日本は破産しない! 騙されるな!「国債暴落で国家破産!」はトンデモ話だ!」 (宝島社、2010年) 208,209ページ

円高が終われば、株価は上昇する

 円高が終わる見通しが立てば、株式市場のプレイヤーたちは輸出企業の利益増を予想して、株式の買い占めに走ります。現在、円相場の動向を見ながら、円高が過度に進むと株安が進むという現象が頻繁に起こっています。円高が終われば、株式市場の動きはこれと正反対になります。
 為替相場で円安になれば、その動きに反応して株価は上昇していきます。なぜなら、過度な円高が多少緩むだけでも、輸出企業の利益は大幅に増えるからです。まして、ハイパー円高が完全に終了して円安基調に移ったことがハッキリすれば、日本の輸出企業の完全復活の可能性が出てきて、市場のプレイヤーたちがこぞって株を買うようになるでしょう。そうした動きが相まって、株式市場は活況を呈して、株価は次第に上昇します。
 リーマンショックの直前は1ドル=120円、株価は1万8000円でした。最低でもそのレベルまで回復すれば、人々の懐はかなりあたたかくなるはずです。
 また、株を保有していなくても、輸出企業やその下請け会社に勤めている人は直接円安の恩恵をこうむることになります。なぜなら、海外向けの売上や利益が増えれば、自分たちが受け取る給料やボーナスの金額が増えるからです。
 農業のような国内産業であっても、円安によって競合する輸入農産物の価格が上昇するので、思わぬ恩恵に浴すことができます。このことは農業に限らず、輸入品と競合するすべての国内産業にあてはまる話です。02年ごろ1ユーロ=170円ぐらいの円安・ユーロ高になった時期には、北欧からの木材の輸入コストが上がってしまったため、国内の杉材を利用しようという動きが広がりました。国内林業のような万年赤字産業ですら、円安によって復活しかけたわけですから、もっと効率のいい他の国内産業なら余計に業績回復に向けての動きが加速するでしょう。当然、それらの産業に従事している人々も給料やボーナスを通じて円安のメリットを享受することができます。」

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 上念氏は、チャンネル桜で三橋氏の「コレキヨの恋文」を「予言の書」と言って褒めた覚えがあるが、上念氏のこの記述の方がよほど「予言の書」と言えるだろう。
 現在はリーマンショック前よりも円安が進み、そして株価もリーマンショック前を超えている。この記述の通りになっている。
 と書いているそばから、ギリシャの債務不履行問題の影響で、円高が急激に進行し、株価も下がってきた(http://www.sankei.com/economy/news/150628/ecn1506280007-n1.html)。
 とはいえ、やはり、円高が進むと株価は下がるようだ。

 円安が進むと、国内産業を保護する意味を持つ。
 保護主義の傾向があり、特に日本の農業を守ることを主張する三橋氏であれば、円安は歓迎すべきところだ。
 しかし、三橋氏は「大企業が儲かっているだけ」といった感じで、積極的に評価していない印象がある。

 安全保障関連法案に関する報道を見てもわかるが、マスメディアの大勢は、不合理な政権批判・自民党批判が多く、国民をミスリードしている。
 かつて三橋氏はかかる言語空間について「情報の歪み」と表現し、これの是正に取り組んだ。
 そこに三橋需要があったのだと思う。
 三橋氏は、今月4日、「供給が需要を創出する」というセイの法則は誤りだと述べた(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12034756797.html。この記事で、三橋氏は、設備投資は増えていないという旨を述べる。しかし、山本博一氏によれば、実際には増えている。http://nikkan-spa.jp/871475)。
 三橋氏はセイの法則を批判するのならば、自身の需要がどこにあるのかを考え、作品を供給した方がよいのではないか。
 三橋氏は自著が増刷になるとブログで報告するが、安倍政権は緊縮財政だと批判する「黄金の拘束衣を着た首相」は、増刷になっていないようだ(http://u111u.info/m6uY。私の近所の書店にもいまだに第1刷が置かれている。なお、安倍政権は緊縮財政ではない。http://ameblo.jp/akiran1969/entry-12039566127.html)。